日本腹部救急医学会雑誌
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24 巻, 7 号
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  • 長谷川 聡, 森脇 義弘, 荒田 慎寿, 山本 俊郎, 杉山 貢
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1115-1119
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    1990年1月より2000年6月までに当センターで開腹手術が行われた鈍的外傷による空腸・回腸穿孔26例40病変について, CT上の腹腔内遊離ガス像の出現を検討した。19例のべ21回のCT撮影が行われ, 腹腔内遊離ガス像は6例 (32%) に認められた。受傷後の時間経過との関係では受傷4時間以内は13%, 4~12時間では75%, 24時間以降では100%に認めた。予後に関しては, 死亡例は出血性ショックなどの小腸穿孔以外の理由で受傷早期に開腹されていた例が多く, 受傷から手術までの時間と予後とは単純には比較できなかった。鈍的外傷による空腸・回腸穿孔は, 初期治療での確定診断は困難であるが, 受傷後12~24時間の厳重な経過観察とこの時点でのCTによる再評価が重要で, この時間遅延での予後の悪化はないと考えられた。
  • 内科の立場から見たPTGBAの有用性
    河田 英里, 高橋 周史, 平田 育大, 朴 義男, 竹村 俊樹, 吉川 敏一
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1123-1128
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    急性胆嚢炎症例は, 高齢者でかつ有合併症症例が多く, 初期の治療法の選択が予後に大きな影響を及ぼし得るO今回われわれは急性胆嚢炎の初期治療としての経皮経肝胆嚢ドレナージ術 (percutaneous transhe-patic gallbladder drainage; PTGBD) と経皮経肝胆嚢穿刺吸引法 (percutaneous transhepatic gallbladder aspiration; PTGBA) の有用性を比較検討した。【対象と方法】2000年1月から2003年8月までの期間に当科で経験したPTGBD19症例とPTGBA16症例について, 治療効果, 合併症などを比較検討した。【結果】PTGBA症例では全例で1回の施行ですみやかに自他覚所見, 炎症所見の著明な改善を認め, 安全に待機的手術に移行できたが, 経過観察例のうち1例で胆嚢炎が再発した。手技が簡便という利点もあった。一方PTGBD例では, チューブ留置中に胆嚢炎が再発することはなく, 効果がより確実であったが, 体動制限, 刺入部痛, チューブの脱落, 自己抜去の可能性など, 高齢者には不利な点が指摘された。【結論】PTGBAはPTGBDと短期の有効性では同等, 安全性では優ると考えられた。とくに超高齢者の初期治療の第一選択になり得ると考えられた。
  • 杉山 政則, 阿部 展次, 鈴木 裕, 柳田 修, 正木 忠彦, 森 俊幸, 跡見 裕
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1129-1134
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    超高齢者 (90歳以上) における総胆管結石の外科治療は危険性が高いと考えられる。一方, 内視鏡的乳頭切開術 (EST) は超高齢者においても, より低年齢層の患者と同様に, 総胆管結石に対する安全かつ有効な治療法である。ESTの短期および長期合併症の頻度は超高齢者においても低い。急性胆管炎合併例, とくに重症胆管炎・全身状態不良例では急性期には内視鏡的経鼻胆道ドレナージのみを施行し, 胆管炎が消退したのちESTおよび切石を行った方が安全である。完全切石が困難な場合は胆管ステントを長期留置することもよい方法である。超高齢者でもESTを施行すれば結石を持たない一般集団と同等の期間の生存が期待できる。ESTは超高齢者の総胆管結石症に対する有用な治療法である。
  • 野々垣 浩二, 熊田 卓, 桐山 勢生, 谷川 誠
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1135-1142
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症例は重篤な胆管炎となって致命的となる危険があるため, 原則的には, たとえ超高齢でリスクがあっても治療の適応がある。そこで85歳以上の超高齢者の総胆管結石に対する内視鏡的治療 (EST, EPBD) の有用性について検討した。85歳以上の超高齢者50例を対象とし, 高齢者 (75~84歳) 172例ならびに非高齢者 (74歳以下) 479例と臨床像, 治療成績などを比較検討した。内視鏡的治療についてはいずれの群でも, 90%前後の治療成功率を認めた。合併症は有意差を認めなかった。胆道障害の再発は高齢者に多く, 胆嚢結石を放置した場合に多く認めた。高齢者, 超高齢者では内視鏡的治療後に基礎疾患の悪化や, 全身状態の悪化から死亡退院する例も認められた。内視鏡的治療は有用であるが, 高齢者という特殊性を考慮し, 一つの治療法に固執することなく柔軟な対応が必要と考えられた。
  • 胆管炎症例を中心に
    小山 隆司, 栗栖 茂, 梅木 雅彦, 北出 貴嗣, 大石 達郎, 高橋 英幸, 森 大樹, 喜多 泰文
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1143-1148
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当院における80歳以上超高齢者胆石症救急症例の治療方針は, 胆管炎に対しては内視鏡的乳頭切開 (EST) 付加内視鏡的経鼻胆道ドレナージ (ENBD) を, 胆嚢炎に対しては経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD) を第一選択とし, 胆管結石に対しては内視鏡的乳頭切開 (EST) ・切石を行い, 胆管切石後無症状胆嚢内結石は有石放置を選択する場合もある。最近20年間に内視鏡治療が行われた899例のうち80歳以上救急症例135例140回治療を対象とし, 80歳以上超高齢者胆管炎に対する内視鏡治療成績を検討した。死亡例は3例で, 3例ともにすでにMOFに陥った重症例で, かつESTなしでENBDのみ留置した初期症例であった。ドレナージを確実にする目的でEST付加ENBDに治療方針を変更した1992年以降に死亡例はなく, 合併症としてEST後出血1例, 誤嚥性肺炎を5例に認めた。胆管炎に対する内視鏡治療は合併症も少なく高齢者にも安全で有用な治療法であり, 確実なドレナージ効果を得るためにはEST付加ENBDが, また, ESTは乳頭機能温存・安全性の面からも小切開が有用である。
  • 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 広松 孝, 板津 慶太, 田畑 智丈, 河合 清貴, 深見 保之
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1149-1154
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    われわれは総胆管結石症に対して腹腔鏡下の一期的手術を第一選択の治療法としている。1992年からの13年間に271例の一期的手術を経験した。このうち80歳以上の超高齢者は30例であった。本論文では, 80歳以上の超高齢者の臨床像, 治療成績を79歳以下の非高齢者241例と比較検討した。また, 開腹手術例とも比較検討を行った。超高齢者のPSは比較的良好な例が多かった。術前の並存疾患の頻度は両群間に差を認めず, 手術時間, 入院期間, 合併症率などにも差を認めなかった。また, 開腹手術との比較では, 手術時間, 入院期間ともに腹腔鏡下手術例の方が短く, 合併症率も低率であった。以上の結果より, 80歳以上の超高齢者に対しても腹腔鏡下の一期的手術は安全に施行でき, 第一選択の治療手段となり得ると考えられた。
  • 大谷 泰雄, 飛田 浩輔, 堂脇 昌一, 石井 正紀, 今泉 俊秀, 幕内 博康
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1155-1161
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 侵襲が少なく・在院期間が短く・早期社会復帰が可能な治療が求められている。胆石症の治療体系はLCの普及に伴い治療方針が大きく変貌した。1988年1月から2003年3月までに経験した胆嚢・総胆管結石症例は2, 383例で, 胆嚢結石のみ1, 795例 (75.3%) ・総胆管結石588例 (24.7%) である。80歳以上の症例を超高齢者と定義して検討すると, 134例 (80歳台118例・90歳台16例) であった。超高齢者134例のうち95例 (70.9%) が総胆管結石を有していた。134例の治療方法は, 開腹手術69例 (胆摘26例・総胆管切開切石術43例), 腹腔鏡下手術16例 (LC8例・総胆管切開切石8例), EPBD17例, ESWL9例, PTPBD6例, EST4例, PTCSL3例, ドレナージ留置のまま退院10例 (PTGBD5・PTBD5) などであった。在院死亡症例は7例 (心不全4例・CRF2例・肺炎1例) あり, 高齢者に特徴的な重度の基礎疾患・合併症などによる死亡が多い傾向にあった。
  • 榎戸 克年, 大東 誠司, 竹井 淳子, 堀田 亮, 熊倉 香, 林 直樹, 池田 貞勝, 西尾 剛毅
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1163-1167
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に起因した成人腸重積症を3例経験したので報告する。症例1: 81歳男性。右下腹部痛を主訴に受診し, 超音波, CTにて上行結腸の腸重積を認めた。大腸内視鏡の生検で上行結腸癌と診断され, 右半結腸切除術を施行した。症例2: 63歳男性。左肺癌手術7ヵ月後に左下腹部痛が出現し受診した。注腸造影, 超音波, CTで小腸重積を認め, 肺癌小腸転移と診断し, 姑息的に小腸部分切除術を施行した。症例3: 59歳女性。下血を主訴に受診した。CTで直腸に腸重積を認め, 大腸内視鏡では大腸癌と診断された。術中整復が困難であったため, ハルトマン法に準じた手術を施行した。成人腸重積症の診断は, 画像診断の発達により比較的容易になってきたoしかし悪性腫瘍が原因となることが多く, 原疾患や腫瘍占拠部位などにより手術術式は一様ではない。当院では, 悪性腫瘍に起因した成人腸重積症3例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する。
  • 伊東 功, 中村 知己, 元宿 めぐみ, 幕内 博康, 山崎 等, 猪口 貞樹
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1169-1172
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳, 女性。急性薬物中毒による意識障害の診断にて緊急入院となる。入院後, 輸液療法にて意識状態の改善を認めたが, 意識状態の改善に伴い腹痛を訴え, 身体所見上腹膜刺激症状を認めた。血液検査にて白血球上昇を認め, 腹部CT検査にて門脈内と上行結腸に気腫像を認めた。以上より, 気腫性腸炎による汎発性腹膜炎が強く疑われ, 緊急手術を施行した。術中所見として, 上行結腸に広範囲な腸管の変色を伴う気腫像を認め, 腸管壊死の可能性が否定できないため, 結腸右半切除術を施行した。切除標本上, 上行結腸粘膜面は肉眼的に発赤腫脹しており, 表面は凹凸不正であった。組織診断においては, 出血と浮腫が著明で, 多くのグラム陽性桿菌が壊死を起こした粘膜下組織内に散在していた。以上より, 本症例はなんらかの原因で腸管の虚血が生じ, 二次的にガス産生菌による気腫性腸炎を併発した可能性が示唆された。
  • 小川 雅子, 佐野 広美, 荒深 景一, 土屋 徹
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1173-1177
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) でイレウスを解除し得た胆石イレウスの1例を経験した。症例は80歳, 男性。既往歴として胆嚢結石症, 原因不明の全身拘縮がある。嘔吐を主訴に来院, 腹部は膨満していたが自発痛, 圧痛はなかった。腹部単純X線検査では上部小腸の著明な拡張を認めた。上部消化管内視鏡検査では十二指腸球部前壁に周囲に肉芽組織を伴う憩室様の深い陥凹を認めた。腹部CT検査では小腸内部に2cm大のリング状の石灰化像がみられ, その口側腸管は著名に拡張していた。また, 胆嚢の壁肥厚と空気像, 胆嚢に接して拡張した十二指腸球部を認めた。以上より, 胆嚢結石が胆嚢十二指腸瘻を通じて落下して小腸で嵌頓し, 胆石イレウスをきたしたと診断した。まず保存的治療を行ったが軽快せず, 80歳と高齢でhigh riskであったためESWLを試みた。計8回の治療でイレウスは解除され, 経口摂取が可能となった。
  • 團野 克樹, 福島 幸男
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1179-1182
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は85歳, 女性。左下腹痛を主訴に救急搬送。左下腹部に圧痛, 反跳痛を認めたが, 同部位に限局していた。腹部単純X線検査では, 小腸ガスの増加以外に腹腔内遊離ガス像は見られなかった。腹部CT検査では, 下行結腸背側の後腹膜腔に, 膿瘍と思われる腫瘤像を認め, さらに腸管壁との境界部に約3cmの高吸収域を示す異物を認めた。詳しく問診したところ, 患者は前々日の夕食に鯛のあら炊きを食べており, 画像より嚥下した魚骨による消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した。下行結腸のS状結腸移行部付近の背側に膿瘍を認めたため, 膿瘍のドレナージを行い, 下行結腸部分切除を施行した。摘出標本では穿通部に突き刺さる, 約3cmの鯛の顎骨が発見された。魚骨による消化管穿孔の術前診断は非常に困難であるが, 詳細な問診およびCT検査が有用であると考えられた。
  • 宇都宮 俊介, 泉 喜策, 福島 慎也
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1183-1187
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂は, 開胸下に修復される場合が多い。今回われわれは膿胸, 縦隔炎を伴う食道破裂に対して, 開腹, 経食道裂孔アプローチにより, Tチューブ留置, 縫合閉鎖, 有茎大網弁被覆術を施行した症例を経験した。症例は40歳台, 男性, 気管支喘息のためにステロイド剤を内服中であった。飲酒後嘔吐し, 呼吸困難を主訴に受診, 胸部X線, 食道造影, 胸部computed tomography (CT) にて食道破裂と診断, 右胸腔ドレナージを施行し, 発症11時間後に開腹した。食道裂孔を用手的に開大すると, 右胸腔, 縦隔内左側に膿および食物残渣を大量に認め, 下部食道右前壁に5cm長の破裂を認めた。食道裂孔より, 右胸腔, 縦隔内を洗浄, 経裂孔的にプリーツドレーンを留置した。破裂部は, Tチューブを留置し2層に縫合閉鎖, 有茎大綱弁で被覆した。術後, 重篤な合併症はなく, 14日目に経口摂取を開始し, 30日目にTチューブを抜去した。
  • 加藤 公一, 金住 直人
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1189-1192
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術後2年を経て, 腹腔内に遺残した結石に起因する難治性皮膚瘻をきたした症例を経験した。症例は74歳, 男性。胆石症・胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し, 術後経過は良好であったが, 術後2年目に右側腹部の腫瘤を自覚し当科を受診した。腹斜筋内膿瘍の診断でデブリードマンを行ったが, 術創部からの排膿が遷延した。腹部CTでは遺残結石, 腹腔内膿瘍の所見は得られなかったが, 瘻孔造影により腹腔内に連続する瘻管と結石と思われる透亮像を認めた。腹腔内に遺残した結石が難治性皮膚瘻の原因と考え, 全身麻酔下に開腹し結石の摘除と瘻管の掻破を行った。術後は感染の再燃なく経過している。
  • 境 雄大
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1193-1196
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 男性。糖尿病, 高血圧症, 脳梗塞の既往あり。2003年3月, 腹痛にて近医を受診した。発熱と炎症反応を認めたが, 腹部症状軽度にて経過観察となる。4日後に腹痛が増強し, 当院内科を受診した。急性腎不全, 急性循環不全あり。腹部CTにて穿孔性急性気腫性胆嚢炎の診断を得た。当科紹介後, 緊急開腹術を施行した。腹腔内に900mlの膿性腹水が貯留しており, 胆嚢底部に穿孔を認めた。胆嚢摘出術, 腹腔ドレナージ術を施行した。胆嚢内に結石なし。病理診断は壊疽性胆嚢炎, 腹水からE. coliが検出された。術後呼吸不全を呈し, 5日間の人工呼吸管理を要したが, 以後の経過は良好で第17病日に退院した。気腫性胆嚢炎は比較的まれであるが, 重症化することもあり, 死亡率も高い。糖尿病, 高血圧症, 心・脳血管障害を有する高齢の急性腹症患者では本疾患も念頭におくべきである。
  • 阿古 英次, 前田 清, 井上 透, 西原 承浩, 八代 正和, 大平 雅一, 平川 弘聖
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1197-1200
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性, 腹痛のため当院入院となる。23歳時より大腸クローン病を指摘されている。横行結腸狭窄部に対して内視鏡下バルーンブジーを施行したところ, 突然の腹痛と造影剤の腹腔内流出ならびに腹部CTにてfree air・肝辺縁部を中心とした肝内ガス像を認めた。門脈ガス血症を伴った消化管穿孔と診断し大腸亜全摘術・腹腔内ドレナージ術を施行した。経過は良好であり, 術後16日目の腹部CTにて両方のガスはともに消失し, 無事軽快退院した。本症例では, 下部消化管内視鏡検査による消化管内圧の亢進と消化管粘膜の損傷が門脈ガス血症の原因となったと考えられた。大腸穿孔により門脈ガス血症を呈したクローン病の1例を経験したので報告する。
  • 金田 宗久, 松本 賢治, 和多田 晋, 松原 健太郎, 秋好 沢林, 井上 史彦, 新谷 恒弘, 北島 政樹
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1201-1205
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性。背部痛を主訴に近医を受診し, 急性膵炎を疑われ同日入院した。精査にて径6cmの左総腸骨動脈瘤を認めたため, 当院に転院となった。腹部CT, MRI検査にて, 左総腸骨動脈瘤および膵体部に膵仮性嚢胞を認め, 嚢胞内出血が疑われた。緊急血管造影検査にて, 脾動脈根部から分枝した背側膵動脈の分岐部に仮性動脈瘤を形成し, 嚢胞内へ造影剤が流出し, 主膵管への流出も認め, hemosuccus pancreaticusを呈していたため, 仮性動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行した。全身状態は徐々に改善し, 左総腸骨動脈瘤に対して, まず大腿・大腿動脈交叉型バイパス術を施行した。その後, 左総腸骨動脈瘤にコイル塞栓術を施行した。術後の血管造影検査では, 膵仮性嚢胞ならびに左総腸骨動脈瘤への血流は認めず, 退院となった。本症例は, 比較的まれなhemosuccus pancreaticusをきたした病態に巨大総腸骨動脈瘤を伴っており, Inter-ventional Radiology (IVR) などさまざまな治療法の組み合わせにより良好な結果が得られた。
  • 高尾 智也, 間野 正之, 福田 和馬, 小松原 正吉
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1207-1210
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    誤嚥した義歯が空腸に嵌入し腹腔鏡補助下に異物除去術を施行した1例を経験した。症例は54歳, 男性。受診4日前の夕食後に右奥歯の義歯がないことに気がついていたが, 誤嚥したとは思わず経過を見ていた。受診前日より時々腹痛が出現し, 2002年11月30日の夕方より腹痛が持続したため, 救急外来を受診した。腹部単純X線検査にて左側腹部に義歯の金具と拡張した小腸ガス像を認め, 腹部CT検査でも同様の所見を認めた。明らかな穿孔を疑う遊離ガスは認めなかったが, 左下腹部に腹膜刺激症状と白血球数の増加を認めたため, 小腸内異物による穿孔性腹膜炎の疑いで, 同日緊急手術を施行した。Treitz靱帯より約60cmの空腸に義歯の鈎が嵌入していたため, 腹腔鏡補助下に空腸部分切除術を施行し, 義歯を除去した。術後経過良好で術後10日目に退院した。
  • 井川 浩一, 吉田 禎宏, 今冨 亨亮, 斉藤 恒雄, 中田 昭豊
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1211-1214
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    まれな十二指腸憩室穿孔の1例を経験した。症例は83歳, 男性。右季肋部痛を主訴として近医から当院に紹介され入院となった。保存的に経過をみたが改善せず, CTで右腹部の後腹膜優位に異常ガス像を認め, 消化管穿孔による腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行した。開腹して十二指腸を授動し後腹膜の膿を除去すると, 十二指腸下行部外側に腸石を伴った腸壁の壊死と穿孔を認め, 憩室炎の穿孔と診断した。壊死した腸壁を襖状切除し, 腸壁欠損部にT-tubeを留置して縫合閉鎖した。術後経過は良好で, T-tubeを術後第30病日に抜去した後に退院した。なお, 本症例は幽門側胃切除, BillrothII法再建術の既往があり, 文献的検討から輸入脚の存在が穿孔を起こす要因のひとつになっていたのではないかと推測された。BillrothII法再建時に十二指腸憩室を認めた場合は, 憩室に翻転術を施すなど, 穿孔を予防する試みについても検討してみる価値があるのではないかと考えられた。
  • 小鹿 雅博, 佐藤 信博, 八重樫 泰法, 小野寺 誠, 藤野 靖久, 井上 義博, 上杉 憲幸, 斎藤 和好, 遠藤 重厚
    2004 年 24 巻 7 号 p. 1215-1219
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部外傷を契機に発見された膵のsolid pseudopapillary tumor (SPPT) の1例を経験した。症例は9歳男児, 学校の階段より転落し腹部を打ち受傷, 腹痛が持続するため受診となった。Focused Assessment with Sonography for Trauma (FAST) にて腹腔内貯留液, 腹部造影CTにて膵前面に約10cmのlow density areaを認めた。後腹膜血腫, 腹腔内出血にて緊急手術を施行した。術中所見では膵前面に破裂した出血塊を含む腫瘍を認めた, 腫瘤は膵由来であり体尾部切除により腫瘍摘出術を施行した。病理組織検査にてSPPTと診断された。術後は良好に経過, 耐糖能異常もなく15病日に退院となった。SPPTは, 10代後半から30代の女性に発症する比較的まれな膵腫瘍で, 本邦において男性の報告例は40例に満たない。外傷を契機に発見された症例は検索し得た限りでは本症例を含め本邦で20例であった。
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