日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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25 巻, 4 号
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  • 急性膵炎のガイドラインを中心に
    木村 康利, 平田 公一, 吉田 雅博, 真弓 俊彦, 大槻 眞, 松野 正紀, 高田 忠敬
    2005 年 25 巻 4 号 p. 599-605
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎の治療に焦点をあて, 急性膵炎診療ガイドラインの概要を紹介した。本邦で頻用されている蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法は, 現時点でオプションの治療法として位置付けられている。重症膵炎の病態は, 膵局所的内因性DICに集約されるとのコンセプトに基づき, 膵局所周囲へ蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬を高濃度に注入する本法については, 理論的, かつ有望な治療法として期待し得る。今後は, その有用性に関する理論的根拠の構築と, 病態別の分析可能な臨床試験の実施が望まれるところである。
  • 松村 直樹, 上田 隆, 竹山 宜典, 沢 秀博, 黒田 嘉和
    2005 年 25 巻 4 号 p. 607-611
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎, とくに壊死性膵炎は感染性膵壊死に至ると外科手術以外有効な治療法はなく, 死亡率は依然として高い.本稿では動注療法の適応と方法を述べるとともに, 壊死性膵炎を動注施行群と動注非施行群の2群に分け, 治療成績 (臓器障害の合併率, 感染性膵壊死の合併率, 胆道系を除く手術施行率, 発症から手術までの期間, Stage別の死亡率, 死因) を比較検討した.また各群における入院時検査成績で予後因子の解析を行った.動注療法はStage3, 4の壊死性膵炎に対して感染性膵壊死の合併を抑制し, 手術を回避もしくは手術までの期間を延長し, 死亡率を改善していると考えられた.また, 肝機能障害を伴った症例に対する動注療法の治療成績は不良であった.GPT, GOT, T-Bilは厚労省重症度判定基準の項目ではないが, 重症急性壊死性膵炎に対する動注施行例において, 予後規定因子である可能性が示唆された.
  • 古屋 智規, 高橋 賢一, 橋爪 隆弘, 和嶋 直紀
    2005 年 25 巻 4 号 p. 613-619
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎62例 (重症度スコア中央値11点, 感染率24.2%, 致死率16.0%) で, 動注療法を施行した44例の膵感染率, 生存率を重症度別に比較し, さらにimipenem使用の有無, 動注療法開始日, 施行期間, 留置部位の違いで比較した.また, 合併症を検討した.Stage2では動注非施行の感染率25.0%に対し施行例は0.0%であった.Stage3-4では非施行例の感染率50.0%, 致死率66.7%に対し, 施行例は感染率28.1%, 致死率は18.8%と有意に改善した.imipenem併用では感染率17.1%, 致死率12.2%で, 7日以内に開始すると感染, 死亡率ともに12.5%だった.留置期間の延長で成績は改善せず, 留置部位別では, 腹腔動脈, SMA留置例間に差はなかった.合併症の検討では脾梗塞2例 (3.2%) があったが, 膵炎自体による動脈攣縮が主因と判断した.このことから留置は可及的中枢側にすべきと考えられた.一方, SMA留置例での腸管虚血等合併はなかった.以上を考慮すれぼ, 本法はより安全で有効と考えられ, 今後は多施設問無作為比較試験が望まれる.
  • 高橋 栄治, 小池 俊明, 須納瀬 豊, 田中 俊行, 富澤 直樹, 安東 立正, 小川 哲史, 飯塚 春尚, 小野里 康博, 石原 弘, ...
    2005 年 25 巻 4 号 p. 621-626
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症膵炎に対する持続動注療法の期間として, 5-7日が推奨されている.しかし, 動注7日後の再評価で重症度Scoreや炎症が増悪し, 長期の動注を余儀なくされる症例も少なくない.当院では, 重症膵炎15例に対し動注療法を施行し, 7例 (46.7%) が長期動注療法となった.そこで, この長期群と動注7日後の評価で軽快し終了できた短期群 (8例) をretrospectiveに比較検討した.重症度Scoreのうち予後因子2の項目数で長期群が有意に高かったが, 重症度Scoreの他因子, 動注方法, 膵炎Stage, に両群問に差はなかった.また, 合併症は重症のものが長期群に多かった.長期動注療法の期間は平均27.7±14.3日で, 持続動注に伴う合併症はなかった.生存率は長期群5例 (71.4%), 短期群7例 (87.5%) であった.以上より, 当院の長期持続動注療法は, 重症膵炎の救命率を向上させる有用なオプションの一つになり得る.
  • 治療成績と動注カテーテル留置の工夫
    山崎 繁通, 横山 昌典, 紙谷 孝則, 巻幡 聰, 田中 経一, 東原 秀行, 岡崎 正敏, 白日 高歩
    2005 年 25 巻 4 号 p. 627-632
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    膵酵素阻害および抗生物質の持続動注療法 (動注療法) は重症急性膵炎に対する有用な特殊治療の1つとしてあげられている。われわれは, 以前は本疾患に対し膵授動兼膵床ドレナージを主とする手術療法を行っていた。しかし, 1994年からは積極的に動注療法を行っている。今回, われわれの経験した重症急性膵炎90例の治療成績を調べた。急性膵炎の重症度は厚生労働省の急性膵炎重症度判定基準に従って判定し, Ctgrade IVないしはVの症例を動注療法の適応とした。動注療法における動注カテーテルやその留置部位に関しては, 膵病変部への有効な薬剤注入が得られるよう工夫した。動注療法例と手術療法例の死亡率はそれぞれ, 7% (4/57) と31% (4/13) であり, 動注療法は手術療法に比べ有意に良好な治療成績を示した。われわれの行っている動注療法は, 重症急性膵炎でCTgradeIV以上の症例に有効な治療法のひとつである。
  • 福山 尚治, 武田 和憲, 松田 和久, 三上 幸夫, 江川 新一, 砂村 眞琴, 松野 正紀
    2005 年 25 巻 4 号 p. 633-636
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」が2003年に刊行され重症急性膵炎に対する治療戦略が方向付けられたが, これに基づき本施設では重症急性膵炎に対し動注療法を中心とした積極的集中治療を施行し良好な成績を得ている。今回CT画像に基づき, Nafamostat Mesilateおよびimipenem (FUT+IPM) 動注療法の膵perfusion改善効果と予後を検討した。【対象症例と方法】重症急性膵炎の動注療法施行症例のうち入院時造影CTにてlow density area (LDA) >30%であった72症例を対象として, 動注療法後の膵臓のLDAの形態学的変化 (改善率) などの検討を行った。【結果】 (1) LDAが30~50%の群では動注療法後に形態的改善を示したものは71%, (2) 50%以上の群では改善を示したものは, 64%であった。LDAが拡大するにつれ, 改善率が低下する傾向があった。【考察と結論】早期の動注療法は膵per-fusionを改善させる可能性を示し, 感染性膵壊死などの合併症発生頻度を低下させ, 予後を改善させる可能性を有する。
  • 原 敬志, 子野日 政昭, 沼田 昭彦, 加藤 紘之
    2005 年 25 巻 4 号 p. 637-639
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の女性。イレウスの診断にて入院し, 腹部CTにて骨盤腔内に膿瘍と著明な石灰化を認めた。入院2日後に白血球が13, 600/μl, CRPが23.9mg/dlに増悪し意識が低下傾向となったため, 急性腹症の診断で緊急手術を施行した。開腹時, 膀胱, 回腸, 子宮が一塊となり膿瘍を形成し, 腹膜転移と考えられる腫瘤も存在した。膀胱癌の回腸浸潤によるイレウス, 浸潤部位の膿瘍形成, 子宮浸潤, 腹膜転移と術中診断し, 回腸部分切除, 回腸瘻造設, 腹腔内ドレナージ術を施行した。切除標本と術後の膀胱生検の病理所見から膀胱扁平上皮癌と診断した。膀胱の扁平上皮癌が腸管に浸潤してイレウスとなる症例はまれであるが, 骨盤内に石灰化のある高齢女性の急性腹症の鑑別診断には膀胱癌の腸管穿通も念頭に置く必要がある。
  • 橋本 竜哉, 山下 裕一, 山崎 繁通, 酒井 憲見, 前川 隆文, 白日 高歩
    2005 年 25 巻 4 号 p. 641-644
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性。重症急性膵炎に対し持続動注療法を行い, 軽快した後近医にて継続入院加療中であった。約2ヵ月後に突然の上腹部痛, 発熱をきたし, 腹部CT検査にて脾周囲から胃後面を圧排する等吸収域を認め, 当センターに緊急転院となった。小開腹で腹腔内出血と診断し, 引き続き, 緊急腹部血管撮影検査を行った。所見は, 脾動脈末梢に径約5mmの仮性動脈瘤を認めたので, 動脈塞栓術を行った。全身状態の回復を待ち, 9日後に上部消化管内視鏡検査を施行した。胃体上部後壁に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め, その表面に穿孔部位を確認した。その後炎症所見の改善なく, 腹腔内膿瘍の診断のもと, 開腹ドレナージ術を施行し軽快した。近年, 持続動注療法や血液浄化法の導入により, 重症急性膵炎の急性期死亡率は減少しつつある。しかし, 急性期離脱後も, 仮性動脈瘤の破裂など重篤な合併症を念頭に置いて, 注意深く経過観察することが肝要と考えられた。
  • 中西 喜嗣, 佐藤 正文, 川田 将也, 行部 洋, 近藤 哲
    2005 年 25 巻 4 号 p. 645-648
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 男性。開腹歴なし。腹痛を主訴に来院した。腹部単純写真で小腸にniveauを認めたため, イレウスの診断で入院した。翌日にイレウス管を挿入されたが, 発熱, 腹痛の増強, 腹膜刺激症状が出現し, 腹部CT検査で腹水, 小腸の拡張を認めた。血液生化学検査では異常がみられなかったが, 絞扼性イレウスの診断で開腹した。回腸末端から口側約50cmに憩室があり, 先端が小腸間膜に癒着し, その口側の回腸が嵌頓していた。絞扼を解除した後, 憩室切除のみを行い手術を終了した。病理学的所見では憩室の先端には膵組織が迷入しており, Meckel憩室と診断した。Meckel憩室による絞扼性イレウスの診断は術前には困難であるが, 原因不明のイレウス症状の症例に遭遇した場合, 本症を念頭に入れ, 絞扼性イレウスを早期に診断することによって腸切除を避けることが重要と思われた。
  • 小練 研司, 山田 成寿, 北浜 誠一, 渡邉 幸博, 北川 美智子, 渡井 有, 加納 宣康, Satoshi Yamamoto
    2005 年 25 巻 4 号 p. 649-652
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性。イレウスの診断で近医で加療を受けていたが, 症状増悪のため当院転院となった。腹部X線, 造影CT検査で肝-右横隔膜間に腸管の嵌入を認めChilaiditi症候群と診断した。イレウス管造影検査で嵌入臓器は小腸と判明し, イレウス管による減圧後, 腹腔鏡補助下手術を行った。手術所見では肝-右横隔膜間に線維性索状物の形成を認め, 左側より回腸が右横隔膜下に嵌入しており, 小開腹下に回腸部分切除術を行った。小腸が嵌入・閉塞したChilaiditi症候群はまれであり, 本例がChilaiditi症候群に対し腹腔鏡補助下手術を行った初報告例である。正確な診断を得てなるべく侵襲の少ない治療を行うために, 術前検査を適切に組み合わせて確定診断に迫った上で, 鏡視下手術を行うことが重要と思われた。
  • 水谷 哲之, 小林 建仁, 小木曽 清二, 岡本 好史, 岩田 博英, 宇野 雄祐
    2005 年 25 巻 4 号 p. 653-656
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 術前診断し, 全身状態の改善後に一期的根治術 (イレウス解除術・胆嚢摘出・瘻孔閉鎖術) を施行した胆石イレウスの2例を経験したので報告する。症例1は79歳, 女性で嘔吐を主訴に来院した。上部消化管内視鏡にて十二指腸球部に胆嚢との瘻孔と結石を認め, 腹部CTでは小腸内石灰化像と小腸の著明な拡張および胆嚢内ガス像を認めた。症例2は69歳, 女性で腹痛を主訴に来院した。腹部CTにて小腸内の輪状石灰化像と著明な小腸拡張および胆嚢内ガス像を認めた。イレウス管造影では下部小腸に結石と思われる透亮像を認めた。以上より2例とも胆石イレウスと診断し, 脱水・腎機能などを是正しPOSSUM scoreを指標として全身状態を評価した。2例ともPOSSUM scoreが改善した後に一期的根治術を行った。
  • 深堀 優, 露 知光, 田中 芳明, 宗 博子, 田中 宏明, 浅桐 公男, 疋田 茂樹, 溝手 博義, 中村 秀裕, 赤岩 正夫
    2005 年 25 巻 4 号 p. 657-660
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は15生日女児, 在胎28週4日712gで出生。15生日に臨床症状および腹部X線から壊死性腸炎の診断で加療を開始したが症状増悪し, 18生日に開腹手術を施行した。回腸末端に約20cmの壊死腸管を認め, 回腸瘻造設術施行した。術後は順調に経過し, 生後7ヵ月時に腸瘻閉鎖術施行した。しかし術後イレウスを呈し, 術後17日目に開腹術施行した。下行結腸に結腸閉鎖を認め, ダイヤモンド吻合術を施行した。術後6日目に縫合不全による汎発性腹膜炎を併発し再度回腸瘻造設術を施行した。縫合不全6ヵ月後に腸瘻閉鎖術施行。術後2ヵ月で退院となり, 現在外来経過観察中である。壊死性腸炎発症後の結腸閉鎖の報告は非常に少なく文献的に検索し得る限り11例を数えるのみである。腸瘻閉鎖術前に肛門側腸管に腸管狭窄, 閉鎖部の存在する可能性を考慮し, 注意深い消化管精査を行うことが肝要である。
  • 加藤 拓見, 澤田 正志, 三田村 篤, 天本 明子, 鈴木 龍児, 北村 道彦
    2005 年 25 巻 4 号 p. 661-663
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胆嚢穿孔は胆嚢炎・胆石症に続発するものが大部分で, それらを伴わず, 明らかな原因や基礎疾患を認めない特発性胆嚢穿孔の本邦報告例は40例ほどとまれである。症例は80歳男性。2003年6月23日より右下腹部痛出現し, 翌日当科受診。右下腹部に圧痛と筋性防御を認めたため, 急性虫垂炎の診断で緊急手術となった。開腹すると虫垂には所見なく, 胆汁様腹水を認めた。胆嚢を観察すると, 胆嚢壁の3ヵ所に壊死を認め, 同部より胆汁がしみ出していたため, 胆嚢摘出を施行した。腹水の細菌培養は陰性であった。病理組織学的には胆嚢内には局所的な壊死 (打ち抜き様の病変) があり, その部分の壊死は漿膜面の変化が粘膜面より激しかった。炎症性細胞浸潤はみられず, 血管壁の壊死と血管外への赤血球浸潤を認め, 微小梗塞による虚血性・出血性変化と思われた。
  • 福本 和彦, 谷口 正美, 川口 正春
    2005 年 25 巻 4 号 p. 665-667
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性。竹林で転倒した際, 30cm程突き出た竹の切り株の上に殿部から着地し受傷した。下腹部痛出現したため近医受診, 当科紹介となった。来院時, 下腹部中心に圧痛および筋性防御, 反跳痛を認めた。肛門の5時方向の会陰部に裂創があり, 直腸指診上直腸壁を貫通し, さらに上部直腸に粘膜損傷を触知し, 腹部CT検査にて遊離ガスを認めた。理学的所見および受傷状況, 刺入経路より, 代創による直腸穿孔の診断にて受傷より5時間で緊急手術を施行した。開腹時に骨盤底に血腫があり, 腹膜翻転部の直腸に25×9mmnの穿孔を認めた。また腹腔内に竹の繊維が散在しており, 汚染状況により一期的吻合は困難と判断し大量の生食で洗浄した後, 穿孔部閉鎖および人工肛門造設術を施行した。近年, 直腸外傷に対し一期的手術の有用性が報告されているが, 状況によっては人工肛門造設術を行うことに躊躇すべきではないと思われた。
  • 瓜園 泰之, 上山 直人
    2005 年 25 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性で, 慢性腎不全にて10年来, 透析を受けている。透析後から腹痛が出現, 持続し, 腹部CTにて門脈内と上腸間膜静脈内, 腸間膜にガス像を認めていたが, 発症5時間後には消失していた。腹膜刺激症状は認めなかったが, 腹部全体に圧痛を認め, 腸管壊死の可能性を否定できず, 開腹術を施行した。開腹所見では, 中等量の血性腹水と, 小腸の浮腫, 非連続性の発赤を認めたが, 壊死はなく, 腸間膜内の血流も良好であった。血管造影検査で, 上腸間膜動脈の末梢分枝は非常に細くなっていたが血栓, 塞栓は認めず, 非閉塞性腸間膜虚血症と診断した。動注カテーテルを留置し, プロスタンディンの持続投与を行い, 血流の著明な改善を認めた。門脈ガス血症は予後不良の徴候とされているが, 自験例のように腸管の壊死を認めず, 早期に消失する門脈ガス血症もあるため, 開腹の適応は身体所見, 検査所見から慎重に進めていく必要があると思われた。
  • 松澤 岳晃, 岡本 春彦, 高久 秀哉, 清水 孝王, 桑原 明史, 中川 悟, 谷 達夫, 飯合 恒夫, 畠山 勝義, 福田 喜一
    2005 年 25 巻 4 号 p. 673-677
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    肛門周囲膿瘍にて発症した内攻型Fournier症候群の2例を報告した。症例1, 60歳男性。発熱, 肛門周囲痛にて発症。近医にて肛門周囲膿瘍の診断で切開・排膿術が施行された。CTにて腹直筋背側および左腸腰筋腹側から骨盤腔および坐骨直腸窩に連続する膿瘍を認め, 当科で再手術を施行した。骨盤腔, 後腹膜は経腹壁腹膜外アプローチにより, 会陰側は直接的にドレナージ, デブリードマンを行い, 横行結腸瘻を造設した。第52病日退院し, 17ヵ月後に人工肛門を閉鎖した。症例2, 79歳男性。下腹部痛と会陰部痛にて発症。近医にて肛門周囲膿瘍の診断で切開・排膿術が施行された。CTにて腹直筋背側から骨盤腔および坐骨直腸窩, 右磐部・大腿に及ぶ膿瘍を認め当科で再手術を施行した。骨盤腔, 後腹膜は経腹壁腹膜外アプローチにより, 会陰, 磐部, 大腿は直接的にドレナージ, デブリードマンを行った。第8病日に横行結腸瘻を造設, 第76病日転院した。
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