日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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26 巻, 7 号
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  • 和多 田晋, 松本 賢治, 小野 滋司, 服部 俊昭, 松原 健太郎, 尾原 秀明, 北島 政樹
    2006 年 26 巻 7 号 p. 821-824
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    〈目的〉腹部内臓動脈瘤は比較的まれな疾患であるが, 迅速で確実な治療法が求められる. 今回われわれは, 当該病変に対する治療方針を中心に検討した. 〈対象と方法〉最近10年間に経験された18例19瘤を対象とし, 発生部位や治療法, 成績について評価した. 発生部位は脾動脈8例, 上腸間膜動脈4例, 肝動脈2例, 膵十二指腸動脈2例, 胃十二指腸動脈1例, 腹腔動脈1例, 腹腔・上腸間膜動脈奇形1例であった. 治療法の内訳はコイル塞栓術11例, 開腹手術6例, 腹腔鏡下手術1例であった. 〈結果〉周術期の重篤な合併症や手術死亡は認められなかった. 経過観察期間は4ヵ月から8年9ヵ月であったが, 瘤の再発などは認めていない. 〈考察と結語〉治療法の選択は, より低侵襲な手技から選択されるべきであり, 血管内手術が主流となりつつある. しかし, 瘤の占拠部位や形状によっては, 外科的血行再建術も求められる. 一方, 瘤が嚢状で血流温存が可能な症例では, 腹腔鏡下手術も適応となる.
  • 笹屋 高大, 早川 直和, 山本 英夫, 澤崎 直規, 山本 竜義, 高良 大介, 梛野 正人, 二村 雄次
    2006 年 26 巻 7 号 p. 825-828
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    術後の癒着性イレウスは, 保存的な解除が望ましく, 当院では高気圧酸素療法 (HBO) を施行し良好な結果を得ている.1998年1月から2003年12月までにHBOを施行した術後癒着性イレウス92例について分析し, その有効性を検討した.男性65人, 女性27人で平均年齢は63.1歳であった.イレウスが解除されたらHBOを終了した.イレウス解除例は78例 (84.8%) で, HBOの平均施行回数は4.7回 (1~14回) であった.症例によっては胃管・イレウス管を併用しながらHBOを行い, 胃管・イレウス管併用は23例, 使用しなかったのは55例であった.また, HBO無効例は9例あり, 7例にイレウス解除術, 2例にイレウス管挿入が必要であった.耳痛のため1回でHBOを中止したのは5例であった.術後癒着性イレウスに対して, 副作用は32例にみられ, ほとんどが軽度の耳痛のみで重篤なものはなく, HBOは安全で有用な治療法であると考えられた.
  • 腹腔鏡下手術の適応を決定するために
    佐々木 淳一, 北野 光秀, 長島 敦, 土居 正和, 林 忍, 江川 智久, 栗原 智宏, 吉井 宏
    2006 年 26 巻 7 号 p. 831-834
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対する術式選択, とくに低侵襲手術である腹腔鏡下手術 (大網被覆術) の適応決定に対する術前施行の上部消化管内視鏡検査の有用性を検討することを目的として, 1992~2002年に穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対して腹腔鏡下手術を施行した症例を対象に, 当院の腹腔鏡下手術の適応 (血行動態安定, 臓器不全なし, 術前上部消化管内視鏡検査で十二指腸潰瘍狭窄なし) の治療成績 (開腹移行率, 術後合併症発生率, 転帰) をretrospectiveに検討した.その結果, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍疑い117例のうち, 即時に開腹術を施行した14例 (ショック3例, 臓器不全など11例) を除く103例に対して上部消化管内視鏡検査が施行された.その内視鏡所見で十二指腸潰瘍狭窄なしと判断された58例に腹腔鏡下手術が選択され, ほか45例 (十二指腸潰瘍狭窄あり, 胃潰瘍) に開腹術が選択された.腹腔鏡下手術が施行された58例の開腹移行率は3.4%, 平均手術時間は106分, 重症術後合併症発生率は7.1%, 術後死亡症例はなし, 平均在院日数は13.8日であった.以上より, 術前の上部消化管内視鏡検査を施行することにより, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対する腹腔鏡下手術の開腹移行率, 術後合併症発生率を低く抑えることが可能となり, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍の術式決定における術前上部消化管内視鏡検査の有用性が示唆された.
  • 須納瀬 豊, 小川 哲史, 安東 立正, 富澤 直樹, 田中 俊行, 坂元 一郎, 茂木 陽子, 小野里 康博, 大和田 進, 池谷 俊郎, ...
    2006 年 26 巻 7 号 p. 835-840
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    1995年~2005年の胃十二指腸潰瘍穿孔152例を検討した. 内視鏡で診断し, 経鼻胃管を挿入して制酸剤と抗生剤を投与した. 胃潰瘍穿孔47例で, 緊急手術13例, 保存治療の完遂28例, 手術移行6例, 保存治療の完遂率82% (28/34例) であった. 十二指腸潰瘍穿孔105例で, 緊急手術17例, 保存治療の完遂77例, 手術移行11例, 保存治療の完遂率88% (77/88例) であった. 65才以上の症例では, 緊急手術11例, 保存治療の完遂19例, 手術移行6例, 保存治療の完遂率76% (19/25例) であった. 手術移行した群は保存治療を完遂した群と比べ, 年齢が有意に高く, 経過時間, 腹水量, 穿孔径には差がなかった. 体温と白血球数は, 手術移行した群で徐々に悪化した.平均在院日数は手術移行した群が22. 8日で, 保存治療を完遂した群の11.2日より有意に延長した. 転帰は緊急手術の87%, 保存治療の97%が最終的に改善し, 安全に遂行し得た. 以上のように保存療法を始めとする治療成績はおおむね良好であり, われわれの行ってきた治療方針は妥当なものと考えている.
  • 岩崎 晃太, 福島 亮治, 稲葉 毅, 森田 直巳, 池田 佳史, 沖永 功太, 高田 忠敬
    2006 年 26 巻 7 号 p. 841-844
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当教室では1995年以前の経験をもとに, 十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療適応基準を, (1) 上部消化管内視鏡検査で穿孔部の確認, (2) 全身状態が安定している, (3) 重篤な併存症がない, (4) 腹膜刺激症状が限局している, (5) 画像上腹水の貯留が少量である, (6) 発症から来院までの時間が12時間以内である, と定め1996年以降の症例で保存的治療を選択している。今回, 1996年~2004年までの症例を対象に保存的治療適応の妥当性について検討した。対象は1996年~2004年の期間の十二指腸潰瘍穿孔74例とした。保存的治療を開始した症例は65例, そのうち58例 (89.2%) は保存的治療を完遂し, 手術に移行した症例は7例 (10.8%) であった。この結果より当教室で定めている保存的治療適応基準はおおむね妥当な基準であると考えられた。今後は, よりよい保存的適応基準への改訂と, 手術移行に関する的確な基準の作成が必要であると考えられた。
  • クリニカルパス導入による医療の質・医療経済の均一化を目指して
    石倉 宏恭, 中野 良太, 香村 安建, 大矢 浩史, 畑 啓昭, 片山 宏, 小木曽 聡, 小泉 欣也
    2006 年 26 巻 7 号 p. 845-850
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胃・十二指腸潰瘍穿孔症例に対する保存的治療はおおむね確立し, 医療の質の均一化および医療経済面におけるfutileの軽減が今後の課題である.これらの背景を踏まえ, われわれは15日間のクリニカルパス (CP) を作製し, 2000年10月から2006年6月までの5年9ヵ月間に34症例に対して運用し.この間, 5例にvarianceが発生し, CP完遂率は83.3% (29/34) であった.また, 33例 (97.1%) で穿孔部の自然閉鎖が得られ, 本CPは実践に耐え得る治療ツールであると思われたさらに, 2002年1月から開始した退院時患者アンケート調査 (集計数11例) では全例80%以上の満足度 (うち6例で100%) で, 再発時もCPによる保存的治療を希望した患者は9例 (81.8%) と患者満足度評価からも推奨される治療法であると思われた.以上, variance症例の再評価ならびに患者アンケート調査結果より, 本CPのEntry criteriaを以下のごとくに設定した.まず, 全身状態が安定している患者で, (1) 65歳以下, (2) 精神疾患 (一), (3) 腹腔内液体貯留が少量, (4) 癌疾患の既往 (一) の4項目を満たした患者.また, 入院期間を13日とするCPの改訂作業も開始した.以上, 本疾患に対するCPを用いた保存的治療は医療・経済面におけるquality controlに優れ, 加えて患者満足度評価からも推奨される治療法であると考えられた.
  • 永野 元章, 島山 俊夫, 佛坂 正幸, 近藤 千博, 千々岩 一男
    2006 年 26 巻 7 号 p. 851-854
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療は安全性, 有用性の面からも確立されつつある治療である.保存的治療が可能か診断し安全に遂行するうえで, 適応基準の確立が求められている.当科では1989年より保存的治療を導入し, 現在その適応基準を全身状態良好である, US, CTで腹水が少量で限局している, ガストログラフィンを用いた上部消化管造影検査で造影剤の漏出がないか, あっても穿孔部からの漏出距離が2cm以下のものとしている.初診時の上部消化管造影検査は穿孔部の被覆状況を把握するうえで非常に有用で, 適応基準における保存的治療の完遂率を96%と向上させ, 腹腔内膿瘍の合併も減少させる.当科の基準では十二指腸潰瘍穿孔症例の半数で保存的治療が可能であった.厳重な経過観察のもと安全に行われれば, 十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療はほぼ確立した治療法として推奨される.
  • 福田 直人, 和田 浄史, 高橋 茂雄, 仁木 径雄, 三浦 康誠
    2006 年 26 巻 7 号 p. 855-858
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    過去13年間に上部消化管穿孔で腹腔鏡手術を施行した胃穿孔17例と十二指腸潰瘍穿孔36例に関して臨床的検討を加えた。胃穿孔の病因は潰瘍14例, 胃癌2例, 悪性リンパ腫1例であった。12例 (70.6%) に腹腔鏡下大網被覆術が可能で平均手術時間78分, 平均入院日数16日であった。5例が開腹術に移行し, 広範胃切が1例に開腹大網被覆が4例に施行された。一方, 十二指腸潰瘍穿孔では36例中32例 (88.9%) に腹腔鏡下大網被覆術が行われ, 平均手術時間61分, 平均入院日数14.8日という成績であった。とくに十二指腸潰瘍穿孔例では, 穿孔性腹膜炎を確実に治せるという点およびminimally invasive surgeryという点で腹腔鏡下手術は効果的と考えられた。ただし保存療法も適応を限定すれぼ有効なので, 症例に応じて治療手段を選択することが重要であると思われた。
  • 上村 眞一郎
    2006 年 26 巻 7 号 p. 859-862
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    早期胃癌穿孔はまれな疾患である。今回われわれは, 早期胃癌穿孔を経験したので報告する。症例は63歳, 男性。2005年12月中旬から左季肋部痛が出現し, 鎮痛剤を内服していた。数日後, 痺痛が増強したため, 当院の夜間救急外来を受診した。上部消化管穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。胃角部前壁に5mm大の穿孔を認め, その内腔は腫瘤様に隆起していた。胃癌穿孔が否定できなかったため, D1+No.7, 8aリンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した。病理組織学的所見は, III+IIc型, 深達度sm2の早期胃癌の穿孔で, No-3, 4d, 5, 6, 7, 8aリンパ節に転移を認めた。S-1の内服とCDDPの点滴による補助療法を現在施行中である。
  • 佃 和憲, 平井 隆二, 村岡 孝幸, 高木 章司, 池田 英二, 辻 尚志
    2006 年 26 巻 7 号 p. 863-865
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    例は33歳, 男性。作業場でふざけていてエアコンプレッサーを作業着の上から肛門部に押し当てた状態で, 空気を噴射され受傷した。激しい腹痛と腹部膨満のため当院に搬送された。胸腹部単純X線検査にて腹腔内に大量の遊離ガス像を認めたため, 腸管穿孔と診断し緊急手術を施行した。S状結腸から直腸にかけて25cmにわたり腸間膜対側の結腸紐の裂創が存在した。損傷範囲の大腸部分切除および人工肛門造設術を行った。切除腸管の粘膜面には縦方向の裂創が全周性に10本以上存在していた。術後経過は良好であった。圧搾空気による腸管破裂は特異な病態を示し, 漿膜面からの観察からでは粘膜面の損傷を完全には推測できず, 手術方法に注意を要すると思われた。
  • 坂本 好昭, 岸川 浩, 長村 愛作, 西田 次郎, 貝田 将郷, 井口 清香, 荒川 幸喜, 川島 淳子, 高橋 慎一, 森下 鉄夫
    2006 年 26 巻 7 号 p. 867-871
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 女性。2005年6月に下腹部に激痛を認めたため入院となった。感染性腸炎と診断し1週間の禁食補液での保存的な加療にて退院した。退院後より四肢に紫斑が出現し, その後嘔気と頻回の下痢・血便および腹痛を認めるようになり精査加療目的にて再入院となった。腹部CTでは小腸および結腸全域に腸管の浮腫性変化を認めた。下部消化管内視鏡では直腸からS状結腸にかけてアフタが散在していた。また経過中に尿蛋白を認めたため腎生検を施行したところ, 紫斑病性腎炎に矛盾しない所見であった。以上より成人発症のSchoenlein-Henoch紫斑病と診断しプレドニゾロン30mg/日を開始したところ, 症状は軽快した。小児科領域では急性腹症の鑑別疾患として本症はあげられているが, 成人例において腹部症状を主訴とした報告例はまれである。成人において急性腹症の鑑別の際にまれではあるが本疾患の可能性も考慮する必要があり, 示唆に富む症例と考えた。
  • 山口 哲司, 福田 啓之, 大西 康晴, 山岸 文範, 廣川 慎一郎, 塚田 一博
    2006 年 26 巻 7 号 p. 873-876
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は9歳の男児。上腹部痛を主訴に近医を受診した。保存的に経過観察されたが嘔吐が出現し, 腹痛も増悪したため精査・加療目的に当科紹介入院となった。腹部US, CTにて, 胆嚢の腫脹・壁肥厚・頸部の腫瘤像を認め, カラードップラーにて胆嚢壁内の血流を認めなかった。また磁気共鳴式胆道膵管造影 (MRCP) にて胆嚢の内側偏位, 胆嚢管の不鮮明化を認めた。以上より胆嚢捻転症と診断し, 開腹術を施行した。手術所見では胆嚢は頸部を軸に反時計回りに540度回転しており, 壊死に陥っていた。胆嚢摘出術を施行し, 合併症なく術後7日目に退院した。小児期に発症する胆嚢捻転症はまれな疾患である。本邦では10歳以下の小児では29例の報告があるのみであり, 術前診断も困難な疾患と考えられている。本症例では術前診断が可能であり, とくにMRCP・カラードップラーエコーが有用であった。
  • 久保 直樹, 安里 進
    2006 年 26 巻 7 号 p. 877-879
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性。4年前に胃切除を受けた。腹痛を主訴に当院を受診, 腹部膨隆と腹部全体に強い圧痛を認め, 筋性防御や腹膜刺激症状も認めた。白血球とCPKの上昇を認め腹部所見とあわせ紋扼性イレウスを疑い緊急手術を施行した。腸管の絞扼は認めず, 回盲部より約100cm口側の小腸が糸コンニャクで閉塞しておりこれがイレウスの原因と考えられた。食餌性イレウスのなかには臨床所見から紋扼性イレウスとの鑑別が困難な症例があり術前に食事歴の詳細な問診が重要であると考えられた。
  • 田中 拡, 寺澤 孝幸, 水野 豊, 坂本 康寛
    2006 年 26 巻 7 号 p. 881-884
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は87歳女性。突然発症した腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した。右側腹部に圧痛を認め, 弾性硬の径5cnnの腫瘤を触知した。術前CTにおいて回盲部の高さで壁が浮腫状に全周性に肥厚し腸管があり, 上行結腸を内側に圧排していた。盲腸付近の内ヘルニアによるイレウスと診断し, 緊急手術を施行した。盲腸窩に回盲弁から160m口側の約10cmの小腸が嵌頓していた。ヘルニア門を開放し小腸を還納した。盲腸窩ヘルニアは比較的まれな疾患で術前診断は困難とされているが, 本症例はCTが術前診断に有用であった。
  • 正木 裕児, 上野 隆, 濱田 博隆
    2006 年 26 巻 7 号 p. 885-887
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    敗血症性ショックで顕性化した腸間膜原発GISTの1例を経験した。症例は60歳代女性で, 高熱, 腹痛, ショック状態で当院入院, 精査の後に小腸・腸間膜GISTの診断で手術を施行した。腫瘍は上部空腸間膜原発で, 20センチ大の膨張性壁外性発育であったが, 腫瘍に固着する小腸に打ち抜き様穿孔があった。このため腫瘍内部と腸管内腔が交通し, 消化管出血と敗血症を引き起こしたものと考えられた。術後経過は良好であった。GISTの発育形態からみて興味ある経過であったため若干の考察を加えて報告する。
  • 山田 卓也, 關野 考史, 松尾 浩, 井原 頒, 木村 真樹, 木山 茂, 竹村 博文
    2006 年 26 巻 7 号 p. 889-892
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性。腹部膨満のため近医を受診し, 後腹膜腫瘍の診断で腫瘍摘出術をうけた。その際11Lの術中大量出血から止血困難となり, 骨盤底へのガーゼ圧迫, 腫瘍非切除の状態で閉腹後, 当院へ搬送された。手術侵襲からの回復を待って2度目の手術を行う予定としたが第5病日に腫瘍とガーゼ圧迫による腸骨静脈血栓と肺塞栓を認め, 肺動脈内血栓吸引・下大静脈フィルター留置後, 第12病日に再度腫瘍摘出術を行った。術中大量出血に対する対策として, 緊急心肺補助装置用に左鎖骨下動脈へ人工血管を縫着した。開腹後, 前回手術時に挿入されたガーゼと腫瘍を, 可及的速やかに摘出した。術中出血量4, 367ml, 赤血球濃厚液8単位輸血で手術を終了し, 結果的にPCPSは使用しなかった。摘出した腫瘍は19×12×8cm, 1, 099g, 免疫組織染色の結果solitary fibrous tumorと診断した。術後経過良好で退院し, 12ヵ月目の現在無再発生存中である。
  • 中原 龍一, 犬飼 道雄, 内藤 稔, 村上 正和, 伊野 英男, 宗淳 一, 梶谷 伸顕, 氏家 良人
    2006 年 26 巻 7 号 p. 893-896
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    ベロ毒素を産生するO157感染性腸炎は極めて重篤な転帰をとることがある。われわれは頻回の下痢や血便がなく, 腹部超音波検査でtarget sign様の像をきたしていたため, 診断に苦慮したO157感染性腸炎の1例を経験した。症例は20歳男性。腹痛と軟便を主訴に来院した。FOMと整腸剤を処方されたが症状が改善しないため翌日に再来院した。右下腹部に腫瘤を触知し同部位に限局性の筋性防御があり, 腹部超音波検査でtarget sign様の像があり, 腹部CT検査で上行結腸の腸管壁が著明に肥厚していた。便検査からO157表面抗原陽性, 便培養でベロ毒素 (VT1, VT2) 産生大腸菌を検出したため, O157感染性腸炎と診断した。頻回の下痢や血便などの激しい消化器症状がない場合でも, 画像検査で限局性の著明な腸管壁の肥厚像があった場合には, O157感染性腸炎を考慮した検査や治療を行う必要がある。
  • 川崎 誠一, 内野 隼材, 小笠原 敬三
    2006 年 26 巻 7 号 p. 897-900
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性。2005年3月下旬に上腹部痛が出現し, 近医を受診し, 経過観察目的に入院となった。翌日腹痛が増強したため, バリウムによる上部消化管造影を施行されたところ, 穿孔性腹膜炎と診断され, 当科紹介となった。来院時腹部全体に筋性防御を認め, 腹部単純X線写真・腹部CT検査にて腹腔内にびまん性に高濃度領域を認めた。上部消化管穿孔に伴うバリウム腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した。バリウムが広範囲にわたり腹膜に付着しており, 幽門洞前壁に穿孔を認めた。可及的にバリウムを除去し腹腔内を洗浄した後, 大網充填被覆術を施行した。術後高度の炎症反応と高熱が遷延したが, 術後42日目全身状態が軽快し, 転院となった。バリウム腹膜炎は比較的まれな疾患であるが, 術中の処理に困難な面が多く, 一般の穿孔性腹膜炎に比べ強い炎症を惹起し, より重篤な経過をたどることもあるため, 消化管透視の際には注意が必要である。
  • 上西 崇弘, 瀬尾 浩之, 高台 真太郎, 市川 剛, 田中 肖吾, 竹村 茂一, 田中 宏, 山本 隆嗣, 久保 正二
    2006 年 26 巻 7 号 p. 901-904
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性。右腰痛の精査時, 肝門部浸潤を伴う肝内胆管癌を発見され, 拡大肝左葉切除術が施行された。門脈左右分岐部に癌浸潤がみられたため, 右門脈および門脈本幹で切離後, 端端吻合により再建した。術14日後に突然の腹部違和感が出現し, 血液検査でAST, ALTの著明な上昇が認められた。腹部超音波ドプラ検査および造影CT検査において肝内門脈血流は著明に減少しており, 回結腸静脈を介した門脈造影検査上, 門脈本幹は途絶し, 肝内門脈は側副血行路によりわずかに造影されるのみであった。ウロキナーゼ24万単位を用いて血栓溶解療法を試みるも門脈本幹は開通しなかったが, 側副血行路による肝内門脈血流は改善された。このため開腹下に血栓除去術を行った。この結果, 門脈本幹の血流の明らかな改善はみられなかったものの, 術後の肝内門脈血流は良好であった。術中に留置した門脈カテーテルからヘパリン持続注入を術直後から行い, 術10日後からはワルファリン経口投与を開始した。術後肝不全に陥ったが, 術後98日目に軽快退院した。術後1年が経過した現在, 生活は自立しており, 癌の再発も認められていない。
  • 岡村 行泰
    2006 年 26 巻 7 号 p. 905-909
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性。2005年4月下旬, 腹部膨満感と痛みを主訴に来院し, 腸閉塞と診断され入院した。2年前に胃癌で胃全摘術の既往がある。腸閉塞は絶食により改善し, 第5病日から経口摂取を開始した。その直後より発熱を認め, 抗菌薬治療を行ったが, 改善なく, 第8病日にショック状態となった。同時期になり上腹部痛を訴え, CTで胆嚢の緊満を認めたため, 胆嚢炎の診断で経皮経肝胆嚢ドレナージ術 (percutaneou stranshepatic gallbladder drainage以下, PTGBD) を施行した。エンドトキシン吸着血。液浄化法, 持続的血液濾過透析を併用し, 治療を行った。PTGBD造影では胆嚢結石, 総胆管結石は認めず, 7月頃より全身状態は改善し, 経口摂取を開始した。PTGBDを抜去した後, 8月中旬, 退院となった。急性無石性胆嚢炎の発症頻度は少ないが, 発症すると急激に重症化しやすい。胃癌術後の腸閉塞例では本症に留意する必要があると思われた。
  • 徳毛 誠樹, 小林 成行, 高橋 三奈, 脇 直久, 伊野 英男, 村上 正和, 内藤 稔
    2006 年 26 巻 7 号 p. 911-915
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    患者は72歳の女性で慢性関節リウマチの既往があった。食欲低下, 下腹部痛, 発熱を認め, 定期外来受診時の緊急腹部CTで回盲部腫瘤を認め当科に紹介された。右下腹部に弾性硬の手拳大腫瘤が触知され同部周囲に圧痛と反跳痛とを認めた。血液検査で高度の炎症所見を認め, CTで右下腹部に長径約8cm大で一部が右腸腰筋と連続する腫瘤を認めた。急性虫垂炎による回盲部膿瘍を疑ったが, 慢性関節リウマチの治療中であり拡大手術になった場合の危険性が高いと判断しinterval appendectornyを計画した。抗生剤投与で腫瘤は劇的に縮小し腹部所見, 画像所見も著明に改善した。再燃予防と確定診断目的で加療開始後30日目に手術を施行した。傍腹直筋切開で開腹したところ虫垂は腸間膜および後腹膜に癒着していたが剥離可能であり, 腫瘍や遺残膿瘍は認めず虫垂炎と判断し虫垂切除術のみを施行した。術後は合併症なく経過し術後9日目に退院となった。
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