日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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26 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 合併症回避のためのendoscopic IVR surgery
    近森 文夫, 国吉 宣俊, 鍵山 惣一, 国吉 和重, 河島 孝彦, 高瀬 靖広
    2006 年 26 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    われわれは腹部救急疾患に対しても積極的に腹腔鏡下手術を適用してきたが, 安全性を確保でき, 合併症を回避できる手技工夫, とくに急性胆道炎に対するendoscopic IVR surgeryとして有症状胆嚢胆管結石に対する経皮的乳頭バルーン拡張術 (PPBD) 併用腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) および急性胆嚢炎に対する経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD) 先行LCにっき報告する. PPBD併用LC前期17例はPPBDによる除石2~7日後にLCを施行, 後期45例は全身麻酔下に筋弛緩剤投与後にLCと同時に一期的にPPBDを施行. PTGBD後LCは56例に, PTGBD後1~7日目に全身および局所状態改善後に施行した. PPBD併用LCは61例で胆管結石の除石が可能であった. 手術時間は84±22分, 術後入院期間は11±3日であった. PTGBD先行LCの術中胆管造影成功率は98%, 開腹移行率は5%, 手術時間は92±27分, 術後入院期間は9±3日であった. 急性胆道炎はendoscopic IVR surgeryなるコンセプトにより合理的で安全に治療可能となる.
  • 青葉 太郎, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 広松 孝
    2006 年 26 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    虫垂炎に対する腹腔鏡下手術は最近多くの施設で採用されてきており, 良好な成績が報告されているが穿孔性膿瘍形成性虫垂炎に対しての適応に関しては, まだ一定の評価はなされていない. 腹腔鏡下虫垂切除術は開腹手術に比し, 創汚染が少なく視野も良好であり腹腔内の洗浄も十分行えるという利点を有している. このような点からわれわれは穿孔性膿瘍形成性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術を第一選択としてきたので, その成績を腹腔鏡下手術導入以前の開腹虫垂切除術と比較検討した. 検討項目は手術時間, 鎮痛剤使用回数, 経口摂取開始日, 離床日, 術後在院日数, 合併症, 総診療点数であった. 結果は鎮痛剤使用回数, 経口摂取開始日, 離床日, 術後在院日数, 総診療点数は腹腔鏡群で有意に有利な結果であった. 術後創感染も腹腔鏡群で有意に少なく腹腔鏡手術は穿孔性膿瘍形成性虫垂炎に第一選択としてよいと考えられた.
  • 菅 和男, 千葉 憲哉, 古川 正人, 南 恵樹, 猪熊 孝実, 草野 義輝, 西原 実
    2006 年 26 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当院では, 腹腔鏡下虫垂切除を1996年に開始し, 現在まで195例の症例に対して腹腔鏡下虫垂切除を施行した. 今回, われわれは, 従来法では, 術後疼痛が大きくなり, 手術瘢痕も大きくなると思われる穿孔性虫垂炎における腹腔鏡下手術の優位性を検討するために, 1996年以後に施行した腹腔鏡下手術症例18例と開腹手術症例17例を, 手術時間, 経口開始日, 術後SIRSの持続期間, 術後合併症, 術後在院日数, 保険請求点数などに関して比較した. 腹腔鏡下手術群において創感染率は0%であったのに対し開腹手術群では, 29.4%と有意差をもって腹腔鏡下手術群が低率であり, また術後入院期間では, 腹腔鏡下手術群が15. 3日であったのに対し開腹手術群では24.8日と有意差をもって術後入院期間は短期であった. 入院に関するコストも大差なく, 穿孔性虫垂炎に関する腹腔鏡下手術は有用な手技と考えられる.
  • 木下 水信, 加藤 彩, 片岡 政人, 近藤 建
    2006 年 26 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 腹部救急疾患に対して腹腔鏡を用いた手術が, 低侵襲で有用性が高いことが報告されている. 腸管癒着に対しても低侵襲であるため適応が拡大され, その有用性が広く認識されるようになった. その反面, 既往手術や癒着の程度の多彩さにより, 定型的な手術手技が確立されておらず, 開腹移行の多さや再発が指摘されている. 施行するにあたっては適応や限界をよく理解し, 十分な術前評価のもと治療方針を立てることが肝要である.
  • 池田 英二, 古谷 四郎, 辻 尚志, 平井 隆二, 高木 章司, 佃 和憲, 村岡 孝幸, 鶴見 哲也
    2006 年 26 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    急性腹症に対する腹腔鏡補助下大腸手術 (以下, LAC) の有用性について検討した. 対象は過去6年7ヵ月間のLAC241例中, 急性腹症に適応を拡げた2002年4月からの23例でイレウス20例, 腹膜炎3例である. 急性腹症でのLACの適応は術前減圧で操作腔が確保できるイレウス例と限局性腹膜炎例とした. 同時期開腹急性腹症51例と比較したところ, 開腹例で有意に腹膜炎例やS状結腸以深例の占める割合が多かった. 術式では開腹例で有意に人工肛門造設例が多く, 術中出血量は開腹例が有意に多かった. 緊急LAC例の開腹移行率は待期LAC例と有意差はなく, 術後合併症発生は開腹での19例が有意に多く, 緊急LAC例では軽度創感染1例のみであり, 待期的LAC例と発生率に有意差はなかった. LAC例での癌に対する根治術施行10例の平均観察期間は22ヵ月で全例無再発生存中である. LACは急性腹症においても有効と思われた.
  • 井上 透, 前田 清, 八代 正和, 西原 承浩, 西口 幸雄, 平川 弘聖
    2006 年 26 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡下手術は低侵襲であるが, 時間が長くかかり手技の難度も高い. われわれはこれまで腹腔鏡補助下小開腹手術の利便性を報告してきたが, 緊急手術症例の成績について報告する. 2001年より2005年までに当科で施行した潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡補助下小開腹手術36例のうち, 緊急手術例は10例であった. 術式は結腸全摘術, 回腸人工肛門造設術とした. 手術は下腹部においた小開腹創からの手術操作を主体とし脾彎曲, 肝彎曲の授動および横行結腸間膜の処理のみを腹腔鏡下にハンドアシスト法にて施行した. 脆弱な腸管の牽引には鉗子を用いず, 術者の手を用いるので安全であった. 手術時間は平均3時間25分であり, 開腹手術移行例は1例のみで, 術後の回復も良好であった. 本術式は腹腔鏡手術における低侵襲性を生かしつつ, 安全性を高めた術式であり, 緊急手術例のうち比較的全身状態の安定した症例に対しては良い適応であると考えられた.
  • 飯田 辰美, 棚橋 俊介, 水谷 憲威, 宮田 知幸, 宮原 利行, 梅田 幸生, 水谷 知央, 岡田 正直, 村瀬 勝俊, 澤田 傑, 安 ...
    2006 年 26 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胃切除術が適応となる重症潰瘍穿孔例に対し, 術者による偏りのない, 短時間で安全確実な吻合を行い, 低侵襲手術として, 器械を多用したBillroth I法を行った. 胃癌 (以下Gastric Cancer, GC) 穿孔1例, 胃潰瘍 (以下Gastric Ulcer, GU) 穿孔6例, 十二指腸潰瘍 (以下Duodenal Ulcer, DU) 穿孔4例の計11例である. 十二指腸球部でタバコ縫合器を用いて十二指腸を離断し, アンビルを装着する. 切除胃側から吻合器を挿入, 軸を吻合部 (胃体下部後壁) に貫通させ, アンビルと結合させ吻合が完成する. 自動縫合器で胃切除と断端閉鎖を行う. アンビル装着, 吻合, 胃切除・断端縫合を10分以内で遂行できた. 手術時間は平均104分で, 潰瘍例は全例軽快退院し, 潰瘍再発は認められない. 本術式は器械を多用して, 術式を安全に合理化し, 錬度に影響されない短時間で確実な切除・再建術式となり, 高リスク症例に適する低侵襲手術と考えられた.
  • 山本 紀彦, 本多 正彦, 西原 政好, 岡田 善裕, 辻 慶久, 島田 守, 李 喬遠, 岡 博史
    2006 年 26 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の原因はさまざまなものがあげられるが, 今回われわれはテストステロンが誘因と考えられた薬剤性重症急性膵炎の1例を経験したので報告する. 症例は32歳, 女性. 性同一性障害にて他院で両側乳房切除後, 週1回, テストステロン投与をされていた. 2004年5月上旬に腹部膨満感が出現し, その後急激に腹痛, 腰背部痛, 嘔吐出現したため当院に救急搬送された. 腹部所見およびCT所見より急性膵炎と診断, 緊急入院となった. 絶食としNafamostat mesilate 200mg/dayとMeropenem trihydrate 1g/dayの持続動注療法を開始した. その後, 腹腔内膿瘍を合併したため経皮的膿瘍ドレナージを行ったが症状は改善せず、開腹して壊死切除と膿瘍ドレナージ術を行った. 術後は持続的に腹腔内洗浄を行い, 症状が改善し退院した. 退院して約6ヵ月後にテストステロン再投与により急性膵炎を再発して再入院となった. テストステロン再投与によって再発したため, 薬剤性膵炎の成因としてテストステロンは確実なものと考えられた.
  • 松本 浩次, 太田 秀二郎, 鳴海 賢二
    2006 年 26 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 74歳, 女性. 72歳時より慢性関節リウマチと診断され2004年2月よりプレドニゾロン10mgの内服加療を受けていた. 2004年5月中旬突然腹痛出現し, 同日当院緊急入院となる. 入院後, 腹部CT検査にてfree airおよび腹水貯留認め, 触診にて下腹部中心に板状硬を呈し, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断, 翌日緊急手術となる. 開腹時, 混濁した腹水貯留とともにileumendより約10cm口側回腸に計2ヵ所穿孔部を認めたため, 回盲部切除術を施行. 摘出標本では, 回腸末端部を中心に穿孔を伴った, 深掘れ潰瘍を多数認めた. 病理組織検査所見にて腸管には特異的炎症所見や血管炎, 血管閉塞像, アミロイド沈着を認めなかった. 今回, まれな慢性関節リウマチに併発した回腸潰瘍穿孔の1切除例を救命し得たので, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 森岡 伸浩, 宮下 薫, 藍澤 喜久雄, 清永 英利
    2006 年 26 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部外傷中, 十二指腸損傷の頻度は比較的まれであるが, 早期診断できなかった場合, 胆汁, 膵液の影響で術後に縫合不全などの重篤な合併症を引き起こしやすいという点で, 重要な疾患である. 今回われわれは腹部外傷受傷直後のCTでは十二指腸損傷を疑わせる所見を認めなかったが他臓器損傷のため開腹した際, 十二指腸周囲の後腹膜に軽度血腫を認めたため十二指腸を授動したところ, 十二指腸forth portionに穿孔を発見した症例を経験したので, 報告する.
  • 杉村 啓二郎, 仁田 豊生, 水谷 知央, 近藤 哲矢, 山本 淳史, 尾関 豊, 関戸 康友
    2006 年 26 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    まれな回腸子宮内膜症による腸閉塞症例を経験したので報告する. 症例は41歳, 女性. 主訴は腹痛, 嘔吐. 32歳時に左卵巣子宮内膜症に対し, 左付属器摘出術を受けていた. 2004年2月中旬右下腹部痛, 嘔吐が出現し, 近医を受診し腸閉塞の診断で当科に紹介となった. 入院時, 右下腹部に腹膜刺激症状を認めた. 血液検査では, WBC 17, 200/mm3, CRP 14.1mg/dlであった. 腹部単純X線では拡張した小腸ガス像を認めた. 腹部CTでは, 拡張した小腸像および少量の腹水を認めた. 以上から腸閉塞の診断で, 手術を施行した. 開腹すると, 回腸末端から10cmと20cm口側の2ヵ所の回腸が子宮後面に癒着し, その問でループを形成していた. 癒着を剥離したが, その2ヵ所の癒着部で狭窄をきたしていたため, 狭窄部をあわせて切除した. 病理組織学的には, 狭窄部漿膜から筋層にかけて子宮内膜組織を認めた. 腸管子宮内膜症のなかでも, 回腸子宮内膜症はまれであり報告した.
  • 和久 利彦
    2006 年 26 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胃癌の穿孔は比較的まれな病態である. 1991年から2003年までの過去13年間の当科における胃癌の穿孔例は4例で, 上部消化管穿孔51例中7.8%, さらに胃穿孔13例中30.8%を占め高率であり, 胃穿孔の際には胃癌を念頭に置く必要があると考えられた. 4例中3例は高齢者であった. 癌占拠部位はL3例, M1例で穿孔部位は癌占拠部位と一致し全例前壁であった. 全例に胃切除術を施行した. 肉眼型は0型 (III+IIc) が1例, 2型が1例, 3型が2例, 組織型は印環細胞癌が1例, 粘液癌が2例, 中分化型管状腺癌が1例であった. 術前診断は予定手術の待機中の2例, 術中診断は1例, 術後診断は早期胃癌穿孔の症例であった. 高齢であっても全身状態が許せば一期的な治癒切除を目指すことを原則とし, 全身状態の面からそれができない場合や術後はじめて胃癌の診断がなされた場合に限り手術を二期に分割すべきであると考えられる.
  • 剣持 邦彦, 宗 宏伸, 濱田 茂, 下河邉 智久, 佐々木 英, 中村 克己
    2006 年 26 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は90歳の女性で, 下血・上腹部痛を主訴に受診した. 初診時左上腹部に限局性の腹膜刺激症状を認めた. 発熱は認めず, 血液生化学所見でも異常は軽微であったが, 腹部CT検査にて横行結腸左半部の腸管壁肥厚および腹水を認め, 虚血と腹膜炎所見を呈していることから大腸壊死と診断し緊急手術を施行した. 腸間膜動脈の拍動は良好であったが, 横行結腸が約20Cmにわたり硬化, 萎縮していた. 漿液性腹水貯留も認め非可逆性の虚血性変化と判断しHartmann手術を施行した. 病理学的には粘膜壊死に加えて筋層の虚血性変化が認められたが, 腸間膜動脈に血栓は認めず, 壊死型虚血性大腸炎の進行過程の像と考えられた. 術後経過はほぼ順調で術後40日目に軽快し転院した. 高齢で心不全を合併した症例であったが, 理学所見とCT所見を併せて迅速に手術適応と判断したことが救命につながったものと考える.
  • 黒木 秀仁, 仁瓶 善郎, 三木 陽二, 代田 喜典, 西 直人, 宮永 忠彦
    2006 年 26 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性. 左鼠径部の膿瘍に気付き, 近医を受診した. 抗生剤にて治療を行っていたが, 経過中に膿瘍が自潰し排膿が認められるも炎症の消退傾向がなく当院を紹介された. 当院受診時左鼠径部は径約5cmの範囲で発赤, 膨隆し, その中央は皮膚が欠損し同部より膿性の排液を認めた. 皮膚欠損部よりネラトンカテーテルを挿入し造影を行うと, 造影剤は回腸末端より約50cm口側の小腸に流入し皮膚との痩孔が確認できた. CT所見と合わせ, 大腿ヘルニアの嵌頓による小腸穿孔が皮下に膿瘍を形成したものと考え, 開腹手術を施行した. 小腸壁が約4分の1周にわたり大腿輪に嵌頓し壊死しており, その頂部が穿孔していた. 小腸部分切除, 大腿輪閉鎖を行った. 術後は順調に経過し退院した. 鼠径部の難治性皮下膿瘍の診察に際しては, Richter型大腿ヘルニアも考慮に入れておくべき病態の一つと考えられる.
  • 齊藤 卓也, 井川 理, 泉 浩, 下村 克己, 大垣 雅晴, 飯塚 亮二, 下間 正隆, 竹中 温
    2006 年 26 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアのなかでもまれな横行結腸間膜裂孔ヘルニアの2例を経験したので報告する. 症例1は79歳女性. 手術歴は30歳時虫垂切除術. 大腿骨骨折で他院入院中, イレウスと診断された. 腹部症状の軽快と増悪を繰り返すため, 当科紹介入院となった. 癒着性イレウスの疑いで手術を施行した. 横行結腸間膜・大網裂孔を通り, 小腸の約2/3が陥入していた. 症例2は77歳男性. 手術歴なし. 腹満感, 嘔気の軽快と増悪を繰り返していたが, 症状強くなり当科紹介入院となった. 原因不明のイレウスにて手術を施行した. 横行結腸間膜後葉に回盲部より約40cm口側の回腸が約3cm陥入していた. 2症例とも, 小腸を環納し, ヘルニア門を閉鎖した. 術後経過は良好であった. 高齢者で原因不明のイレウスや腹部不定愁訴の既往を持ち, 軽快と増悪を繰り返す場合, 横行結腸間膜内ヘルニアを含めた内ヘルニアを念頭に置いて画像診断, 手術適応の決定が必要であると考えられた.
  • 荒井 武和, 味村 俊樹, 安達 実樹, 大見 琢磨, 山田 英樹, 白 京訓, 野澤 慶次郎, 松田 圭二, 小平 進, 沖永 功太
    2006 年 26 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 男性. 2003年8月に腹痛, 下痢を訴え, 12日後に下血と発熱が出現した. その3日後にイレウスの診断で近医に入院したが軽快せず, 発症19日後に当科に転院した. 入院時, 肛門から膿と壊死組織の混入した腸液が多量に流出し, 内視鏡検査で直腸・S状結腸の粘膜壊死が認められた. 腸管壊死による腹膜炎を疑い, 緊急手術を施行した. 腹腔には悪臭を伴う混濁した腹水を認め, S状結腸, 直腸, 盲腸が壊死に陥っていた. 壊死腸管を切除し, 回腸・上行結腸双孔式ストーマ, 下行結腸ストーマを造設した. 赤痢アメーバによる大腸炎を疑い, 手術当日より胃管からメトロニダゾールを投与した. 切除標本の病理検査で赤痢アメーバが確認された. 術後, HIV抗体陽性であることが判明した. 術後一時は回復傾向にあったが, 播種性血管内凝固症候群 (以下, DIC), 肝不全, 腎不全を併発し, 第51病日に死亡した. 近年, アメーバ性大腸炎, AIDSともに増加傾向にあり, これらを念頭に置いた早期の診断・治療が劇症化の阻止と救命に肝要と考えられた.
  • 中村 陽一, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 中村 寧, 片桐 美和, 渡邉 学, 草地 信也, 炭山 嘉伸
    2006 年 26 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2006/01/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胃癌穿孔は緊急手術を必要とし, 腹膜炎に対する救命と癌に対する根治的治療が求められる場合もある. 切除不能胃癌と診断し, S-1による経口化学療法施行中に胃癌穿孔を認め, 保存的治療を行ったところ穿孔部が自然閉鎖した症例を経験した. 症例は74歳, 男性. 切除不能胃癌と診断しS-1による化学療法中に腹痛で緊急入院した. 腹部レントゲンにて胃拡張を認め, 胃管を挿入し減圧を行った. 幽門狭窄を生じているものと考え, 水溶性造影剤による造影検査を行ったところ穿孔が証明された. 上腹部の自発痛を認めるが, 腹膜刺激症状は伴わず, 穿孔に対しては保存的加療を選択した. 胃管, 抗潰瘍剤, 抗菌薬, 抗真菌剤投与を行い, 3週間後に穿孔部は閉鎖した.
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