日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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26 巻, 5 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 術前口側腸管スクリーニング法としての臨床的意義
    手塚 徹, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 山崎 将人, 小杉 千弘, 杉本 真樹, 山本 史歩, 済陽 義久, 大瀧 怜子, 竹上 智浩, 仲 ...
    2006 年 26 巻 5 号 p. 599-602
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡が挿入不可能な大腸癌イレウスにおける口側腸管の術前スクリーニング法として, 経肛門的イレウス管から大腸癌の口側腸管に炭酸ガスを誘導したのちMDCTを行い, あたかも大腸内視鏡を挿入したかのごとき仮想大腸内視鏡 (炭酸ガス併用virtual colonoscopy) を工夫し, その臨床的意義について検討したところ有用性を認めた.
  • 熊野 秀俊, 小林 健二
    2006 年 26 巻 5 号 p. 603-608
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    上腸間膜静脈血栓症 (superior mesenteric venous thrombosis: SMVT) は, 比較的まれな疾患である. 近年では保存的治療による症例報告も散見されるが, 保存的治療に対する適応や血栓溶解剤の投与方法など, 標準的な治療法はいまだ確立されていない. 当院において1991年~2004年までにSMVTを8例経験した. この8例を開腹手術により腸管切除術を要した群 (R群n=6) と, 腸管非切除術群 (NR群, n=2) とに分類し, 両群に特徴的な差違があるかを検討したが, 腸管壊死による血性腹水や腹膜刺激症状以外に治療方針を決定する上で有用となる指標はなかった. SMVTを診断し腸管壊死を疑う場合には, 開腹手術を選択する. 一方, 腸管壊死の所見がなく腹部症状が軽微な場合は, 上腸間膜静脈内の血栓溶解療法を試みるべきであろう. そのためには, 急性腹症の診断に際し常にSMVTを念頭に置き, 発症早期に治療を開始することが必要である.
  • 江副 英理, 伊藤 靖, 山 直也, 島 宏彰, 平田 公一, 浅井 康文
    2006 年 26 巻 5 号 p. 611-616
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    救急医療において遠隔地域医療との連係の構築は, 重要な課題である. 今回, 遠隔地域の主治医よりEメールで画像を伝送しセンターに従事する放射線科医に読影を依頼することで, 同日に搬送決定し速やかな対処を行い救命可能となった症例を経験した. 遠隔地画像伝送システムの存在しない施設においては, 時間と場所を選ばないEメールは有用な手段と思われる. 救急医療では, 搬入前の傷病者情報が得られた時に治療が開始されているといっても過言ではない. 救急医療の現場からの搬入前情報としてデジタルカメラとデジタル携帯電話を用いた画像伝送システムを構築したが, 本システムは口頭伝達のみならず救急現場の情報を視覚にても把握することで患者の状態を予測するのに有用な方法と思われた. 画像伝送には個人情報保護の問題が存在するため, プライバシー保護の配慮が必要であるが, 今後発展する領域と思われた.
  • 寺倉 政伸, 井川 澄人
    2006 年 26 巻 5 号 p. 617-620
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部救急疾患の診療のポイントは可及的速やかに正確な診断を行い的確な治療を行うことである. 電子カルテシステムを用いると, 一元化された医療情報を共有することにより, チーム医療の推進が期待され医療の質の向上につながると考えられる. また, 救急患者の診断および治療に要する時間の短縮が可能となり, 術後管理も容易になる. 電子カルテによる診療は, 腹部救急疾患患者をはじめ救急患者の救命に寄与すると思われた.
  • 古嶋 薫, 大塚 裕一, 奈良 智之, 野家 環, 伊藤 契, 針原 康, 小西 敏郎
    2006 年 26 巻 5 号 p. 621-631
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    電子カルテの出現は, 救急医療においてもさまざまな恩恵をもたらしている. とくに画像診断が必須の腹部救急では, 以下の点で大きく貢献している. 1. 情報伝達が, 早く, 確実である. (1) 当院受診歴があれぼ診療情報をすぐに閲覧できる. (2) 短時間に効率よく検査オーダーでき, 検査結果の収得が早い. (3) 過去の検査データも瞬時に検索できる. 2. 画像情報がすべて画面に出る. (1) 各種検査の画像を直に閲覧し, 過去とも比較できる. (2) 検査結果報告を参照できる. 3. 注射, 処置のオーダーの煩雑さが解消される. (1) 救急処置を症状別にセット化, 症状別の注射のセット化で指示の時間短縮ができる. 4. 情報の共有化 (1) 現場にいない医師も情報を共有できるため的確な診断, 治療ができる.5. リスク管理に役立つ. 一方で今後検討を要する課題 (1. 受診歴がある患者への二重ID付与2. 緊急, 繁忙時の検査・処置オーダー, 診療記録のタイミング3. 他院との診療情報のOn-line化) も残されている.
  • 福山 尚治, 渋谷 和彦, 江川 新一, 杉山 啓輔, 佐藤 大, 砂村 眞琴, 海野 倫明
    2006 年 26 巻 5 号 p. 633-636
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【背景】外科手術のテレメンタリングシステムとは指導医の指導のもと, 遠隔地にいる研修医などの経験の浅い医師による手術を補助するシステムである. これは救急医療や過疎地の医療分野での可能性が期待されているが, 実現・運用には安全性や信頼性の評価などでいまだ十分な裏付けがあるとはいえない状況である. 今回, われわれはこのシステムを構築して実際に運用し, その有用性を検討した. 【方法】当施設 (東北大学病院) に研修医, 関連医療施設に指導医を配置して, それぞれの施設にビデオカメラ・マイク・通信用コンピュータを設置し, 施設間を光ファイバー網でつないだ. 信号欠損などの有無を含め, 情報伝達の質も検討した. この状況下で腹腔鏡下胆嚢摘出術と腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した. 【結果】手術は術中合併症がなく終了した. 信号伝達系の大きなトラブルは発生しなかった. 【考察・結語】リアルタイムの指導情報は極めて有効であり, 本システムの有用性を示すことができた. 本システムを応用・発展することにより臨床医の教育や救急医療を含めた実際の患者の治療に貢献できると思われるが, 安全性の検証などについて今後, 実用化のためにはさらに多くの情報の積み重ねが必要である.
  • 杉山 保幸, 松橋 延壽, 坂下 文夫, 高橋 孝夫
    2006 年 26 巻 5 号 p. 637-641
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    岐阜大学医学部附属病院は2004年6月1日よりペーパーレス・フィルムレスの完全電子カルテ化による診療を開始すると同時に, 病院内外の重症救急患者の集中治療を行う目的で30名の医師および80名の看護師で構成される高次救命治療センターも新設されたそこで, この新しい情報システムの腹部救急診療における貢献度について検討し, 以下の結果を得た. (1) 血液・尿検査結果, 放射線画像検査結果が30分以内に判明し, 診断確定までの時間が短縮された. (2) 病歴や血液データ, 画像所見が院内のどの端末からでも閲覧可能なため, 患者情報の共有が容易にでき, 救急担当医と消化器外科医との意見交換が迅速に進んだ. (3) 緊急手術時に, 麻酔医や手術室看護部門への情報提供がリアルタイムに行えた. 以上のことから, ペーパーレス・フィルムレスの完全電子カルテ化病院における情報システムは良質な腹部救急診療を迅速に遂行するための有用なツールであると考えられた.
  • 小西 敏郎, 石原 照夫, 落合 慈之
    2006 年 26 巻 5 号 p. 643-648
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    いま電子カルテを導入する病院が増えているが, 不満や疑問も聞こえてくる. そこで, 2000年12月に電子カルテを導入し, 以後5年以上にわたり完全なペーパーレス・フィルムレスでスムーズに診療を行っているNTT東日本関東病院で, 病院の診療が実際にどのように変わったかを紹介した. 電子カルテでは, カルテ内容がすべてのヒトに容易に解読でき, 診療時間は速くなり, カルテ・フィルム・伝票の捜索や運搬・添付などの業務は不要となり, またカルテやフィルムの保存スペースは不要となり, 医療従事者同士の意思疎通は良好となり, そして安全な医療へと展開できる. さらに, モニター画面を通じて正確に医療内容を患者さんに説明することで, 医師・看護師と患者さんとの相互の信頼関係が増す. まさに電子カルテは, 21世紀に求められる患者さん中心の医療体制へ病院が変革してゆくのに必要不可欠なツールであるといえる.
  • 米山 公康, 大山 廉平
    2006 年 26 巻 5 号 p. 649-653
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. 食欲不振と腹部膨満, 腹痛を主訴に来院した. 腹部単純レントゲン写真上腸管が著明に拡張しておりイレウス像を呈していた. また腹部CTスキャンにおいて直腸に5cm大の腫瘤を認め, 直腸癌によるイレウスと診断し人工肛門造設術を施行した. 来院時より腰部に滲出を伴う4cm大の腫瘤を認めており, 生検の結果腺癌の転移と診断された. 以上から腰転移を伴う進行直腸癌と診断し, 臍部腫瘤に対して腫瘤摘出術を行った. 内臓悪性腫瘍の皮膚転移は比較的まれであり, 一般に癌の終末期に認められる徴候である. とくに臍転移はSister Mary Joseph's noduleとして知られている. 今回われわれは直腸癌によるその1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 鯵坂 秀之, 尾島 敏彦, 大場 大, 伊井 徹, 松木 伸夫, 三輪 晃一, 岩田 充宏
    2006 年 26 巻 5 号 p. 655-658
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は虫垂切除術の既往をもつ31歳の女性で, 腹痛・嘔吐を主訴に受診した. 腹部単純X線写真ではいわゆるcoffee beallsignが認められ, 腹部CT検査とあわせて盲腸軸捻転症と診断された. 大腸内視鏡にて整復を試みるも不成功に終わり, 緊急手術となった. 開腹時便汁性腹水を認め, 腹腔内を検索すると虫垂切除術によると思われる線維性索状物にて腸管が絞拒されていた. 線維性索状物を切除し絞拒を解除したところその腸管は回腸末端および移動盲腸で, 一部壊死から穿孔を起こしていたため回盲部切除術を行った. 術後経過良好にて14日目に退院した.
  • 国末 浩範, 横山 伸二, 金谷 欣明
    2006 年 26 巻 5 号 p. 659-662
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 開腹歴はなし. 2005年5月中旬突然腹痛が出現し, 旅先の病院に救急車で搬送され入院した. 保存的に経過をみられていたが腸閉塞が出現してきたため5日後, 患者の地元である当院に紹介され入院となった. 腹部CTでは中等量の腹水貯留とともに腸閉塞と腸間膜動静脈の収束像がみられ, 絞扼性イレウスと診断した. 同日, 緊急手術を施行した. 腹腔内には血性腹水950mlを認めた. Treiz靭帯より40cm肛側からBauhin弁より20cm口側に至る小腸が大網裂孔に嵌入し絞扼され赤色浮腫状を呈していた. 裂孔部を開放し絞扼解除を行うと小腸の色調が回復し, 腸切除は施行しなかった. 術後創感染を生じたがその他は順調で第36病日に退院した. 大網裂孔ヘルニアはまれな疾患であり報告する.
  • 異時性両側閉鎖孔ヘルニア本邦報告8例の臨床的検討
    境 雄大, 須藤 泰裕
    2006 年 26 巻 5 号 p. 663-667
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で, 腹痛・嘔吐を主訴に近医を受診した. イレウスの診断にて5日間の保存的治療を行った後, 症状の改善がないため, 当科に入院した. 1年9ヵ月前に左閉鎖孔ヘルニアにて開腹術, 3ヵ月前に脳梗塞を発症し2ヵ月間の入院治療歴を有していた. 腹部骨盤CT検査にて右恥骨筋と右外閉鎖筋の間に腫瘤を認め, 右閉鎖孔ヘルニアと診断した. 開腹すると回腸が右閉鎖管にRichter型に嵌頓し, 壊死を認めたため, 腸切除を行った. ヘルニア門は1.7cmに開大していたため, メッシュプラグ法により閉鎖した. 術後のメッシュ感染, プラグによる圧迫症状なく良好に経過し, 術後17日目に退院した. 閉鎖孔ヘルニアの手術歴を有するイレウス患者の診療においては異時性両側発症も念頭に入れ, 早期診断を行うことが重要である.
  • 水上 博喜, 吉澤 康男, 笹屋 昌示, 根本 洋, 佐々木 純, 葛目 正央, 成原 健太郎, 真田 裕
    2006 年 26 巻 5 号 p. 669-672
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 腹痛の増悪を主訴に当院を受診し, 右上腹部の圧痛, 軽度の反跳痛を認めたが, 血液検査ならびに画像検査上明らかな異常所見はみられず, 急性腹症の診断で経過観察入院となった. 入院後, 腹痛の増強, 腹部膨満が出現し, 2日後の血液検査所見より膵炎による腹膜炎が疑われた. 腹部造影CT所見では, 膵臓には異常がなく, 右上腹部に腹水の貯留が出現していた. 診断目的に腹水穿刺を行い, 胆汁様腹水が採取されたため, 胆汁性腹膜炎と診断して緊急手術が行われた. 開腹所見では, 胆嚢体部肝床部側に穿孔を認めたが結石はなく, 術中胆管造影造影検査でも, 総胆管結石や走行異常はみられず, 胆嚢摘出術と腹腔ドレナージを行った. 病理組織学的検査では, 胆嚢は穿孔部を除き, 粘膜構造は正常であり, 穿孔部周囲の血管に血栓などの病変は存在せず, 特発性胆嚢穿孔と診断された. 腹水の細菌培養検査も陰性であった.
  • 岡本 貴大, 森 隆, 田村 竜二, 門脇 嘉彦, 坂田 龍彦
    2006 年 26 巻 5 号 p. 673-677
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    壊死型虚血性腸炎は虚血性腸炎の10~20%の割合で認められており, さらにその死亡率は30~50%前後と高いのが現実である. 今回われわれはショック状態で緊急手術を施行し救命できた1例を経験した. 症例は83歳, 女性で前日の夕方より腹痛・嘔気で近医受診し入院して経過をみていた. しかし翌日早朝にショック状態となり当院に転院となった. 来院時現症は腹部全体に圧痛は認めたものの, 筋性防御は軽度であった. CTで虚血による結腸穿孔からの急性汎発性腹膜炎と診断し緊急手術となった. 術中所見は上行結腸から下行結腸まで壊死しており, それらすべてを切除した. 術直後もショック状態であったが, エンドトキシン吸着 (polymyxin Bimmobilized fiver column) を施行後状態は徐々に改善し, 術後19日目に退院した. 壊死型虚血性腸炎は死亡率も高いため早期診断, 早期手術, PMXなどを速やかに施行することが予後を良くすると考えられた.
  • 家接 健一, 清原 薫, 大和 太郎, 藤森 英希, 野崎 善成, 浅海 吉傑, 小杉 光世
    2006 年 26 巻 5 号 p. 679-682
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    まれな外傷性胆嚢単独損傷の1例を経験した. 症例は73歳・男性. 仕事中に屋根より落下し, 直後より一過性の四肢麻痺になったため, 近医で大量のステロイド投与を受けた. 受傷3日目から腹痛が出現し, 5日目も持続するため腹部CT検査を受け, 肝周囲に液体貯留を認めた. 穿刺で胆汁性腹水であったため, 胆汁性腹膜炎と判断し緊急手術を決定した. 胆道損傷のほかにステロイドが原因の上部消化管の潰瘍穿孔も疑われたため, 診断確定のため手術に先立ち腹腔鏡検査を行った. 胆嚢穿孔を認めたが, さらにほかの胆道損傷がないことを確認する必要があると考え, 開腹術に変更した. ほかの臓器損傷がないことを確認後, 胆嚢摘出術を行った. 外傷性胆嚢単独損傷はまれな上に, 術前診断は困難な場合が多い. 自験例では腹腔穿刺と腹腔鏡検査が, 診断に有用であったと考えられた.
  • 斎藤 由理, 斉藤 孝, 村越 智, 鈴木 克彦
    2006 年 26 巻 5 号 p. 683-686
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膿瘍ドレナージとメトロニダゾール投与で治癒したアメーバ性肝膿瘍の2例を経験した. 2例とも遷延する発熱を主訴に受診し腹部CT検査上で肝膿瘍を指摘された. 1例目は間接蛍光抗体法による抗アメーバ抗体価の上昇で, 2例目は膿中の栄養型アメー. の検出により診断された. 2例とも先行する腸管症状がなく, 既往歴, 生活歴からも感染経路は不明で, compromised hostではなかった. 赤痢アメーバの90%は不顕性感染のcyst carrierといわれている. 今後, 海外渡航歴や先行する腸管症状, 明らかなアメーバ赤痢感染者との接触などの既往のない患者は増加していくと考えられる. 肝膿瘍の診断時には赤痢アメーバの感染に関連する既往歴, 生活歴, 現病歴がない場合でもアメーバ性肝膿瘍を鑑別する必要があると考えられる.
  • 山本 雄豊, 高橋 均, 大澤 英寿, 坂田 育弘
    2006 年 26 巻 5 号 p. 687-690
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞破裂により腹腔内出血を呈した1例を経験した. 症例は41歳の女性. 40歳時にアルコール性膵炎で近医入院. 膵仮性嚢胞を指摘され, 外来通院加療となる. 上腹部および背部痛を認めるも放置. 疼痛増強するため4日後に近医受診し, 上腹部に腫瘤を認め, 腹膜刺激所見を伴っていたため, 同日転入院となる. 腹部造影CTにて膵仮性嚢胞内に造影剤漏出所見と脾周囲血腫を認めたため, 膵仮性嚢胞破裂と診断し, 緊急手術を施行した. 開腹所見では, 血性腹水を約600ml認めた. 嚢胞は膵尾部を中心に存在し直径約10cmであり, 周囲組織と強固に癒着しており辺縁は不整であった. 嚢胞と膵尾部合併切除を施行. 出血の原因は, 慢性炎症の急性増悪に伴い嚢胞内圧が上昇したため, 嚢胞内の表在性血管が損傷したことによると考えた.
  • 西 健, 矢野 誠司, 板垣 友子, 片岡 佳樹, 小池 誠, 橋本 幸直, 板倉 正幸
    2006 年 26 巻 5 号 p. 691-694
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    健常な中年女性に発症した非閉塞性腸管虚血症 (以下, NOMI) の1例を経験した. 症例は42歳, 女性. 2005年10月朝, 排便後突然に下腹痛が出現した. 血液生化学検査, 腹部単純X線, CTではとくに異常所見を認めなかった. 経過観察するも, 腹痛は増強し筋性防御も出現したため, 再度CTを行い腹水の出現と小腸壁の肥厚を認め, 緊急開腹術を施行した. 手術所見では, 回腸末端より約2m口側から80cmにわたり限局した小腸壊死がみられた. 病理所見では主幹動脈に血栓・動脈硬化などの器質的変化による閉塞は認めなかった. 一般に, NOMIは心疾患を有する高齢者で急性循環不全に伴うことが多く, 健常な中年女性に発症するのは極めてまれである. 突然に激烈な痛みを伴う急性腹症には, 腸間膜動脈閉塞などの器質的閉塞だけでなく閉塞がない腸管虚血・壊死も念頭に置く必要がある.
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