日本腹部救急医学会雑誌
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26 巻, 6 号
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  • 蒔田 覚, 加藤 済仁
    2006 年 26 巻 6 号 p. 713-718
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    救急医療の特徴として, (1) 説明のための時間的余裕がないこと, (2) 患者が意識障害を伴っている場合も多いこと, (3) 患者との間に基礎となる信頼が構築されていないこと, などがあげられる。インフォームドコンセントの重要性は論を待たないが, 救急医療において最も重視されるべきは「患者の生命」である。紛争を恐れるあまり, 適切な治療の機会を失うことがあってはならない。医師として判断に迷う場合には, 医療水準に則った治療を心がけることが肝心である。
  • 鎖骨下静脈穿刺法との比較
    石塚 満, 永田 仁, 高木 和俊, 堀江 徹, 降旗 誠, 中川 彩, 阿部 曉人, 窪田 敬一
    2006 年 26 巻 6 号 p. 719-723
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    中心静脈カテーテル (Central venous catheter; 以下, CVC) 挿入に関する合併症多発から, 当科では外頸静脈穿刺法によるCVC挿入手技 (以下, 外頸法) を2005年3月より開始し, 2006年3月までに, 228例の症例に対して, 外頸法によるCVCの挿入を行ってきた。この外頸法の安全性と有用性を, 鎖骨下静脈穿刺法 (以下, 鎖骨下法) で挿入した243例のCVCと比較検討し, その安全性と利便性から腹部救急における初期血管確保にも十分応用できる手技であるとの確信を得た。結果: 気胸の発症は鎖骨下法にのみ認められた (5例 (2.1%) (p<0.05)) 。カテーテル先端位置異常は鎖骨下法では, 37例 (15.2%), 外頸法では7例 (3.1%) に認めた (p<0.01) 。熱発によるカテーテル抜去は, 鎖骨下法84例 (34.6%), 外頸法43例 (18.9%) であったが (p<0.01), 培養結果では, 統計的有意差を認めなかった。考察: 外頸法は, 安全で, 有害事象の発生頻度が低く, 腹部救急領域においても, CVC挿入法の第一選択になり得ると考えられた。
  • リスクマネージメントの観点から
    渡邉 泰治, 嶋田 仁, 片山 真史, 榎本 武治, 陣内 祐二, 櫻井 丈, 濱谷 昌弘, 戸部 直孝, 小泉 哲, 朝野 隆之, 四万村 ...
    2006 年 26 巻 6 号 p. 725-729
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胃十二指腸潰瘍穿孔症例に対する保存的治療選択基準を提唱し実際の救急外来で用いている。初診時に胃十二指腸潰瘍穿孔の可能性が高くSIRS基準を満たしたものは即手術と判断する。 (1) 発症から初診までの時間が6時間以内, (2) ful lstornachでないこと (CTにて), (3) 腹部所見: 腹膜刺激症状が上腹部に限局する, (4) CT所見: 腹水の進展が上腹部に留まる (CTにて), (5) 重篤な併存疾患がない。各項目を1点として計3点以上の症例を保存的治療とした。このスケールを用いて2000年8月から2006年6月までの穿孔症例71例の治療法を選択した。保存的治療完遂例は19例, 手術的治療は52例 (胃潰瘍穿孔が12例, 十二指腸潰瘍穿孔が40例) 本基準は患者にとって極めて低侵襲であり, 医師にとっても治療法の判断が容易であることが特徴である。
  • 仁科 雅良, 武田 宗和, 石川 雅健, 鈴木 忠
    2006 年 26 巻 6 号 p. 731-734
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    救急医療の現場において病状の説明を行い, 同意を得ることは必ずしも容易ではない。当センター集中治療室で入院治療した373例について, 病状の説明を行ううえでの問題点を分析した。入院当日に患者本人が病状を理解できた症例は141例, 翌日以降に理解できたのは139例で原因は急性中毒, 意識障害, 頭部外傷, 酩酊などであった。経過中まったく理解できなかったのは93例で, 原因は意識障害, 認知症, 精神疾患, 頭部外傷の順であった。家族が当日来院は293例, 翌日以降の来院は41例で, 大部分は遠隔地のため電話で連絡した。まったく来院されなかったのは39例で, 原因は身寄りがない, 家族が拒否, 本人が拒否の順であった。守秘義務や個人情報保護法に留意しながら, 症例の状況に応じて適切な対応を行っている。
  • 小児外科医の立場から
    浮山 越史, 伊藤 泰雄, 韮澤 融司, 渡辺 佳子, 種村 比呂子
    2006 年 26 巻 6 号 p. 735-740
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    小児の救急症例には, まれな疾患や急変する症例が含まれている。そのため初期の判断の間違いや治療の遅れが, 大きなリスクとなることが多い。リスクマネージメントのためには, 常に, 重症化する疾患を念頭に置き, 鑑別するために必要な検査を行い, 複数の医師による経時的な観察が必要である。また, 外科的に緊急性を要する疾患 (例えば, 絞扼性イレウス) が疑われる場合には, その原因診断が確定しなくても手術を考慮しなければならない場合がある。
  • 森 俊幸, 正木 忠彦, 杉山 政則, 跡見 裕
    2006 年 26 巻 6 号 p. 741-745
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    医療過誤訴訟では, 治療にあたった医師が適切な知識, 技能を有していたかが論点となることが少なくない。医療機関として提供する医療のQuality Assuranceという側面ばかりでなく, リスクマネージメントとしても米国で一般的な院内プリビレッジ制度が有用と考えている。杏林大学では, 手術の相互監視とフィードバックが可能なシステム構築を試みた。まず外科手術を難易度に応じ5段階に階層化した。またそれぞれの難度に応じた術者基準を設定した。術者基準では, 卒後経験年数ばかりでなく, 基幹学会, 専門学会の認定専門医取得も考慮した。さらに各手術において, 標準手術時間および出血量を設定し, これを大きく越えた場合, ほかの医師にも連絡が行くようにした。監視機構を整備し十分なリスクマネージメント下に初めて健全な医療文化の醸成が可能であり, 同時に医療者も保護されると考えている。
  • 吉田 和彦, 臼井 信男
    2006 年 26 巻 6 号 p. 747-752
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    安全で質の高い医療が望まれている昨今, 医療機関としては医療者の資格と能力を保証することが求められている。当院では腹腔鏡下前立腺全摘術の際に生じた医療事故の教訓から, credentialing/privileging (信任/資格付与) 制度を導入した。米国の制度にかんがみ, 外科系医師信任委員会を発足させて手術資格のカテゴリーを作成し, 各学会の専門医の取得状況と手術経験数をもとに手術資格を付与した。実際の運用としては, 手術伝票提出時あるいは手術室入室時に看護師と麻酔医が, 執刀医あるいは第1助手の当該手術に関する資格の有無を確認している。危険の高い緊急手術も例外ではなく, 資格を有するスタッフが担当することが遵守され, 手術の安全性を担保している。国民の医療に対する根強い不信を払拭するためには, 医療側も真摯な態度が必要で, 医師の職能を評価, 公表する信任/資格付与制度の導入はその一つの方策と考える。
  • 杉山 保幸, 松橋 延壽, 坂下 文夫, 高橋 孝夫
    2006 年 26 巻 6 号 p. 753-756
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部救急医療における電子カルテ診療の功罪をリスクマネージメントの観点から分析した。まず, 短時間での検査結果判明と精度の高い診断, 迅速な治療方針決定は医療事故の発生を予防するものと推測される。また, 『1患者1カルテ』の電子カルテシステムは患者や家族に何度も同じことを尋ねながら診療科ごとのカルテを作成する必要がないため, 患者・家族や医療スタッフの負担を軽減できる。さらに, 医療行為に対するインフォームド・コンセントにおいても所定の様式が作成されているため, 過不足のない説明ができるとともに, 乱文・乱筆による誤解も回避可能であり, 信頼関係の構築に貢献している。一方, 緊急手術に際しては, 麻酔医や手術室看護部門への情報提供がリアルタイムに行え, 患者情報を的確に把握することができる。以上の結果から, 電子カルテは腹部救急医療におけるリスクマネージメントに大きく貢献しており, 有用なツールであることが示された。
  • 野中 隆, 石川 啓, 及川 将弘, 古川 克郎, 小松 英明, 佐野 功, 赤間 史隆, 原 信介, 南 寛行
    2006 年 26 巻 6 号 p. 757-761
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷による小腸損傷は交通外傷時に多く認められ, 受傷早期には特有な症状に乏しく, 腹腔内遊離ガス像も認められない場合が多い。結果的に手術にいたるまで時間を要し重症化するケースも少なくない。今回, 当院における外傷性小腸穿孔における過去5年間 (2000年から2005年) の外傷性小腸穿孔6症例について検討した。受傷後手術にいたるまで12時間未満の症例が4例, 12時間以上のものが2例であった。最終診断時のCT所見では6例中5例に遊離ガス像を認め, 腹水は全例に認めたものの, 12時間以上を要した2症例は初回CT撮影時に消化管穿孔の所見が得られなかった。術後合併症は2例認め, 手術まで12時間以上かかったものであったが全例軽快退院した。腹部鈍的外傷において小腸穿孔を疑った場合は, 腹部所見の変化やバイタルサインの変動に注意し, 経時的にCTを撮ることが診断遅延を防ぐために重要である。
  • 鹿野 敏雄, 谷口 健次, 野田 純代
    2006 年 26 巻 6 号 p. 763-768
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    [目的] 腹部救急疾患術後人工呼吸管理における好中球エラスターゼ阻害薬の効果について検討した。 [方法] 2004年8月から2005年3月までの7ヵ月間に, 緊急手術後人工呼吸管理において好中球エラスターゼ阻害薬を投与した7症例 (投与群) と, 2002年4月から2004年7月までの2年4ヵ月間に投与群と同一の選定基準に適合し好中球エラスターゼ阻害薬を使用しなかった6症例 (非投与群) を比較検討した。好中球エラスターゼ阻害薬投与の適応基準はPaO2/FiO2 200mmHg以下, 胸部X線で両側性浸潤影を認める, 心不全を認めない, の3項目を満たすもの, 抜管基準として酸素化, 血行動態, 呼気努力, 意識状態, の4項目が良好なものと設定した。 [結果] 手術後抜管までの時間は投与群平均64.4±22.6時間, 非投与群平均138.3±50.8時間であった (P=0.0051) 。 [結語] 腹部救急疾患術後人工呼吸管理において好中球エラスターゼ阻害薬の有用性が示唆された。
  • 五本木 武志, 飯田 浩行, 軍司 直人, 折居 和雄
    2006 年 26 巻 6 号 p. 769-773
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性。アルコール多飲後に意識障害にて救急搬送され, 急性アルコール中毒の診断で補液と酸素投与を施行した。意識障害と血圧低下を認めたが軽快, しかし翌日より下血が出現, 5日後に外科外来を受診し精査目的にて入院した。大腸内視鏡にて直腸に全周性の潰瘍性病変を認めた。腹部CT検査にて直腸Rb領域に約6cmの壁肥厚と狭窄像を認め, 直腸癌が疑われたが生検にて悪性所見はなかった。その後2回の大腸内視鏡検査にて潰瘍は次第になだらかとなり, 粘膜の発赤や浮腫は軽快傾向となり, やはり生検組織には癌はなく, 直腸潰瘍の診断となった。組織検査にて, 潰瘍性大腸炎やクローン病などの特異的な炎症性腸疾患やカルチノイド, サルコイドーシスは否定的であった。高血圧, 狭心症の既往があり, 発症前に急性アルコール中毒に伴う血圧低下があったことから, 直腸粘膜の循環障害により直腸潰瘍を生じたものと思われた。
  • 真田 克也, 柴田 稔, 杉原 健一
    2006 年 26 巻 6 号 p. 775-778
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 女性。2日前よりの心窩部痛にて発症した急性壊疽性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術後38℃ 以上の発熱が術当日を含め5日間続いたが保存的に軽快し退院となった。術後16日目より38℃ 台の発熱, 下腹部痛出現。術後20日目に腹部CT検査にてDouglas窩膿瘍を認め経肛門的に穿刺ドレナージを行い, 軽快した。最初の手術から46日目に再び38℃ 台の発熱が出現した。腹部CT検査にて腹腔内遺残膿瘍と診断した。保存的治療を行ったが, 解熱せず最初の手術から50日目に開腹手術を施行した。左卵巣膿瘍で左卵巣を切除した。術後経過は良好で, その後の膿瘍の再発はなかった。
  • 福田 直人, 和田 浄史, 高橋 茂雄, 高橋 克之, 仁木 径雄
    2006 年 26 巻 6 号 p. 779-783
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 女性。下腹部痛と嘔吐を主訴に当院に緊急入院となった。腹部全体に筋性防御を認め, CTにて腹腔内広範囲に遊離ガス像がみられ, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎の状態であった。さらに血液検査で白血球減少を伴っていることより, 大腸穿孔を疑い緊急開腹術を施行した。S状結腸に母指頭大で辺縁鋭な類円形穿孔を認め周囲の腹腔内に硬便が散乱しており, また穿孔部口側上行結腸まで硬便が充満していたため宿便性大腸穿孔と診断し, S状結腸切除+人工肛門造設術を行った。術直後の採血で白血球減少続いていたため, 同日エンドトキシン吸着療法を実施した。その結果, 翌日には白血球正常化し, とくに呼吸不全や創部感染などの合併症起こさず29日目に軽快退院となった。大腸穿孔で術前より白血球減少を伴う症例に対しては, エンドトキシン吸着療法がとくに術後の経過に有効であると考えられた。
  • 横山 武史, 吉井 克巳, 五十嵐 雅仁, 冨岡 一幸, 小張 淑男
    2006 年 26 巻 6 号 p. 785-788
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    胆嚢は外力による損傷を受けにくい臓器といわれており, 外傷性胆嚢破裂は非常にまれな鈍的外傷である。今回われわれは外傷性胆嚢破裂による出血性ショックの1例を経験したので報告する。症例は45歳男性。乗用車運転中のハンドルによる右上腹部打撲により当院に搬送された。腹部は板状硬で腹膜炎の所見であった。腹部超音波検査で胆嚢内に高エコーと腹腔内に液体の貯留を認めた。腹部CT検査では胆嚢壁の不整, 胆嚢周囲に液体の貯まりと腹腔内に造影剤の漏出を認めた。以上より外傷性胆嚢損傷, 腹腔内出血と診断した。検査後血圧が低下し出血性ショックを呈しており緊急手術を施行した。胆嚢の腹腔側が約8×5cmの大きさで破裂しており依然として出血していた。出血量は約2, 000m/であった。胆嚢頸部は十二指腸と線維性に癒着し, 肝臓の表面は凹凸著明, 左葉の肥大があり肝硬変であった。胆嚢摘出術を施行し術後経過は良好で術後10日目に退院した。
  • 上村 眞一郎
    2006 年 26 巻 6 号 p. 789-792
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で, 統合失調症, 糖尿病で精神科病院に入院中であったが, A型インフルエンザを合併した気管支喘息の診断で, 当院に転院した。治療経過は良好であったが, 経過中に胸部単純X線写真でfreeairが出現した。腹部には圧痛や腹膜刺激症状はなく, 血液生化学検査でも白血球, CRPの上昇はなかった。腹部単純X線写真と腹部CTで, 広範囲の小腸に著しい腸管嚢腫様気腫像とfree airを認めた。抗生剤の点滴を行い, 経鼻胃管を挿入し, 中心静脈栄養管理として, 保存的治療を開始したところ, 腸管嚢腫様気腫は消失した。腸管嚢腫様気腫症は腸管壁内に多数の含気性小嚢胞が集簇して発生する病態で, 重度の炎症や壊死により起こるとされる一方, 腸管壊死を伴わず, 保存的治療が可能であった症例の報告も少なくない。今回, 気管支喘息, 慢性便秘の患者でfreeairを伴う腸管嚢腫様気腫症を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 松葉 秀基, 加藤 健司, 平松 聖史, 平田 明裕, 伊藤 貴明, 待木 雄一, 藤岡 進
    2006 年 26 巻 6 号 p. 793-796
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性。腹部CT検査と上部消化管内視鏡検査で, 胃粘膜下腫瘍と診断した。手術待機中, 突然の強い心窩部痛で緊急入院となった。入院時, 収縮期血圧78mmHgで, 貧血の進行を認めた。上腹部には強い圧痛を認めた。再度施行した腹部CT検査では腫瘍病変の増大と形態の変形を認め, 右横隔膜下には液体貯留像を認めた。腹腔穿刺を施行すると血性腹水であった。以上より, 胃粘膜下腫瘍破裂と診断し, 同日緊急手術を行った。開腹時, 腹腔内に約1, 400m/の血性腹水の貯留と胃体下部小弯に鶏卵大の破裂した腫瘍を認めた。手術は幽門側胃切除術を行った。術後40日目に軽快退院となった。病理組織学的検査では, KIT陽性, gastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断した。術後21ヵ月間経過したが再発を認めず生存中である。これまで胃GIST破裂に対する手術症例の報告は少なく, 自験例に若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 明石 建, 安藤 秀明, 田中 雄一, 花岡 農夫
    2006 年 26 巻 6 号 p. 797-800
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性。右上腹部痛を主訴に来院し, 同部に手拳大の圧痛を伴う膨瘤を認め, 腹部超音波検査, CT検査で腹壁膿瘍と診断した。経皮的膿瘍ドレナージを行い, 造影検査で横行結腸との問に瘻孔を認めた。大腸内視鏡検査所見では, 横行結腸に浅い潰瘍性病変があり, 組織生検で悪性所見はなかったが, 悪性疾患も否定できなかったために手術を施行した。開腹所見では横行結腸の一部が小児手拳大に硬く触れ, 右側腹部の腹壁に, 強固に癒着していた。横行結腸部分切除と, 膿瘍壁合併切除を行った。病理組織学的所見で結腸単純性潰瘍と診断された。消化管と瘻孔を形成する腹壁膿瘍は, ほとんどが外科的治療を要し, その原疾患は結腸癌など悪性腫瘍や虫垂炎などの炎症性疾患であるがいずれもまれである。今回われわれは, 横行結腸単純性潰瘍が原因で腹壁膿瘍を形成したまれな症例を経験したので報告する。
  • 森村 玲, 古谷 晃伸, 秋冨 慎司, 松村 篤, 海老原 良昌, 増山 守, 渡辺 信介
    2006 年 26 巻 6 号 p. 801-803
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症はまれな疾患で, 成人例の報告は散見されるが小児例の報告は極めて少ない。今回われわれは小児に発症した特発性大網捻転症を経験したので報告する。症例は5歳, 女児。右下腹部痛を主訴に近医受診し, 急性虫垂炎の疑いにて当科を紹介された。発熱もなく全身状態は良好であったが, 右下腹部に圧痛, 反跳痛を認めた。血液生化学検査では白血球の軽度上昇とCRPの上昇を認めた。CTにて右側腹部の脂肪濃度の上昇と腹水を認めたため, 急性腹症の診断にて開腹手術を行った。腹腔内に少量の血性腹水を認め, 右上腹部で大網が捻転を起こしており, 捻転部大網は壊死に陥っていた。健常部にて大網を切除し, 手術を終了した。小児の特発性大網捻転症の本邦報告例は佐藤の報告が最初で, われわれの報告は2例目あり, 小児では極めてまれな疾患と考えられた。
  • 渡邉 真実, 三科 武, 鈴木 聡, 二瓶 幸栄, 平野 謙一郎, 内藤 哲也
    2006 年 26 巻 6 号 p. 805-808
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例1: 74歳, 女性。右側腹部痛を訴え来院し, CT検査にて後腹膜出血を認めた。腹部血管撮影検査で後上膵十二指腸動脈からの出血を認めたが, 出血部位へのカテーテル挿入困難で, 経カテーテル的動脈塞栓術 (TAE) は不可能と判断し, 手術を施行し縫合止血した。症例2: 72歳, 男性。腹痛を訴え来院し, CT検査にて後腹膜出血を認めた。腹部血管撮影検査で前下膵十二指腸動脈瘤からの出血を認めたが, TAE困難で手術を施行し, 縫合止血した。本2症例の術後腹部血管撮影検査では, 両者とも腹腔動脈基部の狭窄と上腸間膜動脈からの側副血行路の発達を認め, これが膵十二指腸動脈瘤の発生機序と考えられた。CTで後腹膜出血を認めた場合, 腹部血管撮影検査後, TAEを施行するのが低侵襲で第一選択とされるが, 困難な場合は, 全身状態が低下している例も多く, 動脈造影検査の診断をもとに速やかに手術に移行することが重要と考える。
  • 森川 司朗, 竹内 雅春, 黒田 暢一, 岡田 敏弘, 王 孔志, 藤元 治朗
    2006 年 26 巻 6 号 p. 809-812
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性。2003年7月中旬腹痛のため内科に入院した。保存的に加療するも, 翌々日に腹膜刺激症状が認められ, 外科に紹介され, 緊急手術となった。術前CT所見では左骨盤腔内に小腸腸間膜の収束像が認められ, 絞扼性イレウスが疑われた。開腹所見ではCTに一致して左骨盤腔に小腸が収束され, 左子宮広間膜の異常裂隙に起因する内ヘルニアと診断された。残念ながら回腸末端より約90cmの小腸が約40cmにわたり絞扼されていたため切除し手術を終了した。子宮広間膜異常裂孔に起因する内ヘルニアが術前に診断されることはまれであり, 今回施行したCT (MPR: Multiplanar reconstruction) では内ヘルニアによる絞扼部位が予測でき術前の情報としては有効であった。本疾患が念頭にあれば術前診断も可能であると考えられる。イレウスにおける術前CT (MPR) は術前の情報収集の手段として有益な検査になり得る可能性が示唆された。
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