日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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27 巻, 1 号
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原著
  • 榊原 巧, 野田 純代, 岡村 行泰, 石川 忠雄, 小松 義直, 矢口 豊久, 原田 明生
    2007 年 27 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    術後癒着性イレウスのうち, イレウス管による保存的改善症例を対象として, 保存療法後の再発関連因子を検討した。対象と方法 : 術後癒着性イレウス症例234症例のなかで, イレウス管留置による保存的治療で改善した91症例 (再発群23例, 非再発群68例) を対象に, 性別, 年齢, イレウスによる入院の既往, 手術回数, 手術から初回イレウスまでの期間を検討し, 次にイレウス管管理に着目して再発関連因子を検討した。結果 : イレウスによる入院の既往, イレウス解除に要した期間, 造影所見, 進行状況で有意差を認めた。この4項目で多変量解析を行った結果, イレウス解除に要した期間が独立した再発予測関連因子であった。結語 : 術後癒着性イレウスに対して, イレウス管による保存的治療を行った場合, イレウス管の留置期間, すなわちイレウス解除に要した期間はイレウス再発の有用な予測因子であると考えられた。
  • 境 雄大, 須藤 泰裕
    2007 年 27 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    ‹目的› 急性腹症における画像診断の有用性・妥当性を検討した。‹対象・方法› 急性腹症61例の入院時画像診断を後方視的に検討した。単純X線検査を基本として, X線のみ施行 (X-P群) 11例, 超音波検査施行 (US群) 12例, CT施行 (CT群) 14例, CTと超音波検査施行 (US/CT群) 24例に分類, 各群の疾患を検討した。さらに疾患別に腸閉塞群20例, 急性虫垂炎および鑑別すべき疾患群 (虫垂炎群) 35例, 消化管穿孔 (穿孔群) 6例を分類し, 画像診断の施行状況と診断の統計学的評価を行った。 ‹結果› 腸閉塞, 消化管穿孔ではX線とCT, 急性虫垂炎ではUSが重視されていた。腸閉塞群, 虫垂炎群, 穿孔群の正診率は各々95.0%, 88.6%, 100%であった。 ‹考察› 今後, 前方視的検討を要するが, 自験例の検討では腸閉塞, 消化管穿孔でCTが有用である可能性が示された。虫垂炎の診断にはUSが有用と思われたが, 鑑別困難な症例ではCTを積極的に施行すべきである。
技術
  • 久志本 成樹, 相星 淳一, 新井 正徳, 原田 尚重, 磯部 将人, 田邊 晴山, 宮内 雅人, 雨森 俊介, 尾本 健一郎, 小川 太志 ...
    2007 年 27 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    Damage control surgeryやabdominal compartment syndromeに対するopen abdomenでは, 早期に定型的閉腹が不可能な場合, 腹腔内容を植皮にて被覆し, 意図的に腹壁ヘルニアを作成するのが一般的である。Enterocutaneous fistulaのリスクは低いものではなく, 症例によっては複雑な腹壁再建を要する。種々の腹壁再建法が報告されているが, 急性期における再建法適用の報告はない。両側腹直筋鞘前葉反転法 : (1) 両側腹直筋鞘上にて皮下をundermineし前葉を露出後に, 腹直筋鞘外縁を創全長にわたり切開する。 (2) 前葉を腹直筋から剥離, 白線をhingeとして筋膜を反転し, 両側のflapを作成する。 (3) 反転した筋膜, さらに皮膚を縫合する。定型的閉腹不能な急性期11症例に対して本法を施行した。4例に創感染, 7例にmidabdominal bulgingを認めたが, 最長70ヵ月フォローアップでenterocutaneous fistula, ヘルニアの合併はない。定型的閉腹不能なopen abdomenに対して, 本法は急性期腹壁再建を可能とする手段となろう。
特集 : 腹部救急における臓器不全の治療戦略
  • 真弓 俊彦, 渡邉 出, 小野寺 睦雄, 有嶋 拓郎, 高橋 英夫, 武澤 純
    2007 年 27 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    近年でも敗血症は臓器不全や死亡の大きな要因であり, その制御は重要な課題である。敗血症ではまず, その感染巣を検索, 同定し, 制御することが基本である。抗菌薬投与前に適切な細菌検査検体を採取し起因菌の同定に努めるとともに, 施設の起因菌やその感受性の傾向からempiricalな抗菌薬を選択する。抗菌薬は投与量, 投与方法, 投与期間など適切に使用し, 感受性の結果, 可能であればde-escalationを行う。これらの基本戦略とともに, 二次的な感染症を生じさせないように, 体位や経腸栄養などにも留意する。一端, 臓器不全を生じた際には, 不全臓器の増悪や多臓器不全, 死に至ることがないように, 全身管理と個々の臓器対策を実施する。また, 将来的には, 遺伝子多型によって, 疾患の発生頻度や予後, 薬剤反応性の相違を予測し, 効率的な医療が可能になりうる。そのためには, 日本人を対象とした大規模な質の高い研究によって科学的根拠を構築していくことも必要である。
  • 小林 誠人
    2007 年 27 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    敗血症性多臓器不全の病態形成に種々のメディエータの関与が明らかにされてきた。PMX-DHPの有効機序の1つはこれらメディエータの調整と考えられる。PMX-DHPは循環不全を惹起する非遺伝子介在型メディエータである内因性大麻を吸着・除去する。内因性大麻はNF-κBを介しサイトカインの産生を調整しており, 内因性大麻の漸減はサイトカインバランスの是正をもたらす。その結果, 生体内環境は正常化へ向かう。晩期に産生され, 致死的メディエータであるHMGB-1はメディエータカスケードの上流の調整によりPMX-DHP前後で漸減し, 予後との関連が示唆される。内因性大麻の吸着を介し, 各種メディエータを調整することで, PMX-DHPは循環動態, 肺酸素化能を有意に改善し, 敗血症性多臓器不全からの早期離脱をもたらす。PMX-DHPは敗血症性多臓器不全に対し有用かつ有効な治療法であり, さらなる救命率向上をもたらすことが期待される。
  • ―腸間膜リンパ液に対する保存血および代用血液の影響―
    相星 淳一, 小池 薫, 小林 哲幸, 大友 康裕, 山本 保博
    2007 年 27 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    虚血・再灌流に曝された腸管が産生した炎症性メディエータは, 腸間膜リンパ管を介して大循環に流入し, 臓器障害を惹起することが明らかになっている。さらに, 最近の研究によって, 腸間膜リンパ液はサイトカインや脂質メディエータを含有し, 好中球や血管内皮細胞の活性化など多彩な生物活性を示すことが証明された。したがって, ショックに続発する多臓器障害の発症機序を解明する上で, 腸間膜リンパ液は重要な要素である。また, 重篤なショックに対する蘇生には酸素運搬能を有する保存血輸血は必須であるが, 保存血輸血による弊害も報告されている。この臨床的ジレンマを回避する蘇生輸液として代用血液が注目されている。代用血液は虚脱した腸管循環を早期に回復し, 臓器障害を抑制することが示唆されており, 単純に貧血の補正だけでなく, 多臓器障害に対する治療戦略の一つになることが期待される。
  • 西村 拓, 上野 富雄, 為佐 卓夫, 岡 正朗
    2007 年 27 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    白血球除去療法 (Leukocytoapheresis : 以下, LCAP) は, 末梢血中および炎症局所から活性化白血球を含む白血球を取り除くことにより, サイトカインの過剰産生を回避, 抑制し, 病態の改善をはかる治療法である。一般には炎症性腸疾患や関節リウマチに対して施行され, 良好な結果が報告されている。今回, われわれは敗血症により多臓器不全に進行した4症例に対して, LCAPを施行した。呼吸, 循環状態の改善を認めたが, 救命はできなかった。肺をはじめとした重要臓器でのsecond attackを予防し, 多臓器不全への進行を抑制するためには, LCAPの適格な症例選択および開始時期を今後検討する必要がある。
症例報告
  • 狩野 孝, 水島 恒和, 位藤 俊一, 水野 均, 宮嵜 安晃, 岩瀬 和裕
    2007 年 27 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性。2004年8月, 膀胱浸潤を伴う直腸癌に対して, 骨盤内臓全摘, 人工肛門, 回腸導管造設術を施行した。術後, 尿管回腸導管吻合部縫合不全をきたし, 骨盤内感染に対し保存的加療中であった。術後1ヵ月後, 回腸導管からの拍動性出血を認めた。血管撮影検査を行い, 右尿管外腸骨動脈瘻による出血と診断した。全身状態不良のため, 血管内治療による止血術を施行した。一時は全身状態が改善したが, 治療から3ヵ月後に腸骨動脈仮性瘤を形成したため, 右外腸骨動脈瘤切除+大腿動脈-大腿動脈交叉バイパス術を施行した。術後経過は良好で, バイパス術施行2ヵ月後に, 退院となった。二次性 (続発性) 尿管動脈瘻は比較的まれな疾患であるが, 術後長期尿管ステント留置症例では, その可能性を念頭に置く必要があると考えられた。
  • 服部 正興, 鈴木 秀昭, 久世 真悟, 柴原 弘明, 高見澤 潤一
    2007 年 27 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は15歳女性。2004年9月に発熱, 左臀部痛で発症し, 当院整形外科に入院した。入院後糖尿病を指摘された。当初腰椎MRIを含め, 諸検査を施行したが, 原因不明であった。全身検索目的に施行したガリウムシンチグラフィで骨盤内左側に集積を認め, CT, MRI検査で骨盤内膿瘍と診断した。当科に転科し経皮的膿瘍ドレナージを行い, 培養検査でサルモネラ膿瘍と診断した。以後症状は軽快しドレナージ後23日目に退院した。自験例は左臀部痛が主体で, 消化器症状に乏しく, 診断に至るのに難渋した。治療では, 低侵襲な経皮的ドレナージが有効であった。
  • 米沢 圭, 下松谷 匠
    2007 年 27 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    今回われわれはpress through package (PTP) の誤飲により空腸穿孔をきたした症例を経験したので報告する。症例は57歳男性。慢性腎不全のため24年前から人工透析中である。2005年3月, 透析通院前に薬を内服。その際1剤をPTPシートのまま内服した可能性があり, 同日救急外来を受診した。腹部所見・胸腹部X線検査にて異常を認めず, 帰宅を許可された。翌日昼食を摂取後, 突然に激しい腹痛が生じ救急車にて搬入された。腹部CTにてfree airと小腸内にPTPの断面と思われる空気を含んだ高輝度の異物が確認され, PTP誤飲による小腸穿孔と診断した。緊急開腹術を施行し, Treitz靱帯より75cm肛門側にPTPによる穿孔部を認めた。穿孔部位を含む約30cmの小腸部分切除術を施行した。近年PTP誤飲の報告例が増加しており, 患者への服薬指導だけでなくPTPそのものの改良が必要であると考えられる。
  • 水上 博喜, 吉澤 康男, 笹屋 昌示, 葛目 正央, 成原 健太郎, 真田 裕
    2007 年 27 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 女性。突然の嘔吐と腹痛を認め, コーヒー残渣様嘔吐が出現したため, 当院救命センターに搬入された。初診時, 腹部膨瘤が著名であったが, 腹膜刺激症状は軽度であった。しかし, WBC22,700/mm3, pH7.152, BE-18.5mEq/l と著名なアシドーシスを認め, 入院10時間後に絞扼性イレウスの診断で緊急手術となった。手術所見では横行結腸が著名に拡張し, 肝彎曲部から下行結腸中央部にかけ壊死に陥っており, 境界部は暗紫色調で斑にみられたが, 中結腸動脈の拍動は触知した。病理組織所見では, 血管にはアテローム変性や血栓はなく, 非閉塞性腸間膜虚血症 (NOMI) と診断した。術後1年, 人工肛門閉鎖を行い, その際に回盲部温存に伴う吻合部の捻じれを回避するためLadd氏手術を参考に腸管をnonrotationの状態にして盲腸S状結腸吻合を行った。術後は経過順調で, 良好なQOLが得られている。
  • 知久 毅, 佐野 渉, 田代 亜彦
    2007 年 27 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    われわれは虫垂切除術後の腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓に対する緊急手術時に, 嵌頓小腸切除とComposix™ Kugel Patchによる腹壁修復を行った症例を経験した。症例は76歳女性, 3日前に発症した腹痛にて当科紹介受診となった。64年前に虫垂切除術の既往がある。来院時, 右下腹部手術創を中心とした腹部膨隆と同部の圧痛を訴え, 同部位には筋性防御も認めた。理学的所見と血液検査所見, 画像所見より腸管の嵌頓と絞扼およびそれによるイレウスと診断した。術前にイレウス管を挿入した後, 同日緊急手術を施行した。手術は, 嵌頓小腸の部分切除とComposix™ Kugel Patchによる腹壁修復を施行した。術後合併症の発生はなく経過良好であり, 術後19日目に退院となった。術後5ヵ月の現在も再発の徴候を認めてない。Composix™ Kugel Patchは, 腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓に対する緊急手術にも有用である可能性が示唆された。
  • 繁本 憲文, 坂下 吉弘, 高村 通生, 小倉 良夫, 近藤 成, 金 啓志
    2007 年 27 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    牛の角による外傷性腹壁ヘルニア, 腸間膜損傷の1例を経験した。症例は46歳の男性。飼い牛に右下腹部を角で突かれ, 背後の壁との間に挟まれた。体表面の外傷は軽微であったが腹痛が軽快しないため当院救急外来を受診した。来院時, 右下腹部に挫傷と皮下出血を認めたが, 真皮の断裂は認めなかった。腹部超音波検査にて, 肝表面, 肝腎境界, 脾周囲, 右傍結腸溝にecho free spaceを認め, 腹腔内出血と診断し緊急手術を施行した。回腸腸間膜の損傷と, 受傷部に一致して外傷性腹壁ヘルニアを認め, 止血の後縫合閉鎖した。術後経過は良好で, 12日目に退院した。牛の角のように鋭とも鈍ともいいがたい物体の衝突では, 真皮の連続性が保たれたまま皮下組織より深層の組織の断裂や臓器損傷をきたしている可能性があり, 受傷機転を十分考慮した診断, 治療が重要であると思われた。
  • 楠田 慎一, 福島 正之, 北原 光太郎
    2007 年 27 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は17歳, 男性。幼少時より腹痛, 嘔吐などの腹部症状を年に数回程度訴え, その度に近医受診を繰り返していた。しかし原因は特定できず, 思春期には心療内科を受診していた。2005年4月夕方より急に腹痛, 嘔吐を訴え, 当院救急外来を受診した。腹部CTにて上腸間膜動脈 (SMA) が渦巻き状に走行する所見が見られたため腸軸捻転症と診断し同日開腹手術施行した。手術所見は, 盲腸と上行結腸が後腹膜に固定されていないnonrotation型の腸回転異常であった。Treitz靱帯は形成しておらず, 空腸起始部にLadd靱帯が見られ, これを軸に空腸が捻転を起こしていた。手術は捻転を解除後, Ladd手術を行った。その後腹部症状は改善し, その後も再燃は認めていない。
  • 和久 利彦
    2007 年 27 巻 1 号 p. 95-97
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例1 : 86歳男性。腹部CTで腹水, Whirl signを認め発症後6時間で緊急開腹術を施行した。小腸が時計回りに360度捻転していたが整復のみで手術を終了した。症例2 : 69歳男性。腹部CTで腹水, Whirl signを認め発症後20時間で緊急開腹術を施行した。小腸が時計回りに180度捻転していたが整復のみで手術を終了した。症例3 : 82歳女性。腹膜刺激症状と腹部CTで腹水, Whirl signを認め発症後13時間で緊急開腹術を施行した。小腸が時計回りに360度捻転し回腸全体が壊死状態であったため小腸および回盲部切除を行った。3例とも器質的異常を認めず原発性小腸軸捻転症と診断した。腹部所見, 血液検査に特徴的所見はなく, 腹部CTでのWhirl signが自験例に共通の特徴的所見であった。腸管壊死をきたす可能性は, 発症から手術までの時間や捻転度に必ずしも比例せず, 血管の緊縛度や血管自体の動脈硬化の程度などが関与してくるものと考えられた。
  • 玉森 豊, 西口 幸雄, 清水 貞利, 中澤 一憲, 大川 清孝, 有元 純子
    2007 年 27 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は85歳, 男性。肺癌にて2003年6月右肺上葉切除を施行, 同年10月脳転移を指摘されガンマナイフ治療を施行された。10月下旬より腹痛が出現し, 緊急入院となった。入院時右下腹部に手拳大の腫瘤を触知し, ガストログラフィン注腸造影および腹部CT検査を行ったところ盲腸および横行結腸の腸重積による腸閉塞と診断された。横行結腸の重積は注腸によって解除されたが盲腸の重積は解除されず, 緊急手術となった。開腹にて盲腸から横行結腸まで多発性の腫瘍性病変を認めた。2ヵ所において1型の腫瘍が先進部となった腸重積と診断し, 拡大右半結腸切除術を行った。組織学的診断にてpleomorphic carcinomaの所見で原発巣と一致し肺癌の大腸転移と診断された。
  • 杉山 陽一, 新原 主計, 横山 隆
    2007 年 27 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は86歳, 男性。腹痛および嘔吐を主訴に当院受診。腹部立位単純写真では多数の小腸ガスおよびニボーを認めた。腹部造影CTでは著明に拡張した小腸と, 比較的境界明瞭で強く造影される直径8cm大の腫瘤像を認めた。イレウス管を挿入し保存的加療を行うもイレウス解除ぜず緊急手術施行した。術中所見では, Treitz靱帯より約240cm肛門側で間膜対側に壁外性増殖する腫瘍を認めた。腫瘍の肛側小腸が約60cmにわたり腫瘍と間膜の間隙に入り込み, 絞扼性イレウスをきたしていた。腸管壊死は認めなかったため腫瘍を含め小腸部分切除術を施行した。術後, 免疫組織組織検査ではc-kit 陽性, CD34は一部陽性, S-100蛋白が陽性, αSMA, NSEはいずれも陰性であり小腸GISTと診断した。壁外性に発育した小腸GISTが原因で絞扼性イレウスをきたした症例の報告は少なく, まれな症例として若干の文献的考察を加えて報告した。
  • 伊藤 元博, 國枝 克行, 山田 順子, 八幡 和憲, 井川 愛子, 太田 博彰, 加藤 浩樹, 長尾 育子, 河合 雅彦, 古市 信明
    2007 年 27 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 女性。突然の下腹部痛を主訴として近医を受診し, イレウスの診断にて当院に紹介受診した。受診時下腹部に圧痛を認めたが, 筋性防御は認めなかった。腹部単純X線検査にて無ガス像を, 腹部造影CTにて大量の腹水貯留と下腹部に拡張した小腸と腸間膜の集中像を認めた。以上の所見より発症15時間後に絞扼性イレウスと診断して緊急手術を施行した。術中所見では, S状結腸間膜に5cmの裂孔がみられ, Treitz靱帯より100cm~160cmの部位の小腸が嵌入し絞扼されていた。S状結腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し, 壊死腸管を切除し, 裂孔部を閉鎖した。S状結腸間膜裂孔ヘルニアはまれな疾患で, 術前に診断することは困難と考えられるが, 原因不明のイレウス症例に遭遇した場合は本症を念頭に入れ, 絞扼性イレウスを早期に診断することによって腸切除を避けることが重要である。
  • 市川 剛, 竹村 茂一, 山本 訓史, 裴 正寛, 田中 宏, 山本 隆嗣, 上西 崇弘, 田中 肖吾, 高台 真太郎, 新川 寛二, 久保 ...
    2007 年 27 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    胆管閉塞と膵管狭窄を伴う膵仮性嚢胞を呈した手術症例を経験した。症例は37歳, 男性。アルコール性慢性膵炎および膵仮性嚢胞の経過観察中, 嚢胞内感染を併発し経皮的嚢胞外瘻術が施行された。嚢胞造影像上, 膵管と嚢胞との交通, 膵頭部膵管の狭窄が認められた。また慢性膵炎による胆管閉塞から黄疸が出現したが, 内視鏡的ステント留置術により黄疸は軽快した。しかし嚢胞ドレーンからの排液量が減少せず, 炎症所見の持続がみられた。疼痛の持続, 感染の存在, 自然消失が期待できないとされる6週以上の外瘻術を要したため開腹した。膵全体が周囲組織と強固に癒着していたため, 膵尾部, 膵仮性嚢胞, 脾臓を摘出した後, 残膵の断端を胃体部後壁に吻合した。術後, 腹腔内感染が見られたが, 持続的ドレナージにより軽快。感染巣の消失と疼痛の軽減が得られたため, 術39日目に退院となった。術後1年7ヵ月経過時点で, インスリン20単位/日の使用は要しているが, 疼痛も制御されており, 前医での外来経過観察中である。
  • 瓜園 泰之, 畑 倫明, 中村 達也, 奥地 一夫, 童 仁, 中島 祥介
    2007 年 27 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    腸重積が原因で消化管穿孔をきたし, 腹膜炎で発症した回腸炎症性類線維性ポリープ (inflammtory fibroid polyp ; IFP) の1例を経験したので報告する。症例は86歳・女性で, 突然の腹痛により発症した。腹部CTで遊離ガス像と腸管内腫瘤像を認め, 腸管穿孔による腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。回腸末端から60cm口側で, 腸管内の弾性軟の腫瘤が先進部となった回腸回腸型の腸重積を認め, 穿孔を伴っていた。腫瘤を含め, 回腸部分切除を施行した。頂部に粘膜欠損がある3cm大の有茎性ポリープを認めた。病理組織学的所見で粘膜下層を中心に, 線維芽細胞, 膠原線維, 小血管の増生と炎症細胞の浸潤像がみられ, IFPと診断した。
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