日本腹部救急医学会雑誌
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27 巻, 3 号
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原著
  • 山本 孝夫, 森内 博紀, 西脇 由朗, 木田 榮男, 脇 慎治
    2007 年 27 巻 3 号 p. 435-440
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    再発1例を含む閉鎖孔ヘルニア20例を検討した。平均85.6歳で70%に循環器, 呼吸器の併存疾患があった。少なくとも62%がRichter型で, 嵌頓腸管の壊死による腸切除を要した症例は2例 (9.5%) であった。閉鎖孔ヘルニア修復後, 反対側の閉鎖孔ヘルニアが1例に発症したが, 嵌頓腸管の自然還納を認めた。閉鎖孔ヘルニアは高齢でリスク症例があり, また, 自然解除例など症状が軽度の症例も存在し, アプローチには開腹法のほか, 腹膜外法, 鼠径法, 腹腔鏡下手術がある。嵌頓が自然解除されない例で, 壊死の可能性の高い場合は開腹法で, それ以外の場合は上記の種々の手術法が可能である。自然解除例でも腸管の嵌頓壊死の可能性があり手術適応であるが, 高リスクの場合には経過観察の上, 治療方針を決めるのも実際的と思われた。また, 閉鎖孔を単純閉鎖した1例に再発を認めたことから, メッシュで修復したほうがよいと考えている。
  • 及川 将弘, 石川 啓, 赤間 史隆, 草場 隆史
    2007 年 27 巻 3 号 p. 441-446
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    1996年1月より2006年6月までの約10年間に, 当院で経験した魚骨による消化管穿孔例は10例 (男性8例, 女性2例) であった。平均年齢は68.0 (31~86) 歳と高齢者に多く, 穿孔部位では食道が3例, 回腸が5例, S状結腸と直腸が1例ずつであった。病型では急性炎症型が6例, 慢性炎症型が4例であった。魚骨摂取歴は10例中6例で確認でき, 鯛が4例と鮭とヒラスが1例ずつであった。10例中9例がCTにて診断可能であり (症例9の1例のみ術後の見直しにて魚骨が判明した), CTにて描出されなかったのは1例のみであった。内視鏡診断可能であったのは食道穿孔の3例であった。治療は全例で外科手術が施行された。部位別にみると食道穿孔は3例で, 2例は内視鏡摘除後, 縦隔・胸腔ドレナージを施行した。内視鏡下摘出できなかったほかの1例は, 開胸下に縦隔・胸腔ドレナージを施行した。回腸穿孔は5例で, 4例が小腸切除術, 1例が穿孔部閉鎖を施行した。S状結腸穿孔は1例で, 穿孔部閉鎖術, および一時的人工肛門造説術を施行した。最後に直腸穿孔は1例で, 膿瘍ドレナージ術を施行した。予後は1例が他病死したが, ほかは全例生存中である。
  • 加藤 賢一郎, 高田 忠敬
    2007 年 27 巻 3 号 p. 447-450
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    欧米に比べ, 本邦の肺塞栓症の頻度は低いが, 2004年に本邦の予防ガイドラインが作成されて以来注目されている。なかでも肝胆膵領域の手術は侵襲が高く, 術後の肺塞栓症の発生は致命的となることもある。われわれは, 肝胆膵領域の術後肺塞栓症15例を経験し, 救命可能であった生存群と死亡した死亡群を比較検討した。検討項目はBody Mass Index (以下, BMI), 手術時間, 術中出血量, 術後発症日および初発症状, 抗凝固・血栓溶解療法に伴う合併症, 予防法とした。術後発症日は死亡群で有意に (P<0.05) 遅延していたが, それ以外の因子では救命率に有意差を認めなかった。肝胆膵術後の肺塞栓症に対し, 抗凝固・血栓溶解療法は投与量の調節で安全に施行可能であった。術後肺塞栓は適切な予防をしても生じるため, 一般の消化器癌と同様で, 術後の慎重な管理が重要であると考えられた。
特集 : 「急性膵炎の診療ガイドライン」によって診療行為がどう変わったか?
  • 真弓 俊彦, 渡邉 出, 小野寺 睦雄, 有嶋 拓郎, 高橋 英夫, 武澤 純
    2007 年 27 巻 3 号 p. 453-457
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」発刊後の最新知見につき, 検索, 検討した。方法はMEDLINE (Ovid版) でpancreatitisとkey wordでacuteを掛け合わせ, 2000年以降, ヒト, 英語, または日本語文献でlimitし, 検索した。また, 医学中央雑誌インターネット版で「急性膵炎」で検索した後, 同様に絞り込みを行った。さらにガイドライン, メタアナリシス, 無作為化比較対照試験 (RCT) でもlimitを行った。その結果, 前者ではガイドラインが6文献, メタアナリシスが14文献, RCTが67文献あったが, 後者ではRCTが1文献あった。疫学, ERCP後膵炎の予防策としてのステントや薬剤, 抗菌薬, 胆石膵炎におけるERCP+ES, H2阻害薬, 蛋白分解酵素阻害薬, 栄養療法, 腹腔洗浄に関するメタアナリスが報告され, また, 各分野で新たなRCTが施行されていた。一部では現ガイドラインにない新たな, あるいは相反する知見も得られた。現在, これらの最新の知見を踏まえて, ガイドラインの改訂を行い, 2007年3月改訂版が発刊された。
  • ―厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の全国調査からの解析―
    木原 康之, 大槻 眞
    2007 年 27 巻 3 号 p. 459-462
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    わが国の急性膵炎の1年間の推計受療患者数は, 1982~1986年の14,500人から2003年には35,300人までは増加し, なかでも重症急性膵炎患者が増加する傾向にある。急性膵炎の致命率は1998年の7.3%から2003年には2.9%まで改善した。特に重症急性膵炎の致命率は1982~1986年の30%から2003年には8.9%まで低下し, 著明な改善がみられた。重症急性膵炎死亡例の第1病日の輸液量は1995~1998年, 2003年いずれも急性膵炎における初期診療のコンセンサスの指針で示されている輸液量より少なかった。重症IIおよび最重症例, 第1病日に3~5L輸液した群の致命率はほかの輸液量より低かった。2003年の蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法の治療件数, および治療頻度は1995~1998年に比し, いずれも増加した。膵炎発症から48時間以内に蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法を開始した群の致命率は48時間以降に開始した群より低い傾向にあったし, 蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法を行った場合の感染性膵壊死の合併は非施行群に比し低い傾向にあった。重症II以上の重症急性膵炎患者に持続的血液濾過透析を施行すると, 呼吸不全による死亡の割合が低下した。
  • 辻 喜久, 山本 博
    2007 年 27 巻 3 号 p. 463-467
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    目的・ガイドライン前後で当院での急性膵炎診療の変化を検討した。対象と方法・ガイドライン前群 (24ヵ月) と後群 (24ヵ月) にて, 患者数, 紹介数 (率), 厚労省スコア, 当院受診までの期間, 在院日数, 死亡数, 請求点数を比較した。結果・ガイドライン前群・80人, 後群 : 129人と受診者が増加した (P<0.05)。紹介例は増加 (P<0.05), 受診までの期間は短縮, 厚労省スコア, 在院日数, 請求点数は増加した (P<0.05)。死亡率は有意差は認めないものの17.6%から4.1%と改善した。考察・ガイドライン出版前後で早期紹介例は増加, 死亡率は減少した。早期に重症化が予測された場合, 基幹病院で速やかに治療導入を心がけることが重要であると考えられた。
  • ―発行前後での治療成績の比較検討―
    古屋 智規, 高橋 賢一, 橋爪 隆弘, 和嶋 直紀, 加藤 雅志
    2007 年 27 巻 3 号 p. 469-472
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の診療ガイドラインで診療内容がどのように変わったかを明らかにするため, 重症例82例で, ガイドライン発行 (2003年7月) 前後の重症度, 膵炎発症および重症判定から搬送までの日数, 特殊治療施行率, 致死率を比較した。重症度は厚労省重症度スコア (S), APACHE-IIスコア (A) を使用した。特殊治療は動注療法, 選択的腸管内除菌, 早期経腸栄養, 持続的血液濾過透析, エンドトキシン吸着療法などの血液浄化療法とした。発行前の54例 (S=10点, A=13点 : 中央値) の発症から搬送までの日数は平均17.4日, 重症判定から12.0日で, 特殊治療施行率は75.9%, 致死率は18.5%だった。一方, 発行後の28例は発症から搬送まで6.9日 (重症判定から5.7日) と早く, 特殊治療施行率100%で, 重症度はS=13点, A=19点と高かったが, 致死率は10.7%と低かった。ガイドライン発刊により, 搬送までの日数が短縮し, 早期に適切な初期治療が開始され, 特殊治療の位置づけが明確化して施行率が上昇し, 治療成績が向上したと考えられた。
  • ―ガイドライン公表前後でのICUにおける重症急性膵炎の診療の変化―
    北村 伸哉, 渡邉 栄三, 雨宮 志芳, 中西 加寿也, 平山 陽, 大島 拓, 平澤 博之
    2007 年 27 巻 3 号 p. 473-479
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の診療ガイドラインの導入効果を検証するために, ICUにおける本ガイドライン公表前後の診療の変化を検討した。結果, 公表前 (n=36) の前医における厚労省重症度判定率は6.5%, 重症化からICU入室までの日数は2.4±5.2日であり, 入室時厚労省重症度スコアは8.9±2.9であった。一方, 公表後 (n=30) の重症度判定率は37.8%と上昇 (P<0.01), ICU入室までの日数も0.6±1.4日と短縮 (P<0.03), 重症度スコアは6.4±3.5と低くなった (P<0.03)。しかし, 前医におけるガイドラインの活用率は50%に過ぎなかった。ICUにおける治療法は公表前後で差異はなく, 救命率にも有意差は認められなかった。考察, 本ガイドライン公表後は重症急性膵炎が致死率の高い病態であるとの認識が一般臨床医にも広まり, 重症化からICU入室までの日数も短縮された。しかし, 予後判定が煩雑で, 本ガイドラインの搬送基準が十分に活用されているとは言えなかった。
  • 安田 武生, 上田 隆, 竹山 宜典, 中島 高広, 沢 秀博, 新関 亮, 松本 逸平, 味木 徹夫, 藤野 泰宏, 鈴木 康之, 黒田 ...
    2007 年 27 巻 3 号 p. 481-485
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    (1) 目的・方法, 当科では1990年以降, 重症急性膵炎を139例経験している。治療方針として, 1995年より動注療法, ロングチューブからの経腸栄養を導入し, 1999年以降は現在の「急性膵炎の診療ガイドライン」に一致した形となっている。今回治療方針の変遷により, 前期 (1990~1995年) 52例, 中期 (1995~1999年) 27例, 後期 (1999年以降) 60例の三群に分け, 治療成績を解析した。(2) 結果, 三群間で年齢, 性別, 成因, 重症度に差はなかった。動注療法と経腸栄養の施行率は, 前期から後期にかけ, 著明に増加していた。経過中の臓器障害併発率や感染併発率に差はなかった。しかし, 膵に対する手術施行率は, 前期40%, 中期22%, 後期17%と有意に減少し, 死亡率も, 前期37%, 中期30%, 後期22%と改善していた。(3) 結語, 重症急性膵炎において「急性膵炎の診療ガイドライン」に即した治療は手術を回避し, 死亡率を改善していた。その理由として動注療法と経腸栄養の有用性が示唆された。
  • ―インターネット化, ダイジェスト版, 英文化―
    吉田 雅博, 高田 忠敬, 真弓 俊彦, 平田 公一, 木村 康利, 小泉 勝, 伊佐地 秀司, 武田 和憲, 広田 昌彦, 関本 美穂, ...
    2007 年 27 巻 3 号 p. 487-490
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」は, 1999年から日本腹部救急医学会にて作成が開始された。EBMの手法を取り入れ, 日本膵臓学会, 厚労省難治性膵疾患に関する調査研究班と合同で2003年7月に出版した。これまでに10,000冊が販売されている。出版後の活動 : (1) PDFファイルは, 日本腹部救急医学会と難病情報センターのホームページで閲覧が可能。さらに, 本年より日本医療機能評価機構「医療情報サービス (Minds) 」のホームページに掲示。(2) 最戦線の臨床現場での使用のために, 白衣のポケットに入るダイジェスト版を発行した。(3) 英語版ガイドライン「JPN Guidelines for the management of acute pancreatitis」を2006年2月にJournal of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgeryの学術論文としてSpringer社より出版した。この論文はフリーダウンロードとしており, 全世界どこからでも自由にアクセスし, ダウンロード可能である。(4) 改訂作業は2006年度より開始され, アンケート調査をはじめとする臨床現場からのフィードバックも反映した第2版が, 2007年に発刊予定である。注意点 : 医療訴訟は増加傾向にある。訴訟においてガイドラインは医師が理解していて当然とされる医療水準として, また説明義務の範囲として引用される可能性が高い。内容の十分な吟味と十分なコンセンサスを得る重要性を強調したい。
症例報告
  • 和久 利彦
    2007 年 27 巻 3 号 p. 491-494
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳, 男性。8年6ヵ月前に胃検診目的にて当院受診。胃内視鏡検査で前庭部大彎に隆起性病変を認め, 生検した結果はGroup III, 中等度異型の管状腺腫であった。内視鏡的切除を勧めたが拒否したため, 定期的に胃内視鏡検査を続けた。次第に胃腺腫の増大を認めるも, 生検結果はGroup IIIで中等度~高度異型の管状腺腫であった。繰り返す嘔吐, 心窩部痛, 腹部膨満感を主訴に当院受診。胃内視鏡検査・胃X-P検査・腹部CT検査で, さらに増大した胃腺腫が十二指腸球部へ脱出し, 嵌頓した状態であった。胃腺腫の癌化の可能性を考慮し, 幽門側胃切除術+D1郭清を施行した。腫瘤の大きさは8×7cmであった。病理組織結果は病変の大部分は管状腺腫, 境界悪性病変であるが, 一部に高分化型管状腺癌を認めた。胃腺腫を無治療で長期経過観察した場合, 増大・癌化し十二指腸脱出をきたすことがあるので, 粘膜切除可能な小さな腺腫時に内視鏡的切除を行うべきである。
  • 中堀 泰賢, 仁田 豊生, 水谷 知央, 近藤 哲矢, 山本 淳史, 林 伸洋, 小松 誠一郎, 中島 紳史, 酒井 良博, 尾関 豊
    2007 年 27 巻 3 号 p. 495-498
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性。交通事故で腹部を打撲し, 当院へ搬送された。来院時, 左上腹部に打撲痕や左腰背部に圧痛を認め, 腹部CT検査上, 上腸間膜動脈末梢の腸間膜内に血腫を認めた。血管撮影検査では, 空腸動脈の分枝に多数の破綻を認め, 大きな動静脈瘻を形成していた。多数の流入動脈があり, 血流も豊富であったためコイル塞栓術は困難と考え, 目印のためにコイルを留置し, 手術を施行することとした。開腹すると, Treitz靭帯から肛門側約170cmの腸間膜に血腫を認め, 約90cmに渡って存在していた。術中透視検査を行いコイルの位置を確認し, そこよりも中枢側の動脈を2重結紮後切離した。腸管の切除範囲は血腫が広がる約90cmの範囲とした。術中動静脈瘻の部位を検索するのに, コイルが有用であった。術後経過は良好であった。
  • 前野 良人, 米満 弘一郎, 定光 大海
    2007 年 27 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎を起因として脾梗塞, 脾膿瘍を発症した症例を経験した。症例は76歳, 男性。左季肋部痛で急性発症し, 緊急入院した。当初は保存的に治療を行ったが, 入院6日目に症状の増悪を認め緊急手術を施行した。開腹所見として脾膿瘍の破裂を認め, 膵尾部・脾合併切除を行った。術後経過良好で術後21日目に軽快退院した。
  • 松谷 毅, 江上 格, 笹島 耕二, 宮本 昌之, 横山 正, 丸山 弘, 鈴木 成治, 田尻 孝
    2007 年 27 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    55歳の女性。発熱・黄疸を主訴に来院。血清ビリルビン値とトランスアミナーゼ値の上昇, および腹部CT検査で, 胆道気腫と胆嚢壁の著明な肥厚を認めた。緊急内視鏡的胆道ドレナージを行い, 総胆管結石を認めたが, 胆嚢は描出されなかった。上部消化管造影検査で胃前庭部に瘻孔形成を認めた。術中に胆嚢は同定できなかった。胆嚢と考えられた部位の迅速病理診断で黄色肉芽腫性胆嚢炎が強く疑われたが, 胆嚢癌との鑑別は困難であったため, 拡大胆嚢摘出術, 肝外胆管切除術に加え, 幽門側胃切除術を施行した。再建は肝管空腸吻合および胃空腸吻合とした。病理組織学的診断は黄色肉芽腫性胆嚢炎であった。摘出標本で胆嚢内腔から胃前庭部前壁への瘻孔形成を認めた。黄色肉芽腫性胆嚢炎は比較的まれな疾患で, 胃壁と瘻孔を形成した報告は1例のみであった。
  • 朝蔭 直樹, 小林 滋, 後藤 達哉, 佐々木 森雄, 塚田 健次, 鈴木 貴久, 山本 哲朗
    2007 年 27 巻 3 号 p. 507-510
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    成人臍ヘルニアは本邦では比較的まれな疾患とされている。今回われわれは, 嵌頓4例を含む7例の手術症例を経験したので報告する。年齢は49歳から79歳で男性2人, 女性5人であった。Body Mass Index (BMI) では4例が肥満ないしは高度肥満症例であった。嵌頓例の2例が緊急手術となりうち1例に腸切除が必要であったが, それ以外は待機手術が可能であった。全例術後合併症なく経過し退院した。成人臍ヘルニアは腹水貯留や多産, 高度肥満などによる腹圧上昇が成因で, 小児臍ヘルニアと異なり嵌頓, 絞扼の危険性が高いと言われている。また高度肥満や肝硬変症例では周術期合併症が多いとも言われており, 早期手術を心掛け周術期管理に十分注意していくことが重要であると考えられた。
  • 川崎 誠一, 内野 隼材, 國末 充央, 朴 泰範, 小笠原 敬三
    2007 年 27 巻 3 号 p. 511-513
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    Press-through-package (PTP) 誤飲による非穿孔性腹膜炎の1例を経験した。症例は70歳, 男性。腹痛を主訴に来院した。腹部CTにて小腸内異物と腸間膜脂肪織の混濁所見を認めた。約24時間厳重に経過観察したが, 改善傾向なく, 開腹術を行った。腹腔内には, 広範囲の癒着があり, これを剥離すると, 小腸に多発する漿膜面まで達する非連続的な激しい炎症を認め, 回腸末端近くの異物を認めた。回腸の一部を開放してPTPを摘出し, 脆弱な小腸壁を補強した。術後経過は良好であった。PTPによる小腸異物においては, 一定期間の経過観察後にも臨床所見に改善がなく, 画像にて異物の移動が認められない場合は, 保存的治療に固執することなく早急に開腹術を行うことが重要と考えられた。
  • 田中 松平, 波種 年彦, 千代反田 晋
    2007 年 27 巻 3 号 p. 515-518
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性。既往歴に糖尿病と心筋梗塞があり, 3ヵ所に冠動脈ステント留置術を受け, 突発性心房細動の併発に対し抗凝固薬を投与されていた。右外鼠径ヘルニア術後24年目に再発し, 2年後に嵌頓にて受診した。腹部CTにて腸管の嵌頓が認められた。嵌頓後10時間が経過していたため, 緊急手術を施行した。ヘルニア嚢内に二つ隆起があり, 内外ヘルニアの合併であった。外ヘルニアは腸管の嵌頓で, 内ヘルニアは腹膜外型膀胱ヘルニアであった。嵌頓腸管は壊死に陥っており鼠径操作で切除吻合できず, 下腹部正中切開を追加し, 腹腔内操作にて壊死腸管を切除した。術中膀胱壁をヘルニア嚢と誤認して切開するも2層に縫合し, 修復した。CTをretro-spectiveに検討してみると, 鼠径ヘルニア嵌頓だけではなく膀胱ヘルニアの合併も読影可能と判断された。鼠径ヘルニア嵌頓に本邦ではまれとされる膀胱ヘルニアを併発した症例を報告した。
  • 鈴村 和大, 王 孔志, 藤元 治朗
    2007 年 27 巻 3 号 p. 519-523
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 男性。義歯を誤飲したため近医を受診。同院にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ, 胸部食道に有鈎義歯を認めたため摘出を試みたが困難であったため当院紹介。当院でも内視鏡下での摘出を試みたが, 頸部食道まで引き上げたところで強い抵抗を認め, さらに皮下縦隔気腫も認めたため, 食道穿孔と診断し緊急手術を行った。頸部操作にて食道を露出, 食道を縦切開し有鈎義歯を摘出した。しかし皮下縦隔気腫の原因となった穿孔部を術中に確認できず, また患者が高齢であることも考慮し, 縦隔炎予防を目的として, T-tubeを食道切開部より食道内に留置した。術後は順調に経過し, 術後21日日より経口を開始, 術後28日目にT-tubeを抜去し, 術後41日目に退院となった。有鈎義歯の誤飲と内視鏡処置による食道穿孔に対して, 外科的切開術で摘出した1例を経験したので文献的考察を加え報告した。
  • 大石 康介, 小泉 貴弘, 諏訪 大八郎, 井田 勝也, 石原 康守, 大貫 義則, 鈴木 章男, 中島 昭人, 神谷 隆
    2007 年 27 巻 3 号 p. 525-528
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    腹部緊急手術後の, 感染による腹壁欠損症例を2例経験した。症例1 : 26歳, 男性。交通事故による左側腹部広範囲挫滅創, 腹腔内臓器損傷に対し緊急手術を施行した。術後, 創周辺に感染, 壊死を起こし, 15×10cmの腹壁全層欠損が生じ, Bard Composix Mesh® (以下, メッシュ) で欠損部を充填し, 腹壁を閉鎖した。創部感染の収束を待ち, 腹直筋皮弁を用いた腹壁再建術を行い得た。症例2 : 77歳, 男性。閉塞性大腸炎による大腸穿孔をきたし, 横行結腸部分切除, 人工肛門造設を行った。術後, 空腸皮膚瘻による人工肛門周囲の感染を併発し, 同部周囲に腹壁欠損を生じた。人工肛門閉鎖時, 欠損部は5×10cmとなり, メッシュで欠損部を覆った。感染収束後メッシュを除去, 閉創を行った。高度感染を伴う腹壁欠損の2症例において, メッシュを用いた二期的再建が有効であった。
  • 窪田 寿子, 松本 英男, 浦上 淳, 山下 和城, 平井 敏弘, 角田 司
    2007 年 27 巻 3 号 p. 529-532
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性。腹痛, 発熱を主訴に来院した。白血球数, CRPが上昇し, 腹部超音波検査で小腸に魚骨が穿孔していることが分かった。腹部CT検査では空腸腸間膜に炎症所見はあるものの, 魚骨は同定できなかった。腹部超音波検査で小腸穿孔部位を同定し得たので, 腹腔鏡補助下にて穿孔部を確認し, 空腸切除を施行した。
  • 鈴木 正彦, 水上 泰延, 尾上 重巳, 籾山 正人, 不破 嘉崇
    2007 年 27 巻 3 号 p. 533-536
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    下血で発症し, ダブルバルーン小腸内視鏡下生検時の出血のため緊急手術となった小腸gastrointestinal stromal tumor (以下, GIST) の1例を経験したので報告する。症例は52歳, 男性。主訴は全身倦怠感。約2年間にわたり繰り返す貧血の精査のため入院となった。上部および下部消化管内視鏡検査では異常は認めなかった。腹部造影CT検査で, 右上腹部に直径約6cm大の造影効果の強い腫瘍性病変を認めた。腹部血管造影検査では, 空腸枝から栄養される腫瘍濃染像を認めた。ダブルバルーン小腸内視鏡検査でTreitz靭帯より約25cmの空腸に中央に潰瘍を伴った粘膜下腫瘍を認めた。内視鏡下に生検を行ったが, 多量に出血し, 止血困難となったため開腹下に小腸部分切除術を施行した。病理および免疫組織学的検査では, c-kit, CD34, vimentinが陽性で小腸GISTと診断した。小腸GISTの診断に小腸内視鏡検査は有用であるが, 生検は出血を念頭に置き注意して行う必要があると考えられた。
  • 奥村 拓也, 丸尾 啓敏
    2007 年 27 巻 3 号 p. 537-540
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は90歳, 女性。繰り返す嘔吐を主訴に来院した。腹部単純X線写真にて右季肋部の石灰化像, pneumobiliaを認めた。腹部CTにて十二指腸球部に嵌頓する結石を認め, Bouveret症候群と診断した。血液検査では異常値を認めなかった。MRCPでは嵌頓結石により総胆管は左側に圧排されていたが, 総胆管結石や胆嚢胆管瘻の所見は認めなかった。心房細動および慢性心不全を合併しており, 術前心臓超音波検査では中等度の大動脈弁および三尖弁閉鎖不全症を認めた。手術は幽門輪前壁を切開後, 嵌頓結石を摘出し, 幽門形成術を行った。経過は良好で術後16日目に退院した。重症の併存疾患を有する高齢者におけるBouveret症候群に対しては, 腸管切開による切石術単独でも有効な治療法であると考えられた。
  • 柳川 洋一, 金子 直之
    2007 年 27 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    鈍的脾損傷の初療における治療方針の決定には, 循環動態が最も重要であるが, 近年は造影CTにおける造影剤漏出像に加え, contrast blush (以下, CB) が報告されている。今回遅発性にCBが出現し, 短時間で脾臓が破裂した症例を経験したのでその意義を検討した。症例は65歳, 男性。階段から転落し受傷。他科に入院し, 受傷15時間後にCTで脾損傷・腹腔内出血が認められ当科転科。CTでは脾内の低吸収域と腹腔内出血がみられたが, 循環動態は安定していたため経過観察とした。その後, 経時的に超音波検査で腹腔内出血減少を確認していたが, 第6病日に撮影したCTでCBが出現した。翌日に血管造影を予定したが6時間後にショックに陥ったためCTを再検すると, CBは消失し, 脾臓が破裂し, 腹腔内出血をきたしていた。緊急開腹術で脾摘を行った。CBは脾内の持続性出血を捉えているものと思われ, これを認めたら緊急で血管造影を行うべきと思われた。
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