日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
27 巻, 4 号
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原著
  • 東海林 安人, 平 康二, 中村 豊, 真名瀬 博人, 高橋 収, 菱山 豊平
    2007 年 27 巻 4 号 p. 549-552
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    2000年9月から2005年8月までに, 当院で手術を施行した絞扼性イレウス40例を対象とし, 症例の背景, 絞扼の原因, 臨床症状, 検査所見, 術前診断, 治療, 治療成績を検討した。男女比は1 : 1, 平均年齢は71.2歳, 腹部手術既往は31例 (77.5%) に認め, 下腹部手術が大半を占めた。絞扼の原因は癒着や索状物が半数を占めた。他覚的症状として腹膜刺激症状を23例 (57.5%), ショック状態を8例 (20.0%) に認め, いずれも緊急手術となった。画像所見では腹部CTで腹水貯留を28例 (77.8%), 限局性の腸管拡張を25例 (69.4%) と高率に認め, 術前正診率は85.0%であった。治療は腸管切除が29例 (72.5%) であった。死亡例は5例 (12.5%) で, 多臓器不全が3例, 肺炎等の呼吸不全が2例であった。本症の診断は比較的容易であるが, 術前の全身状態不良例や重篤な術前併存症々例には注意が必要である。
  • 富田 凉一, 丹正 勝久, 小豆畑 丈夫, 藤崎 滋
    2007 年 27 巻 4 号 p. 553-556
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    メッケル憩室は, 時に合併症で急性腹症として手術が行われる。今回, メッケル憩室に起因した急性腹症で, 手術された症例の臨床的特徴を検討した。対象は, 13例 (男性10例, 女性3例, 3ヵ月~64歳) で, 憩室炎6例, 腸閉塞症4例, 憩室穿孔1例, 憩室潰瘍2例 (下血1例) であった。約半数は20歳未満で, 術前診断は腸閉塞6例, 急性虫垂炎5例, その他2例であった。確定診断は, 下血の1例のみで小腸造影によった。主訴は右下腹部痛6例, 腹痛5例, その他2例で1~3年前から症状を繰り返すものが多かった。手術は楔状切除8例, 小腸部分切除5例であった。憩室は回腸末端から30~150cm (平均70cm), 腸間膜反対側に11例, 残りの2例は回腸側壁に位置していた。異所性組織は3例に認め, 胃粘膜2例, 胃粘膜と膵組織の併存1例であったが, 異所性胃粘膜の1例に早期腺癌の併存を認めた。術後合併症はなく, 予後は良好であった。
  • 辻本 広紀, 小野 聡, 望月 英隆
    2007 年 27 巻 4 号 p. 557-562
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    ‹緒言› グラム陽性・陰性菌による生体反応の相違を, toll-like receptor (TLR) と樹状細胞 (DC) に着目して検討した。 ‹方法と結果› DCをpeptidoglycan (PGN ; TLR-2 ligand), lipopolysaccharide (LPS ; TLR-4 ligand) で刺激した結果, いずれの刺激も成熟DCを誘導し, 貪食能の低下を認めた。しかしPGN刺激は遊走能, TNFα, IL-10産生が高度であった。また, mixed lymphoid reactionにより, いずれの刺激によってもDCはT細胞を増殖させたが, PGN刺激DCはIL-2, IFNγ産生増加が特に著明であった。 ‹結語› PGN, LPS刺激によってDCの異なる成熟過程が示され, これらがグラム陽性・陰性菌による生体反応の相違に影響している可能性が示された。以上からsepsisに対する治療戦略には, 細菌が有するTLR-ligandの相違を考慮に入れた治療法を用いる必要があると考えられた。
  • 番場 嘉子, 板橋 道朗, 廣澤 知一郎, 小川 真平, 野口 英一郎, 竹本 香織, 城谷 典保, 亀岡 信悟
    2007 年 27 巻 4 号 p. 563-565
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 大量出血により緊急手術となった症例について, 臨床学的特徴について文献的考察を加え報告する。1998年から2005年までに当科で潰瘍性大腸炎の診断で手術を施行した103例のうち, 大量出血で緊急手術となった9例 (8.6%) を対象とした。術式および合併症などの臨床学的特徴について検討を行った。年齢は平均33.3歳 (21歳から51歳)。男女比は7対2。病型は全症例で全大腸炎型であり, 内科的加療中に大量出血をきたし, 同日緊急手術が施行されていた。手術術式は結腸亜全摘+回腸瘻造設+直腸粘液瘻が2例に, また, 大腸全摘+IACA or IAA+回腸瘻造設 (Pouch operation) が7例に施行されていた。前者は1998年の症例であり, それ以降の症例は後者であった。Pouch operationでは出血は制御可能であり, 腸管の吻合・再建に伴う合併症はほかの原因で手術となった症例と同程度であった。大量出血により緊急手術となった症例の術式としては, 可能であれば積極的にpouch operationを考慮すべきである。
  • 阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 松本 尚, 原 義明, 朽方 規喜, 武井 健吉, 山本 保博
    2007 年 27 巻 4 号 p. 567-571
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    本邦の外傷診療システムの遅れが指摘されている。当科では, 救急室での緊急手術や緊急輸血体制などさまざまな対応により重症外傷例に対する診療を行っており, この治療戦略について検討した。 ‹対象と方法› 腹部緊急手術を要し, 他領域にもAIS3以上の重症損傷を合併した20例を対象とし, 救命群, 死亡群およびPs値0.5以上の群, 0.5未満の群に分けて治療開始時間等を比較検討した。 ‹結果› 救命群16例, 死亡群4例で, 救命群中の9例 (56.3%) は, Ps値0.5未満の救命困難症例であり, 死亡群中3例はPs0.5未満の症例であった。また, 両群間に治療開始までの差を認めなかった。Ps0.5未満の群は0.5以上の群と比べ, 有意に治療開始までの時間が早かった。 ‹まとめ› 当科の多発外傷に対する治療成績は, Ps値からみても比較的良好な結果であった。重症外傷の診療には, 救急室や緊急輸血の体制整備が重要と考えられた。
特集 : 腹部救急診療における最先端画像の応用
  • ―CT-angiographyを中心に―
    佐々木 純, 葛目 正央, 成原 健太郎
    2007 年 27 巻 4 号 p. 575-578
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    腹部救急疾患は, 早期に診断・治療が必要であり, その診断手段としてCT検査は重要である。特に最近MDCT (Multidetector―row CT) により高速化, 高精度化を認め, データーをワークステーションにより処理することによりさまざまな角度から, 画像をみることができる。さらに造影CTからCT-angiographyの作成により, 従来では診断不可能であった, 出血病変や小さな解離, 不完全閉塞などが, 診断できるようになり, 診断的な血管造影を必要としないことが多くなってきている。ほかの検査に比べても現在は診断速度, 精度ともに, 腹部救急疾患におけるMDCTによる検査はますます重要なものとなってきている。
  • 竹内 雅春, 中井 謙之, 朱 明義, 王 孔志, 森川 司朗, 藤元 治朗
    2007 年 27 巻 4 号 p. 579-585
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    食道胃静脈瘤治療において血行動態診断は不可欠であり, われわれはMDCTを用いて食道胃静脈瘤の血行動態診断を行っている。MDCTの3次元画像の表現方法ではVR法とpartial MIP法があるが, 現状では詳細に供血路, 側副血行路診断を行うにはpartial MIP法が有用である。MDCT解析能の向上により, 食道胃静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤造影下硬化療法時に認められる供血路や静脈瘤に関連する細い側副血行路がMDCTでも高率に認められた。この結果から, MDCTで治療前に血行動態診断を行うことが可能であると考えられる。しかしながら, partial MIP法による血行動態診では数枚の画像を提示して血行動態を示さなければならず, 血行動態を把握するためには門脈血行マップを熟知する必要がある。このような問題を解消するために, 1枚の画像で容易に血行動態を把握できるVR法による血行動態診断が短時間で容易に作成されることを期待する。
  • 辻 喜久, 山本 博
    2007 年 27 巻 4 号 p. 587-593
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎の重症化因子の1つに膵壊死があげられる。膵壊死の前段階としての“虚血”を診断できれば, 膵壊死予測が可能となるが, 現在のところ容易ではない。そこで急性脳虚血の予後予測に使用されているPerfusion CTを用いて, 膵血流速度, 膵血流量を算出, 虚血を診断し壊死予測が可能か検討した。後に膵壊死画診断された症例は, 有意に早期の膵血流が有意に低下し, Perfusion CTによる壊死予測の可能性が示された。Perfusion CTの有効性と, 問題点について報告し, また膵血流速度定量の重要性について文献的考察を加え検討する。
  • 杉本 真樹, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 樋口 亮太, 済陽 義久, 矢川 陽介, 仲 秀司
    2007 年 27 巻 4 号 p. 595-599
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    急性胆道炎, 閉塞性黄疸等に代表される胆道救急疾患は, 迅速かつ的確な診断および初期治療が予後を決定する。その中心的存在といえる画像診断は, 従来までPTCD, ERCPなどの直接胆道造影が中心に行われてきたが, 近年はMDCT, DIC-CT, 直接胆道造影と静脈造影のfusionなどさまざまな工夫がされている。われわれの開発した二酸化炭素陰性造影MDCTによる膵胆道造影法CO2 MDCT-CPおよびMDCT angiography (MDCT-A) のfusion法は, ENBD/PTCD経路からCO2を注入し, 動静脈層にてMDCT-APを撮影しfusionさせたもの (fusion CMCPA法) で, 胆道系がCO2の陰性造影効果により透過胆管像として捉えられ, 周囲血管も同時に, 細血管にいたるまで忠実に描出される。これらが1回撮影にて同時にfusionできるので, 救急の現場でも迅速に, 胆道狭窄や閉塞, 拡張の局在診断とその血管侵襲を客観的に評価できる新しい診断toolである。また胆道悪性腫瘍の血管浸潤と深達度診断の同時評価により, 外科的処置や手術術式に代表される治療方針の決定に大きく貢献する。現在fusion CMCPA法は, softwareの開発により手技, 解析操作が簡便化され, 胆道緊急疾患での迅速な対応が可能となった。他領域の腹部救急疾患での臨床応用も実現化され, 今後のさらなる発展が期待される。
  • 大石 達郎, 栗栖 茂, 小山 隆司, 梅木 雅彦, 北出 貴嗣, 高橋 英幸, 大村 典子, 花岡 潤, 若原 鉄平
    2007 年 27 巻 4 号 p. 601-606
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    AquariusNET®はDICOM画像の動画閲覧にとどまらず, 汎用Windowsパソコンを端末として放射線室のサーバーのソフトを動かし, 外科医自らの手で自由に3D画像処理などを行うことができる3D PACSである。AquariusNET®により, MRCPA, MDCT等の2D, 3D画像構築, および動画観察が容易となり, 胆石症 (急性胆嚢炎), 急性虫垂炎といった日常よく遭遇する疾患から, 腹部内臓動脈瘤破裂, 大網捻転症, 子宮広間膜裂孔ヘルニアといった診断に難渋する疾患まで, 各種腹部救急疾患の診断, 治療に有用であった。今後, MRI, MDCTなどの進歩に伴い, PACSの必要性はさらに高まると思われる。
  • ―ワークフローおよびワークステーション (PACSシステム) ―
    加藤 弘毅, 水沼 仁孝, 菅原 俊祐, 杉山 宗弘
    2007 年 27 巻 4 号 p. 607-611
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    大田原赤十字病院では2005年秋に, 救急対応の64列Multi-slice Computed Tom ography (以下, MSCT) Magnetic Resonance Imaging (以下, MRI) ・デジタルX線テレビ・フラットパネル救急撮影装置を導入した。導入までの経緯, およびその運用・体験した症例について報告する。CT・MRの進歩で得られる画像情報は急速に膨大し, 圧倒的な情報量の多さに押し流されつつあるのが現状であり, 救急画像診断学に精通した画像診断医により適切に運営される画像診断システムの存在がより重要となる。
症例報告
  • 加藤 拓見, 高屋 快, 鈴木 龍児, 澤田 正志, 北村 道彦
    2007 年 27 巻 4 号 p. 613-616
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    胃癌穿孔は比較的まれな病態で, 胃癌全体の1~3%との報告が多い。胃癌穿孔は緊急手術の適応であり, かつ全身状態や進行度, 根治性の有無などが症例毎に異なるため, 個々の症例に応じた治療法を考慮する必要がある。今回, 最近経験した1例を報告するとともに最近5年間に経験した5例について検討したので報告する。症例は63歳, 男性で上部消化管内視鏡で幽門部に2型の病変を認めたが, 検査後に腹部全体に筋性防御を伴う圧痛が出現し, 腹部CT検査で腹腔内遊離ガス像を認めたため, 胃癌穿孔による腹膜炎の診断で緊急開腹手術となった。開腹すると胃前庭部に胆嚢・膵臓へ直接浸潤する穿孔性2型腫瘍を認めた。根治手術は不能と考え, 穿孔部大網充填, 胃離断および胃空腸吻合を施行した。当科における2002年から2006年までの胃癌穿孔症例は5例であり, 平均年齢は70.6歳, 病期はII期が1例, III期が2例, IV期が2例であり, 胃全摘が2例, 幽門側胃切除, 胃空腸吻合, 大網充填がそれぞれ1例ずつであった。胃空置・胃空腸吻合は手技が簡便であり, かつ穿孔部への食物流入が防げる術式であるため, 根治術不能の胃癌穿孔症例には試みてもよい術式であると思われる。
  • ―絹糸を使用することの問題点―
    川崎 誠一, 小笠原 敬三
    2007 年 27 巻 4 号 p. 617-618
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性。直腸脱の診断で他院にてGant-三輪法手術を施行された。術後経過良好であったが, 術後21日目大量下血を主訴に当科紹介され入院となった。下部消化管内視鏡検査にて, 直腸膨大部を中心に多量の凝血塊を認め, さらに同部位にGant-三輪手術で形成された粘膜瘤を多数認めたが, 出血部位は同定不可能であった。経過観察にても新たな下血は認めず退院となったが, 術後59日目再び大量下血を認め当科受診。下部消化管内視鏡検査にて残存した縫合糸付近の粘膜から出血をきたしていたため, 可及的に縫合糸を除去した。その後下血を認めず軽快退院となった。直腸脱に対するGant-三輪法術後においては, 術後長期間経過した後でも大量下血を呈することがあり, 注意が必要である。
  • 山崎 将人, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 手塚 徹, 小杉 千弘, 杉本 真樹, 済陽 義久, 大瀧 怜子, 仲 秀司, 竹上 智浩, 高橋 ...
    2007 年 27 巻 4 号 p. 619-622
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性。主訴 : 右下腹部痛。既往歴 : 1995年8月左乳癌手術, 2000年左鎖骨上部転移へ放射線治療。現病歴 : 2004年8月より両肩から頸部の痛みが出現し, 多発骨転移, リンパ節転移, 多発肺転移の診断にて9月下旬麻酔科入院, 疼痛管理を開始した。痛みは塩酸モルヒネ100mg/日の定時皮下注とdiclofenac sodium 25mg座薬を3~4回頓用でコントロールされた。ADLも拡大したが治療開始後第24病日夜より右下腹部痛出現, 翌日のCT, 単純X線写真にてfree airを認め当科紹介, 緊急手術となった。開腹時, ガスの噴出と腹部全体に膿性腹水を認め, 大網の癒着を剥離するとS状結腸に5cm大の穿孔を認めた。S状結腸は脆弱でハルトマン手術を施行, 病理結果では非特異的大腸潰瘍穿孔であった。術後敗血症性ショック, DICにてICU管理を要したが術後第6病日一般病棟へ転棟した。その後, 複数科による緩和治療を行った結果, 寝たきりになることなく術後5ヵ月, 余命を過すことができた。
  • 伊在井 淳子, 松田 好郎, 小熊 信, 阿南 陽二, 八巻 孝史, 佐澤 由郎, 太田 智之
    2007 年 27 巻 4 号 p. 623-626
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎による膵頭部の壊死部から, 十二指腸へ瘻孔を形成し, 十二指腸周囲のドレナージと内腔の減圧により, 瘻孔の閉鎖が得られた1例を報告する。症例は73歳, 女性で, 結石嵌頓による急性胆管炎および急性膵炎のため入院した。緊急内視鏡的乳頭切開術を施行し, 保存的治療を開始した。経過中, 膵周囲に広範な壊死を生じ, 発熱が持続したため, 発症から1ヵ月後に小網付近の壊死部を超音波ガイド下に穿刺吸引した。穿刺部から造影剤を注入すると, 膵頭部を経由して十二指腸下行脚が造影された。吸引した膿汁からはProteus mirabilisが培養された。以上より, 十二指腸瘻を伴う感染性膵壊死と診断し, 手術適応として, necrosectomy, 胆嚢摘出, Cチューブドレナージ, ならびに胃瘻, 経胃的十二指腸外瘻, 空腸瘻および空置的回腸瘻の造設術を施行した。術後, 膵および十二指腸周囲のcontinuous closed lavageと経胃的十二指腸外瘻からの持続吸引で, 8週後に瘻孔は閉鎖した。
  • 山本 貴之, 篠原 正彦
    2007 年 27 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性。2003年11月肺癌 (adeno T2N1M0, stage III a) にて治療を勧められるも, 本人希望にて無治療で外来経過観察されていた。2005年4月中旬頃より咳嗽が頻回となり, 4月下旬当院救急外来受診, 入院となった。翌日朝より下腹部痛出現し, ショック状態となったため腹部CTを施行し, 腹腔内遊離ガスを認めたため, 当科紹介。緊急手術を施行した。開腹すると腸液状の腹水を認め, 小腸腫瘍の穿孔を認めた。病理組織診断では肺癌の小腸転移であった。術後, MOFの状態となり術当日死亡した。肺癌の小腸転移に伴う穿孔性腹膜炎は, 比較的まれであるが, その予後は不良であり, 早期診断が重要である。これらにつき若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 森本 守, 早川 哲史, 柴田 直史
    2007 年 27 巻 4 号 p. 631-634
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は, 70代, 女性。上腹部痛を主訴に来院。腹部CTにて右後腹膜下にガス像を認めた。消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚の乳頭側に魚骨の穿通を認めた。全長32mmの魚骨で, 現病歴より鰤のものと診断した。内視鏡下に魚骨を除去し, 保存的に治療したが, 入院後第5病日の臨床所見と腹部CTより後腹膜膿瘍と診断し, 後腹膜膿瘍ドレナージ術を施行した。術後経過は良好で, 術後16日目に退院となった。誤嚥魚骨の十二指腸穿通による後腹膜膿瘍は, 本邦3例目の報告であり非常にまれな症例であった。
  • 佐々木 省三, 鎌田 徹, 竹下 雅樹, 能登 正浩, 尾山 勝信, 吉本 勝博, 神野 正博
    2007 年 27 巻 4 号 p. 635-638
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    患者は80歳の女性。食後の嘔吐を主訴に近医を受診し, 胸腹部X線検査にて腸閉塞, 横隔膜ヘルニアを疑われ当科に紹介された。腹部に拡張した腸管を触れたが圧痛は軽度であった。胸腹部X線検査所見では縦隔内に拡張した大腸を認め, 胸腹部CT検査では食道裂孔より縦隔内に横行結腸が嵌頓していた。また, 腸間膜の捻転を認めたため緊急手術を行った。食道裂孔より縦隔内に嵌頓した横行結腸を腹腔内に還納したところ, 虚血は軽度であったが, 捻転部位にて結腸が狭窄し通過困難な状態であったため, 横行結腸部分切除術と人工肛門造設術を施行した。胃には軽度の滑脱型ヘルニアを認め, メッシュを用いた食道裂孔の閉鎖と噴門形成術を併施した。術後経過は良好であった。食道裂孔ヘルニアへの横行結腸の嵌頓はまれな病態であるが, 穿孔, 壊死例の報告もみられるため, 高度の食道裂孔ヘルニアではその可能性を考慮し治療する必要があると考えられた。
  • 森田 誠市, 田澤 賢一, 吉田 徹, 新保 雅宏, 山岸 文範, 塚田 一博
    2007 年 27 巻 4 号 p. 639-643
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    特発性胃破裂の1例を経験したので報告する。症例は17歳の男性で, 前日からの上腹部痛の増悪を主訴に外来を受診し, 腹部に筋性防御と反跳痛を認めた。X線・CTでは腹腔内遊離ガスを認め, 消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断し, 緊急手術を施行した。胃体部前壁小彎側に約5cmの裂創を認めた。破裂部周囲の胃粘膜は発赤・浮腫状ではあったが潰瘍形成等は認めず, 単純縫合閉鎖術, 腹腔ドレナージ術を行った。術後の上部消化管内視鏡検査では破裂部に一致した瘢痕と食道裂孔ヘルニアを認めた。潰瘍, 癌, 酸・アルカリの内服, 外傷などの原因の明らかでないものが特発性胃破裂とされ, 本邦では小児例を除くと22例の報告に止まる。発症機序には胃の過膨張と嘔吐が関連することが多いが, 自験例では過膨張がみられず, 食道裂孔ヘルニアの存在と嘔吐が原因と考えられた。
  • 菅 隼人, 古川 清憲, 鈴木 英之, 鶴田 宏之, 松本 智司, 秋谷 行宏, 寺西 宣央, 佐々木 順平, 石川 義典, 田尻 孝
    2007 年 27 巻 4 号 p. 645-649
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は83歳, 女性。約2年前に肛門Paget病で腫瘍切除術を受けたが, その後肛門機能不全を生じたためS状結腸に人工肛門を造設した。今回, 便秘・腹満を主訴に外来を受診した。大腸イレウスを呈するとともに, 指診でストーマ入口部から3cm口側に狭窄を認め, 緊急入院となった。大腸内視鏡検査で狭窄部腸管に全周性の潰瘍を認め, 同部生検で虚血性腸炎の所見が得られた。一旦イレウスは解除したが, 腸管の瘢痕性狭窄が進行する可能性が高いと判断し, 入院3週間後に手術を施行した。腸回転異常症の一種である結腸の固定異常を認め, ストーマの腹壁固定部の口側腸管が時計回りに約90度捻れ, 同部に大網が癒着していた。ストーマと共に狭窄部腸管を切除し人工肛門を再造設した。本症例は腸管の先天性固定異常のため, 便の重みによりストーマの腹壁固定部の口側結腸に捻れと, それに伴う慢性的な血流障害が生じてストーマ狭窄が発生したと推定された。
  • 井上 雅文, 山下 好人, 川添 義行, 青松 敬補, 平川 弘聖
    2007 年 27 巻 4 号 p. 651-653
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性。既往歴 : 3年前より脳梗塞にてアスピリンを内服中。現病歴 : 2005年7月上旬, 腹痛を認めたため近医を受診し, 腸間膜脂肪織炎の疑いにて当院紹介入院となる。左下腹部の圧痛を軽度認めたが, 腹部打撲の既往はなかった。検査所見は白血球11,000/mm3, Hb11.0g/dl, 腹部単純CTでは右上腹部の腸間膜が肥厚していた。腹部US下に腹水穿刺を行ったところ, 血性であったため, 腸間膜血腫ならびに腹腔内出血と診断した。血管造影検査にて右結腸動脈起始部より2~3cmの部位から末梢側にかけて著明な拡張を認めたため, 出血の原因は動脈瘤の一種であるSegmental arterial mediolysis (SAM) によるものと診断した。全身状態は安定していたため保存的加療を行い, 入院17日目のCTにて腸間膜血腫はほぼ消失し, 軽快退院となった。現在, 1年5ヵ月が経過しているが, 腹腔内出血の徴候は認めていない。
  • 長島 真理子, 石崎 嘉宏, 島田 一郎, 後藤 守孝, 高橋 茂樹, 瓦井 美津江
    2007 年 27 巻 4 号 p. 655-658
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 男性。便秘と腹痛のため近医受診。急性虫垂炎の疑いで当院に紹介された。患者は下腹部全体の痛みを訴えており, 右下腹部に圧痛, 筋性防御を認めた。CTで回腸とS状結腸の壁肥厚を認め, 限局性腹膜炎の診断で同日緊急手術を施行した。開腹時, 回腸末端から約6cm口側, 腸間膜側に穿孔を認めた。回盲部切除を行った。病理組織学的には, 非特異性の炎症反応のみで, Behcet病の徴候を認めず, 孤立性回腸単純性潰瘍と診断された。小腸単純性潰瘍は比較的まれな疾患である。われわれは, 若干の文献的考察を加え報告する。
  • 元宿 めぐみ, 種田 靖久, 森川 五竜, 星川 竜彦, 中村 知己, 田島 隆行, 向井 正哉, 幕内 博康
    2007 年 27 巻 4 号 p. 659-662
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性。持続する左下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。理学的所見上, 発熱, 腹痛は軽度であったが, 腹部CTでS状結腸から上部直腸周囲に炎症所見を認めたため, 経過観察目的に入院となった。入院後の大腸内視鏡検査では同部位にシート状異物を認め, さらに, 翌日の腹部CTでS状結腸周囲に腹水と腹腔内遊離ガスがみられたことより, 異物による大腸穿孔を疑い, 緊急手術を施行した。上部直腸からS状結腸周囲には多数の膿苔と限局性の混濁した腹水がみられた。さらに, S状結腸右壁に便汁の流出する小穿孔部を認め, 同部を切除しHartmann術を施行した。切除標本では, PTP (press through package) の角が腸粘膜を損傷し潰瘍を形成しており, 一定の時間的経過を経て穿孔を起こしたものと思われた。近年, PTP誤飲の報告は増加しているが, 大腸穿孔例は極めて少ない。誤飲の自覚がなく, 術前診断困難例が多いことより, 高齢者における穿孔性腹膜炎の一因として念頭に置くべきであると思われた。
  • 品川 誠, 小竹 優範, 高田 宗尚
    2007 年 27 巻 4 号 p. 663-666
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳, 女性。突然出現した右上腹部痛を主訴に来院した。右季肋部に手拳大に腫大した胆嚢を触知し, 腹部CT検査で胆嚢結石を認めたが, 壁肥厚などは認めなかった。胆嚢は肝床と接しておらず, 右下方に下垂し, 胆嚢頸部は管腔構造が途絶し不明瞭であった。また, 同部に低吸収帯に囲まれた高吸収部を認めた。その後, 胆嚢は臍部に変位し, 39℃を超える発熱と腹膜刺激症状が出現した。CRPは21.8mg/dl と上昇したが, 肝胆道系酵素は正常であった。再CT検査で, 胆嚢壁肥厚と限局性腹膜炎の所見を認めた。以上より胆嚢捻転による胆嚢壊死と診断し, 緊急手術を施行した。開腹したところ, 反時計方向に約360度捻転したGross I型の胆嚢捻転症であった。病理組織学的検査では胆嚢体部, 底部に出血を伴う壁の全層性壊死を認めた。
  • 宇野 雅紀, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 三宅 秀夫
    2007 年 27 巻 4 号 p. 667-670
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2008/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性。トラック運転中に電柱に衝突。腹痛増悪し, 受傷後約10時間で当院救急外来へ搬送された。CTおよび内視鏡的逆行性膵管造影を行ってIII b型膵損傷と診断し, 緊急手術を施行した。膵頭部は広範囲に深い損傷を認め, 主膵管の同定が困難であったため, 損傷部のドレナージのみ行った。術後ドレーンの持続吸引で膵液漏出の限局化を図り, 瘻孔化した。瘻孔造影では尾側主膵管のみが造影され, 頭部膵管との交通は認めなかった。外膵液瘻の状態で退院し, 初回手術から約4ヵ月後に瘻孔空腸吻合術を行い治癒した。III b型膵損傷に対するドレナージ術は, その後の膵液漏に対する適切な処置が必須となるが, 術式が単純で低侵襲であり, 膵機能が温存される点から, 有用な術式であると考えられた。
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