日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
28 巻 , 6 号
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原著
  • 池田 寿昭, 池田 一美, 谷内 仁, 上野 琢哉, 須田 慎吾, 松野 直徒
    2008 年 28 巻 6 号 p. 765-770
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    腹腔内感染症を契機とした重症敗血症/敗血症性ショックに対し,PMX-DHPが施行された126症例(生存群:85例,死亡群:41例)を対象に,PMX-DHPの臨床的評価と各種メデイエーターを測定した。生存群では,90%以上に感染症に対する外科的処置が行われており,現病巣に対する外科的処置の重要性が再認識させられた。重症度(APACHEIIスコア1),SOFAスコア2))などの背景因子は,生存群と死亡群の間に有意差は認めなかった。循環動態は,両群ともPMX-DHP後改善したが,PaO2/FIO2は,生存群でのみPMX-DHP後有意に増加するも,死亡群では有意な変化ではなかった。Procalcitoninは,PMX-DHP施行前値は,両群とも高値を呈していたが,2時間の施行にて,生存群で有意に低下し,PCT値とエンドトキシン値の関連が示唆された。
  • 青笹 季文, 渡邉 善正, 南部 弘太郎, 塩谷 猛, 山田 太郎, 渋谷 哲男
    2008 年 28 巻 6 号 p. 771-774
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    地域の医療機関の医師が,検査や入院が必要と判断した時に利用してもらうことを,主な目的とした病院である地域医療支援病院における急性虫垂炎手術症例189例の特性について検討した。皮膚切開法は,斜切開98例(51.9%),傍腹直筋切開91例(48.1%)であり,病理学的診断による炎症の程度は,カタル性8例(4.2%),蜂窩識炎性99例(52.4%),壊疽性82例(43.4%)と壊疽性虫垂炎の頻度が非常に高く,また54例(28.6%)の症例にドレーン留置を行った。成人と小児の間では炎症の程度に差を認めなかったが,小児では傍腹直筋切開は6例(13.6%,6/44),またドレーン留置は3例(6.8%,3/44)のみであった。急性虫垂炎に対するかかりつけ医の紹介判断および手術適応はおおむね正しく,また皮膚切開法の選択もおおむね正しかったものと考えられた。
  • 小川 普久, 滝澤 謙治, 船窪 正勝, 八木橋 国博, 中島 康雄, 田所 衛
    2008 年 28 巻 6 号 p. 775-780
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    【目的】消化管に対するN-butyl-2-cyanoacrylate-Lipiodol混合液(以下,NBCA-LPD)を用いた経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:以下,TAE)の濃度別安全性について,動物実験を行い検証した。【対象】ブタ3頭の腸間膜動脈分枝9本,比較対象として腎動脈分枝9本の計18本を選択。NBCA-LPD濃度を原液,4倍,5倍,10倍に分けた。臓器摘出時期を,塞栓術直後(ブタA),24時間後(ブタB),72時間後(ブタC)に分け,腸間膜動脈においては,ブタA,Cで空腸枝・結腸枝を,ブタBでは隣接する空腸枝2本,結腸枝・回結腸枝を選択した。組織標本を作製し,Oil-red染色にてNBCA-LPDの分布を,H-E染色にて組織障害の有無を評価した。【結果】ブタA,CではいずれのNBCA-LPD濃度においても腸管壊死は認めなかった。ブタBでは,塞栓範囲全域で腸管壊死を認めた。一方,腎では希釈倍率によらず,ブタB,Cにおいて塞栓領域は壊死に陥っていた。【結語】低濃度NBCAによる腸間膜動脈塞栓術は,単独分枝での超選択的塞栓術を行えば臓器壊死を起こしにくいことが示唆された。
特集:腹部実質臓器損傷の治療戦略―手術か,IVRか,保存的治療か,私はこうして決めている―
  • 川元 俊二, 稲田 一雄, 永尾 修二, 金丸 隆幸, 児玉 利勝, 落合 亮二, 柴田 亮輔, 石井 泰, 福永 昌彦, 永田 寿礼, 内 ...
    2008 年 28 巻 6 号 p. 783-790
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    重症肝損傷,とりわけnon responderに対する治療体系を,Damage controlに基づいた初期治療(UM)と肝関連遅発性合併症に対する十分な管理と計画的治療(PM)として位置付け,1996年より行ってきた。当院の治療戦略の特徴はnon responderに対して,肝動脈塞栓術を適応拡大して行っている点と,肝壊死,胆汁性腹膜炎などの遅発性合併症に対する厳密なモニタリングと計画的治療の実践である。IIIb(+HV)型に対するUAEの救命率は91.3%(21/23)で,non responderに対するUAEの救命率は84.6%(11/13)だった。遅発性合併症による死亡はなく,待機的肝切除を含めたPMは初期治療の臨床的意義を高め,成績向上に寄与すると思われる。
  • 高田 実, 大野 耕一, 関下 芳明, 中田 玲子, 和田 秀之
    2008 年 28 巻 6 号 p. 791-796
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    IVRの技術の進歩とともに手術を行うことなく外傷性肝損傷の治療ができる症例が増加している。その一方でInterventional Radiology(以下,IVR)の治療基準を明確にしている報告は少なく,緊急開腹かIVRかを迷う症例も存在する。基本的な考え方として,循環動態不安定な症例やFocused Assessment with Sonography for Trauma(以下,FAST)により腹腔内出血が明らかな症例は緊急手術を考慮する。循環動態が安定している症例はSecondary surveyとして造影CT検査を行い,日本外傷学会肝損傷分類を参考に治療方針を決定する。III型損傷は基本的にIVRの適応と考えて良い。開腹かIVRかではなく,手術の後Transcatheter Arterial Embolization(以下,TAE)を行ったり,TAEに引き続き手術を行うといったコンビネーションの治療も今後の選択肢の一つとすべきである。外傷性肝損傷に対する当院の治療方針と当院の救急医療の現状と問題点について言及した。
  • 関根 和彦, 北野 光秀, 山崎 元靖, 船曵 知弘, 清水 正幸, 松本 松圭, 吉井 宏, 相川 直樹
    2008 年 28 巻 6 号 p. 797-801
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    重症肝損傷に対する治療戦略を自験例から検討した。対象は過去16年間に経験した鈍的IIIb型重症肝損傷(またはAAST grade IV/V)とした。初期輸液療法により循環が改善し非手術的治療を開始した34例では,3例が急性期に開腹手術を要し,いずれも開腹所見で肝静脈損傷を認めた。重症肝損傷患者における肝静脈損傷は,急性期における循環動態悪化の決定的因子であり,循環動態に関わらず手術適応とすべきである。非手術的治療の補助療法として,TAEが動脈性血管外漏出像12例と仮性動脈瘤1例に超選択的に行われ,再出血は認めなかった。限定された適応での確実なTAEは安全かつ有効な治療法となるが,超選択的でない塞栓術の乱用は避けるべきである。手術的治療の全24例の救命率は,Damage control surgery(以下,DCS)7例で14.3%(1/7),肝切除術17例では94.1%(16/17)だった。ロジスティック解析から,骨盤輪骨折とAIS4以上の胸部外傷が死亡転帰の独立因子であった。腹腔外損傷を合併しない重症肝損傷に対しては,肝切除術の治療成績は良好であり,安易なDCSはむしろ術後の出血・感染性合併症を増加させる可能性がある。胸部や骨盤の重症外傷を合併する最重症例の治療戦略は今後の課題である。
  • 阪本 雄一郎, 益子 邦洋
    2008 年 28 巻 6 号 p. 803-807
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    (はじめに)当科では,外傷患者に対する初期輸液療法の反応やdamage control surgery(DCS)の決断基準を定め治療方針を決定している。(対象と方法)1994年1月から2006年6月までに当科において経験した肝損傷289例中,来院時心肺停止症例を除く247例を対象として,積極的止血法を選択する際に選択すべき止血法について検討した。また,IIIb型肝損傷の検証からさらなる救命率の向上について考察した。(結果)IVR施行の9例は全例responderかstableの症例であり,全例救命されていた。transient responderもしくはnon responderの症例は全例開腹手術が施行されており,死亡例は全例DCS施行例であった。IIIb型肝損傷の救急室開腹手術例は,来院から手術開始までの平均時間は39.1分,平均ISS 42.3,平均Ps 0.413であり3例(42.9%)を救命し得ていた。(考察)止血を要する肝損傷の治療法選択に当科の外傷初期輸液の反応は有用であり,今後は外傷症例の集約化が重要である。
  • 仲 成幸, 塩見 尚礼, 井内 武和, 来見 良誠, 河野 直明, 田中 豊彦, 新田 哲久, 古川 顕, 谷 徹
    2008 年 28 巻 6 号 p. 809-812
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    鈍的肝損傷および脾損傷に対する治療法の選択について,損傷形態および治療成績をふまえ外科の立場より検討した。当科において入院加療した鈍的肝損傷29例および鈍的脾損傷18例を対象として検討した。日本外傷学会分類で,肝損傷形態はIa:1例,Ib:6例,II:3例,IIIa:4例,IIIb:13例であった。同じく,脾損傷形態はI:1例,II:4例,IIIa:5例,IIIb:2例,IIIc:4例,IIId:1例であった。肝損傷において,TAEはIIIa,IIIbの症例のうち8例に施行され全て止血に成功した。開腹手術はIIIa,IIIbの症例のうち10例に施行され,このうち1例に対し初回damage control surgeryを行った。脾損傷において,TAEはII型およびIII型症例各1例に施行された。III型症例12例では全例開腹手術を必要とし,脾縫合術1例,部分切除術1例,脾臓摘出手術10例であった。血流豊富な肝および脾の損傷において,初療時最も重要なことは出血をコントロールし循環動態を安定させることである。循環動態の変化を注意深く観察しながら肝および脾における損傷の程度と他臓器損傷の有無を考慮に入れ,手術またはIVRによる治療方針を決定すべきである。
  • 岡田 治彦, 佐藤 浩一, 伊能 壮, 橋本 貴史, 井上 裕文, 櫛田 知志, 櫻田 睦, 前川 博
    2008 年 28 巻 6 号 p. 813-818
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    近年の外傷性脾損傷症例に対する非手術的治療の成功率の上昇は,TAEの寄与するところが大きい。今回われわれは,非手術的治療の成功/非成功の予測因子となりうるものを探るべくさまざまな因子についての検討を行った。また,脾損傷の形態分類に,日本外傷学会脾損傷分類のほかにAmerican Association for the Surgery of Trauma(以下,AAST)スケールも適応し検討した。2000年9月から2006年7月の約6年間,31例の外傷性脾損傷症例が対象となった。初期治療では,8例(26%)が外科的手術となった。19例(29%)が血管造影を受け,そのうちの16例にTAEを行った。非手術的治療の成功は13例(42%)であった。AAST gradeIII以上,日本外傷学会分類IIIc以上,濃厚赤血球輸血を施行したもの,脾動脈近位で塞栓を行ったものがTAE非成功との相関を認めた。左腎損傷を伴った症例は,脾臓もより重度の損傷であることが多かった。
  • 平川 昭彦, 下戸 学, 津田 雅庸, 岩瀬 正顕, 村尾 佳則, 中谷 壽男
    2008 年 28 巻 6 号 p. 819-823
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    外傷性脾損傷の治療は,緊急開腹術による脾臓摘出が一般的治療法であった。しかし,近年の治療は画像診断の精度向上,IVRの普及により非手術療法の適応が拡大されている。当センターの治療指針として,(1)循環動態が安定している例もしくはresponder例の場合は経過観察を行い,出血増加や腹部所見にてTAEや手術を考慮(2)Transient responder例の場合,単独損傷ならTAE,他部位損傷を合併しているなら,TAEもしくはTAEと原因疾患の治療(3)Non responder例は腹腔内損傷が主であるなら開腹手術を行うべきである。ただし,脾臓損傷例は他部位合併損傷例が多いため,搬入時ショックを呈した症例の治療法は優先順位を早期に決定し,総合的判断にて診断および治療を施行しなければならない。
症例報告
  • 藍澤 哲也, 船田 幸宏, 立花 幸人, 木村 靖彦, 内田 雄三, 矢野 彰一, 野口 剛
    2008 年 28 巻 6 号 p. 825-828
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    患者は18歳男性。バイク運転中,左折する普通乗用車に巻き込まれて受傷し,当院救急外来に搬送された。左腎周囲の血腫を認めるも循環動態は安定していたため,ICUにて保存的治療を開始した。第2病日,依然として循環動態に変動はみられなかった。腹部CTで尿の尿管外漏出を認め,逆行性尿管造影を行ったところ腎盂は描出できず,腎盂腎杯まで達する尿管損傷を疑った。循環動態は安定しており,尿管ステントを留置した。その後腹膜刺激症状が出現,徐々に増強したため,第3病日,左腎摘出術を施行した。術後の摘出標本割面で腎盂腎杯が腎実質より引き抜かれていた。本症例のような腎実質損傷をほとんど伴わない腎盂腎杯引き抜き腎損傷は極めてまれである。尿管損傷の症例では,尿管ステント留置では改善しない本症例のような例もあることを留意しておかねばならないと考える。
  • 檜垣 栄治, 安部 哲也, 岡田 禎人, 広松 孝, 會津 恵司
    2008 年 28 巻 6 号 p. 829-832
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂は縦隔炎から重篤な経過をたどる救急疾患である。今回,われわれは肺気腫併存特発性食道破裂に対し,経腹的に破裂部を修復し,良好な経過を得た1例を経験した。症例は53歳の男性で嘔吐後の胸腹部痛を主訴に来院した。造影CTで下縦隔に液体貯留および気腫を認め,上部消化管造影検査で下部食道左壁より縦隔内に造影剤の漏出を確認した。特発性食道破裂と診断し,保存的治療を開始した。発症後40時間経過した時点で炎症反応の悪化,縦隔気腫の増大を認めたために手術を施行した。手術は低肺機能を考慮し,経腹的アプローチを選択した。食道裂孔を切開すると破裂部が良視野に確認できたため,同部位を縫合閉鎖し大網で被覆した。破裂部が胸部下部食道に限局していれば経腹的アプローチは可能であり,全身状態不良例や低肺機能例には有用な術式である。
  • 藤井 幸治, 高橋 直樹, 熊本 幸司, 松本 英一, 高橋 幸二, 宮原 成樹, 楠田 司, 村林 紘二
    2008 年 28 巻 6 号 p. 833-837
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    58歳,男性。散弾銃が至近距離から患者の左腰部に命中し,受傷約2.5時間後に当院に搬送された。顔面蒼白であるも意識清明。血圧130/70mmHg,脈拍66/minであった。左腰部に径4cmの射入口を,右側腹部に4ヵ所の射出口と2個の弾丸を認めた。L2以下の知覚鈍麻と下半身麻痺を認めた。CTにて左腰部から右側腹部に銃創を認め,弾丸貫通による腰椎粉砕骨折,さらに腹腔内に腹水およびfree airを認めた。救急搬送約80分後に緊急開腹術を施行した。十二指腸下行脚に1ヵ所,回腸に5ヵ所の穿孔部を認め,回結腸動脈が断裂していた。腰椎を貫通した弾丸は下大静脈と右尿管の間を通過しており大血管損傷は免れていた。回盲部切除,十二指腸穿孔部閉鎖,胃空腸バイパス,腹腔内洗浄ドレナージ術を施行し,皮下の弾丸を2個摘出後,左腰部射入口を洗浄,閉創した。下半身麻痺のため,術後33日目にリハビリ目的に整形外科に転科となった。
  • 雄谷 慎吾, 宮田 完志, 湯浅 典博, 三宅 秀夫, 小林 陽一郎
    2008 年 28 巻 6 号 p. 839-841
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    症例は89歳,女性。1966年,直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行された。以前より人工肛門部に膨隆を自覚していたが放置していた。2006年8月,腹痛,嘔気,嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された。人工肛門周囲に固い腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた。ストーマ旁ヘルニア嵌頓の診断にて緊急手術を施行した。約3cmのヘルニア門から小腸が脱出し絞扼壊死しており,小腸を約50cm切除した。ヘルニア門は直接縫合閉鎖にて修復した。術後経過は良好で,第11病日に退院となり,2008年2月現在,再発を認めていない。
  • 川口 雅彦, 宗本 義則, 寺田 卓郎, 宇野 彰晋, 笠原 善郎, 藤澤 克憲, 三井 毅, 飯田 善郎, 三浦 将司
    2008 年 28 巻 6 号 p. 843-846
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    大網捻転は大網の血行障害による腹痛を主訴とする比較的まれな疾患である。症例は50歳代男性で右側腹部痛を主訴に来院した。腹部超音波検査およびCT検査にて,右側の大網が部分的に腫大,捻転が疑われた。腹腔鏡にて腹腔内を観察すると右上腹部に周囲の腸管と一塊となり捻転した大網が前腹壁に癒着していた。この大網塊を周囲から剥離し切除,さらに癒着していた腸管にメッケル憩室を認め,同時に切除を行った。病理組織検査では大網に出血壊死を認め,メッケル憩室におよんだ炎症は漿膜側のみであった。腹痛の原因は大網捻転によると考えられたが,隣接してメッケル憩室が癒着していたことから,過去のメッケル憩室炎による癒着が捻転の遠因になったと考えられた。続発性大網捻転の原因としてメッケル憩室の関与を報告した文献は過去になく貴重な症例と考えられ,腹腔鏡下手術による腹腔内検索の有用性とあわせて報告した。
  • 日下部 光彦, 足立 尊仁, 山田 誠, 波頭 経明, 大下 裕夫, 種村 広巳
    2008 年 28 巻 6 号 p. 847-850
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性。2003年夏より急性膵炎による入退院を繰り返していた。同年末慢性膵炎による膵管狭窄と診断し,膵管ステントを留置した。以後3ヵ月に1回の頻度でステント交換を行った。2005年10月ステント交換目的でERCPを施行したところ,ステントは十二指腸乳頭を超えて膵内に入り込んでいた。バスケット鉗子にて抜去を試みたが,下流側のチューブ先端が膵内へ迷入し,ステント,鉗子ともに抜去困難となったため手術を施行した。手術は膵体部で主膵管を開放後ステントを摘出し,膵管空腸側々吻合を行った。経過は良好で以後膵炎発作はきたしていない。慢性膵炎の膵管狭窄に対するステント留置は低侵襲で有用であるが,頻回に交換を要することや長期予後,合併症の問題があり,今後の検討が必要である。主膵管狭窄が主体の慢性膵炎では,膵管空腸吻合にて症状の改善が期待できるので状況によっては選択されてもよいと思われた。
  • 古谷 晃伸, 木ノ下 修, 永田 啓明, 中島 晋, 福田 賢一郎, 増山 守
    2008 年 28 巻 6 号 p. 851-853
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    胆嚢穿孔は原因不明の急性腹膜炎の原因となり得る疾患である。患者は82歳男性,夕食後に上腹部痛,嘔吐が出現した。翌日近医から紹介され当院を受診した。腹部全体に筋性防御を認めた。CTで腹腔内遊離ガスと胆嚢内ガスを認め胆嚢穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を行った。開腹すると腹腔内に胆汁様腹水を認め,胆に直径約5mmの穿孔部位を認めた。穿孔部位から胆汁漏出と黒色胆石の排出を認めた。胆摘出術,腹腔ドレナージ術を行った。胆嚢穿孔は急性胆嚢炎の合併症であるが,術前診断は困難で術中に胆嚢穿孔と診断されることが多い。今回われわれは術前にCTにて腹腔内遊離ガスと胆嚢内ガスを認めたため比較的容易に術前診断が可能であった胆嚢穿孔の1例を経験したので報告する。
  • 梅邑 晃, 鈴木 龍児, 高屋 快, 谷村 武宏, 北村 道彦
    2008 年 28 巻 6 号 p. 855-859
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性。1972年に直腸癌のためMiles手術を施行,現在は慢性腎不全のために,外来にて血液透析を施行されている。2007年12月26日から腹痛が出現し,近医を受診し便秘と診断されたが,翌日も腹痛が持続するためイレウスの診断で入院となった。入院後も腹部所見の改善がなく,ストーマ周囲の膨隆と発赤が出現してきたため,傍ストーマヘルニアを疑い検査を施行した。腹部CT検査で,ストーマ近傍腹壁内に腸管の嵌頓を認めたため,緊急手術を施行した。小腸が絞扼されて壊死に陥っていたので,これを切除し吻合した。全身状態や汚染手術,腹腔内の癒着を考慮して,ヘルニア門の単純縫縮のみとし,ストーマのrelocationやメッシュによる修復は行わなかった。術後経過は良好で,再発もなく経過観察中である。傍ストーマヘルニア嵌頓症例の報告は本邦で11例とまれであるが,ストーマを有する急性腹症症例では,つねに傍ストーマヘルニア嵌頓を念頭におき,適切な外科的治療を選択する必要がある。
  • 上村 眞一郎
    2008 年 28 巻 6 号 p. 861-864
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代,女性。普通ミニバンの助手席に乗車中,対向してきた普通ワゴン車と正面衝突し,胸腹部痛と呼吸苦を訴えて救急搬送された。胸部X線で右多発肋骨骨折を,CTで右血気胸と後腹膜ガス,気腹を認めた。胸腔ドレナージ後,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行したが,腹腔内に出血や残渣による汚染はなく,胃の幽門前庭部大彎後壁にわずかな漿膜筋層の損傷を2ヵ所認めたのみで全層性損傷は同定できなかった。気腹の原因として胸腔内圧上昇により胸部由来のガスが腹腔内に進展する機序が示唆された。陽圧換気や喘息などでも同様の機序で気腹が生じることが知られている。これらは外科的処置を必要としないという意味で,nonsurgical pneumoperitoneumと呼ばれるが,多発外傷の場合には緊急性の高い消化管穿孔による気腹と胸部由来の気腹との鑑別は必ずしも容易ではなく,critical careを行う上では重要な病態である。
  • 松島 一英, ぐし宮城 正典
    2008 年 28 巻 6 号 p. 865-869
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    腸管虚血性疾患に伴う門脈ガス血症を2例経験したので報告する。症例1は78歳男性で,施設で転倒した翌日に紹介受診した。当初より血圧が不安定であり,腹部の圧痛を疑う所見を認めたために腹部CTを施行したところ,門脈内ガスの存在を認めた。同時に造影効果の不良な小腸を一部認め,緊急開腹術を施行した。回腸に50cmに及ぶ壊死を認めたため,同部位を切除し手術を終了した。術後ICUにて多臓器不全が進行し,第40病日に死亡した。症例2は55歳男性で,食欲低下と腹部膨満を主訴に紹介受診した。腹部単純X線写真にて小腸ガスの拡張を認め,腹部造影CTでは著明な腸管壁内ガスと門脈内ガスに加え,下大静脈内ガスも認めた。開腹にて小腸の軸捻転を認め,これを解除した。術後細菌性肺炎を合併し,第65病日に死亡した。門脈ガス血症の手術適応にはいまだに一定のコンセンサスが得られていないが,つねに腹腔内の致死的な疾患を念頭に置きながら診療を進める必要がある。
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