日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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28 巻 , 7 号
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会長講演
  • 山崎 洋次
    2008 年 28 巻 7 号 p. 873-881
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    高木兼寛は,脚気の撲滅で名高いが,脚気予防策として麦飯を推奨したことと,男爵を授爵されたことから「麦飯男爵」と呼ばれた。高木兼寛は嘉永2年(1849年)日向国東諸県郡穆佐村(現在の宮崎市高岡町合併特例区)で生まれた。明治5年,海軍軍医となり,明治8年ロンドンのセント・トーマス医学校に留学した。帰国して間もない明治14年,成医会講習所を設立した。この成医会講習所はいくつかの変遷を経て,大正10年,大学令による東京慈恵会医科大学へと発展した。高木は明治17年から海軍の食料改善(窒素:炭素比の改善)に乗り出し,明治18年から海軍においては脚気をほぼ駆逐した。明治27年,日清戦争が始まったが,麦飯を堅持した海軍では一人の脚気患者も出なかったが,陸軍からは多数の脚気患者が出た。明治18年,高木は軍医の最高位である海軍軍医総監に任命された。その年,高木は看護婦教育所を開設しているが,これはわが国最初の看護学校である。明治25年,貴族院議員に勅選された。明治34年には東京市会議員に当選,明治38年,華族に列せられ男爵を賜り,大正9年,72歳の生涯を閉じた。
原著
  • 細田 桂, 青木 真彦, 城戸 啓, 夏 錦言, 田村 光, 小島 正夫, 雨宮 哲, 水沼 仁孝
    2008 年 28 巻 7 号 p. 883-887
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    虫垂膿瘍は急性期に手術を施行されることが多いが,その際腸管切除や術後合併症を経験することがある。われわれはそれらを予防すべく,虫垂膿瘍症例12例に対して,保存的治療をしたのち約3ヵ月後に腹腔鏡下虫垂切除を行う,laparoscopic interval appendectomy(以下,lapIA)を施行した。5例は経皮的膿瘍ドレナージを併用した。lapIAの平均手術時間は91.3分,平均出血量18.8g,平均術後鎮痛剤使用回数2回,平均全在院日数23.8日で,一期的手術と差がなかった。しかし,術後合併症率は一期的手術で50%であったのに対し,lapIAでは0%であり有意に少なかった。以上より虫垂膿瘍に対しては,lapIAは有効な治療手段であると思われた。
  • 山本 貴之, 篠原 正彦
    2008 年 28 巻 7 号 p. 889-892
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    【目的】急性胆嚢炎に対する待機的腹腔鏡下手術の施行例において,腹腔鏡下手術を開腹手術へ移行させた諸因子をretrospectiveに解析し,検討した。【対象と方法】2002年1月から2005年12月までに当科にて腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LC)を施行した329例中,急性胆嚢炎の診断基準を満たした109例を対象とした。これらの症例をLC完遂群,開腹術移行群(以下,conversion群)の2群に分け,開腹術移行に至らしめた術前の予測因子を検討した。【結果】胆嚢結石頚部嵌頓,画像での胆嚢管描出陰性,Mirizzi症候群の3因子が有意な開腹術移行への予測因子であった。【結語】当科では,急性胆嚢炎の外科的治療は原則としてLCで行うが,上記3因子のある症例に対しLCを行う場合,開腹術移行の可能性を術前より考慮すべきである。
特集:腹部救急領域における栄養管理
  • 桂巻 正, 水口 徹, 永山 稔, 目黒 誠, 木村 康利, 山口 浩司, 古畑 智久, 平田 公一
    2008 年 28 巻 7 号 p. 895-901
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    腹部救急疾患の肝外傷も含めた肝切除においては,術後の肝機能低下や肝不全に注意する必要がある。治療後の肝機能評価としてのapolipoproteinA-1 (以下,ApoA-1)の有用性について述べた。肝切除後のApoA-1は術後1週目まで経時的にApoA-1は低下し,2週目は回復した。ApoA-1の術後変動は肝の蛋白合成能を反映していると思われた。肝不全でApoA-1を測定したところ,ApoA-1は著しくに低下し5mg/dL以下となった。ApoA-1の低下は肝不全の比較的早期から出現した。最近,ApoA-1はlipopolysaccarideを中和する作用があり,ApoA-1が抗エンドトキシン作用を持つことが報告されている。ApoA-1は敗血症予防のためにも測定すべきである。また,バリン経口投与によって肝機能が回復した肝不全患者を経験し,選択的アミノ酸投与療法は肝不全治療の有効な手段に成り得ると思われた。
  • 高橋 賢一, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 小川 仁, 岡本 智子, 稲村 なお子, 徳村 弘実, 佐々木 巌
    2008 年 28 巻 7 号 p. 903-908
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    近年,消化器術後の早期経腸栄養(以下,EEN)が注目され術後合併症減少などの有用性が報告されている。当施設では2003年より潰瘍性大腸炎(以下,UC)術後のEENを導入し,中心静脈栄養(以下,TPN)を対照とした無作為割付比較試験を行ってきた。本稿ではその成績と問題点を検討し考察した。TPNの忍容性は良好であったがEENは副作用のため完遂率が54%にとどまった。EEN非完遂群ではTPN群とEEN完遂群に比べ栄養投与量が有意に少なく,トランスサイレチンの回復も遅れていた。術後合併症の頻度は両群間で有意差なしであったが,EEN群で腸閉塞症の頻度が低い傾向であった。以上,投与経路によらず十分な熱量投与を行うことで速やかに栄養指標が回復することが示された。またEENによる腸閉塞予防の可能性が示された。したがってTPNにより十分な熱量を投与しつつ副作用なく投与可能な少量のEENを併用してゆくのが, UC術後に最も適した栄養療法と考えられた。
  • 古屋 智規, 高橋 賢一, 橋爪 隆弘, 和嶋 直紀, 木村 昭利, 菅原 和子
    2008 年 28 巻 7 号 p. 909-913
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎(以下,SAP)は消化管機能不全があるため栄養管理が困難である。そこで,synbiotics併用早期経鼻的空腸栄養(以下,S-EN)と栄養サポートチーム(以下,NST) の有用性を検討した。S-ENは抗生物質耐性乳酸菌, L─glutamine,オリゴ糖,食物繊維含有半消化態流動食を投与した。全科型NSTは2005年9月設立で,主観的包括的評価,客観的栄養評価でスクリーニングし,介入後栄養上の問題解決まで週1回の回診を継続した。S-ENによる栄養管理で続発性膵感染率および致死率の改善が得られ,NST介入前後で比較した結果でも同様にNST介入後の方が良好であった。S-ENはSAPにおける消化管不全に対処し得る栄養法と考えられる。また,SAPをはじめとした腹部救急医療領域においては,主治医だけでなくNSTのサポートを受けながら,チームとして患者の状態に応じた栄養管理を行うことが大切である。
  • 箱崎 将規, 佐藤 信博, 小鹿 雅博, 吉川 智宏, 高橋 学, 青木 毅一, 鈴木 泰, 遠藤 重厚, 池田 健一郎, 若林 剛, 杉村 ...
    2008 年 28 巻 7 号 p. 915-922
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    【目的】種々の病態において経腸栄養法の有用性が認められている。しかし,腹膜炎術後にては,経腸栄養療法を選択する際の臨床データが乏しく,経口摂取が開始された後も増大した安静時必要カロリーを補充するために中心静脈栄養が併用されることが多い。われわれは腹膜炎術後の急性期離脱後過程における経腸栄養療法の在院期間,コスト,有害事象,feasibilityを検討する無作為化比較試験を計画した。【方法】汎発性腹膜炎術後3~7日以内に経口摂取が可能となった症例を対象とした。ICが得られた後,経口摂取に加えて高カロリー輸液併用(TPN群),経腸栄養併用(EN群)に無作為に割り付けを行った。経腸栄養剤はラコールを用い,症例の状況により経口的あるいは経管的に投与ルートを選択した。高カロリー輸液剤はネオパレンを用いた。両群とも投与カロリーは経口摂取量と合わせ 25~35kcal/kg/dayを目標とした。両群とも最低 1週間はプロトコールに従うこととした。なお,尿量等から判断して水分,電解質補正を経静脈的に行う際は 7.5%以上の糖質を含有する製剤,アミノ酸を含有する製剤は用いないこととした。【結果】現在まで TPN群15例,EN群15例が登録された。両群間に年齢,手術時間,出血量に差は認めていない。経口摂取開始日(エントリー日)は TPN群 5.8±1.7病日(mean±SD),EN群 6.1±1.1病日,登録時のAPACHE II scoreはTPN群13.7±4.1,EN群12.6±4.6だった。TPN群で1例がカテーテル感染のためdrop outとなった以外は目標投与カロリー,プロトコールを完遂できた。アルブミン,レチノール結合蛋白,尿中3-メチルヒスチジン,尿中クレアチニン,ω3/ω 6比,コレステロール,TG,遊離脂肪酸などの指標には差は認めなかった。有害事象は腹部症状がTPN群5例,EN群4例,感染性合併症がTPN群にのみ6例認められた。経口摂取量は統計学的有意差はないが,EN群で多い傾向にあった。1日当たりの医療コストは,EN群で安価となった。【考察および結論】腹膜炎術後の経口摂取過程における経腸栄養の安全性,有用性が示唆された。
  • 鷲澤 尚宏, 大嶋 陽幸, 名波 竜規, 渡邊 正志, 金子 弘真
    2008 年 28 巻 7 号 p. 923-927
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    重症患者においては,腸管が機能していれば経腸栄養を行うことが推奨されている。一般的に静脈栄養法が行われることが多いのは,経管栄養ルートの設定が困難であることが理由である。腹部救急領域での経腸栄養ルートの選択には障害部位によって体内への入口,カテーテルの腸管壁貫通部位,カテーテル先端の位置が決定され,病状によってこれらの設置時期が決定されることで,経管栄養法がすすめられる。腹部救急患者においても経腸栄養法の可能性を追求し,安易に選択される静脈栄養法を再考することで,さらなる予後の改善が期待できる。また,これらの決定遂行には栄養サポートチームなどのチーム医療の貢献が期待される。
  • 福島 亮治, 岩崎 晃太, 山崎 江里子, 小出 泰平, 堀川 昌弘, 小川 越史, 井上 泰助, 森田 直巳, 池田 佳史, 稲葉 毅
    2008 年 28 巻 7 号 p. 929-932
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    教室では上部消化管穿孔に対して,積極的に保存的治療を行っており,十二指腸潰瘍穿孔の78%,胃穿孔の60%が保存的に軽快している。一方,手術例は重症例が多く,このような症例では周術期栄養管理が治療上重要な位置を占めると考えられる。そこで手術症例を対象として,栄養管理を中心にretrospectiveな検討を行った。十二指腸潰瘍穿孔13例,胃穿孔8例の術後の栄養管理は,末梢静脈栄養11例,中心静脈栄養(以下,TPN)5例,経腸栄養5例であり,4例は術中に腸瘻が造設され,うち3例は術後36時間以内の早期経腸栄養が施行されていた。術後合併症発生率は67%と高く,経口摂取開始時期は7~36日(平均12日)と比較的遅かった。縫合不全が4例に認められたが,経腸栄養で管理された2例は,TPNで管理された2例に比べて経口摂取時期が早く,在院期間も短かった。当科の手術症例は重症例が多く,術後合併症発生率が高く,経口摂取は遅れる傾向にあった。このような症例では,積極的に空腸瘻を造設して経腸栄養を施行することが,栄養管理上の重要な選択肢の一つとなると考えられた。
  • 片山 寛次, 村上 真, 北山 冨士子, 早瀬 美香, 立平 宏美, 斎木 明子, 橋本 儀一, 前田 友美, 山口 明夫
    2008 年 28 巻 7 号 p. 933-937
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    2002年4月から全学的にNST活動を開始した。5年間の介入症例は498例,件数は延べ2,550回である。腹部救急疾患は38症例に対し延べ339回行われた。内訳は,消化管穿孔6例,縫合不全5例,腹部外傷2例,大動脈瘤破裂4例,短腸症候群5例,重症急性膵炎例4例,出血性腸炎2例,虚血性腸炎1例,偽膜性腸炎5例,急性肝炎5例であった。循環不全症例や敗血症ではまずは中心静脈栄養が行われた。積極的にインスリンを用い,血糖を150mg/dL以下を目標にコントロールした。腸管が使える場合は早期経腸栄養を採用した。2週間以上経口摂取がされていなかった場合, GFOを投与した。腎不全であっても透析を行った上で10%増しのアミノ酸を投与した。呼吸不全,重症感染症時には,n3系脂肪酸,抗酸化剤を多く配合しアルギニンを減量した抗炎症性機能性製剤を使用した。EN時の下痢においては,検尿テステープによる潜血と蛋白検査,便中のCD 毒素の検出が有用であった。いずれの症例も軽快退院し得た。
  • 木山 輝郎, 藤田 逸郎, 菅野 仁士, 谷 杏彌, 加藤 俊二, 田尻 孝
    2008 年 28 巻 7 号 p. 939-942
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    腹部救急領域では腹膜炎など消化管機能不全の患者も多く,経腸・静脈経路からの栄養補給が不可欠である。そこで,腹部救急疾患のうち集中治療を行う場合の栄養管理の特徴について検討した。腹部救急疾患150例を対象とし,食事摂取量および経腸・静脈栄養投与量を比較した。腹部救急手術のうち集中治療は26例に行われ,下部消化管穿孔が8例と最も多く,小腸穿孔・イレウス7例,縫合不全5例,上部消化管穿孔2例,その他4例であった。在院死亡率は35%で,平均在院日数は37日であった。平均禁食日数は8日で静脈栄養が行われたのは16例であった。経腸栄養は7例に行われた。手術翌日の血清アルブミンの平均値は2.7g/dLであった。腹部救急疾患では重症感染症の合併などにより集中治療が優先され,栄養補給がされない場合がみられた。腹部救急疾患では病態にあわせて栄養補給を開始する時期,投与経路や熱量を慎重に決定する必要がある。
症例報告
  • 藍澤 哲也, 船田 幸宏, 立花 幸人, 木村 靖彦, 内田 雄三, 野口 剛
    2008 年 28 巻 7 号 p. 943-946
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性。自家用軽四乗車の飲酒運転で正面から木に衝突し前,胸部および上腹部を強打,当院救急外来受診した。Primary Surveyにてショックを呈しており,初期輸液療法にて循環動態は一過性に安定したがすぐに不安定化してしまい,transient responderとして緊急開腹手術を施行した。開腹すると,中および左肝静脈損傷が出血の責任部位であり,肝動脈を含む肝実質損傷は比較的軽度であった。肝臓を背側より挙上すると損傷部位を容易に把握できたためダメージコントロールはせずに直接縫合にて修復し,一期的手術を行うことができた。重症肝損傷で肝静脈損傷が主幹となるものは,transient responderになる要因の一つと考えられるが,急性期での治療方法の選択が非常に重要であり,今後は一定の明確な基準作りが必要になってくると思われる。
  • 金谷 欣明, 橋田 真輔, 藤井 徹也, 丸山 修一郎, 横山 伸二
    2008 年 28 巻 7 号 p. 947-951
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    経肛門的直腸内異物は比較的まれな疾患であり,異常な自慰行為のエスカレート等により突発的に生じることが多い。今回われわれは中高年男性に発生した経肛門的直腸内異物の2例を経験したので報告する。症例1は71歳の男性,すりこぎ様の太い木製の棒を自ら肛門より挿入し,抜去不能となり当院の受診となった。外来での抜去は困難で,腰椎麻酔下にこれを用手経肛門的に摘出した。症例2は55歳の男性,空のジュース缶を自ら肛門より挿入し排出困難となり,近医で経肛門的摘出を試みられたが成功せず,当院の救急外来を紹介となる。症例1同様,腰椎麻酔下に用手経肛門的に摘出した。いずれも外来での摘出は疼痛や腸管浮腫のため困難であったが,腰椎麻酔下では肛門括約筋の弛緩も得られ,用手経肛門的に摘出可能であり無麻酔下に摘出困難な場合,試みられるべき有効な治療法の一つと思われた。
  • 瀬上 航平, 小林 慎二郎, 佐々木 貴浩, 櫻井 丈, 小泉 哲, 渡辺 泰治, 中野 浩, 大坪 毅人
    2008 年 28 巻 7 号 p. 953-955
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は90歳の男性。腹痛と腹部膨満感を主訴に近医を受診した。腹部CT検査で上腹部を中心とした腹腔内遊離ガス像を認めた。さらに腸間膜の渦巻き状回転像と,小腸の壁内および腸間膜内にガス像を認めた。以上から絞扼性イレウスによる消化管穿孔および腸管気腫症と診断し手術を施行した。索状物で形成された間隙内に,小腸が捻転した状態で陥入していたが,腸管の循環障害は認めなかったので索状物を切除し,腸管を整復した。内ヘルニアに起因して発症した腸管気腫症の報告はわれわれが検索した限りでは認めず,極めてまれと思われたので文献的考察を加えて報告する。
  • 玉田 尚, 小泉 健雄, 山口 芳裕
    2008 年 28 巻 7 号 p. 957-960
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性。腹痛にて当院救急外来を訪れ待合室で待機中にショック状態となった。精査にて中結腸動脈瘤の破裂に伴う後腹膜および腸間膜内出血による出血性ショックと診断し緊急開腹手術を施行した。開腹すると中結腸動脈の壁に亀裂が存在し,同部位より腸間膜内に活動性の出血が認められたため亀裂部を縫合止血した。回復後の問診で約2週間前に腹部を打撲していたことが判明した。鈍的腹部外傷における血管損傷では,遅発性に症状が出現することがあることを念頭に置き診療にあたる必要がある。
  • 星野 伸晃, 長谷川 洋, 白子 隆志, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治
    2008 年 28 巻 7 号 p. 961-964
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性。自然消退を繰り返す下腹部痛にて当院救急外来を受診した。腹部CTでは骨盤内に12cm×10cmの腫瘤を認め,腸間膜の捻転像が疑われた。MDCTではCTの所見に加えて,SMAを軸として腸間膜血管の回転像が明瞭に描出された。小腸腫瘍による軸捻転症と診断し手術を施行した。術中所見は空腸間膜側に腫瘍を認め,SMAを軸として時計回りに腸間膜が360度捻転していた。病理組織診断は小腸GIST,c-kit陽性,核分裂数7/50HPFであった。小腸GISTによる軸捻転症は極めてまれであり,本例ではMDCTにより特徴的な捻転像が得られ術前診断に有用であった。
  • 工藤 大輔, 丸山 将輝, 笠島 浩行, 原 豊, 吉田 淳, 鈴木 伸作, 遠山 茂
    2008 年 28 巻 7 号 p. 965-968
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性。発熱と意識混濁のため当科へ搬送された。腹部CTで直腸内に異物を認め,直腸内の魚骨を摘出した。会陰部には壊疽性筋膜炎の所見があり,魚骨によって直腸穿孔をきたし,Fournier症候群を発症したと考えられた。入院後,全身状態が急激に悪化したため根治的な手術を断念し,局所の感染コントロールをベッドサイドで行いながら,人工呼吸器管理下にエンドトキシン吸着療法と持続式血液濾過透析を併用し,集学的治療を行ったところ全身状態は改善した。その後,排便に伴う肛門周囲の皮膚炎をコントロールするため人工肛門造設を行い,第56病日に退院された。Fournier症候群の治療において,根治的な手術が行えないほど全身状態が悪化していても,集学的治療と非侵襲的な局所感染コントロールを行うことで,救命できることがあると考えられた。
  • 有明 恭平, 森川 孝則, 大塚 英郎, 元井 冬彦, 佐藤 俊, 富永 剛, 江川 新一, 海野 倫明
    2008 年 28 巻 7 号 p. 969-972
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代男性。上腹部痛を主訴に当院受診。8年前に重症急性膵炎による手術既往を認めた。精査にて膵体部の壊死性変化を伴う重症急性膵炎と診断し,持続動注療法を開始。感染の併発なく炎症の鎮静化が得られたが,仮性嚢胞の形成が認められた。食事摂取の度に炎症の再燃を繰り返すため,開腹下に壊死物質除去術および嚢胞空腸吻合術を施行。壊死物質は小腸腸間膜内にも広がっていたため,腸間膜を経由し嚢胞内に洗浄用チューブを留置した。術後経過はおおむね良好であり,51病日に退院となっている。壊死性膵炎後の膵仮性嚢胞はOrganized Pancreatic Necrosis(以下,OPN)と呼ばれ,治療においては壊死物質を十分に除去することで,感染併発を防ぐことが必要とされる。本症例のように膵管との交通が疑われかつ,壊死物質が広範に存在しているOPNに対し,内瘻化と同時に洗浄用チューブ外瘻を併施することは有効な方法であると考えられた。
  • 田中 智子, 栗栖 佳宏, 赤木 真治, 加納 幹浩, 渡谷 祐介, 藤解 邦生
    2008 年 28 巻 7 号 p. 973-976
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は88歳女性。排尿困難のため尿道バルンカテーテル留置中肉眼的血尿が持続,当院泌尿器科にて慢性膀胱炎と診断された。その約1ヵ月後イレウス症状認め,当院紹介入院となった。腹部は全体に緊満,筋性防御を認め,腹部CTにて小腸の著明な拡張と腹水の貯留を認めた。原因不明の汎発性腹膜炎によるイレウスと診断し手術を施行した。開腹すると腹腔内には混濁した腹水を認め,膀胱は菲薄化,頂部に2ヵ所の穿孔壊死を認めた。今回のイレウスの原因として膀胱穿孔による汎発性腹膜炎が考えられた。手術は膀胱穿孔部のトリミングと縫合閉鎖を行った。膀胱造影では膀胱容量の著明な減少と膀胱尿管逆流を認め,尿道カテーテルは留置のままとなった。本症例では腹部の外傷や放射線治療の既往なく,膀胱破裂は慢性膀胱炎に起因するものと考えられた。高齢者のイレウスは腹部症状に乏しく,保存的加療にても改善しない場合,早期の外科治療を考慮すべきと考えられた。
  • 下地 克正, 高江洲 享, 大兼 剛
    2008 年 28 巻 7 号 p. 977-980
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    Ogilvie症候群は,大腸の機能的通過障害により大腸閉塞の症状を呈する病態である。今回われわれは,Ogilvie症候群を経験した。症例は,87歳,男性。腹部膨満症状を認め来院。所見としては,腹部膨満を認めたが明らかな圧痛,反跳痛,筋性防御は認めなかった。腹部X線検査で,大腸の拡張所見を認めたが,鏡面像は認めなかった。下部消化管内視鏡検査を行い,明らかな器質的狭窄部位は認めなかったため,Ogilvie症候群と診断し,内視鏡下に脱気,減圧処置を行い,症状は改善。軽快退院となった。大腸閉塞の鑑別疾患の中に本症も念頭に置く必要があると思われた。
  • 林 勉, 鈴木 弘治, 蓮尾 公篤, 神 康之, 玉川 洋, 利野 靖, 益田 宗孝
    2008 年 28 巻 7 号 p. 981-984
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    胆嚢捻転症は緊急手術を要するが,術前診断が困難な疾患である。今回,われわれは腹部超音波検査で術前に診断しえた胆嚢捻転症の2手術例を経験した。症例1は92歳・女性。心窩部痛を主訴に来院した。腹部超音波検査で胆嚢腫大と胆嚢壁の肥厚,胆嚢の偏位,胆嚢頸部に高エコーを呈する腫瘤様陰影を認め,胆嚢捻転症の診断で開腹胆嚢摘出術を施行した。術後経過は良好で第10病日に退院した。症例2は73歳・女性。右下腹部痛を主訴に来院した。腹部超音波検査で胆嚢腫大,胆嚢の偏位,胆嚢頚部に淡い高エコー腫瘤像を認め,胆嚢捻転症の診断で開腹胆嚢摘出術を施行した。術後経過は順調で第7病日に退院した。2例とも腹部超音波検査での胆嚢の偏位と胆嚢頸部の高エコーを呈する腫瘤様陰影が診断の根拠となった。
  • 嶋田 仁, 櫻井 丈, 片山 真史, 湊 栄治, 嶋田 久, 諏訪 敏之, 大坪 毅人
    2008 年 28 巻 7 号 p. 985-988
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性。部分内臓逆位症,胆嚢摘出術の既往あり。早朝から間欠的腹痛,嘔吐,下痢を主訴に当院を受診した。X線上明らかな鏡面像は認めず,下痢が頻回であったため,感染性腸炎と診断し保存的治療を行い,腹痛は軽減,下痢回数も減少し一時症状は軽快した。しかし第4病日に腹痛が再燃し,絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した。上行結腸は後腹膜に固定されておらず,腸回転異常症・不完全固定型と診断した。未固定の回盲部~上行結腸が捻転し虚血性壊死をきたしていた。その中央に10mmの穿孔を認めたため,回盲部~上行結腸切除,回腸瘻造設を行った。術後,敗血症性ショックをきたし,人工呼吸管理,エンドトキシン吸着療法および持続的血液濾過透析を必要とした。全身状態の改善を認めたが,術後15日目に急性心筋梗塞を発症し死亡した。内臓逆位症におけるイレウス症例では腸回転異常症を念頭に置く必要があると考えられた。
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