日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
29 巻 , 7 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
会長講演
  • 亀岡 信悟
    2009 年 29 巻 7 号 p. 945-950
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎の変遷:(1)疫学,(2)多様化した内科治療,(3)外科治療の進歩,(4)チーム医療の推進等について講演した。潰瘍性大腸炎は本邦ではまれな疾患だったが,近年急増し,2007年には9万人を超え,昨年は10万人を突破した。内科治療についてみると,5─ASA, SASP,PLS が主であったが,近年血球成分除去療法,あるいは免疫調整剤により内科治療成績が著明に向上した。外科サイドからすると,まずは内科治療を積極的に行い,無効な場合は外科治療の適応にすることになり,外科治療と内科治療の棲み分けが明確化され,解り易くなったということもできる。回腸肛門(管)吻合術の歴史は約30年になる。当初緊急例に対しては3期に分割手術が主流であった。しかしその後,残存した直腸からの大量出血などの重症合併症の回避,手術時間の短縮など技術の向上から,緊急例に対しても1期,2期手術が採用されるようになった。術式としては,若年者に多い潰瘍性大腸炎に対し私どもの施設では待機例に対しHALSを用いた腹腔鏡下手術を開発したが,緊急例までには適応拡大していない。患者さんを中心軸に据え,内科・外科,さらにはナースなどコメディカルと密な連携を図ったチーム医療が推進されていることも,最近のトレンドである。これら教室における自験例を中心に,本邦,諸外国における潰瘍性大腸炎の治療の最近の動向について講演した。
原著
  • 今枝 博之, 細江 直樹, 井田 陽介, 菅沼 和弘, 斎藤 義正, 鈴木 秀和, 和田 則仁, 才川 義朗, 緒方 晴彦, 岩男 泰, 熊 ...
    2009 年 29 巻 7 号 p. 951-956
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    胃腫瘍性病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の偶発症およびその予防を年齢別も含めて検討した。早期胃癌または胃腺腫250例269病変で,74歳以下187病変(69.5%),75歳以上で82病変(30.5%)であった。平均病変径は75歳以上では17.0mmで,74歳以下の14.0mmに比し有意に大きく,平均施行時間は75歳以上では58.2分で,74歳以下の47.2分に比し有意に時間を要した。後出血は15病変(5.6%)に認め,平均病変径は20.4mmと非後出血例の14.5mmに比し有意に大きかった。U領域2病変/31病変(6.5%),M領域3病変/105病変(2.9%),L領域10病変/133病変(7.5%)とM領域に比べてL領域で多い傾向がみられた。74歳以下で13病変/187病変(8.0%),75歳以上で2病変/82病変(2.6%)と74歳以下で多い傾向を認めた。穿孔は2病変(0.7%)にみられ,いずれも74歳以下で保存的に軽快した。一過性の発熱を2病変,著明な徐脈を1病変に認めた。胃ESDは,術前から術後まで合併疾患を含め的確に対応することにより,比較的安全に施行することが可能と考えられた。
  • 鹿股 宏之, 小林 健二, 加瀬 建一, 篠崎 浩治
    2009 年 29 巻 7 号 p. 957-963
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    【目的】大腸穿孔の予後因子を検討し,エンドトキシン吸着療法(以下,PMX─DHP)の適用について考察した。【対象と方法】対象は2003年4月から2008年3月までの5年間に,当院で経験した大腸穿孔54例である。術前因子9項目,術後因子6項目を選択し,予後についてそれぞれ統計学的検討を行った。【結果】多変量解析で,(1)術前ショック指数1.1以上の症例,(2)手術直後の収縮期血圧80mmHg以下の症例,(3)術後ノルアドレナリンを使用せざるを得なかった症例,(4)術後第1病日の血小板数低下率40%以上の症例,の4項目が独立した予後不良因子として観察された。さらに,死亡例は全例この4項目中2項目以上満たしていた。【考察】われわれはPMX-DHPを大腸穿孔の中でも最重症例に行うものと考えており,検討した予後不良因子~の中で2項目以上満たす症例は,最重症例としてPMX-DHP開始の一つの基準になり得るものと考える。
特集:門脈圧亢進症の診断と治療
  • 竹内 雅春, 中井 謙之, 朱 明義, 王 孔志, 藤元 治朗
    2009 年 29 巻 7 号 p. 967-971
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤における内視鏡的硬化療法を安全かつ効果的な治療とするために,MD-CT検査を用いて側副血行路解剖解析から血行動態分類を行った。供血路が左胃静脈である49症例を対象に,MD-CT検査で詳細に血行動態を検討したうえで,3D-CT画像を作成し側副血行路解剖解析を行った。傍食道静脈の発達程度により3型に分類した。I型はPEVが発達していない,II型はPEVが発達し,PEV径が食道静脈瘤径(EV径)と同等以下,III型はPEVが発達しEV径よりも太いものである。頻度はI型13例,II型20例,III型16例であり,PEV発達例が73.5%に認められた。合併症,再発に関与する貫通静脈は18例(36.7%)に検出された。治療はI型では供血路根部までの塞栓が必要であるが,II・III型ではPEVと供血路の交通部分までを塞栓でよい。特にIII型では,PEVとの交通が把握できていなければ,必要以上に硬化剤を注入することになり安全性の点から注意を要する血行動態である。MD-CT検査により分類可能なPEVからみた血行動態分類は,安全かつ適切な治療方針をたてることができ有用であると考えられた。
  • 渋川 悟朗, 小原 勝敏
    2009 年 29 巻 7 号 p. 973-979
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    孤立性胃静脈瘤(Lg)破裂は多量の出血をきたし,出血死あるいは二次性肝不全の危険性が高く,緊急例のみならず予防的にも治療が行われることが多い。治療法には内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy : EIS)やバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓療法(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration : B-RTO)を中心としたinterventional radiology(IVR)などがあげられ,良好な成績が報告されている。Lgに対するEISは,組織接着剤であるhistoacrylやα-cyanoacrylate monomer(CA)の導入によりLg出血は止血可能となり,その後ethanolamine oleate(EO)と無水エタノール(ethanol : ET)を併用したEO/ET/CA併用法の導入で予防例に対しても内視鏡的に完全治療が可能となった。本稿では,Lgに対する内視鏡的治療法の選択と治療法選択のために必要な術前検査について述べる。また,Lgに対するCA注入法施行に関する実際の治療手技,手技のコツ,偶発症対策についても説明する。
  • 山田 雅哉, 澤田 晋, 阿曽沼 邦央, 高野 祐一, 猪 聡志, 平田 邦代, 井上 和明, 与芝 真彰
    2009 年 29 巻 7 号 p. 981-985
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に比較し,胃静脈瘤の出血に対して選択する治療法は議論の余地があり,経験によるところが大きい。胃静脈瘤出血に対する内視鏡的シアノアクリレート注入は広く行われ,胃静脈瘤出血の患者の90%以上に止血可能であったと報告されている。しかし一方で脳,肺,門脈,脾臓に塞栓に関係した重篤な合併症も報告されており,粘着剤の注入による組織に対する安全性について懸念がある。当院に胃静脈瘤出血により入院した9人について内視鏡クリップ止血により治療した。クリップは胃静脈瘤の噴出性出血やフィブリン栓がみられた際に施行した。内視鏡クリップ止血法は9例すべての胃静脈瘤に対し止血でき,クリップによる止血不全例はなかった。一般にクリップ止血は容易であり,内視鏡的シアノアクリレート注入に不慣れな内視鏡医でも適当な止血法と考えられる。
  • 日高 央
    2009 年 29 巻 7 号 p. 987-990
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤の再出血予防において,門脈降圧効果に基づく治療の有用性は明らかではない。今回降圧効果に基づく治療が有用か否かについてオープンラベルuncontrolled pilot studyを施行した。対象は出血後に肝静脈圧較差(HVPG)を測定した18例。測定後にアンジオテンシンII受容体拮抗剤であるOlmesartanを2週間内服させ,投与後のHVPGが20%以上低下した症例(Responder)は内視鏡治療を行わず,20%以上低下しなかった群(nonresponder)は従来どおり内視鏡的結紮術(EVL)を追加した。結果として6例(33.3%)のresponderは薬剤治療のみ継続され,12例(66.7%)のnonresponderはEVLが追加された。この18例を,薬物療法を行わず内視鏡治療のみ施行した247例と非再出血率を比較検討した。治療前の両群の年齢・性別・肝硬変の原因疾患および肝予備能に差はなかった。1年非出血率は93%vs 95%,3年86%vs 83%であった。uncontrolled pilot studyではあるが両群の非出血率に差はなく,門脈降圧効果に基づく治療は有効であると思われる。
  • 関山 和彦
    2009 年 29 巻 7 号 p. 991-997
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    難治性腹水は利尿剤でのコントロールが困難で腹満感,食欲低下,全身倦怠感などの重篤な症状をもたらし患者に辛苦を強いるだけでなく,1年生存率50%と予後も極めて不良である。難治性腹水に対する代表的な治療として本邦では大量腹水穿刺,腹腔静脈シャント(デンバーシャント)およびTIPSが施行されている。腹水改善率は大量腹水穿刺では30%と一時的であるが,デンバーシャントとTIPSでは80~90%と長期的な症状改善に有効である。予後の比較では大量腹水穿刺とデンバーシャントの2年生存率は30%と不良であるが,TIPSの2年生存率は60%と良好である。
  • 成高 義彦, 小川 健治, 島川 武, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 村山 実, 山口 健太郎, 塩澤 俊一, 吉松 和彦, 勝部 隆男, ...
    2009 年 29 巻 7 号 p. 999-1005
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    TIPSの適応について,当科での長期治療成績を中心に検討した。対象は1993年より2007年までにTIPSを施行した20例,適応は難治性腹水13例,難治性静脈瘤5例,難治性胸水1例,PHG 1例であった。方法は肝静脈と門脈枝の間にシャントを作成した。TIPS後の門脈圧は有意に低下した。脳症は10例認めたが制御可能であった。腹水に対する有効率は84.6%,胸水例は消失した。難治性静脈瘤は発赤所見が陰性化した。シャント機能不全は9例(45.0%)認め,開存率は1年68.8%,3年50.4%で,累積生存率は1年72.2%,3年46.8%,5年18.7%であった。アルコール性肝硬変例の予後は3年100.0%,5年66.7%と良好,ウイルス性肝硬変例や血清ビリルビン値が2.5mg/dL以上例の予後は不良で,死因は肝不全13例,胆道出血1例などであった。以上より,アルコール性症例はTIPSの良い適応であるが,ウイルス性症例や高度肝障害例への適応には慎重を要する。機能不全は高率に発生するが回復が可能で,早期発見が重要である。
  • 近森 文夫, 井上 敦, 岡本 博司, 国吉 宣俊, 国吉 和重, Selvaggi Gennaro, Nishida Seigo, Tza ...
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1007-1012
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症に伴って発達する門脈側副血行路が,肝移植によりどのように変化するかに関してはよくわかっていない。そこで,肝移植前後のCT or MRIから門脈側副血行路の変化について検討した。2001年12月から2007年2月までにマイアミ大学外科において施行された成人同所性肝移植(orthotopic liver transplantation :OLTX)462例中,治療前後でCT or MRIの評価可能であった脾機能亢進症55例を対象として,門脈側副血行路変化について検討した。年齢は53±9歳,M/F=38/17,Child─Pugh class A/B/C=6/24/25,HCC有/無=15/40。平均OLTX後CT or MRI施行時期は312日であった。門脈側副血行路として,術前に脾腎静脈シャント(SRS)は19例(35%)に認め,OLTX後の変化は消失/縮小/増大/不変=3/7/3/6であった。術前に食道静脈瘤and/or傍食道静脈は27例(49%)に認め,OLTX後の変化は消失/縮小/不変=8/14/5であった。門脈側副血行路はOLTXにより改善するものの多くの症例で残存した。
症例報告
  • 黒田 武志, 青木 克哲, 木下 貴史, 福山 充俊, 井内 正裕, 福田 洋, 小笠原 邦夫
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1013-1016
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性。8年前に腹部大動脈瘤に対してY型人工血管置換術,2年前に胃潰瘍穿孔で手術をうけた。2008年9月に下血を生じ,当院に入院した。大腸内視鏡検査でS状結腸に肉芽形成を伴う隆起性病変を認め,同部位からの出血が考えられたが,家族が手術を希望されず経過観察となっていた。10月になり下血が再度出現し,同意を得て手術を施行した。後腹膜とS状結腸が癒着しており,S状結腸を切開して腸管内腔を確認したところ,肉芽形成の深部に人工血管の露出を認めた。二次性の腸骨動脈結腸瘻と判断し,癒着部の血管を切除し端々吻合で再建し,S状結腸は人工肛門とした。術後経過は良好であり退院したが,12月に右腸骨動脈吻合部に形成された仮性動脈瘤からの出血を生じ,右腋窩両側大腿動脈バイパスとY型人工血管摘出術を施行した。腹部大動脈瘤術後に血管下部消化管瘻を発生することはまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 遠藤 文庫, 山田 康雄, 齋藤 俊博, 武田 和憲, 菊地 秀
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1017-1020
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性。突然の腹痛が出現し,近医を受診した。CTにて上腸間膜動脈(以下,SMA)閉塞症を疑われ,当院に搬送された。全身状態は良好,下腹部で優位の圧痛を認めた。血液検査所見では乳酸値が31.3mg/dLと上昇していた。前医でのCTではSMAは開存し,回腸動脈の狭小化,回腸の一部に造影不良部位を認めNOMI と診断した。血管造影検査を施行し,CTと同様の所見を得た。続いて塩酸パパベリンの動脈内投与を行ったところ,動脈狭小化の改善は認められなかったが,腹痛が著明に改善した。直後にCTを施行し,回腸の造影効果の改善が認められ,乳酸値も正常化した。症状の著明な改善と画像所見における血流の改善,乳酸値の改善を認めたため,腸管壊死はないと考え,塩酸パパベリンの持続動注を行った。2日後の血管造影検査では,回腸動脈の狭小化の改善,回腸の血流改善が認められた。その後の経過は良好で第13病日に軽快退院した。
  • 大屋 久晴, 永田 二郎, 西 鉄生, 森岡 祐貴
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1021-1023
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で,腹痛・発熱で発症し近医を受診。回盲部周囲の炎症を指摘され当院を紹介された。腹部では,臍部・右下腹部に圧痛を認めた。CTでは回盲部付近回腸側に34×28mm大のlow density areaを認め,内部にbone densityが確認され周囲fatの炎症所見を示した。発症前にぶり大根を食べていたことから魚骨穿孔による腹腔内膿瘍と診断した。抗生剤・絶飲食のみでは改善が得られないため,最終的には手術を行った。開腹所見では虫垂先端に穿孔部を認め,同部位に骨片が確認され,これを中心に周囲膿瘍が形成されていた。虫垂切除術・洗浄ドレナージを施行した。誤嚥魚骨による消化管損傷は特異的な症状がないが本症例では詳しい食事歴の聴取とmulti detector-row computed tomography(MD-CT)により診断が可能であった。
  • 山下 俊, 田中 信孝, 高橋 道郎
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1025-1028
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性。2008年9月,吐血あり当院を受診する。内視鏡検査でVater乳頭の2cm口側に暗赤色の隆起を認め,この周囲より持続的に湧き出る出血を認めた。内視鏡的に凝固止血は不能で,血管造影検査を行い後上膵十二指腸動脈分枝より造影剤漏出を認めたため,この前後を塞栓したが翌日以降も貧血の進行と黒色便を認めた。造影CT検査で十二指腸傍乳頭部または膵頭部の腫瘍性病変からの出血が疑われたため,入院4日目に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的検査にてVater乳頭近傍に憩室を認め,出血の責任病変と考えられた。憩室には潰瘍が形成され,周囲には肉芽組織がみられた。本邦では1974年~2008年に十二指腸憩室出血は90例報告されており,近年では大半の症例で内視鏡的止血がなされている。本例のごとく保存的治療が奏効せず腫瘍性病変も否定できない十二指腸憩室出血例に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した報告はこれまでないため文献的考察を加えて報告する。
  • 黒川 敏昭, 池田 篤史, 村形 綾乃, 有田 海舵, 薄井 信介, 田中 優子, 松本 日洋, 滝口 典聡, 平沼 進, 真田 勝弘
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1029-1032
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    外傷性膵断裂に対して膵胃吻合を施行した症例を経験したので報告する。患者は36歳の女性で,勤務する牧場で牛に押されて鉄柵との間に上腹部を挟まれた。前医での腹部CT検査で膵周囲の後腹膜に血腫を認めたため当院に搬送された。CTを再検討し,膵断裂を認めたため緊急手術を施行した。手術所見では後腹膜膵前面に血腫が形成され,膵は上腸間膜静脈の右縁で完全断裂していた。膵脾温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した。術後1年が経過したが,空腹時血糖値や膵外分泌機能に異常を認めていない。自験例と文献的考察から,膵管損傷を伴うIII型膵損傷例に対する膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられる。
  • 末廣 剛敏, 矢毛石 陽一, 實藤 健作, 奥平 恭之, 狩野 律, 嶺 博之, 潮下 敬, 松山 正子
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1033-1036
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性。慢性腎不全にて65歳時に維持透析導入した。2008年8月中旬下腹部の強い痛みのため受診。急性腸炎の診断で内服治療施行されるも症状改善せず,2日後腹部単純写真にてFree air認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で入院となる。同日CTではFree airのみで腹水や炎症を疑わせる所見なく,保存的治療を開始した。入院7日目のCTではFree airの増加と回盲部のガスを伴う膿瘍腔を認めたため腹腔内脱気と膿瘍穿刺を行ったところ症状改善し,穿刺後8日目には炎症改善したため経口開始。その6日後,自宅への退院となった。6ヵ月後の大腸内視鏡では回盲部に憩室を認めるのみで,CTでも明らかな異常所見はなかった。重症化しやすく死亡率の高い慢性腎不全患者の回盲部穿孔性腹膜炎に対し注意深い診察と経過観察でドレナージのみで保存的に治療しえた。
  • 園原 史訓, 原田 明生, 市川 俊介
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1037-1039
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性。建設現場で就労中に高所から転落し,鉄筋が肛門より体内へ突き刺さった。救急搬送,レスキューの要請は行われず,現場で鉄筋は体内より抜去された。来院時患者は意識清明で肛門部痛を訴えるのみであった。胸腹部CT検査で左血気胸と少量の腹水を認めたため,全身麻酔下に緊急手術を行った。開腹すると直腸に穿孔部位があり,ここを修復し,S状結腸双孔式人工肛門を造設した。さらに腹腔内の検索で腸間膜損傷,胃損傷,横隔膜損傷が確認された。各部の修復を行った後,開胸すると食物残渣を含む血性胸水と左肺舌区に穿孔部を認め,腹腔から貫通してきた鉄筋が肺を貫いたと考えられた。幸運にも心,大血管の損傷は認めなかった。術後は5日間の集中治療を要したものの経過良好で術後21日目に退院した。胸腔まで至った杙創の1例を経験したため報告する。
  • 木村 明春, 平松 聖史, 原 朋広, 待木 雄一, 土屋 智敬, 田中 寛, 加藤 健司
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1041-1043
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性。2008年4月,左肺下葉原発の腺癌(cT3N2M1 StageIV)と診断され,化学療法を勧められたが本人希望により無治療で経過観察となっていた。同年6月より右臼蓋骨転移に対する除痛を目的とした放射線照射療法のため入院加療中であった。入院14日目に突然の下腹部痛が出現したため,当科紹介となった。腹部造影CTで腹腔内に散在するfree airを認め消化管穿孔による急性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した。開腹すると回腸に穿孔を認めたため回腸切除術を施行した。病理組織学的に肺癌小腸転移と診断された。術後経過は良好で経口摂取可能となったが,原疾患により全身状態は徐々に悪化し,術後81日目に死亡した。肺癌小腸転移は頻度は低いものの,穿孔を起こした場合の予後は不良である。肺癌患者で腹部症状を呈する場合には,消化管転移の可能性についても留意する必要がある。
  • 森 周介, 小関 宏和, 笹原 孝太郎
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1045-1049
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の女性。腹痛,発熱を主訴に近医を受診し入院加療を受けていたが,改善しないため発症より6日後に当院に紹介となった。来院時腹部全体に強い圧痛と筋性防御を認めた。腹部CTで肝表面に遊離ガスあり,回盲部に空洞を伴う巨大腫瘍性病変および膿瘍形成を認め,消化管穿孔による腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。開腹所見では,骨盤内に一塊となり変色した長い範囲の小腸を認め,これを剥離すると多量の白色膿汁が流出した。膿瘍腔を構成していた約2mの回腸を含む回盲部切除術を施行した。摘出標本の肉眼所見では,盲腸壁が著しく肥厚し,割面は白色充実性で内腔は比較的保たれていた。虫垂根部近傍に大きな穿孔部を認め,虫垂は原形を留めず同定できなかった。病理組織検査所見では,大腸粘膜固有層から腸壁外組織に及ぶ多形性異型細胞の増殖を認め,免疫染色の結果diffuse large B cell lymphomaと診断した。術後一旦は回復したが117日目に死亡した。
  • 幸部 吉郎, 北村 伸哉, 中田 孝明, 三科 圭
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1051-1054
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    まれな外傷性腎梗塞を経験したので報告する。症例は61歳,男性。工場内で作業中に約8mの高さから転落し受傷。軽度の肺挫傷,肝損傷および右肋骨骨折,右橈骨骨折,骨盤骨折,右大腿骨骨折があり,造影CT検査にて右腎臓の造影不良を認めた。血管造影検査を行ったところ右腎動脈が起始部で途絶しており,血行再建を目的に開腹術を施行した。しかし右腎臓の鬱血は高度であったため右腎を摘出した。術後,肺炎による人工呼吸管理が長期化し退院まで100日を要した。外傷性梗塞腎に対する血行再建の成績は悪く,本症例のような血行動態が安定している片側腎梗塞の場合は治療方針として保存的療法を第1選択にすべきと思われた。
  • 田崎 達也, 津村 裕昭, 日野 裕史, 金廣 哲也, 市川 徹
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1055-1058
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    症例は14歳の男性で,腹痛のため,当院小児科救急外来に搬入された。腹部単純X線検査の結果,腸閉塞と診断されたため,外科に紹介され緊急入院した。既往歴に特記すべきことはなかった。腹部CTにて腸間膜の血管を中心として小腸が渦巻き状に巻き込まれるwhirl signを認めたため,小腸軸捻転症と診断し緊急手術を行った。手術所見は,全小腸が上腸間膜動脈を中心に時計方向に270度捻転していた。腹腔内には軸捻転の誘因となる腸回転異常症などの疾患や異常所見を認めなかったため,原発性小腸軸捻転症と診断した。腸管の壊死はなく捻転の解除のみ行った。術後経過は良好であった。小児期に発症する急性腹症の原疾患は極めて多く,開腹歴のないイレウスの原因も多彩であるため,診断,治療に苦慮することが多いが,本症の可能性も考慮し,診断に際しては腹部CT所見が重要であると考えられた。
  • 古谷 晃伸, 原田 剛史, 水谷 陽一
    2009 年 29 巻 7 号 p. 1059-1062
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/01/13
    ジャーナル フリー
    気腫性膀胱炎や気腫性腎盂腎炎は,ガス産生菌が感染しガスが貯留する尿路感染症である。今回われわれは気腫性腎盂腎炎を合併した,気腫性膀胱炎を経験したので報告する。症例は78歳,男性。脳梗塞後のリハビリのため入院中に発熱と血尿を認め,CT検査で右腎盂と膀胱内にガス像があり,気腫性腎盂腎炎を合併した,気腫性膀胱炎と診断した。治療として尿道カテーテル留置と抗生剤の投与で軽快した。今まで報告された気腫性膀胱炎に気腫性腎盂腎炎の合併した5例全てに,水腎症または尿管拡張を認めている。気腫性膀胱炎を発症し尿管口の通過が障害されたために水腎症をきたし,感染して腎盂腎炎を併発した可能性があると考えられた。
feedback
Top