日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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30 巻, 7 号
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原著
  • 猪狩 公宏, 八木 雅幸, 増田 大機, 太田 俊介, 伊藤 浩光, 落合 高徳
    2010 年 30 巻 7 号 p. 869-874
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    2003年4月から2009年3月まで,当院外科で80歳以上の高齢者に腹部緊急手術を行った165例について検討した。男性76例,女性89例で平均年齢は84歳(80~97歳)だった。併存疾患は148例(89%)に認められた。術後合併症は106例(64%)に認められ,合併症群と非合併症群の間ではGCS,ショックの有無,脈拍数およびPTで有意差を認めた。術後30日以内の手術死亡例は44例(26%)に認められ,死亡群と生存群の間ではGCS,ショックの有無,脈拍数,Alb,K,BUN,Creで有意差を認めた。さらに術後合併症群と非合併症群との間には,POSSUMで算出されるPS,OS,predicted morbidity rate,predicted mortality rateとも有意差が認められ,これは死亡群と生存群との間でも同様だった。高齢者腹部緊急手術症例ではその予後予測としてPOSSUMが有用であることが示された。
  • 鈴木 卓也, 松本 純一, 船窪 正勝, 山下 寛高, 江原 範重, 箕輪 良行, 中島 康雄
    2010 年 30 巻 7 号 p. 875-881
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    【目的】急性腹症症例におけるCT検査の有用性の検討。【対象および方法】救急外来を受診した急性腹症症例94例の,CT検査前後の臨床診断(それぞれに5段階の確信度を付記)や治療方針,最終的な臨床診断を比較し,CT検査の有用性について評価した(救急専属の放射線科医がCT画像を読影)。有用性の判断基準は以下の3つに定義した。(1)CT検査前診断が変更となり,CT検査後診断が最終診断と一致した症例,(2)CT検査前後で診断名は変わらなかったものの,確信度が上昇した症例,(3)CT検査後の診断が最終診断と一致しており,治療方針がCT検査前より変化して正しくなった症例。【結果】(1)の症例は31例,(2)は46例,(3)は25例であった。重複を除きそれぞれを合計すると94例中85例と90.4%の症例が上記の定義を満たしていた。【考察】CT検査は急性腹症診療の臨床診断や治療方針の決定に,有用性が高いと考えられる。
特集:急性腹症での創閉鎖の工夫
  • (緊急開腹例において腹腔内の汚染状況に応じた創閉鎖法とその成績について)
    伊藤 勝彦, 石井 隆之, 大多 和哲, 清水 善明, 近藤 英介, 西谷 慶, 横山 航也, 清水 公雄, 小川 清
    2010 年 30 巻 7 号 p. 885-888
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    緊急開腹例においては,禁煙,栄養管理などが術前に十分に行われないことが多く,待機手術に比べ創感染のリスクは高くなると考えられる。また,消化管穿孔例では腹腔内汚染度は高く,術中開腹創の保護は重要である。当院にて経験した緊急開腹例を汚染状況別(イレウス・ヘルニア嵌頓,上部消化管穿孔,小腸穿孔,急性虫垂炎,大腸穿孔)に分類してウンドプロテクターの導入前後における創汚染発生率を比較検討した。イレウス・ヘルニア嵌頓,急性虫垂炎例ではウンドプロテクターの導入後,創感染発症率は減少したが,大腸穿孔例では導入後も高率であった。緊急開腹例においてウンドプロテクターは有効と考えられるが,大腸穿孔例においては,delayed primary closureなどのさらなる対策が必要と考えられた。
  • 進藤 吉明, 天満 和男, 奥山 学, 日比野 政則, 佐々木 靖博, 工藤 智司, 中村 正明
    2010 年 30 巻 7 号 p. 889-892
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    Surgical site infection(SSI)は,頻度の高い術後合併症である。Superficial surgical site infection(s-SSI)はSSIの6割を占め,創離開や腹壁ヘルニアの原因にもなる。汚染手術に対する予防的な皮下留置ドレーンに関する報告は少なく十分な検討がなされたとは言いがたい。そこで汚染手術症例に対し持続陰圧吸引ドレーンを皮下組織に留置しs-SSIに対する効果を検討した。汎発性腹膜炎で緊急手術を行った症例25例に対し腹膜,筋膜を吸収性の縫合糸で閉鎖した後,持続陰圧吸引チューブを留置の有無によりs-SSIの発生率を検討したところ,留置しなかった症例では12例中8例,66.6%に認めた。留置した症例では13例全例に発生を認めなかった。汎発性腹膜炎症例において皮下持続陰圧吸引はs-SSIに有効である可能性が示唆された。
  • 塩崎 弘憲, 嶋田 元, 須藤 一起, 武田 崇志, 鈴木 研裕, 高橋 理, 井上 弘, 大東 誠司, 柵瀬 信太郎, 小野寺 久
    2010 年 30 巻 7 号 p. 893-898
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    手術において術野が汚染されている場合,高率に手術部位感染をおこし創部の開放および洗浄が必要となる。われわれは術中に創汚染がある場合,筋腱膜層を縫合後は皮膚,皮下脂肪組織は開放,wet to dry dressing法で管理し術後5~7日目の時点で感染がないと判断できる創に遅延一次縫合している。今回下部消化管穿孔手術における創傷管理の妥当性を検討した。2006年1月から2007年12月の2年間に当院にて下部消化管穿孔にて緊急手術を施行した21例を対象とし,全例術後開放創とし遅延一次治癒したもの,遅延一次縫合ができず二次治癒としたものの背景因子と手術部位感染のリスク因子を検討した。遅延一次縫合にて治癒したものは21例中7例(33%)であった。また遅延一次治癒できなかったものとしてSeptic shock例が多く,平均ICU入室期間が遷延し有意差を認めた。汚染創を開放創とする原則を考えると遅延一次治癒をもちいることで感染コントロールなど患者負担の軽減をはかることができる。
  • 樋口 亮太, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 今井 健一郎, 平野 敦史, 植村 修一郎, ...
    2010 年 30 巻 7 号 p. 899-904
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    (目的)汎発性腹膜炎手術例における創閉鎖にまつわるトラブルと対策について検討した。(対象・方法)SSIサーベイランス開始後の緊急手術60例を対象とした。汎発性腹膜炎群(A群18例)と非汎発性腹膜炎群(B群52例)に分け,SSI,術後腸閉塞と腹壁瘢痕ヘルニアの発生率とその対策について検討した。(結果)SSIはA群78%,B群33%(P=0.002)に,術後腸閉塞はA群6%,B群5%(P=NS)に,腹壁瘢痕ヘルニアがA群17%,B群0%(P=0.024)に発生した。下部消化管穿孔,汎発性腹膜炎手術と人工肛門造設は腹壁瘢痕ヘルニア発生の危険因子であった。対策として温生食による腹腔内大量洗浄,創部の減張縫合や皮下ドレーンの留置が行われていた。(結語)下部消化管穿孔を起因とする汎発性腹膜炎手術例で人工肛門造設を余儀なくされるような症例では,術後の腹壁瘢痕ヘルニア発生に注意が必要であると考えられた。
  • 渡部 広明, 山本 博崇, 高橋 善明, 中尾 彰太, 水島 靖明, 松岡 哲也
    2010 年 30 巻 7 号 p. 905-913
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    重症腹部外傷手術でのダメージコントロールは広く知られているが,この概念は決して外傷症例に限定した考え方ではなく急性腹症手術にも適応可能である。この際の一時的閉腹法として当センターではVacuum packing closur法(以下,VPC法)を積極的に実施してきた。急性腹症症例にVPC法を行ったものは23例であった。各症例の平均APACHE-II値は32.3と高値であり,それぞれの当該手術後にVPC法が施行された。術後の経過の中で,腹部コンパートメント症候群を発症したものはなかった。合併症として23例中1例に吸引圧による小腸損傷を認めたが,ほか重篤な合併症はみられなかった。重症急性腹症手術時の一期的閉腹が困難な症例やsecond look手術が必要な症例において,VPC法は外傷手術時と同様に使用可能な有用なオプションであると考えられる。
  • 久志本 成樹, 佐藤 格夫, 増野 智彦, 宮内 雅人, 福田 令雄, 白石 振一郎, 辻井 厚子, 川井 真, 横田 裕行
    2010 年 30 巻 7 号 p. 915-923
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    Damage controlの概念確立とabdominal compartment syndromeの病態把握は腹部救急疾患の治療を大きく変えたが,open abdominal management(OAM)という問題が生じている。Vacuum pack closure(VPC)を用いた一時閉腹と早期閉腹不能例に対する腹直筋鞘前葉反転による腹壁再建を急性期に適応し,その効果を検討した。対象:OAM施行54例(外傷21例,非外傷33例)。結果:平均OAM期間は13.9日,外傷12例,非外傷15例を救命し,fistula,abscessは1例もなかった。VPC導入により,定型的閉腹施行例における初回手術から閉腹までの期間延長が得られた。長期OAMにて定型的閉腹不能11例に対して腹直筋鞘前葉反転法を施行し,4例で創感染を合併したが腹壁ヘルニアの合併はない。結語:VPCの使用,早期腹壁再建によりOAMによる合併症を防ぎ,腹壁再建の頻度を減少しうる。
症例報告
  • 藤井 喜充
    2010 年 30 巻 7 号 p. 925-929
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は9歳の男児。1歳時に腹腔鏡補助下左精巣固定術の既往がある。腹痛と嘔吐にて発症し,造影CT検査にて右傍臍部に拡張しループ状となった造影効果を認める小腸と,右傍直腸窩に嵌入し造影効果を認めない小腸が確認された。臨床症状消失とともに右傍直腸窩の小腸内腔容積は縮小した。会陰ヘルニアの術前診断で,腹腔鏡手術が施行された。S状結腸および大網と前腹壁の癒着により,直腸右側は右傍直腸窩と連続する嚢状形態となっていたので,剥離によりこのヘルニア嚢を開放した。同部に骨盤底筋群の異常は認めなかったため,術後診断は後天性骨盤内ヘルニアとした。会陰ヘルニアは骨盤底筋群の欠損や開大に腹膜が陥入した有嚢性ヘルニアであると定義されており,本症例は合致しない。S状結腸および大網と前腹壁の精巣固定術後の癒着のため,直腸右側が嚢状となり,右傍直腸窩に小腸が陥入し易い形態となったため,発症したものと推察した。
  • 石田 諒, 陵城 成浩, 植田 真三久, 村田 晃一, 富原 英生, 家永 徹也
    2010 年 30 巻 7 号 p. 931-935
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性。肺癌,脳転移に対して放射線療法,化学療法中に,熱発と間歇性の腹痛が出現した。右下腹部に皮下気腫を認め,陰嚢は新生児頭大に腫大し,圧痛が著明であった。採血にて著明な炎症所見を認め,腹部CTでfree air,陰嚢内への腸管の脱出を認め,鼠径ヘルニア嵌頓・消化管穿孔の診断で緊急手術となった。盲腸から上行結腸が鼠径管に嵌頓し,ヘルニア嚢内で上行結腸が穿孔し,便汁が陰嚢内から腹腔内へと流出していた。嵌頓腸管を切除し,回腸瘻を造設した。ヘルニア嚢の内面に壊死物質が強固に癒着し,剥離困難であったため精巣ごと摘出した。術後51日目に呼吸器内科へ転科となった。盲腸・回盲部の鼠径ヘルニア嵌頓は,本邦での報告は9例と非常に少なく,さらに,鼠径ヘルニア嵌頓に伴った大腸穿孔に関しては8例(うち盲腸穿孔4例)であった。鼠径ヘルニア嵌頓の内容が回盲部の場合,他の腸管の鼠径ヘルニア嵌頓症例に比べ穿孔頻度が高く,ヘルニア内容が回盲部である場合には特に注意が必要であると思われる。
  • 上田 健太郎, 山添 真志, 川副 友, 岩崎 安博, 中 敏夫, 山上 裕機, 中村 靖司, 篠 正博
    2010 年 30 巻 7 号 p. 937-940
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    胃穿孔で発症した多発小腸転移を伴う胃未分化癌の1例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。約2週間前から心窩部痛とタール便が持続,トイレで倒れているのを発見された。近医を受診し消化管穿孔の診断で当院救急搬送となった。SIRS所見を呈し,腹部全体に腹膜刺激症状を認めた。腹部CTで肝脾表面に腹水があり,幽門部に腫瘍像を認め同部位周囲からMorison窩,肝表面にfree airを指摘できた。内視鏡検査では幽門部から十二指腸に浸潤した3型腫瘍を認めたため,緊急手術を施行した。幽門部の腫瘍は前壁側に完全に断裂し,所属リンパ節の著明な腫大,小腸間膜に数個の播種様結節,小腸に3個の腫瘍を認めた。肝臓に腫瘍は触知しなかった。幽門側胃切除術,小腸部分切除術を行った。病理組織検査では胃未分化癌,hCG産生腫瘍,転移性小腸腫瘍と診断された。術後小康状態を得たが残存癌は急速に進行し,術後44日目に永眠された。
  • 猪狩 公宏, 西澤 真人, 八木 雅幸, 増田 大機, 太田 俊介, 伊藤 浩光, 落合 高徳
    2010 年 30 巻 7 号 p. 941-943
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性。交通事故による腹部打撲を主訴に救急搬送された。血液検査ではアミラーゼ値の上昇を認めなかったが,腹部CT検査で膵体部の断裂および肝に表在性損傷を認め,IIIb型膵損傷およびII型肝損傷と診断し,緊急手術を施行した。手術所見では肝S4に表在性の損傷を認め,また上腸間膜静脈左縁で膵実質の完全断裂を認めた。肝に対しては局所止血剤で止血し,膵は切除量が約50%と推測されたため膵尾部・脾臓摘出術を施行した。術後合併症もなく退院し,現在術後1年が経過したが耐糖能異常を認めず経過中である。膵体部,尾部損傷に対してはさまざまな術式が施行されているが,原則は尾側膵切除術であり,膵切除量が80%以上を超える症例にのみ膵温存術式を考慮すべきである。
  • 坂本 一博, 丹羽 浩一郎, 永易 希一, 石山 隼, 杉本 起一, 秦 政輝, 小見山 博光, 高橋 玄, 五藤 倫敏, 奥澤 淳司, 市 ...
    2010 年 30 巻 7 号 p. 945-947
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    胃石よる食餌性イレウスの症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。症例は,67歳の男性。既往歴では,46歳時に胃癌で幽門側胃切徐術(B─I法)を施行。数日前より心窩部違和感がみられ,その後嘔吐と間欠的な腹痛を認め,外来を受診した。腹部所見では上腹部に圧痛を認め,腸蠕動は亢進していた。癒着性イレウスの診断で入院となった。CT検査では,小腸に大きさ5×4cm大で内部不均一で含気のある低濃度腫瘤を認め,口側の小腸に軽度の拡張がみられた。小腸造影検査では,小腸に鶏卵大の透亮像を認めた。以上より,胃石によるイレウスの診断で手術を施行した。開腹所見では,回腸末端部より約160cmの小腸に硬い内容物を触知し,小腸部分切除術を施行した。摘出した内容物は,茶褐色で7×4.5×4cm大の胃石であった。
  • 森 眞二郎, 森田 敏夫, 疋田 茂樹, 坂本 照夫
    2010 年 30 巻 7 号 p. 949-952
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性。上部消化管内視鏡検査にて胃潰瘍を指摘された3日後に喘鳴,呼吸苦を主訴に近医を受診。食道裂孔ヘルニア嵌頓の診断で胃管挿入による減圧を試みるも不可能で当センターへ紹介搬入となった。精査にて食道裂孔ヘルニアから脱出した胃の潰瘍が穿孔し,ヘルニア嚢内で遊離ガスと消化液が漏出したことによってヘルニア嚢が拡張し,閉塞性障害から循環不全をきたした病態であった。緊急開腹手術にて整復,減圧を行った直後より循環動態が安定し術後経過は良好であった。
  • 櫻井 克宣, 塚本 忠司, 清水 貞利, 永原 央, 張 翔, 山本 訓史, 金沢 景繁, 山下 好人, 西口 幸雄
    2010 年 30 巻 7 号 p. 953-956
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の男性。他院で急性膵炎に対し加療中,急性腎不全を併発し当院に紹介転院となった。重症膵炎と診断し,集中治療を施行。腎不全が軽快したため,膵炎の治療継続目的で近医に転院となったが,転院4日後にショック状態に陥り,再び当院に救急搬送された。腹部CT検査では上腹部の大部分を占める液貯留を認め,急性膵炎後の膵膿瘍と診断した。人工呼吸器管理と持続血液透析(CHD)を開始した。入院25日目の腹部CT検査にて膿瘍腔内に多量のair像を認め,上部消化管造影検査にて十二指腸下行脚の穿孔と診断した。経鼻栄養チューブの先端を空腸に留置して経腸栄養を行うとともに,経皮的に2本の膿瘍ドレナージチューブを留置し,洗浄を行うことで徐々に膿瘍腔は縮小した。難治性十二指腸皮膚瘻をきたしたが,保存的加療により閉鎖し軽快退院した。
  • 本間 信之, 工藤 大介, 湯澤 寛尚, 佐藤 武揚, 山内 聡, 篠澤 洋太郎
    2010 年 30 巻 7 号 p. 957-960
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性。自殺企図により包丁を臍左側に1回刺し,抜去した状態で受傷約2時間後に救急搬送された。小腸脱出と出血性ショックのため緊急開腹,止血と小腸部分切除術を施行した。術後イレウスとなり,CTで腹腔内から左腸腰筋へ連続する低吸収域と左水腎症を認めたため,再手術を施行。後腹膜に左腸腰筋と交通する径2cmの損傷を認めた。腹腔内と後腹膜腔内に汚染した腹水を認め,洗浄・ドレナージを行った。術後,後腹膜ドレーンの排液は減少せずに尿量が減少,排液の性状が尿と類似していることから尿管損傷を疑った。逆行性腎盂尿管造影で左尿管断裂と診断,再手術16日後左腎瘻造設,46日後二期的に尿管再建術を施行,56日後独歩退院した。腹部刺創による尿管損傷の合併はまれであるが,損傷部位としてつねに念頭に置く必要がある。また後腹膜損傷部近傍のドレーン排液の性状は尿管損傷の診断に有用であった。
  • 鬼塚 幸治, 伊藤 重彦, 田上 貴之, 山吉 隆友, 木戸川 秀生
    2010 年 30 巻 7 号 p. 961-963
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は,狭心症や高血圧の既往がある81歳,女性。5月中旬夕方より,左下腹部痛,嘔気を認めた。翌日,腹膜刺激症状を認めたため当院へ紹介入院となった。腹部全体の疼痛を訴え,左下腹部に筋性防御を認めた。血液検査所見でCRPの上昇と,血液ガス所見でアシドーシスを認めた。腹部造影CT検査で,下行結腸に壁肥厚と粘膜下浮腫があり,周囲に脂肪織の濃度上昇と腹水,腹膜肥厚を伴っていた。また,腸管の一部は造影効果が不良だった。以上より虚血性大腸炎,腸管壊死疑いにて,緊急開腹手術を施行した。盲腸からS状結腸までの粘膜が壊死しており,結腸亜全摘+回腸人工肛門造設術を施行した。壊死型虚血性大腸炎の中でも全結腸型はまれであり,致死率も高く,予後不良な疾患である。特に,早期診断と壊死腸管の確実な切除が重要である。
  • 西川 厚嗣, 松本 寛史, 片山 政伸, 田中 基夫, 重松 忠
    2010 年 30 巻 7 号 p. 965-967
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性。stageIVの進行胃癌に対しBillrothII法再建をされた既往があり上腹部痛で受診。腹部CTで輸入脚の拡張を認め急性輸入脚症候群と診断し,癌や腹膜播種による悪性狭窄が疑われた。内視鏡的ドレナージを行い状態の改善後,expandable metallic stent(EMS)の挿入にてQOLを維持し死亡直前まで自宅で過ごすことが可能であった。低侵襲な内視鏡治療は有用であり検討すべき治療である。
  • 安部 智之, 梶山 潔, 祗園 智信, 播本 憲史, 由茅 隆文, 長家 尚
    2010 年 30 巻 7 号 p. 969-972
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性。5年前,先天性胆道拡張症に対して総胆管切除術+胆摘出術+胆管空腸吻合術を施行されていた。妊娠27週までは母児ともに経過良好であったが,突然の嘔吐と腹痛を主訴に当院を受診した。理学的には腹部膨満はあるが,腹膜刺激症状はなかった。癒着性イレウスと判断し,入院加療となった。しかし,入院24時間後に腹痛が増強し,ショック状態となった。腹部単純CT検査で絞扼性イレウスと診断し,緊急開腹手術を施行した。腹腔内には多量の血性腹水を認め,横行結腸間膜の間隙で小腸が内ヘルニアとなり絞扼されていた。胎児機能不全であったため帝王切開術で児を娩出した。その後,壊死小腸を切除し,総肝管断端は縫合閉鎖した。胆汁は右肝管より外瘻化した。術後22日目に胆道再建術を行い,術後34日目退院となった。妊娠中の絞扼性イレウスの確定診断は容易ではなく,早期診断・早期治療の重要性において極めて示唆に富む1例を経験したので報告する。
  • 五十嵐 悠一, 仁科 雅良, 須賀 弘泰, 出口 善純, 佐藤 孝幸, 西久保 俊士, 中川 隆雄
    2010 年 30 巻 7 号 p. 973-975
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/12
    ジャーナル フリー
    大量出血をきたした小腸潰瘍で,緊急手術により救命しえた症例を経験したので報告する。患者は38歳,男性。下血のため近医に入院した。2日後再び下血が出現したため,当救命救急センターへ紹介搬送された。上部消化管内視鏡にて出血源はなかった。腹部造影CTでは小腸出血が疑われた。第2病日に大量の血便が出現したため,緊急開腹術を施行した。回盲部から50cmの小腸に腫瘤を認めた。漿膜に異常なく,腸間膜リンパ節の腫張もなかった。回腸を約12cm切除した。切除した回腸には,露出血管を有する深い潰瘍を認めた。病理所見は単純潰瘍であった。術後経過は良好で24日後に軽快退院した。出血性ショックをきたした小腸出血では時期を逸せず緊急手術することが救命につながったと思われた。
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