日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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30 巻, 1 号
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原著
  • 櫻井 丈, 野田 顕義, 瀬上 航平, 佐々木 貴浩, 諏訪 敏之, 小林 慎二郎, 四万村 司, 牧角 良二, 宮島 宜伸, 大坪 毅人
    2010 年 30 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    【目的】消化管穿孔術前の血清アルブミン濃度(Alb)とsurgical site infection(SSI)発生の相関に関して検討した。【対象と方法】2008年3月までの2年間に当科で経験した。消化管穿孔手術症例のうち,Albを測定した39例を対象とした。SSI発生群16例(SSI)とSSI非発生群23例(non SSI)に分けて,背景因子およびAlbに関して検討した。【結果】SSI発生は41%に認めた。出血量はSSIで有意に多かった(p=0.04)。Albは有意にSSI群で低値であった(p=<0.05)。またAlb 3.4mg/dL未満では59.1%のSSI発生を認め,3.4mg/dL以上の群と比較して有意に発生率が高かった。まとめ:消化管穿孔に対する緊急手術症例のSSI発生はAlbと相関し,簡便に予測可能であった。
特集:腹部救急医療におけるチーム医療
  • 森脇 義弘, 鈴木 範行, 荒田 慎寿, 春成 伸之, 岩下 眞之, 小菅 宇之, 豊田 洋, 柏崎 裕一, 横尾 直樹, 馬場 紀行, 田 ...
    2010 年 30 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    腹部外傷は,非解剖学的損傷が複数専門診療領域に拡がり,腹部外合併損傷も多い。救急・外傷専従医と各外科系医,集中治療医などの専門診療医間でのチーム診療を要する。当救命救急センターは大学附属病院内診療部門だが,単独診療講座ではなく各科講座からの出向医で構成される中央部門で,各専門診療医が専門的知識・技術を発揮しながら円滑なチーム診療,診療全体の調和と統合性を目指してきた。初期診療では各専門診療医が4~5名の混成初期診療グループ(G)でチーム診療を実践し,気管挿管や外科的気道確保,中心静脈路確保や胸腔ドレナージ,開胸心臓マッサージなどminimum requirementは全専従医が行い,それ以上の専門手技は救命救急センター内の各専門診療医が役割分担している。初期診療以降は各専門診療科G単位で対応し,ICUでは集中治療医が全身管理,主治医Gは専門的診療,家族対応などを分担し,他の各専門診療科Gがサポートする形で「集学的集中治療」を行う。
  • 中川 富美子, 古川 力丸, 丹正 勝久
    2010 年 30 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    腹部救急領域では,高い重症度と共に高い緊急度をあわせ持つ患者が多い。原疾患に対する迅速な処置を行うとともに,病態変化の早期発見に努め,安全な医療を提供しなくてはならない。多職種によるチーム医療は,職種ごとに異なった観点をもつことで,多角的視野による診療を可能にする。これにより,緻密で安全性の高い診療を可能とする。その中で,臨床工学技士は医療機器の臨床使用に対する安全性の確保と有効性の維持を目的とした専門職であり,特に生命維持管理装置をはじめとした各種侵襲的医療機器を使用することが多い腹部救急領域において重要な役割を担う。臨床工学技士がチーム医療へ積極的に参加することによって,医療機器の安全使用の観点から,医療チームに貢献することができる。医療チームを円滑に機能させることで,高いリスクをもった腹部救急患者に対して,安全で質の高い医療を提供することが可能となる。
  • ─経動脈的塞栓術と開腹術にて救命した多発外傷の1例─
    工藤 大介, 佐々木 淳一, 山内 聡, 湯澤 寛尚, 小林 道生, 篠澤 洋太郎
    2010 年 30 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    高度救命救急センターで扱う三次救急傷病は複雑な病態が多く,単一科で対応するのは困難である。特に重症多発外傷症例においては,各損傷部に対する専門的な治療と同時に呼吸や循環などの集中治療管理も必要となり,複数科の関与が必要になる。複数科がチームとして有機的に連携すれば,治療効果が上がる。腹部外傷を含む多発外傷例に対して,当センターでは初期診療から集中治療室での管理まで,センター専従医が主治医,リーダーとなり,各科の役割を明確にして,業務分担の調整を行い,有機的なチーム医療の構築を図っている。役割を明確にすることが同時にリスクマネージメントにも繋がる。チーム医療の機能の検証としては,症例検討会を行い,必要時には各科にも参加してもらい,チーム医療機能の向上を図っている。各施設において,救急部門に多くの各科専門医を擁することは難しいが,専門医集団との連携により診療レベルを上げることが大切である。
  • ─緩和医療として貢献できるために─
    鍋谷 圭宏, 川平 洋, 赤井 崇, 夏目 俊之, 林 秀樹, 西森 孝典, 上里 昌也, 田村 道子, 竹内 純子, 田口 奈津子, 松本 ...
    2010 年 30 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    切除不能進行/再発胃癌によるoncologic emergencyには,主腫瘍による幽門狭窄や胃切除後の再発による残胃吻合部狭窄,腹膜播種による癌性腸閉塞などがある。これらに対する外科的介入では人口肛門造設の可能性など術式も不確定で,短時間での手術決定は容易ではない。oncologic emergencyであっても,消化器外科医は患者と信頼関係を築き十分なinformed consentを得て,合併症のない手術を心がける必要がある。患者ごとに目標を定めて入念な治療計画の下で行う外科的介入は,患者・家族にとって有意義な緩和医療となる。しかしこうした高度な医療では,多職種のスタッフにより精神的配慮ができるチーム医療の遂行が望ましく,その必要性は今後高くなると思われる。したがってわが国でも,業務を分担するチーム医療に対する合意が確立されることを期待したい。一方で,外科医を含む医療スタッフには,患者と信頼関係を築ける人間性とチーム医療の一員となれる協調性が求められる。
  • 木下 浩作, 丹正 勝久
    2010 年 30 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    救命救急センターに搬入される患者は,緊急度も高く,入院時から複数の診療科にまたがることが多い。そのため救命救急センターで必要なチーム医療は,生命に関わる危機的な生理学的異常に対して,素早く判断して対応できるチーム作りが要求される。医師や看護師,薬剤師,臨床工学技士など各部署での指揮命令系統等やそれぞれのメンバー間の上下関係にとらわれることなく,チーム医療を展開しなければならない。その上で,チームリーダーの責務は大きく,情報を共有しこれから行うべき治療計画と手順を適切かつ明確にメンバーに伝え,行った医療に対してはチーム全体で評価することが要求される。救命救急センターの初療におけるチーム医療は,その他のチーム医療と同様に,チームを構成するメンバーが互いに尊重しあい,平等に権限を共有し患者を中心とした考え方で協力的体制をとることが大切である。
症例報告
  • 水野 英彰, 阿部 展次, 竹内 弘久, 伊藤 尚真
    2010 年 30 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の女性。排便時,下腹部痛と肛門からの著しい脱出物を認め当院救急外来受診。来院時,腹膜炎所見は認めなかったが,肛門より糞便で高度に汚染された浮腫状の小腸が約1.5m脱出しており,緊急開腹手術を施行。直腸S状部前壁に約4cmの穿孔を認め,同部位より小腸が嵌入,経肛門的に小腸が脱出していた。糞便による腹腔内汚染は認めなかった。脱出小腸切除,穿孔部単純縫合閉鎖を施行した。術後縫合不全,腹腔内・創部感染を認めず。第20病日に脳梗塞を合併するも保存的に軽快,第56病日に退院となった。経肛門的小腸脱出を伴う直腸穿孔は極めてまれな腹部救急疾患である。自験例を含む本邦報告例12例について考察を加えて報告する。
  • 加藤 洋介, 高畠 一郎, 横山 浩一, 吉田 千尋, 大村 健二
    2010 年 30 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性。発熱・悪寒を主訴に外来を受診した。軽度の右下腹部痛を認めたが,腹部CT検査では回盲部の軽度の炎症性変化を認めるのみであった。精査加療のため,同日入院のうえ抗菌薬治療を開始した。入院後も発熱が持続し,抗菌薬を変更したが第5病日に敗血症に陥った。緊急開腹手術を行い,腹腔ドレナージを行った。その後も発熱が持続し,第11病日に入院時の血液培養の結果から放線菌による敗血症と判明した。ペニシリンG(PCG)大量投与(1日2,400万単位を6回に分けて点滴静注)を行ったところ,翌日には解熱した。腹部放線菌症は一般的に腫瘤形成性で,菌血症を起こした報告は非常にまれである。適切な抗菌薬の投与により救命しえたので,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 鈴村 和大, 王 孔志, 麻野 泰包, 佐竹 真, 黒田 暢一, 平野 公通, 宇山 直樹, 藤元 治朗
    2010 年 30 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性。2008年12月に右下腹部痛と発熱が出現したため近医を受診。保存的加療を受けていたが,軽快しないため当科紹介入院となった。入院時,38.2℃の発熱および右下腹部の圧痛と筋性防御を認めた。血液検査では白血球17,100/μL,CRP19.3mg/dLと強い炎症反応を認めた。腹部CT検査では回盲部の腸管壁の肥厚および回盲部腸間膜に約8cm大の腫瘤性病変を認めた。急性虫垂炎または大腸憩室炎,それに伴う回盲部腸間膜膿瘍と診断し結腸右半切除術を施行した。切除標本では回盲弁より約5cm口側の回腸腸間膜側に約5mm大の瘻孔を認め,腸間膜内の膿瘍腔との交通を認めた。病理組織学的所見では瘻孔部は筋層を欠く仮性憩室の所見であり,回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍と診断した。術後経過は良好で術後第13病日に退院した。
  • 高橋 学, 佐藤 信博, 小鹿 雅博, 井上 義博, 渡邊 正敏, 遠藤 重厚
    2010 年 30 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    特発性直腸穿孔は本邦においてもこれまで数多くの報告がなされているが,今回,経肛門的小腸脱出を伴った直腸穿孔の1例を経験したため,他文献との検討も含め報告する。症例は69歳女性。排便時,肛門から腸管の脱出を認め近医受診。加療目的に当院救急センターに紹介となった。来院時,肛門から小腸が約50cmにわたり脱出。脱出小腸は軽度暗赤色調を呈していた。緊急開腹術を施行すると,小腸はS状結腸前壁の縦走穿孔より直腸に入り込み,経肛門的に体外へ脱出していた。小腸脱出を伴った直腸穿孔症例の報告は中央医学会誌で渉猟し得た限りではこれまで24例のみで極めてまれな疾患であった。背景としては本症例を含め直腸脱を繰り返すなど慢性的にS状結腸および直腸へ牽引力が加わる疾患を有した症例が多く,そのことが腸管壁の脆弱化を招き直腸前壁の穿孔の一因になったと考えられた。
  • 中島 紳太郎, 諏訪 勝仁, 北川 和男, 山形 哲也, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2010 年 30 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は20歳代男性。手術歴や特記すべき既往はなかった。1週間前から続く上腹部痛に対し他院で投薬を受けていたが,急激な上腹部痛と数回の嘔吐が出現し当院救急部に搬送された。来院時,上腹部に軽度の圧痛を認めるものの腹膜刺激症状はなく,腹部単純X線写真では少量の小腸ガスを認めるのみであった。CTでTreitz靭帯近傍から左前腎傍腔へ脱出する拡張腸管を有する嚢状構造を認め,上部透視検査では水平脚より肛門側に造影剤の流出を認めなかった。以上より左傍十二指腸ヘルニア嵌頓と診断し緊急開腹術を行った。傍十二指腸ヘルニアは,Treitz靱帯周囲の腹膜窩に腸管が陥入し生じる内ヘルニアの一種であり,今回術前CTで認められた嚢状構造に覆われた拡張腸管ループ像は典型的な所見であったと考えられた。以上,術前診断が可能であった左傍十二指腸ヘルニア嵌頓の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した。
  • 松橋 延壽, 國枝 克行, 山田 敦子, 佐々木 義之, 田中 千弘, 西科 琢雄, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2010 年 30 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性。2007年7月,血便および腹痛のため当院消化器内科へ入院した。腹部造影CT検査において門脈および上腸間膜静脈が血栓性閉塞していることを認めたため,外科紹介となったが,大量腸管切除術が避けれないと判断し,Danaparoid sodium投与にて緊急手術も念頭に経過観察となった。その後腹部症状および血液検査は改善したが,空腸造影検査で閉塞所見が残存したため,9月に手術を施行した。Treitz靭帯から40cmの空腸が完全に索状物様に収縮壊死しており,その範囲は全長40cm存在していた。正常空腸を含めて切除摘出し,一期的に吻合した。Danaparoid sodium投与により大量腸管切除術を回避できた,門脈・上腸間膜静脈血栓症の1例を経験したため報告する。
  • 大澤 武
    2010 年 30 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性。38℃台の発熱があり近医を受診し抗菌薬治療を受けたが,発熱が続きCRPが14.8mg/dLに上昇した。腹部造影CTで肝膿瘍を疑い当院に紹介された。心窩部に圧痛と叩打痛を認めた。前医の腹部造影CTでは肝外側区域に周囲が濃染する低濃度領域があり,超音波検査では直径75mm大の無エコー病変の中に低エコーの沈殿物を認めた。以上より感染性肝嚢胞と診断し,エコーガイド下に経皮経肝嚢胞穿刺吸引を行った。白濁・粘稠な内容液が吸引された。内容液にはグラム染色で好中球浸潤を認めたが細菌を認めなかった。翌日から解熱を含め炎症所見は消退し,超音波検査で嚢胞の縮小を確認したので第6病日に退院した。嚢胞内容物の培養では細菌は同定されなかった。感染性肝嚢胞では一般的にはカテーテルを嚢胞内に留置する経皮経肝嚢胞ドレナージを行う。しかし今回の症例ではより低侵襲である経皮経肝嚢胞穿刺吸引が有効であったと考えられる。
  • 軍司 直人, 五本木 武志, 飯田 浩行, 折居 和雄
    2010 年 30 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性。飲食後自動車を運転中に対向車との衝突により車体が回転し立木に激突し受傷した。救急搬入時,意識は清明で全身に明らかな打撲による損傷は認めず,胸腹部CT上も外傷性気胸,肺挫傷,腹腔内出血,腹腔内遊離ガスはなく経過観察とされた。3時間後に少量の吐血があり腹部単純CTを再施行し胃内に高吸収域の液体貯留を認めたため,初診時の造影CTを確認すると胃小弯に造影剤の漏出が疑われ緊急内視鏡検査を施行した。食道胃接合部直下の小弯に粘膜の裂傷による出血を認め,クリップにより粘膜を縫縮し止血した。今回,腹部に直達的な打撲や胃内圧の急激な上昇をきたす圧迫がなく,事故の際に作用した鈍的外力である減速力が原因と推察された胃粘膜裂傷の症例を経験したので損傷機転について考察し報告する。
  • 廣田 政志, 山下 克也, 市原 透
    2010 年 30 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性。2007年8月,中下部胆管癌にて膵頭十二指腸切除術(Child変法再建)を施行した。2008年9月,下血が出現し入院となった。Hb 6.7g/dLと貧血を認め,腹部造影CT検査で門脈本幹の途絶と門脈~上腸間膜静脈の背側に腫瘤像を認め胆管癌再発と診断した。また,胆管周囲が強く造影され門脈圧亢進による側副血行路の発達が疑われた。上部消化管内視鏡検査では,胆管空腸吻合部に露出血管からの出血が認められ,側副血行路として発達した胆管空腸吻合部の静脈瘤破綻によるものと推測した。小開腹による経回結腸静脈経路で門脈造影を行った。門脈本幹は高度の狭窄を呈し,側副血行路として挙上空腸から胆管を介する求肝性の静脈瘤が確認された。門脈内ステント留置後の門脈造影では側副血行路は消失し,肝内への十分な門脈血流が確認された。術後は胆管癌再発に対して化学療法を開始し,消化管出血の兆候はみられず外来通院中である。
  • 山本 博崇, 本間 陽一郎, 浜野 孝
    2010 年 30 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は22歳の男性。緩徐に増強する腹痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。身体所見,画像所見より腸閉塞が疑われた。腸管虚血も否定できないため,緊急手術を施行した。開腹し腹腔内を検索したところ,Meckel憩室が食塊で充満され,小腸の通過障害をきたしていた。憩室を含む小腸を切除し,手術を終了した。切除した組織には炎症所見は認めなかった。本症例はMeckel憩室による腸閉塞の分類(Rutherford分類)に当てはまらず,まれな症例と考えられた。
  • 清水 喜徳, 草野 智一, 草野 満夫, 村上 雅彦
    2010 年 30 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    1型盲腸癌が先進部となり盲腸から全上行結腸が横行結腸内に陥入し,イレウスを呈した成人型腸重積症の1例を経験した。症例は79歳の男性で,正常圧水頭症に対するV-Pシャント目的で当院脳神経外科に入院中であったが,突然の左季肋部痛のため当科へ転科となった。腹部所見では左季肋部に手拳大の弾性・硬で可動性のある腫瘤が触知され,腹部単純X線像では上腹部に著明なniveau像が認められた。腹部CT検査では横行結腸に径6cm大のtarget signおよびpseudo-kidney signを呈する腫瘤性病変と腸管内への腸管陥入像が認められ,腸管の腫瘤性病変が先進部となって惹起された腸重積症によるイレウスと最終診断し緊急手術を施行した。手術所見では回腸末端部から全上行結腸が横行結腸中央部まで陥入し,腫瘤を含めた陥入腸管切除を施行した。摘出標本では先進部腫瘤は径5cm大の1型盲腸癌で,病理組織学的検索ではpSS, pN1, sP0, sH0, cM0:Stage IIIaであった。
  • 藤澤 稔, 嵩原 一裕, 魚森 俊喬, 三次 庸介, 吉野 耕平, 町田 理夫, 北畠 俊顕, 児島 邦明
    2010 年 30 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2010/01/31
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎の術後5日目に腹腔内出血で再入院し,緊急手術で止血し得た血友病Aの1例を経験したので報告する。患者は27歳,男性。急性虫垂炎の診断で他院から紹介された。腹部CTから腫瘤形成性虫垂炎と診断し抗生剤による保存的治療を行ったが,2ヵ月後に待期的腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術前後に第VIII因子製剤を投与し,第5病日に軽快退院したが,右下腹部痛で同日緊急入院した。腹部CTで,多量の腹水貯留と回盲部に造影剤の血管外漏出を認めたため緊急開腹手術を施行,虫垂間膜断端の動脈性出血を確認し止血を行った。術前後に再び第VIII因子製剤を投与し軽快退院したが,血友病を有する症例の手術および術後管理に関しては適切な術式と器具の選択,十分な止血操作,適切な第VIII因子製剤の投与と観察期間が重要であると考えられた。
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