日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
30 巻 , 5 号
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原著
  • 法水 信治, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 高山 祐一, 西前 香寿, 広瀬 友昭
    2010 年 30 巻 5 号 p. 621-626
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎を疑う腹痛のため入院治療を要した561名の患者を対象にprospectiveに検討した。病歴・理学所見・白血球増多・CT所見について,感度・特異度を解析した。またこれらの項目について多変量解析を行った結果,年齢・CT所見の虫垂腫大・糞石・虫垂周囲の炎症所見・陰性所見として上行結腸周囲の炎症の5項目が急性虫垂炎診断の関連因子として抽出された。その結果に基づいて,蜂窩織炎性・壊疽性虫垂炎のみを手術適応と判断するための診断スコア作成を試みた。感度,特異度は77.2%,75.6%であった。実際の総合診断では感度,特異度は88.6%,88.7%であり,スコアによる結果を10%程度上回っていた。この差は外科医の臨床経験に基づく総合的判断力に相当すると考えられ,統計解析による診断スコアでは補えない部分と考えられた。
  • 指山 浩志, 浜畑 幸弘, 松尾 恵五, 堤 修, 中島 康雄, 赤木 一成, 高瀬 康雄, 新井 健広, 星野 敏彦, 南 有紀子, 角田 ...
    2010 年 30 巻 5 号 p. 627-632
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大腸憩室出血に対する大腸内視鏡検査について検討した。当院の大腸憩室出血症例は88例で,初診時の平均年齢は65歳,男性に多く右側結腸に多い傾向があった。総出血件数122件における短期的再出血率は28%(35/122件),症例あたりの長期的再出血は24%(21/88例)であった。緊急内視鏡を施行した出血事例112件における内視鏡での診断率は40%(45/112件),すべての緊急内視鏡検査における止血処置率は43%(65/151件)であった。短期的再出血率は,止血処置例が26%(17/65件),止血処置なし例が23%(20/86件)と,通常の内視鏡的止血処置による再出血予防効果には疑問がもたれた。よって,憩室出血における緊急内視鏡は,診断を確定し,一次止血を行うことを主目的とし,予防的止血処置には工夫が必要である。また,止血困難,再出血を繰り返す例では,外科手術などを考慮すべきであると考えられた。
特集:Oncologic emergencyの診断と治療1
  • 長濱 正吉, 狩俣 弘幸, 新垣 淳也, 野里 栄治, 下地 英明, 佐村 博範, 白石 祐之, 西巻 正
    2010 年 30 巻 5 号 p. 635-638
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Oncologic emergencyの治療は適切な判断が要求される。今回われわれは当科におけるoncologic emergency手術症例の治療成績から,その治療方針を立案した。2003年1月から2007年12月までの5年間に当科で11例のoncologic emergencyの緊急開腹手術を経験した。男性8例(42~73歳:中央値:57歳),女性3例(53~90歳:54歳)。大腸癌7例,食道癌・肝内胆管細胞癌・肝細胞癌・子宮頸癌が1例ずつ。術前診断方法,臨床経過,予後などを検討した。術前検査は全例で腹部単純X 線写真・CT検査が施行され,術式決定に有用であった。腫瘍が残存した8例は全例死亡し,腫瘍の遺残がない3例(大腸癌)では26ヵ月以上の生存が得られた。外科的治療によって腫瘍遺残のない大腸癌の予後は良好であった。
  • 小泉 哲, 榎本 武治, 小林 慎二郎, 櫻井 丈, 四万村 司, 牧角 良二, 朝倉 武士, 中野 浩, 月川 賢, 大坪 毅人
    2010 年 30 巻 5 号 p. 639-646
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    消化器癌治療を受ける患者数の増加に伴い,消化器外科医がoncologic emergencyに遭遇する頻度は今後さらに増してくる。oncologic emergencyに陥った患者に最良の結果が導かれるためには,より早い緊急徴候の認識と適切な治療の実施が必要であり,そのため消化器外科医はemergencyの診断・対応にも精通していなければならない。消化器外科領域におけるoncologic emergencyとは,消化器癌に起因して“出血”,“穿孔(破裂)”,“閉塞(絞扼)”,“感染(炎症)”の4病態が惹起された場合を指す。各疾患における4病態の具体例を想起でき,各病態における最良の対応策を知って診療にあたることが重要である。
  • 辻本 広紀, 小野 聡, 平木 修一, 坂本 直子, 矢口 義久, 山本 順司, 長谷 和生
    2010 年 30 巻 5 号 p. 647-650
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌穿孔は胃癌全体に占める割合は1%以下とまれであるが,胃穿孔症例のうち胃癌穿孔症例の占める割合は約30%と多く,胃穿孔では胃癌穿孔に留意した治療が必要である。胃癌穿孔では術中に診断できることは少なく,術中内視鏡検査や迅速病理検査などの対策が必要である。胃癌穿孔では非穿孔胃癌と比較して予後不良であるが,早期癌で根治手術が行われた場合には,非穿孔例と匹敵する予後が期待できる。また手術術式については,全身状態を考慮した適切な術式選択をする必要があり,場合によっては内視鏡外科手技を取り入れた二期的手術も考慮すべきであろう。
  • 設楽 兼司, 福成 博幸, 馬場 裕信, 松永 浩子, 吉田 剛, 林 哲二
    2010 年 30 巻 5 号 p. 651-657
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高度に進行した胃癌原発巣や術後再発巣からの活動性動脈性出血は患者のQOLを低下させるばかりでなく,時に致命的となり得る。それらの出血に対しTAEにて救命し,その後のQOLも良好であった症例を3例経験した。症例1:46歳男性。2006年10月,他院で傍大動脈リンパ節転移を伴う進行胃癌に対し胃全摘を施行し,当院内科で化学療法を行っていた。2008年2月に吐下血で入院。腹部CTで脾動脈周囲に血腫があり,腹部血管造影で脾動脈からの出血を認めマイクロコイルで塞栓。その後7ヵ月間外来化学療法を継続し得た。症例2:76歳男性。2000年6月,幽門狭窄を伴う切除不能胃癌に対し胃空腸吻合術を施行。4ヵ月後に吐下血あり。腹部血管造影にてSMA領域の腫瘍血管から出血を認めマイクロコイルで塞栓。さらに3ヵ月後にも出血をきたし左胃動脈下行枝,次いで同動脈本幹を塞栓。初回出血から原病死までの8ヵ月間,自宅療養が可能であった。症例3:77歳男性。1998年10月,進行残胃癌で残胃全摘+横行結腸合併切除,R-Y Jパウチ再建を施行。2001年6月吐下血にて入院。腹部血管造影にて挙上空腸枝からの出血あり,マイクロコイルで塞栓。以後原病死までの約2年間外来化学療法が可能であった。病巣からの活動性出血を伴う高度進行胃癌患者・胃癌再発患者において患者のQOLを改善・維持するためにTAEは有効な方法であると考えられた。
  • 鍋谷 圭宏, 川平 洋, 赤井 崇, 夏目 俊之, 堀部 大輔, 上里 昌也, 林 秀樹, 松原 久裕
    2010 年 30 巻 5 号 p. 659-663
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    切除不能進行/再発胃癌によるoncologic emergencyの一つに,腹膜播種による癌性腸閉塞(malignant bowel obstruction:MBO)がある。われわれは2003年10月~2009年3月の間に,食事摂取への希望が強く2ヵ所までの介入でMBO解除が可能と判断した25症例に手術を施行した。1例は試験開腹となったが24例に介入し,うち18例に人工肛門が造設された。胃癌MBOは急速に発症する。患者に有益な外科的介入を行うには,早い時期から患者・家族と良好な信頼関係を築いて希望を確認し,正確な診断の下で機を逸しない(時には予防的な)手術計画を立てることがまず肝要である。また,管理の難しい右側人工肛門の管理を始め,多職種の医療スタッフによる周術期環境整備と精神的な配慮ができるチーム医療の存在も欠かせない。一方で,胃癌MBOに対する外科的介入を行う外科医は,最期まで継続して終末期治療に関わり,患者のQOLと希望を考えて治療全体を統括するリーダーであることが望ましい。
  • 柚木崎 紘司, 山崎 之良, 奥 順介, 田村 公佑, 李 兆亮, 太田垣 裕子, 山階 武, 川添 智太郎, 金 民, 岡田 章良, 赤松 ...
    2010 年 30 巻 5 号 p. 665-669
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小腸悪性腫瘍は,全消化管悪性腫瘍の中の2%以下といわれ非常にまれな疾患であり,これまで診断も困難であった。しかし近年のダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡の登場により小腸悪性腫瘍について徐々に解明されつつある。今回われわれはダブルバルーン小腸内視鏡にて14例の原発性小腸癌を経験した。それらはいずれも進行癌でOGIB(原因不明の消化管出血)やイレウス症状で発症しoncologic emergencyとして対応するものであった。自験例14例を提示するとともに原発性小腸癌について概説する。
  • 堤 宏介, 大塚 隆生, 貞苅 良彦, 森 泰寿, 安井 隆晴, 上田 純二, 高畑 俊一, 中村 雅史, 田中 雅夫
    2010 年 30 巻 5 号 p. 671-676
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腹部救急領域で急性膵炎に遭遇する機会は多く,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)が急性膵炎を惹き起こした報告例も散見される。IPMNは近年注目されている,組織学的に幅広いスペクトラムを有する嚢胞性膵腫瘍である。当科で急性膵炎を発症したIPMN切除例について臨床病理学的に検討した。急性膵炎を発症したIPMNは126例中16例(12.7%)に認め,組織学的にcarcinoma(IPMC)の頻度が高く,組織亜型では腸型IPMNの割合が有意に高かった。腸型IPMN由来浸潤癌は粘液癌の形態を示すことが多く,粘液高産生のために膵管閉塞を生じやすく,結果として急性膵炎の発症頻度が高くなっていると考えられる。また腸型はIPMCで発見されることが多く,悪性頻度の高さを反映しているものと思われる。急性膵炎の原因としてIPMNをつねに念頭に置き,画像所見でIPMNの存在が疑われれば,膵炎の治療に引き続き,悪性の可能性を考慮した精査と治療が必要となる。
  • 鈴木 修司, 小池 伸定, 原田 信比古, 鈴木 衛, 羽生 富士夫
    2010 年 30 巻 5 号 p. 677-680
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除は切除,再建臓器が多く,時としてその合併症により重篤な経過をたどる。本稿では膵頭十二指腸切除後に緊急処置を行う合併症とその対策につき検討した。緊急処置を要した膵頭十二指腸切除後の合併症は膵液瘻,腹腔内出血,腹腔内膿瘍,胆汁瘻であった。これらの合併症に対し,最近では外科的な処置ではなく,IVR手技を用いた処置を行うようになってきた。自験例を検討した上で,膵頭十二指腸切除後に緊急処置を必要とした合併症につき診断,治療法を概説した。IVR手技を用いた適切な処置と手術の工夫により膵頭十二指腸切除後の合併症による重篤な経過は回避できるものと考えられた。
症例報告
  • 春木 伸裕, 佐藤 篤司, 桑原 義之
    2010 年 30 巻 5 号 p. 681-684
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性。2年前に胃の小細胞癌で噴門側胃切除術を施行し経過観察中であった。腹痛を主訴に当院を受診し,CT検査にて穿孔性腹膜炎と診断され緊急開腹術を施行された。回腸に小児手拳大の腫瘍を認め,一部に穿孔していた。小腸切除術およびドレナージ術を施行した。病理診断は,胃腫瘍と同様な組織像を呈する小細胞癌であった。退院後,外来で経過観察していたが,腹腔内および胸壁に再発し,腹膜炎手術から約4ヵ月後に死亡した。穿孔性腹膜炎で緊急開腹手術を施行した胃小細胞癌の小腸転移は非常にまれで考察を加え報告する。
  • 植田 真三久, 陵城 成浩, 家永 徹也
    2010 年 30 巻 5 号 p. 685-688
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    総合周産期母子医療センターを有する当院にて2003年1月から2009年8月までの80ヵ月間に手術を要した妊娠期急性虫垂炎は10例あり,その中で診断治療に難渋した2例を報告する。症例1:37歳妊娠22週,主訴:下腹部痛,白血球15,300/mm3 CRP12.6mg/dL。エコーでは虫垂腫大を指摘できなかったが,投薬にて抑制できない子宮収縮(胎児適応)のため試験開腹となった。虫垂はDouglas窩に潜在し,先端に膿瘍を認め,虫垂切除を行った。妊娠は継続でき正期産した。症例2:29歳妊娠32週,主訴;発熱,白血球9,400/mm3 CRP9.2mg/dL。エコーでは糞石様構造物を認めたが,MRIでは虫垂腫大を指摘できなかった。しかし持続する腹痛(母体適応)のため試験開腹となった。虫垂は後腹膜腔に穿破していたため,帝王切開にて児を娩出した後に虫垂切除術を行った。虫垂は融解しており,術式は可及的虫垂切除とドレナージとなった。術後に腸閉塞を併発したが,保存的に軽快し,術後22日目に退院となった。妊娠期の急性虫垂炎は診断に難渋し,手術の時期を逸することもある。そのため手術時機決定には疑診の段階から産科医と十分に連携し,母児双方の側面から適応を決定する必要がある。
  • 松田 佳子
    2010 年 30 巻 5 号 p. 689-692
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性,昼食後に嘔気と上腹部痛が出現した。嘔吐を5回程繰り返し,翌日当院外来を受診した。腹部CT検査にて骨盤内に血腫と肝周囲,脾臓周囲,Douglas窩に多量の液体貯留を認め,腹腔内出血が疑われたため,緊急手術を施行した。術中所見では左胃大網動静脈が破綻し,出血を認めたため結紮止血術を施行し,血性腹水を886mL認めた。外傷の既往歴や出血性素因など疑う所見もないため,特発性大網出血と診断した。
  • 辻 敏克, 原 拓央, 新田 佳苗, 加藤 洋介, 奥田 俊之, 太田 尚宏, 尾山 佳永子, 野澤 寛, 大村 健二, 増田 信二
    2010 年 30 巻 5 号 p. 693-696
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は84歳女性。道路を歩行中に前のめりに転倒した。自力歩行で帰宅したが,その数十分後に腹痛が出現したため救急車で当院へ搬送された。来院時の腹部理学所見,血液検査所見,および画像診断には消化管穿孔を疑う所見はなかった。しかし,腹部の自発痛が強かったため観察入院とした。入院後20時間を経過した時点でSpO2が低下し,腹部の膨隆と腹膜刺激症状が出現した。腹膜炎の併発を疑って緊急CTを施行したところ腹腔内に遊離ガス像を認めた。以上より消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した。回盲部より約20cmの回腸に7mm大の穿孔を認め,同部を含む小腸部分切除術を施行した。病理組織学的所見では,穿孔部に隣接する回腸の固有筋層が欠損していた。したがって,転倒に伴う急激な腹圧上昇が筋層欠損部の抵抗減弱部に加わり穿孔を引き起こしたものと推測された。
  • 星野 伸晃, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治, 高山 祐一
    2010 年 30 巻 5 号 p. 697-701
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,集学的治療によって救命し得たA群溶連菌(Streptococcus pyogenes)による原発性腹膜炎を2例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例1は63歳,女性。発熱・下腹部痛のため当院を受診,急性汎発性腹膜炎の診断で緊急腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した。腹腔内白苔培養検査からA群溶連菌が検出された。症例2は50歳男性。発熱・腰痛にて当院を受診,急性汎発性腹膜炎の診断で緊急腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した。腹水培養検査からA群溶連菌が検出された。2例とも術中に消化管穿孔などの責任病変を認めず,A群溶連菌による原発性腹膜炎と診断した。劇症型A群溶連菌感染症(toxic shock like syndrome:TSLS)確定例あるいは疑い例で,重篤な状態であったが集学的治療によって救命し得た。
  • 宮本 良一, 桂 一憲, 阿部 立也, 寺島 徹, 小泉 雅典, 山口 高史, 植木 浜一
    2010 年 30 巻 5 号 p. 703-706
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性。既往に糖尿病あり。発熱を主訴に当院消化器科受診し,画像所見上,肝S5/6に径5cm大の肝膿瘍を認めた。抗菌薬投与で保存的加療を施行するも,炎症反応の増悪を認め,入院後第2病日に経皮経肝膿瘍穿刺術を施行した。この時,腫瘍の可能性も否定できず,同部位より肝生検も施行した。その後,膿瘍周囲に血腫を認め,第7病日に止血目的で肝動脈塞栓術を施行した。第10病日の腹部造影CT検査所見で,肝内に気腫像を認め,ガス産生性肝膿瘍が疑われた。さらに同日,腹膜炎の所見が出現し,腹部CT検査を施行した。腹腔内遊離ガス像を認め,膿瘍の腹腔内破裂が疑われ,緊急手術となった。膿瘍腔を開放し,ドレナージ術施行した。術後,ドレナージにより徐々に膿瘍腔の縮小を認め,術後第135病日に軽快退院となった。糖尿病の存在と,肝動脈塞栓術が膿瘍の増悪因子と考えられた1例を経験したので報告する。
  • 高木 克典, 井上 征雄, 木戸川 秀生, 山吉 隆友, 伊藤 重彦
    2010 年 30 巻 5 号 p. 707-709
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性,突然の上腹部痛を主訴に来院した。腹部CT検査で上腸間膜動脈周囲の脂肪織濃度上昇を認めた。血液検査ではWBC10.290/μL,CRP6.5mg/dL,AMY854IU/Lと著明な炎症反応と高アミラーゼ血症を認め,急性膵炎との診断で同日入院となった。入院後急性膵炎に準じた治療を開始したが,翌日施行した腹部造影CTで上腸間膜動脈にintimal flapを認め,上腸間膜動脈解離と判明した。腸管虚血の所見はなく,抗凝固療法を開始した。その後は腹痛の再燃なく,14病日に退院となった。現在発症後22ヵ月経過しているが,無症状で外来通院中である。
  • 松永 宗倫, 迫口 太朗, 吉田 大輔, 白水 章夫, 岸原 文明, 増田 英隆
    2010 年 30 巻 5 号 p. 711-714
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    宿便性直腸穿孔は,比較的まれな疾患である。今回,われわれは,慢性腎不全患者に宿便性直腸後腹膜穿孔を発症した1救命例を経験したので報告する。症例は,73歳の女性で,下腹部痛,下血を主訴に当院救急搬送となった。下腹部に軽度圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御などの腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査上,直腸間膜から後腹膜に気腫像を認め,下部消化管穿孔の診断で,緊急開腹術を施行した。腫瘍や憩室等の病変は認めず,直腸内に充満する多量の便塊と11×7cm大の巨大な直腸潰瘍を認めた。宿便性直腸後腹膜穿孔と診断し,Hartmann手術を施行した。術後持続的血液濾過透析(CHDF),エンドトキシン吸着療法(P-MX-DHP)を実施した。術後は,創部感染の治療に長い時間を要したが,経過良好であり,術後62日目に軽快退院となった。
  • 金子 奉暁, 島田 長人, 本田 善子, 久保田 喜久, 下山 修, 瀬尾 章, 杉本 元信, 金子 弘真
    2010 年 30 巻 5 号 p. 715-718
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性。5年前から時々腹痛が出現し,検査を受けていたが異常所見は指摘されなかった。今回,腹痛と腹部膨満および嘔吐が出現し,当院を受診した。腹部単純X線検査では,腹部の中央部に拡張した小腸ガス像を認めた。また腹部CT検査では,小腸が体の中心部で集簇し,嚢状の構造物に包まれていた。以上より,内ヘルニアの診断で緊急手術を施行した。開腹したところ,直下に薄い膜で包まれ一塊となった腸管が確認された。腹腔内を検索すると下回盲窩にほぼ全小腸が陥入しており,盲腸窩ヘルニアと診断した。陥入した腸管をヘルニア嚢から引き出したところ,色調は良好であったため腸切除は施行しなかった。盲腸窩ヘルニアは比較的まれな疾患であるが,小腸のほとんどが陥入した症例はさらにまれであり,文献的考察を加えて報告する。
  • 吉川 智宏, 小鹿 雅博, 星川 浩一, 青木 毅一, 井上 義博
    2010 年 30 巻 5 号 p. 719-723
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性。鈍的腹部外傷により緊急手術を施行。門脈は上腸間膜静脈と脾静脈合流部位の裂創,中結腸間膜損傷,中結腸動脈損傷,膵体部II型損傷を認め,循環動態不安定のため門脈結紮術を施行した。翌日のsecond look operationで人工肛門造設術を施行し,術後43日目で退院になる。腹部外傷における肝外門脈損傷,欧米の報告では外傷患者の0.06%~0.08%とまれで,死亡率は40%~70%とされ,修復術は状況に応じて縫合術,結紮術が選択されている。門脈損傷は合併損傷を来していることが多く循環動態が急速に悪化しDeadly triadが出現する。全身状態を評価しdamage control surgeryを考慮しなければならない。出血コントロール不良,縫合術不可能の門脈損傷に対する門脈結紮術は有用な術式であると考えられた。
  • 桑田 亜希, 中光 篤志, 今村 祐司, 香山 茂平, 上神 慎之介, 藤解 邦生, 垰越 宏幸
    2010 年 30 巻 5 号 p. 725-728
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性。胃癌で胃全摘,Rou-enY再建術,腸瘻造設術を施行した。術後1ヵ月後に腹痛で来院した。CTで輸入脚の拡張を認め,血中アミラーゼ値の上昇もあり輸入脚症候群と診断した。保存的治療で腹痛が軽快したため緊急手術は施行しなかった。その1ヵ月後に再度腹痛が出現したため来院した。CTで前回と同部位での狭窄を認め,腹部症状が強く絞扼性イレウスが否定できないため,緊急手術を施行した。開腹すると腸瘻腹壁固定部を軸として輸入脚が捻転していた。腸瘻腹壁固定部を剥離し捻転を解除した。輸入脚症候群の原因として腸瘻留置に起因する症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
  • 金谷 欣明, 奥本 龍夫, 藤井 徹也, 丸山 修一郎, 横山 伸二
    2010 年 30 巻 5 号 p. 729-732
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性。慢性腎不全に対して連続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis:CAPD)を行っていたが,腹膜炎の疑いで血液透析(hemodialysis:HD)に移行した。その半年後にイレウスとなり保存的加療にて軽快した。その2ヵ月後,イレウスの再発で再度保存的加療を受け軽快したが,入院中に再々発したため手術の目的で外科へ紹介となる。被嚢性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)による難治性イレウスと診断し,開腹術を施行した。回腸末端は白色の線維性被膜に包まれて一塊となり剥離不能であった。回腸末端を約50cm切除し,回腸横行結腸の側々吻合により再建を行った。一般にEPSの外科的治療としては被膜切除術および癒着剥離術で,腸切除は縫合不全による死亡率の高さから避けるべきとされている。しかし,本症例のごとく強固な癒着により一塊となったイレウスの場合,剥離による腸管損傷は避けられず,吻合部位などの工夫により腸切除を行う方が安全な場合もあると思われた。
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