日本腹部救急医学会雑誌
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ISSN-L : 1340-2242
30 巻, 6 号
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原著
  • 長谷川 繁生, 木村 理, 蜂谷 修, 水谷 雅臣, 野村 尚, 平井 一郎
    2010 年 30 巻 6 号 p. 741-745
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)は,診断に難渋することが多く,治療成績もいまだ不良であるが,手術を回避している症例も散見される。今回われわれは,当科で経験したSMA塞栓症に関し,その診断と治療について検討した。最近10年間に当科で経験した,SMA塞栓症6例を対象とした。手術は5例に施行し,4例に腸管切除術を施行した。4例ともに短腸症候群をきたしたが,そのうち3例が在宅中心静脈栄養法(home parenteral nutrition:HPN)を併用して退院した。非手術例は,発症後2時間で血管撮影検査を施行し,塞栓溶解療法が奏功した。SMA塞栓症は診断に難渋する疾患であり,手術では多くが大量の腸管切除術を必要とし,短腸症候群をきたしている。短腸症候群でもHPNの使用により,生存可能な症例もある。しかし,発症からの時間と症例では,手術を回避できる可能性もある。
  • 河合 雅也, 佐藤 浩一, 前川 博, 櫻田 睦, 折田 創, 國安 哲史, 小松 義宏, 米山 久詞
    2010 年 30 巻 6 号 p. 747-749
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    当院で経験した閉鎖孔ヘルニアについて臨床的検討を行った。対象は2006年1月から2009年7月までの4年間に当院で経験した閉鎖孔ヘルニア11例で,年齢,性別,BMI,分娩回数,開腹既往歴,初期症状,術前診断,術中所見,治療,転帰を検討した。その結果,性別は全例女性,平均年齢は82.5歳,平均BMIは19.1であった。Howship─Romberg signは11例中6例で陽性であり,術前検査では骨盤部CT scanにより全例閉鎖孔ヘルニアの診断が可能であった。治療は全例緊急手術が施行されていた。11例中6例が嵌頓により小腸壊死を起こし,小腸部分切除を必要とした。術後経過は全例良好で,転院または退院となった。しかし,CT scanでの診断率は高く,早期の診断・治療により良好な転帰を得る事ができると考えられた。
  • 富永 哲郎, 土肥 良一郎, 河野 陽介, 荒木 政人, 森野 茂行, 阿保 貴章, 角田 順久, 中村 昭博, 原 信介, 石川 啓
    2010 年 30 巻 6 号 p. 751-755
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    【目的】当院で経験した閉鎖孔ヘルニアの12症例について検討した。【対象および方法】2001年4月から2009年8月までに佐世保市立総合病院で手術を行った症例を対象とした。腸管切除例と腸管非切除例で,手術までの時間・画像所見との関係などについて検討した。【結果】年齢は73歳~93歳(平均83.5歳),すべて女性で平均のBody mass indexは17.6kg/m2であった。主訴は嘔吐が7例と最も多く,Howship-Romberg signは3例(25%)のみに認めた。術前診断は10例で可能であり,そのうち9例は腹部単純CTで診断した。腹部症状の出現から手術までの時間は5~528時間(平均120時間),手術の内訳は開腹手術が11例,腹腔鏡手術が1例であり全例緊急手術を行った。ヘルニア門の閉鎖は単純閉鎖が4例,メッシュを使用したものが8例であった。【結語】閉鎖孔ヘルニアは近年早期診断,早期治療が可能となっている。今後は,腹腔鏡手術などを積極的に施行し,より低浸襲な治療を考えていく必要があると考えた。
特集:Oncologic emergencyの診断と治療2
  • 斉田 芳久, 榎本 俊行, 高林 一浩, 中村 陽一, 片桐 美和, 長尾 さやか, 渡邊 良平, 大辻 絢子, 草地 信也, 長尾 二郎
    2010 年 30 巻 6 号 p. 759-764
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    大腸癌イレウスは,oncologic emergencyとして従来緊急手術の適応であるが,最近では金属ステント(Expandable Metallic Stent:EMS)留置術を含めた経肛門的な減圧術が登場し,情況が変化している。経鼻イレウス管などでは減圧が不良である大腸癌イレウスを経肛門的に減圧し待機的に手術を行う事が可能になり,手術成績の向上,患者のQOL(quality of life)の向上とともに,医師・医療従事者のQOLの向上にも寄与している。挿入率は9割以上,臨床的有効率も9割程度,挿入時合併症は約5%と高い有効性と安全性が報告されている。ただし,長期的には逸脱や再狭窄もおのおの約1割程度認められる。今後左側大腸癌による狭窄・閉塞に対する第一選択的な手技として普及していくと思われる。
  • ─減圧法を中心に─
    隅 健次, 山地 康太郎, 迎 洋輔, 矢ヶ部 知美, 古賀 靖大, 能城 浩和
    2010 年 30 巻 6 号 p. 765-771
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    左側大腸癌イレウスに対する治療は,右側の場合と異なり確立されたものがないのが現状である。準緊急ないし緊急に術中に腸管内減圧を行い一期的に根治手術を行う場合や,経肛門イレウスチューブや金属ステントなどの減圧法を適用したのち根治手術を行う場合などさまざまである。しかしながら,(準)緊急手術は,死亡リスクの上昇があり,可能な限り術前の減圧後に待機手術を行うほうが安全と考えられる。術前の減圧法として,経肛門イレウスチューブは有効であるが,留置中の大腸粘膜の潰瘍形成や穿孔などの合併症があり,その特性や管理法について十分に精通したうえで使用することが重要である。経肛門イレウスチューブによる腸管内減圧後のCT-colonoscopyによる口側検索や,減圧後の腹腔鏡手術など,左側大腸癌イレウス治療の確立が期待される。
  • 小杉 千弘, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 今井 健一郎, 平野 敦史, 土屋 博紀, 腰野 蔵人, ...
    2010 年 30 巻 6 号 p. 773-777
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    大腸癌による大腸狭窄に起因した口側大腸穿孔症例の治療戦略について,その他の疾患による大腸穿孔症例の成績と比較し検討した。2001年9月から2008年9月に,大腸穿孔の診断で緊急手術施行35例中,大腸癌に起因した口側大腸穿孔は8例。全例で癌,穿孔部を含めた大腸切除を施行した。在院死は2例(25%)であった。大腸癌以外が原因の大腸穿孔症例と救命率を比較しても,救命率に有意差はなかった(p=0.87)。救命しえた6例では,術前肝転移を認めた1例にFOLFIRIを施行,その他の5例には術後補助化学療法を施行した。6例中肝転移2例,脳転移1例が死亡したが,腹膜播種再発症例は認めなかった。3例が無再発生存中である。大腸癌による口側穿孔は手術で救命し得る症例も多く,早期診断後に積極的に原発巣切除を含めた手術治療を施行し,術後補助化学療法を行うことで長期予後を得られる可能性があると考えられた。
  • 清水 輝久, 重政 有, 吉廣 優子, 佐々木 伸文, 梶原 啓司, 碇 秀樹, 國崎 忠臣
    2010 年 30 巻 6 号 p. 779-786
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    過去18年間の大腸癌穿孔30例について,病態と治療の問題点について検討した。年令は46歳~96歳:平均73.2歳で,80歳以上の高齢者が12例と4割を占めたが,特殊例を除くと男女差は認められなかった。大腸癌穿孔の穿孔部位は,癌部穿孔12例,癌部口側穿孔16例でうち4例は遠隔の結腸穿孔で,注意を要する。また経肛門的イレウス管留置および大腸内視鏡に関する医原性穿孔が2例みられた。特殊例として,癌腫と膀胱との瘻孔形成例が2例あった。癌部穿孔はほとんどが1cm以下の穿孔であるのに対し,癌部口側穿孔は1cm以上の大きな穿孔で,糞便性腹膜炎をきたしているものがほとんどであった。糞便性腹膜炎をきたしているものに死亡症例が多くみられた。治療は穿孔部位や汚染程度,年齢などを考慮して,oncologic emergencyとしての救命を第一義とした手術術式を選択し,感染のコントロール(十分な洗浄と適切なドレナージ,抗生剤投与など)とショック離脱・呼吸循環動態の安定化が肝要である。
  • 笠島 浩行, 遠山 茂, 横山 拓史, 加藤 雅志, 原 豊, 吉田 淳, 津田 一郎, 鈴木 伸作, 倉内 宣明, 木村 純
    2010 年 30 巻 6 号 p. 787-791
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    大腸癌穿孔は敗血症など合併からの生命危機とともに,癌の長期予後への影響が懸念される。1995年~2008年に当院で手術した大腸癌穿孔45例を対象に臨床病理学的事項,術後短期成績,予後を腫瘍占拠部位でA群(C~D:18例)とB群(S~Ra:27例)に分けて検討した。男30例,女15例で,平均69.7歳(45~94歳)。部位はS状結腸(51.1%)に多く,穿孔部位は口側14例,腫瘍部31例で,遊離穿孔は28例(62.2%)であった。在院死亡例は術前白血球数が4,000未満。44例(97.8%)で腫瘍切除,A群2例,B群18例にHartmann手術が行われた。縫合不全はB群3例にみられた。周術期死亡率は8.9%,3例がDIC死であった。組織学的進行度はstage IIが最多(53.3%)で5年生存率72%であった。大腸癌穿孔であっても治癒切除例は長期予後を期待できる可能性があり,患者の状態が許せば根治手術を目指すべきと考える。
  • 成井 一隆, 池 秀之, 窪田 徹, 山田 六平, 林 勉, 木村 万里子, 渡辺 卓央, 藤川 寛人, 川邉 泰一, 佐藤 渉
    2010 年 30 巻 6 号 p. 793-797
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    遊離穿孔による汎発性腹膜炎で緊急手術を施行した大腸癌19例について検討した。平均年齢63歳,男性7例,女性12例,左側大腸15例,右側が4例であった。穿孔部は腫瘍の口側が9例,腫瘍本体が10例で,StageはIIが6例,IIIが6例,IVが7例であった。在院死は3例で,原因は敗血症,癌死,突然の心肺停止であった。合併症を8例(40%)に認め,そのうち7例にsurgical site infectionを認めた。初期治療時の在院死の危険因子は,ECOGのPSが不良,術前のショック,術後のDICおよび遠隔転移であった。術後経過観察期間の中央値は40ヵ月で再発は8例,StageIIおよびIIIの67%を占め,再発時期は術後平均10ヵ月(5~21ヵ月)であった。穿孔により汎発性腹膜炎をきたした大腸癌の16%は在院死,36%はStagIVであった。原発巣を切除したStageII,III症例においても67%と高率に再発を認め,予後は不良なため,有効な補助化学療法を行うべきと思われた。
  • 大石 達郎, 小山 隆司, 上田 泰弘, 吉岡 勇気, 徳永 卓哉, 高橋 英幸, 宮本 勝文, 梅木 雅彦, 栗栖 茂
    2010 年 30 巻 6 号 p. 799-804
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍再発イレウスに対する外科的治療は,他の治療法で症状のコントロールが困難な患者のQOLを改善し得る治療法である。その一方で,治療の侵襲や術後合併症によって,さらなるQOLの低下や生存期間の短縮を招く危険性もあり,外科的治療の適応については,慎重に検討せねばならない。そこで,当院における悪性腫瘍再発イレウス手術症例を集計し,過去の文献報告例とあわせて,術後QOL改善に影響を及ぼす因子について検討した。その適応については,拡張腸管の有無,閉塞様式,初回手術からイレウス発症までの期間などが参考になる可能性が示唆されたが,これら特定の因子だけで適切な判断を下すことは困難である。個々の患者の症状や血液生化学検査所見,画像所見などを総合的かつ経時的に十分把握して手術適応,術式を検討することが重要である。
  • 山田 岳史, 内田 英二, 菅 隼人, 松本 智司, 金沢 義一, 小泉 岐博, 佐々木 順平, 横井 公良
    2010 年 30 巻 6 号 p. 805-808
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    高度進行癌症例におけるoncologic emergencyでは治療目的が救命か症状緩和か判断に迷うことがあるが,われわれは判断の一助としてPalliative Prognostic Index(PPI)を利用し予後予測を行っている。PPIの算出には終末期患者に特有なPerformance States(PS)の指標であるPalliative Performance Scale(PPS)が必要だが,PPSは緩和医療医以外には煩雑である。そこでわれわれはPPSの代わりにEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のPSを使用したPPI(PS-PPI)を開発し,有用性を検討した。対象は大腸癌55例である。PPIあるいはPS-PPI<4を6週間以上生存としたところPPIは感度90.2%,特異度73.3%,PS-PPIは感度86.8%,特異度66.6%であり,ほぼ同等であった。
  • 亀井 誠二, 石口 恒男, 永田 博, 野浪 敏明
    2010 年 30 巻 6 号 p. 809-813
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    切除不能な直腸癌や膀胱癌などの骨盤内悪性腫瘍からの出血は保存的治療や内視鏡的治療でのコントロール困難なことが多く難治性で,生命に危険をおよぼし,生活の質(QOL)を著しく低下させる。このような症例に対してわれわれは選択的に動脈塞栓術を行ってきた。奏功率は約60%で,複数回の治療を要する場合もあるが,長期コントロールが可能な症例もみられた。重篤な合併症はみられず,切除不能な骨盤内悪性腫瘍からの難治性出血に対する有用な治療法と考えられる。
症例報告
  • 奥野 正隆, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治, 高山 祐一, 廣瀬 友昭
    2010 年 30 巻 6 号 p. 815-818
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は22歳女性。バイク単独事故で当院に緊急搬送された。来院時,収縮期血圧は60mmHg台であったが,急速輸液で120mmHg台まで回復しTransient responderと判断した。CTで肝右葉全体から肝門部におよぶ広範なIIIb型肝損傷を認めた。経カテーテル的肝動脈塞栓術を施行し循環動態は安定化した。右肺挫傷と外傷性血気胸を認め,胸腔ドレナージを施行した。受傷翌日より,呼吸不全が重症化し危機的な状況が続いたが,ICU管理により回復した。その後,腹腔内膿瘍,胆汁瘻や肝壊死を認め,数回の経皮的ドレナージ術を要した。Transient responderの広範な肝損傷例に対して,厳重な全身管理のもと,非手術治療で救命し得た症例を経験した。
  • 指山 浩志, 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 堤 修, 星野 敏彦, 南 有紀子
    2010 年 30 巻 6 号 p. 819-821
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性,高度便秘のために肛門痛が持続し来院。尿閉,便失禁状態であり,CT上直腸壁の著明な拡張と間膜組織の炎症像があり切迫破裂状態と判断した。保存的に加療し,排尿障害,排便障害ともに1週間程度で改善し退院した。退院後,自己判断で緩下剤の服薬を中止したところ症状の再燃を認めた。再度保存的加療で改善し,その後は内服を継続的に使用することで経過良好となった。便秘による特発性巨大直腸症は時に穿孔を起こして,重篤な状態を招くことがある。高度便秘で肛門痛,排尿困難,便失禁を呈する症例では,宿便による直腸切迫破裂というべき症例の存在に留意し,慎重に診療をすべきである。
  • 北村 祥貴, 島田 雅也, 羽田 匡宏, 佐々木 正寿
    2010 年 30 巻 6 号 p. 823-826
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,女性。自動車衝突事故のためショック状態で救急搬送された。腹部造影CTで膵頭部損傷,門脈損傷疑い,右腎破裂と診断。循環動態は不安定であり,緊急開腹止血術を施行した。膵頭部から鈎部が挫滅しており,肝十二指腸間膜,後腹膜に血腫を形成していた。門脈損傷は認めなかった。明らかな主膵管損傷は確認できず,縫合止血後にドレーンを留置した。術後,膵鈎部での主膵管損傷による膵液瘻,膵内胆管狭窄および十二指腸下行脚狭窄を発症。保存的加療で膵液瘻は改善せず,膵頭十二指腸切除術を施行した。術後経過は良好であった。出血性ショック状態の膵外傷に対し,緊急開腹止血術ならびに膵液ドレナージを行い,膵液瘻および遅発性の合併症に膵頭十二指腸切除術を行うことで良好な経過を得た。膵液ドレナージの重要性を再認識するとともに,膵外傷は膵管損傷を指摘できずとも,慎重に経過を追い,経時的に検査と治療を行う必要があると思われた。
  • 藤井 喜充
    2010 年 30 巻 6 号 p. 827-830
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    超音波検査では虫垂壁と比較して高エコーに描出されず糞石と認識できなかったが,CT検査で同定された小児急性虫垂炎症例を経験したので,CT値と超音波所見の関連を検討した。症例は7例で,結石のCT値は63.5H.U.から231.0H.U.の範囲であった。CT値147.4H.U.と231.0H.U.の2例が,5MHzを用いた超音波検査では等~低エコーで音響陰影陰性であったが,9MHzでは高エコーで音響陰影陽性であった。CT値63.5~108.5H.U.の3例は5MHzの超音波検査で,高エコーで音響陰影陽性の,糞石としての典型像を示した。超音波検査における糞石の描出に関しては,高周波を用いることが重要であると結論した。超音波検査で急性虫垂炎であると確定できない症例に限り,糞石,脂肪織の濃度上昇,腹水の存在も念頭において,軟部組織条件(ウインドウ幅250~300:ウインドウレベル+30)でのCT検査を施行するのが望ましいと考えられた。
  • 金城 達也, 砂川 宏樹, 大城 直人
    2010 年 30 巻 6 号 p. 831-834
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性。筋力トレーニング中に突然出現した右下腹部痛を訴え,当院を救急受診。右下腹部に強い圧痛および筋性防御を伴う10cm大の硬結を触知した。造影CTで右腹直筋内血腫を認め,下腹部正中にこれと連続する巨大血腫を認めた。さらに血腫内には造影剤血管外漏出像を認め,右腹直筋血腫と診断された。腹部超音波検査では,肝周囲およびモリソン窩に腹水貯留を認めていた。バイタルは安定していたため,経過観察していたが,疼痛増強,US上腹水増加を認めたため,緊急開腹術を施行。右腹直筋鞘内血腫および右腹直筋不全断裂を認めた。断裂した腹直筋から下腹壁動脈破綻による出血を認めたため,結紮止血した。正中臍ヒダを中心とした巨大血腫形成および両側傍結腸溝におよぶ広範な腹壁内血腫を認め,可及的に血腫除去を行った。腹腔内には血性腹水を中等量認めたが明らかな出血部位はみられなかった。術後合併症なく退院となった。
  • 友野 絢子, 岡崎 太郎, 松本 逸平, 味木 徹夫, 具 英成
    2010 年 30 巻 6 号 p. 835-838
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は34歳の妊婦。妊娠前より胆嚢結石を指摘されていたが,無症状であったため放置していた。妊娠10週目に突然の腹痛のため近医を受診し,胆石胆嚢炎と診断され当院に紹介された。中等症急性胆嚢炎に対し絶食,抗菌薬投与により軽快したが,手術適応ありと判断し,妊娠20週目に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。子宮底を臍上2横指の位置に認めたため,第1トロカーを臍上3横指においた。胆嚢は肝床部に強固に癒着し,内部に混合石を認めた。母・胎児共に術後経過は順調で,第5病日に退院した。今回,妊娠時の胆石胆嚢炎に対し安全に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し得た1例を経験したので,同手術を施行する際の留意点を中心に報告する。
  • 富原 英生, 陵城 成浩, 植田 真三久, 村田 晃一, 石田 諒
    2010 年 30 巻 6 号 p. 839-842
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は22歳の男性。16歳時より左鼠径ヘルニアを自覚していた。左鼠径部痛を主訴に近医を受診し,その後疼痛が増強したため当院に救急搬送となった。来院時,腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にて左傍結腸溝に出血と考えられる高濃度腹水を認めた。また入院後貧血が進行したため,腹腔内出血と診断し手術となった。腹腔鏡を挿入したところ,左上腹部を中心に,左横隔膜下や左傍結腸溝,Douglas窩に暗赤色の血性腹水を認めた。また大網が脾曲部近傍の側腹壁に高度に癒着し,左内鼠径輪へも大網が嵌頓していた。出血点の同定が困難であったため上腹部の小開腹創から腹腔内を検索したところ,上述癒着部の大網の血管が破綻しており同部から出血を認めた。大網部分切除術と鼠径ヘルニア根治術を行い,術後6日目に退院となった。鼠径ヘルニアの嵌頓が原因と考えられる,大網出血の1例を経験した。大網出血の報告はまれであり,文献的考察を加え報告する。
  • 大谷 弘樹, 岡田 真典, 小林 成行, 久保 雅俊, 宇高 徹総, 白川 和豊
    2010 年 30 巻 6 号 p. 843-846
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は,75歳,女性。約30年前に胆石症にて開腹手術を施行。約20年前より腹壁瘢痕ヘルニアがみられていたが放置しており,徐々に巨大化していった。数年前頃から食後に嘔吐をくりかえしていたが,今回は症状の改善がみられずイレウスと診断され当院紹介入院となった。来院時,BMI 37.3kg/m2と高度肥満であり,腹部には巨大な腹壁ヘルニアを認めた。腹部CT検査では,12×12cm大のヘルニア門がみられ,拡張した胃や小腸の大半がヘルニア嚢内に脱出していた。保存的治療にてイレウスが改善した後,Composix Kugel Patch XLを用いて腹壁瘢痕ヘルニア根治術を施行した。術後は集中治療を行い腹部コンパートメント症候群による呼吸機能障害や循環器障害などを発症することなく良好に経過した。
  • 梅邑 晃, 肥田 圭介, 木村 祐輔, 高橋 正統, 若林 剛
    2010 年 30 巻 6 号 p. 847-850
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性。18年前に胃癌で胃全摘術の既往があり,突然の腹痛で来院した。腹部CT検査で腹水の貯留とwhirl signを認め,絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した。開腹すると乳縻腹水が大量に貯留しており,腸間膜内にも白色調の液体貯留を認めた。小腸間膜が前回再建時の空腸挙上脚を軸として捻転していたが,絞扼解除で腸管血流は改善したため,腸切除は施行しなかった。腹水中トリグリセリド値が246mg/dLと高値で,SudanIII染色陽性であったため乳縻腹水と判断した。術後経過は順調で,第10病日に退院となった。乳縻腹水を呈する絞扼性イレウスの報告はまれで,本症例を含めて6例の文献報告を認めるのみである。全例が小腸軸捻転で発症していたが,リンパ系は,血管系に比較して低圧であるため,血流が完全に遮断されない絞扼でもリンパ流が遮断され乳縻腹水を呈する絞扼性イレウスが発症する可能性が示唆された。
  • 田中 寛, 平松 聖史, 櫻川 忠之, 土屋 智敬, 尾辻 英彦, 原 朋広, 前田 隆雄, 木村 明春, 待木 雄一, 加藤 健司
    2010 年 30 巻 6 号 p. 851-854
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性。歩行中乗用車に轢かれ受傷し,救急搬送された。搬入時,左上肢の多発骨折と左大腿骨骨折を認めた。処置中に血圧の低下と腹痛が増強したため,緊急造影CT検査を施行したところ,回腸レベルの壁肥厚像とその領域の腸間膜静脈から肝内門脈にかけてのガス血症を認めた。鈍的腹部外傷を契機とした回腸損傷と門脈ガス血症の診断で,受傷後7時間で緊急手術(小腸部分切除術)を施行した。開腹するとCT上の気腫性変化に一致する箇所に,色調不良な回腸を認めた。同部位を鈍的腹部外傷による門脈ガス血症の責任病変と判断し切除した。術後経過は良好で,術後第2病日に施行したCT検査では門脈ガスは消失していた。門脈ガス血症は腸管感染症が重篤化した際にしばしば認められ,その予後は不良であることが知られている。鈍的外傷を契機とした門脈ガス血症はまれであるので,文献的考察を加え報告する。
  • 小林 義輝, 田口 泰三, 村岡 麻樹, 浜島 秀樹, 松倉 聡
    2010 年 30 巻 6 号 p. 855-857
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢は,解剖学的に外力の損傷を受けにくい臓器であると言われており1),外傷性の胆嚢損傷は,極めてまれである。今回,その1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は34歳男性で,モトクロス競技中に転倒し自動二輪のハンドルで腹部を打撲し,近医受診したがCT上異常なしと診断され帰宅,腹痛継続するため当院受診。腹部CTで胆嚢内の出血と胆嚢周囲およびMorison窩に液体貯留を認め,胆嚢破裂による腹膜炎を併発していると思われ,緊急開腹胆嚢摘除術を行った。摘出胆嚢には,頸部付近の胆嚢壁に穿孔を認めた。術後30日目に軽快し退院となった。外傷性胆嚢穿孔はまれな病態ではあるが,受傷直後の画像では所見が描出されないこともあり診断が難しく,腹部外傷で画像上所見がなくても持続する上腹部痛を認める場合,胆嚢損傷も念頭に置く必要があると思われた。
  • 齋藤 智明, 渡邉 学, 浅井 浩司, 大沢 晃弘, 松清 大, 長尾 二郎, 草地 信也, 紺野 晋吾
    2010 年 30 巻 6 号 p. 859-863
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    症例は,48歳の男性。腹痛を主訴に近医を受診。腹部造影CT検査にて脾動脈瘤破裂が疑われ,治療目的に当院へ緊急入院となった。入院時の血液生化学的検査所見ではHbは8.7g/dLと貧血を認め,またCPKが2.039 IUと上昇していた。既往症として,横紋筋融解症と悪性高熱症素因があり,ミオグロビン尿症に続発する急性腎不全から血液透析を施行していた。全身麻酔による外科的治療は困難と判断し,侵襲の少ないと考えられる,trans-arterial embolization(TAE)を選択した。脾動脈造影検査所見では,脾動脈近位部に長径7cm大の嚢状の瘤を認め,マイクロコイルにより瘤の流入血管と流出血管へ塞栓術を施行し止血した。TAE後は,ミオグロビン尿に伴う急性腎不全を予防する目的で輸液管理をし,第13病日目に退院となった。今回われわれはTAEによる治療が有効であった,横紋筋融解症の既往と悪性高熱症素因を有する脾動脈瘤破裂症例を経験したので,文献的考察を含め報告する。
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