日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
32 巻 , 1 号
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原著
  • 光定 誠, 中島 康, 城川 雅光, 関 薫子, 佐藤 やよい, 塩入 貞明, 若山 達郎
    2012 年 32 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    肝損傷非手術管理の15症例(IIIb型11例,Ib型4例)を対象としてintrahepatic biliary injury(IHBI)の早期診断を目的にDIC-CTを施行した。肝損傷形態とTAE必要性の有無別にIHBIの頻度と治療成績を検討した。IIIb型でTAE施行例では5例全例(100%)にIHBI所見を認めた。うち2例は肝外漏出像を認めたため追加処置を要したが軽快退院した。肝外漏出像を認めなかった3例については追加処置を要さず経過良好であった。IIIb型でTAE非施行の6例ではDIC-CTにおいて1例(16.7%)にIHBIを認めたがTAE施行例に比較して有意に低頻度で,IHBIを認めなかった5例も含めて全例保存的に軽快した。またISS値はTAE施行例より有意に低値であった。Ib型にはTAE施行例はなくIHBIも認めず保存的に軽快した。TAEを必要とするような重症肝損傷において,本検査を早期の肝内胆管損傷の診断に用い肝外漏出像を認めた場合にドレナージなどを行うとする診療戦略は妥当であると考えられた。
  • 山元 良, 篠崎 浩治, 加瀬 建一, 佐々木 淳一, 小林 健二
    2012 年 32 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    大腿ヘルニアは嵌頓症例や緊急手術を要する症例が多いが,本邦において緊急手術や術前検査に関する検討の報告は少ない。そこで,当院にて2005年から2009年の間に経験した大腿ヘルニア44症例を後方視的に検討し,待機手術群と緊急手術群に分類して,臨床的特徴および術前検査の診断率を比較検討した。全症例の平均年齢は73±12歳で,女性が68%,ヘルニアの位置は右側が70%であった。嵌頓症例は66%(29例),緊急手術症例は52%(23例)で,腸管切除を要した症例は32% (14例)であった。緊急手術群でより高齢で,体温上昇や白血球数,LDH値の上昇を認め,McVay法による修復が多かった。術前検査ではCTの診断率が高く,術前診断に対して44%,嵌頓の診断に対して88%の診断率であった。以上より,大腿ヘルニアは嵌頓,腸管壊死の合併率が高いことが示され,また,術前CT検査の有用性が示唆された。
特集:腹腔鏡下手術に伴う偶発症への対応
  • 田中 慶太朗, 奥田 準二, 近藤 圭策, 浅井 慶子, 茅野 新, 山本 誠士, 鱒渕 真介, 谷川 允彦, 内山 和久
    2012 年 32 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    当院で経験した腹腔鏡下手術中の偶発症を検討し,その対処法を考察した。1993年9月から2009年12月までに1,912例の腹腔鏡下大腸切除術を施行し,開腹を要した術中偶発症発生率は2.0%(39/1.912)であった。腹腔鏡下手術では術式の定型化が重要であるが,当院において全ての腹腔鏡下大腸切除術が定型化した2006年以前の偶発症発生率は4.2%(30/722)であり定型化以降では0.8%(9/1,190)と有意に減少した。偶発症の内訳は出血17例,腸管切離・吻合関連19例,腸管損傷2例,腸管虚血1例であった。腹腔鏡下手術術中には手術関係者全員が同じ術野を共有できるため,術者は手術状況を解説しながら展開し,これを全員で確認しながら手術を進行することがエラー予防対策につながるものと考えられた。
  • 中村 隆俊, 渡邊 昌彦
    2012 年 32 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
  • 小林 昭広, 伊藤 雅昭, 西澤 雄介, 杉藤 正典, 齋藤 典男
    2012 年 32 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    大腸癌における腹腔鏡下手術は徐々に適応が拡大されている。腹腔鏡下大腸癌手術に対する考え方を述べ開腹移行とその原因を調査し偶発症について検討を行う。腹腔鏡下手術を行うことで癌の根治性を落とすことがあってはならず,進行が原因で術野展開に難渋するような場合は躊躇せず開腹移行している。当科での開腹移行率は5.3%であったが,出血などの術中偶発症は開腹移行の原因にはなっていなかった。しかし左尿管損傷,下腸間膜動静脈からの出血,Surgical trunk周辺からの出血などを経験している。手術中に起こりえる偶発症として,(1)出血,(2)腸管・腸間膜損傷,(3)多臓器損傷,(4)器械の不具合によるものに分けて,その対処法と予防法について考察した。腹腔鏡下手術は順調に遂行できればその低侵襲性のメリットが得られる。偶発症が生じた場合でも冷静な対応にて術後合併症をおこさない手術を目指すべきである。
  • 吉川 征一郎, 福永 正氣, 李 慶文, 永仮 邦彦, 菅野 雅彦, 須田 健, 飯田 義人, 伊藤 嘉智, 大内 昌和, 勝野 剛太郎, ...
    2012 年 32 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下手術は多くの利点を有するが,出血を含む術中偶発症は腹腔鏡下手術の利点を消し去り,極めて重篤な結果を招く可能性がある。Advanced laparoscopic surgeryにおける術中出血に対する対処について経験症例をもとに検討,考察を行った。出血症例15例を術式ごとに対照群と比較した結果,結腸切除術の出血症例で手術時間が有意に延長しており,術後合併症が有意に多かった。個々の症例につき検討,考察を行った。腹腔鏡下手術の利点と欠点の理解,出血危険部位の知識,良好な視野の確保,術式の定型化,開腹移行の的確な判断などが対策として重要と考えられた。
  • 牧野 洋知, 國崎 主税, 泉澤 祐介, 徳久 元彦, 木村 準, 高川 亮, 小坂 隆司, 小野 秀高, 秋山 浩利, 遠藤 格
    2012 年 32 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    【目的】腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(以下,LADG)における合併症の予測因子を明らかにする。【対象】対象は術前に早期胃癌と診断し,LADGを施行した152例。術中合併症は出血により開腹移行した症例とし,術後合併症は入院期間の延長症例とし,予測因子を単・多変量で解析した。肥満因子にはbody mass index(以下,BMI)に加え,Fat Scanで計測したvisceral fat area(以下,VFA),subcutaneous fat area(以下,SFA)を用いた。【成績】術中合併症は9例の男性に認められた。術後合併症は7例の男性と1例の女性に認められた(縫合不全4例,腹腔内膿瘍2例,膵液漏1例,リンパ漏1例)。高BMI,高VFAは合併症の独立した予測因子であった。男性と女性においてBMIは有意差を認めなかった。しかしながら,女性より男性において,有意に,VFAが高値で,手術時間が長く。出血量が多かった。【結語】高BMI,高VFA,男性は合併症の予測因子で,このような症例では,習熟した術者が手術を行うべきである。
  • 谷村 愼哉, 比企 直樹, 布部 創也, 窪田 健, 佐野 武, 山口 俊晴
    2012 年 32 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胃切除術は施行施設の増加および早期癌のみならず進行癌への一部適応により,近年増加傾向である。腹腔鏡下胃癌手術という新しい手技の導入時や鏡視下リンパ節郭清範囲の拡大時には,laparoscopic surgeryのなかでもadvanced procedureと言われるだけに術中偶発症が起こる懸念があり,術後合併症も増加するおそれもある。これらはlearning curveとともに減少し,より安定した安全な手技になるのが現状である。しかしながら,そのlearning curveの途中でもいくつかのポイントに留意することによって術中偶発症,術後合併症の頻度を少なくすることが可能と思われる。本稿では腹腔鏡下胃癌手術の術中偶発症の対策のポイントにつき述べる。
  • 豊田 真之, 佐野 圭二
    2012 年 32 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    当院で経験した1,064例の腹腔鏡下胆嚢摘出術における合併症について検討した。胆管損傷は8例(0.75%),他臓器損傷は5例(0.47%)認めた。胆管損傷の内訳は総胆管1例,総胆管+総肝管(左肝管)1例,総肝管1例,総肝管+右肝管1例,右肝管1例,右後区域枝(胆嚢床付近損傷)3例であった。開腹移行は5例で,うち胆道再建は2例,胆管胆管吻合術3例であった。胆管胆管吻合施行した3例中2例は術後胆管狭窄を認めた。多臓器損傷の内訳は5例中全て消化管損傷で小腸損傷2例,胃損傷1例,十二指腸損傷2例であった。5例中全て開腹移行し修復を図った。これら,偶発症予防として,胆管損傷に対しては術前胆管像の把握,Critical viewの確保,ENBD/ENGBDチューブ挿入などで予防している。腸管損傷について小切開法による確実なトロッカー挿入,ブラインド操作ゼロを原則とした鉗子操作を基本とし合併症ゼロを目指し腹腔鏡下胆嚢摘出術に取り組んでいる。
症例報告
  • 松永 宗倫, 藍澤 哲也, 野口 琢矢, 久保 宣博, 野口 剛
    2012 年 32 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は91歳女性。前日,午前0時頃から腹痛,嘔吐が出現し,翌日救急車で来院した。腹部全体に圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御などの腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CTで,腹水,小腸腸間膜のWhirl sign,小腸拡張像を認めた。小腸捻転による絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した。腹腔内に淡黄色の腹水を少量認めた。盲腸部分の腹側正中への位置異常を認め,回盲部が後腹膜に固定されていない移動盲腸であった。虫垂が回腸腸間膜に強固に癒着しており,癒着した虫垂を軸に回腸が巻き込まれていた。腸管壊死や穿孔の所見は認めなかった。腸管の捻転を整復した後,虫垂切除術と盲腸固定術を施行した。開腹手術歴のない高齢者のイレウスでは,移動盲腸によるイレウスの可能性も念頭に入れて,診療にあたる必要があると思われた。
  • 佐藤 渉, 成井 一隆, 藤川 寛人, 林 勉, 窪田 徹, 池 秀之
    2012 年 32 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性。腹痛・嘔気を主訴に受診した。受診時は月経中であった。腹膜刺激症状と炎症所見を認めた。腹部造影CTで小腸の拡張,腹水貯留を認め絞扼性腸閉塞を疑い緊急手術を施行した。手術所見は,血性腹水を認め,回腸末端より10cm口側の回腸が屈曲・狭窄しS状結腸,直腸と癒着していた。癒着を剥離し,狭窄部回腸の切除,吻合を行った。病理組織学的検査では回腸の漿膜下層から粘膜下層にかけて散在性に子宮内膜組織を認め,腸管子宮内膜症と診断した。本症例は血性腹水を伴ったにもかかわらず腸管の虚血はなく,腸管子宮内膜症による腸閉塞であった。生殖年齢女性の急性腹症で血性腹水を疑った場合,絞扼性腸閉塞のみならず,本疾患も鑑別疾患として考慮すべきと思われた。
  • 高野 裕, 大平 正典
    2012 年 32 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は31歳女性。既往に2回の帝王切開。圧痛のある腹部腫瘤にて当院に紹介された。外来検査にて経過観察中であったが,疼痛が強くなり,腸閉塞症状が悪化したため緊急入院した。CTにて骨盤腔内正中腹側に拡張した腸管(小腸),少量の腹水が認められた。腸管の造影不良はなく,単純性イレウスと診断された。腫瘤形成は明らかではなかった。イレウス管にて経過観察されたが軽快なく手術が施行された。腫瘤周囲に小腸が癒着,剥離困難なため,腫瘤を含む小腸を摘出した。摘出標本の腫瘤内部にタオルを認めた。タオルは小腸に穿通(入)し,腸管内部と腸間膜と大網に囲まれていた。帝王切開時に腹腔内に残されたと考えられた。
  • 中村 学, 石坂 克彦
    2012 年 32 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性。受診7日前より右下腹部痛,下痢,嘔吐を認め,右下腹部痛が増強したため救急外来を受診した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,右下腹部に圧痛の最強点を認めた。胸腹部単純X線写真立位では右横隔膜下に腹腔内遊離ガス像を,右下腹部には石灰化像を認めた。腹部CTでは,盲腸壁は著明に肥厚して腫瘍性病変を疑わせ,盲腸内側尾側にガスと石灰化像を伴う膿瘍を認めた。さらに腹腔内には少量の腹水貯留と遊離ガスも認めた。虫垂炎または盲腸腫瘍を原因とする膿瘍破裂の診断で救急手術を行った。リンパ節廓清を伴う回盲部切除術を行ったが,術中所見と病理組織診断の結果より虫垂結石嵌頓による壊疽性虫垂炎と診断した。ガス産生菌が発生した膿瘍内ガスが,膿瘍破裂のため腹腔内遊離ガスの原因になったと考えられた。
  • 城田 哲哉, 浅井 哲, 山口 拓也, 田中 亮, 森 琢児, 小川 稔
    2012 年 32 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性。2009年11月,腹痛,嘔吐にて入院,腹部触診にて下腹部に膨満,圧痛を認めた。血液検査では白血球の上昇を認めるも好酸球数は正常であった。CT検査では小腸の著明な拡張とDouglas窩に腹水を認めた。腹部症状が増悪し絞扼の可能性が示唆されたため,腹腔鏡にて診断も兼ねた緊急手術を施行した。腹腔内を検索,回盲部から約2m口側の回腸に著明な発赤を伴う約1.5cm大の硬結を認め,腫瘍性病変も否定できないため小開腹し,腹腔鏡補助下小腸切除術を施行した。切除標本所見では硬結を触知した部位の粘膜面に2ヵ所の潰瘍を認めた。病理組織学的所見にて潰瘍周囲の粘膜下層に好酸球を認め,さらに固有筋層,漿膜下層にも著しい好酸球浸潤を認め,全層型の好酸球性腸炎と診断した。術後経過は良好であった。原因不明の急性腹症疾患に対し,緊急腹腔鏡補助下小腸切除術を行い,好酸球性腸炎と診断された1例を経験したので報告する。
  • 藤崎 滋, 富田 凉一, 高階 幹, 高山 忠利
    2012 年 32 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    当院は緊急手術,人工呼吸器管理,急性血液浄化への対応可能な体制をとっている二次救急医療機関であるが,救命救急に直結する症例が当院へ救急搬入されることは少ない。しかし,腹部疾患に関して,二次救急として搬入された中に重篤な併存疾患が隠れていることがある。われわれは,肝硬変合併の情報がないままに夜間に救急搬入された消化性潰瘍穿孔の2症例を経験した。搬入時に安定した病態であっても,肝硬変症は腹膜炎を重症化しやすいため,早期の病態の把握と対応が必要である。このような症例に対する二次救急医療機関の現状につき報告する。
  • 田上 修司, 村田 一平, 清水 一起, 小林 ゆかり, 野口 芳一
    2012 年 32 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    術前に診断し腹腔鏡補助下に修復しえたシートベルトによる外傷性小腸穿孔の1例を経験したので報告する。症例は33歳,男性。乗用車同士の正面衝突事故により救急搬入された。下腹部にシートベルト痕を認めるものの腹部の所見は乏しく,胸腹部打撲傷の診断にて帰宅となった。その後,腹痛増強し再度来院となった。左下腹部を中心に圧痛を認め腹部造影CTにて少量の腹水と左上腹部にごく少量の遊離ガス像を認めた。近傍の空腸の壁肥厚も認めたため外傷性小腸穿孔の診断にて手術を実施した。腹腔鏡にて観察したところTreitz靭帯より約20cmの空腸に穿孔を認めた。その他の損傷部位はTreitz靭帯近傍の空腸の漿膜損傷を認めるのみであった。上腹部に小切開をおいて直視下に穿孔を修復した。術後6日目に軽快退院となった。外傷性小腸穿孔は比較的まれであり穿孔部位の術前診断は困難である。手術の際には腹腔鏡による観察が有用であると考えられた。
  • 伊藤 康博, 入野 誠之, 江川 智久, 林 忍, 長島 敦, 建持 岳史, 北野 光秀
    2012 年 32 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞は,一般的にみられる疾患であり大半が無症状で経過し,臨床的に問題となることは少ない。今回,われわれは感染性肝嚢胞に胆管炎,胆嚢炎を合併した1例を経験したので報告する。症例は74歳女性で,発熱,右季肋部痛,上腹部圧迫感を主訴に当院を受診した。腹部超音波検査,腹部CT検査にて感染性肝嚢胞,胆管炎,胆嚢炎と診断された。中等症胆管炎に対してERCPを施行し,ステントを留置した。症状は改善したが入院後2日目に38℃台の発熱,上腹部痛も出現したため経皮的膿瘍ドレナージ術を施行した。検査直後より発熱,上腹部痛ともに改善し,第4病日に退院した。退院後2週間発熱なく経過良好のためドレーンを抜去した。感染性肝嚢胞は比較的まれな疾患であり嚢胞が感染する過程は明らかではない。
  • 永田 洋士, 本城 弘貴, 太田 智之, 山田 成寿, 加納 宣康
    2012 年 32 巻 1 号 p. 105-107
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は2年前に胃癌に対して胃全摘・Roux-en-Y再建術を施行された78歳の女性。搬送3時間前に出現した食後の急な臍周囲の腹痛と,その後の嘔吐および腹痛の増強があり当院搬送となった。腹部造影CTにて上腸間膜動脈の途絶と腸管の広範な造影欠損が認められ,上腸間膜動脈閉塞症による腸管壊死を疑って開腹術を行った。小腸がほぼ全長にわたり挙上空腸の背側に嵌入しており,内ヘルニアと判明した。腐敗臭を伴う多量の腹水を認め,腸管の血色は不良だったが整復により回復したため腸管切除せずに手術を終了とした。腸管脱出の際に上腸間膜動脈が壁外性に圧迫されて血流障害をきたしたものと推測された。術後3日目より経口摂取開始し,独歩退院となった。R─Y再建術後の合併症として内ヘルニアがあること,およびその発症様式として上腸間膜動脈の閉塞をきたす可能性があることを認識しておく必要がある。
  • 松谷 毅, 吉田 寛, 松下 晃, 丸山 弘, 笹島 耕二, 内田 英二
    2012 年 32 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    74歳,男性。主訴は嚥下困難。既往歴は食道胃接合部癌にて左開胸開腹胃全摘,下部食道切除術,胸腔内食道空腸吻合,Roux-en-Y再建術を施行している。術後6ヵ月後に主訴が出現したため,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,食道空腸吻合部狭窄を認めた。内視鏡的バルーン拡張術を施行したところ,拡張中に急な胸痛,呼吸困難を訴えた。吻合部粘膜に裂傷を認め,食道破裂を疑った。聴診では左呼吸音が消失し,胸部CT検査にて緊張性気胸と両側胸水を認めたため,左前胸部,前腋窩線第4肋間から胸腔ドレナージを施行し症状は軽減した。胸腔ドレナージを3週間行い気胸は改善したため,胸腔ドレナージチューブを抜去した。上部消化管内視鏡検査では,損傷した粘膜は修復し経口摂取可能となった。吻合部狭窄に対する内視鏡的拡張術後に医原性食道破裂から緊張性気胸を起こしたと考えられた症例を経験した。
  • 山本 和幸, 村川 力彦, 野口 美紗, 小出 亨, 村上 慶洋, 北上 英彦
    2012 年 32 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は,70歳の男性。突然の上腹部痛および嘔吐が出現し,次第に増強するため当院を受診した。来院時,上腹部に自発痛と圧痛を認めた。腹部CT検査では肝周囲に血性腹水を認め,膵頭部と十二指腸下行脚背側に接して血腫,および造影剤の血管外漏出を認めた。緊急血管撮影検査を施行し,後上膵十二指腸動脈に動脈瘤を2ヵ所認め,同部位を出血源と診断し,経カテーテル的コイル塞栓術(TAE)を施行した。TAE後の血管撮影検査で,動脈瘤の描出はなくなった。術後,再出血を認めず,第13病日に退院した。腹部内臓動脈瘤破裂はまれな疾患で,中でも膵十二指腸動脈瘤は少ない。膵十二指腸動脈瘤に対する治療は,現在ではTAEが第1選択である。今回,われわれは後上膵十二指腸動脈瘤破裂に対し,TAEにより治療した1例を経験したので,自験例を含めた膵十二指腸動脈瘤本邦報告98例を検討した。
  • 星野 伸晃, 柴田 佳久, 加藤 岳人
    2012 年 32 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性。2004年9月に右鼠径ヘルニア根治術(Mesh─Plug法)を施行した。術後経過に特に問題を認めなかった。2010年8月,1ヵ月前からの右鼠径部の腫脹と疼痛を主訴に当院を受診した。CTで右鼠径部の蜂窩織炎と,プラグと虫垂の間に膿瘍を認めた。緊急入院とし保存的治療を試みたが奏功せず,第9病日にプラグ除去と虫垂切除を施行した。病理組織検査で虫垂に炎症所見を認めず,プラグ周囲組織には炎症細胞浸潤を認め,メッシュの遅発性感染による虫垂周囲膿瘍と診断した。術後経過は良好であり,鼠径ヘルニアの再発も認めていない。右鼠径ヘルニア根治術後のメッシュの遅発性感染により,虫垂周囲膿瘍を生じた症例は本邦ではみられないため,文献的考察を加えて報告する。
  • 柴田 真由子, 島田 謙, 花島 資, 河又 寛, 片岡 祐一, 相馬 一亥
    2012 年 32 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性。腹痛・嘔吐を主訴に当院に搬送された。腹部所見では右下腹部に軽度の圧痛を認めるのみで腹膜刺激症状はなかった。腹部CT検査でも腹腔内遊離ガス像はみられなかった。保存的に経過をみていたが第2病日に腹部所見が悪化,CRPも高値となったため手術を施行した。回腸に腫瘤性病変と穿孔が認められた。摘出標本の病理検査で回腸結核症による穿孔性腹膜炎と診断された。高齢者の腸結核に伴う穿孔はまれであり,本症例では低栄養・免疫力低下などの関与が示唆された。免疫能が低下している患者や結核の既往のある患者の診察に当たっては絶えず結核を念頭に置く必要があると考えられた。
  • 福田 直也, 桑谷 俊彦, 角谷 昌俊, 竹林 徹郎
    2012 年 32 巻 1 号 p. 129-133
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    51歳,男性。労働事故による腹部打撲で救急搬入。受傷1時間後のCTで腹腔内・後腹膜に出血を疑い,受傷5時間後のCTでは出血の進行を認めたため,緊急開腹とした。外傷性十二指腸離断(IIc),腹腔内・後腹膜出血および横行結腸壊死の診断で十二指腸端々吻合,結腸右半切除を施行した。術後28病日に吻合部縫合不全,胆嚢壊死および膵液・胆汁瘻に対して再手術を施行し,術後78病日に退院した。外傷性十二指腸損傷のうち,十二指腸離断はこれまで本邦報告18例(自験例含む)と,非常にまれなものである。受傷機転は交通事故が最多で,受傷から6時間以内に9例が手術を施行されている。術式は十二指腸端々吻合6例,十二指腸空腸吻合4例,膵頭十二指腸切除・十二指腸憩室化術各2例などで,18例中15例が救命された。本外傷は,十二指腸損傷部位と合併損傷臓器に対する適切な手術を早期に施行できれば,救命が可能であると考える。
  • 玉田 尚, 後藤 英昭, 山口 芳裕
    2012 年 32 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性。以前より便秘気味であった。2010年10月下旬夕方頃より腹痛出現。翌日未明,排便時に下血を認めたため当院救命救急センター受診。腹部CT検査で下部消化管穿孔を疑い緊急手術となった。横行結腸の脾弯曲側腸間膜対側部に約5cm大の穿孔部があり,多量の便塊が腹腔内に漏出していた。腫瘍性病変や憩室はなく,特発性横行結腸穿孔と診断。Hartmann手術を施行した。病理所見においても穿孔部に腫瘍性病変や憩室等は認めなかった。特発性横行結腸穿孔は比較的まれであるとされるが汎発性腹膜炎の原因として念頭に置く必要があると考える。
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