日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
32 巻 , 5 号
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原著
  • 中原 善朗, 岡本 朋, 久保田 尚子, 鈴木 瑞佳, 江頭 秀人
    2012 年 32 巻 5 号 p. 869-871
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    平成10年から22年までの間に当院で診断された閉鎖孔ヘルニア11症例を対象とし,retrospectiveに検討した。11例全例が女性で年齢の中央値が82歳,BMIの中央値が14.8,開腹歴のない女性が55%,経産婦が91%であった。イレウス様症状を呈したものが82%で,Howship-Romberg徴候は64%で陽性であった。また,大腿部痛を主訴としたものが3例(27%)あり,これら症例では短期間での診断が可能であった。術前診断できたのは73%で,全例がCTを診断根拠としていた。18%は術中所見で診断されたが,1例は診断できず,敗血症性ショックで死亡。10例で手術が施行され,うち6例で小腸切除が施行されていた。閉鎖孔ヘルニアは特異的な所見に乏しく,診断が遅れやすい半面,致死率も高い疾患である。高齢,痩身で開腹歴のない女性がイレウス様症状や大腿部痛を呈した場合は本症も念頭におき,早期診断・早期治療が求められる。
  • 佐藤 篤司, 春木 伸裕
    2012 年 32 巻 5 号 p. 873-879
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    左側大腸癌イレウスは腸管の緊急減圧処置を必要とするoncologic emergencyの1つであるが,近年,本邦では経肛門的イレウスチューブを留置してイレウスを解除し1期的切除吻合をめざす治療法が主流となりつつある。2004年1月から2009年12月までに経験した左側大腸癌イレウス31例のうち本法を施行した30例を対象に,留置成功率,腸管の減圧成功率,手術術式などの治療成績をretrospectiveに検討し,経肛門的イレウスチューブ留置の有用性について検討した。留置成功率は80%(24/30),減圧成功率は79.2%(19/24)で,減圧成功症例では平均13.1日の待機期間後に手術を施行し,78.9%(15/19)に切除・吻合術が施行可能であった。留置直後に敗血症性ショックに陥った症例を2例経験したが,減圧成功症例に縫合不全を認めず,重篤な合併症も認めなかった。本法は左側大腸癌イレウスの有用な治療法と考えられた。
  • 北川 美智子, 太田 智之, 山田 成寿, 加納 宣康
    2012 年 32 巻 5 号 p. 881-886
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】急性腹症における腹腔鏡下手術の有用性と限界について検討した。【対象・方法】急性腹症に対して腹腔鏡下手術を施行した(以下,Lap群)236例と,同時期に開腹術を施行した(以下,Open群)254例を術前診断により腸閉塞,消化管穿孔,急性虫垂炎,術前診断不明な急性腹症(以下,不明例)に分類後,腹腔鏡下診断確定率,手術術式,手術時間,術後合併症について検討した。【結果】腹腔鏡下診断確定率は91.1%で,うち71.6%が診断後完全鏡視下に治療可能だった。主な開腹移行理由は著明な癒着や腸管壊死だった。平均手術時間はLap群104.0±46.3分,Open群65.3±34.6分で,術後合併症はLap群21.6%,Open群19.3%であった。【結語】診断から治療へと移行できる腹腔鏡下手術は,急性腹症において有用であるが,強固な癒着例や腸管壊死例では腹腔鏡下手術の継続には限界がある。
特集:若さとProfessionalism -今,社会に必要とされる若手救急医-
  • 北野 光秀
    2012 年 32 巻 5 号 p. 889-893
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    当院の若手Acute Care Surgeon (ACS)の施行した手術症例から,若手ACS医に必要とされる手術を検討した。【方法】過去2年間に当院救命センターに所属する3名のACS医の術者となった症例を電子手術台帳から抽出した。術式(特に腹腔鏡手術),手術開始時刻,上級医の参加の有無を検討した。【結果】1名のACS医の1年間の術者数は164例で緊急が116例であった。腹部救急手術では,虫垂炎が半数を占め,次に下部消化管穿孔,イレウスとつづいた。外傷は6例と非常に少なかった。虫垂炎に対して開腹虫垂切除が96%に施行され,腹腔鏡下虫垂切除術は4%と少なかった。上部消化管穿孔では,54%に腹腔鏡下大網被覆術が施行された。胆嚢炎の手術では60%に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。手術開始時間は夜勤帯が多く62%を占めていた。上級医師が手術に参加したのは15%と少なく,胆嚢炎では42%の症例で,外傷では約半数で上級医がコールされていた。【結語】若手ACSに必要な手術手技のうち一般外科緊急では虫垂切除術,下部消化管穿孔,イレウス手術。上部消化管穿孔では開腹および腹腔鏡下大網被覆術,胆嚢炎では開腹・腹腔鏡下胆嚢摘出術が必要と考えられた。なお体幹部外傷手術は症例数が少なく,特殊外傷手術もあるので上級医の指導のもと施行すべきである。
  • 岡田 一郎, 米山 久詞, 霧生 信明, 小笠原 智子, 井上 潤一, 小井土 雄一, 新谷 史明, 川口 信哉, 阿部 道夫
    2012 年 32 巻 5 号 p. 895-900
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    現在,Acute Care Surgeryを担っていると思われる都市部救命救急センターと地方中核病院外科を比較し,Acute Care Surgeonの育成法を考察した。著者が現在在籍する独立行政法人国立病院機構災害医療センター救命救急センターと,以前在籍したいわき市立総合磐城共立病院外科の外科診療状況を後ろ向きに調査した。手術に関しては,災害医療センターでは若手外科医1人当たり85件/年,磐城共立病院外科では155件/年であり,共立病院外科の方が手術のバリエーションも幅広かった。外科集中治療Surgical critical careに関しては人工呼吸管理,血液浄化,Open abdominal managementいずれに関しても災害医療センターでの経験数が多かった。若手外科医1人当たりの外傷手術症例数は災害医療センターにて16.0件/年,磐城共立病院3.2件/年といずれも少なかった。Acute care surgeonの育成の場として地方中核病院外科では集中治療Surgical critical careの経験が不足し,都市部救命救急センターでは多彩な手術経験が不足するため施設間での相互交流等を検討すべきである。また,外傷手術の経験数はいずれも少なく,外傷手術手技のトレーニングが課題である。
  • 山崎 将人, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 村田 聡一郎, 平野 敦史, 白神 梨沙, 吉村 雪野, 安田 秀喜
    2012 年 32 巻 5 号 p. 901-905
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    日本の救急医療の現場では1次から3次までを対応することが多く,需要があるにもかかわらず外科医は減少し腹部救急の担い手は少ない。研修医は都会に集中し,医師も地域的に偏在,地域・病院規模的な研修の格差がある。患者の要求も多様化し意見や考え方の乖離や医療訴訟の危険も起き,外科系は敬遠されがちである。救急医を確保するためには高い職業満足度,ストレス軽減が重要で,指導医の多忙な日常診療の中での給料/業績に反映しない指導には問題がある。近年女性医師は増加しており,救急領域でも女性医師確保に向けたプログラムが必要である。今後,ITを駆使した救急医療システムの導入により重症度に合わせ適切な施設での治療が迅速に行われる可能性がある。また,e-learningがさらに発展し教育システムも様変わりするであろう。しかし,緊急手術の適応決定から手術を遂行するのは救急外科医であり,若手腹部救急医の育成は欠かせない使命である。
  • 河野 元嗣, 佐藤 哲哉
    2012 年 32 巻 5 号 p. 907-912
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    時間・設備・人が限られている中で行われる救急医療は非常にリスクが高く,医師としてのプロフェッショナリズムが最も反映されると考えられる。そこで,当院の診療体制の中で育った研修医に対するアンケートを通じて,プロフェッショナリズムと救急医療をどのようにとらえているかを分析した。その結果,知識や技術,倫理観や人間性と答える者が多かった。救急医が減少していると言われる中,当院の研修医は半数近くが救急医になりたいと答えていた。確固たるプロフェッショナリズムを持った救急医育成のためには,救急医療の現場で直面する不安を取り除くことが必要である。救急医療が崩壊し厳しい状況の中でも社会が要求する医療水準は高く,プロフェッショナリズムを意識しながら,最も適切な判断ができる救急医が必要とされている。救急医療に積極的に関わろうとしている研修医たちを支援するシステムづくりが,将来の救急医育成へつながると思われる。
  • 片岡 祐一, 島田 謙, 花島 資, 相馬 一亥
    2012 年 32 巻 5 号 p. 913-917
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    本邦では米国と同様に,外傷手術の減少や若手外科医の減少が問題となっている。当院救命救急センターでは救急外科医が,すべての重症腹部救急外科疾患に対する初療,緊急手術,集中治療を一貫して行ってきた。過去10年間で,来院時心肺停止,急性虫垂炎を除いた症例数は,腹部外傷570例(鈍的外傷476例,鋭的外傷94例),非外傷性腹部救急疾患673例(穿孔性腹膜炎,腸管虚血,イレウス,大動脈瘤破裂など)であった。4臓器以上の多臓器不全58例の在院死亡率は48%で,欧米の成績を凌駕する結果であった。過去5年間で当施設へ転院となった救急外科疾患の問題症例30例中7例が死亡した。ほとんどの患者は外科医が診療しており,不適切な初期診療や治療方針,診断遅延,集中治療不得手という問題があった。救急医としてのAcute Care Surgeonは,重症救急外科疾患の救命率の向上に貢献し,外科医や救急医への教育という役割を担っているため,その育成は極めて重要である。
  • 渡部 広明, 井戸口 孝二, 水島 靖明, 松岡 哲也, 井芹 俊恵, 秋吉 秀保, 大橋 文人
    2012 年 32 巻 5 号 p. 919-926
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    若手外傷外科医を養成するためには,若手医師が魅力を感じるトレーニングシステムを構築することが求められている。われわれは外傷外科医を養成するためのOff-the-jobトレーニングとして外傷外科手術治療戦略(Surgical Stratety and Treatment for Trauma: SSTT)コースを開発したのでその概要を紹介する。本コースでは外傷外科手術の特殊性を理解するとともに外傷外科の4要素である,「迅速性と適確性Speed & Suitability」,「戦略Strategy」,「戦術Tactics」,「チームTeam」の習得を目指している。外傷外科学の総論と各論を座学において学習し,戦略構築スキルとチームワークの構築をDecision makingを通じて習得する。戦術トレーニングは大動物を使用した手術実習を行うが,この際にも戦略とチームワークを意識した実習を行う。On-the-jobトレーニングとOff-the-jobトレーニングであるSSTTコースを併用することにより若手医師を魅了する効果的なトレーニングシステムを確立している。
  • 水沼 仁孝
    2012 年 32 巻 5 号 p. 927-930
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    救急放射線医学とは画像診断を用いて救急症例に対し迅速な診断を行い,さらに画像診断技術を応用した低侵襲治療であるInterventional Radiology(IVR)にて救命を目指す放射線医学であり,9つのsubspecialityをローテーションし,研修を行う。大田原赤十字病院放射線科では適切な画像診断の選択と読影,そしてIVRの適応と実践を学ばさせている。
症例報告
  • 本間 信之, 佐藤 武揚, 久志本 成樹
    専門分野: 短期間に急速な動脈瘤形成を呈したsegmental arterial mediolysisの1例
    2012 年 32 巻 5 号 p. 931-934
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性。腹痛で救急搬送後,CTで前上膵十二指腸動脈瘤破裂の他,近接する血管に多発する腹部内臓動脈瘤を認めたため,緊急で経動脈的カテーテル塞栓術を施行し,血行動態の安定化を認めた。術後CTでは新たに後上膵十二指腸動脈の拡張を認め,第11病日に再度血管造影検査を施行した。その結果,初回検査では認めなかった同血管に2ヵ所の仮性瘤を認め血管内治療を行った。再塞栓術後,新たな瘤形成や,破裂時に認めていた他の動脈瘤の拡大傾向を認めず,第22病日に転院となった。本症例は,多発性の腹部内臓動脈瘤からSegmental arterial mediolysisと考えられたが,自験例のように数日で新たな動脈瘤を形成した報告はない。本病態は病理所見により確定診断となるが,本例のように急速に血管病変が進行する可能性があり,今後さらに血管内治療症例の増加が考えられ,画像診断を中心とした臨床的な診断基準が必要となる。
  • 松谷 毅, 吉田 寛, 野村 務, 萩原 信敏, 内田 英二
    2012 年 32 巻 5 号 p. 935-938
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    66歳,男性。主訴は,呼吸困難,腹部膨満感と吐血。3年前に慢性肺気腫,右肺気腫性嚢胞と診断されていた。胸部CTにて右巨大肺嚢胞の圧排による縦隔偏位を認めた。また胸部X線撮影ならびに腹部CTで消化管穿孔を示すfree airを,腹部所見で筋性防御を認めたため消化管穿孔による腹膜炎と診断した。右肺気腫性嚢胞の膨張によると思われる呼吸状態の増悪を認め,右肺気腫性嚢胞と腹膜炎に対し同時に緊急手術を施行した。手術直前に手術室にて上部消化管内視鏡検査を行い,胃角部および十二指腸前壁に活動期の潰瘍を確認した。開腹下に十二指腸潰瘍穿孔部への大網充填術と腹腔内を十分に洗浄し,Douglas窩,右横隔膜下,網嚢孔にドレーンを留置した。胸部は胸腔鏡補助下に右肺嚢胞切除術を施行した。術後は,急性肺水腫,大葉性肺炎を合併し人工呼吸器管理を必要としたが,集学的治療で軽快した。
  • 竹中 賢, 梶山 潔, 能美 昌子, 由茅 隆文, 播本 憲史, 祇園 智信, 甲斐 正徳, 長家 尚
    2012 年 32 巻 5 号 p. 939-942
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性。2日前からの心窩部痛と嘔気を主訴に当院救急外来を受診した。急性腸炎の診断にて帰宅し経過をみていたが症状は改善せず,再度当院を受診した。腹部単純X線検査と腹部CT検査にて,子宮広間膜ヘルニアが疑われたが症状は軽度であり,保存的加療を患者本人が強く希望したためイレウス管を挿入し,入院にて厳重経過観察となった。入院3日目に腹部所見の増悪を認め,絞扼性イレウスへの進展を疑い緊急開腹手術を施行した。開腹所見では,骨盤右側の子宮広間膜に裂孔を認め,小腸の一部がその裂孔に陥入し絞扼されていた。イレウス解除,虚血に陥った腸管切除および裂孔の閉鎖術を施行した。術後経過は良好で第14病日に退院となった。今回,われわれは術前腹部CT検査にて診断し,手術を施行した子宮広間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
  • 小島 洋平, 下位 洋史, 渋谷 学, 長尾 美智子, 大倉 史典, 百名 佑介, 菊池 友允
    2012 年 32 巻 5 号 p. 943-947
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性で,30年来の脊柱管狭窄症でNSAIDs(Diclofenac sodium)を常用していた。腹痛,貧血精査で他院に入院したが,イレウスと診断され治療目的に当院へ転院となった。腹部単純X線検査,腹部CT検査で小腸の著明な拡張と,イレウス管造影で小腸に高度の狭窄像を認めた。転院時,極度の低栄養を認め,転院後に呂律不良,四肢感覚麻痺などの進行性の神経障害が出現したが原因は不明であった。イレウス管留置,高カロリー輸液で改善なく,入院21日目に小腸部分切除術を施行した。術後,神経症状,低栄養を含め全身状態は劇的に改善した。病理所見上,深い潰瘍を認めた。また,非乾酪性肉芽腫などの異常はなく,NSAIDsを常用していることから,NSAIDs小腸潰瘍と診断した。NSAIDs投与中止後は,再発を認めていない。
  • 山本 和幸, 村川 力彦, 芦立 嘉智, 小出 亨, 村上 慶洋, 北上 英彦
    2012 年 32 巻 5 号 p. 949-952
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下大腸切除術は近年,急速に普及してきている。今回われわれは出血を繰り返した多発大腸憩室に対し腹腔鏡下大腸亜全摘術を施行した1例を経験した。症例は64歳,男性。5年前より大腸憩室からの出血を3回繰り返していたが,本人の希望により保存的治療を行っていた。再度の下血を認め入院となり,保存的治療により数日で改善,退院となったが,今回手術に同意し当科入院となった。大腸全体に多発する憩室を認めたため,腹腔鏡下大腸亜全摘術を施行した。全大腸に多発する大腸憩室は非常にまれであるが,出血を繰り返す症例は手術適応となる。その場合,低侵襲である腹腔鏡手術の良い適応と考えられた。
  • 武藤 亮, 坂下 啓太
    2012 年 32 巻 5 号 p. 953-957
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性。転倒後のIIIb型肝損傷に対して保存的加療中,受傷後2週間目のCT検査で肝前区域に肝動脈瘤を認めた。TAEを試みたが,瘤化した太い動門脈瘻(以下,A-Pシャント)が併存し,シャント血流が速く,門脈の広範な塞栓を起こす危険があったため,開腹術を行った。大酒家で肝予備能の低下が疑われる症例であったため,超音波による瘤内血流観察下に選択的にS5b+cのグリソン鞘結紮術を行った。術後16日目に側副血行路による瘤の再形成を認め,TAEを再施行した。中枢側グリソン鞘をすでに結紮していたため,門脈塞栓を起こすことなく,安全にTAE施行が可能であった。A-Pシャントを伴った肝損傷後の肝動脈瘤に対しては,TAEが困難かつ広範囲肝切除が躊躇される症例では,本術式は比較的簡便かつ低侵襲で行える方法であり,治療戦略の一つになりうると思われた。
  • 曽我 真伍, 田畑 敏, 家接 健一, 吉田 貢一, 金木 昌弘, 酒徳 光明, 清原 薫
    2012 年 32 巻 5 号 p. 959-961
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性。ゲートボール中に転倒した際にスティックで右季肋部を強打し救急外来へ搬送となった。受診時に右季肋部に打撲痕があり同部位に著明な圧痛を認めた。CT検査にて後腹膜腔と右腎背側に遊離ガス像を認め十二指腸後腹膜穿孔が疑われた。開腹すると十二指腸下行脚後腹膜側に2cm程の穿孔部を認め,単純縫合閉鎖術および十二指腸瘻造設術を行った。術後は縫合不全なく経過し第24病日に退院となった。スポーツ中の右季肋部からの外力にて受傷した十二指腸後腹膜穿孔例を経験したので報告する。
  • 大村 和也, 村田 晃一, 川嶋 隆久, 渡辺 友紀子, 石井 昇
    2012 年 32 巻 5 号 p. 963-966
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦ではまれなサルモネラ脾膿瘍に対し,経皮的ドレナージ術が有効であった1例を経験したので報告する。【症例】60歳男性。1週間前より発熱を認め,近医で抗菌薬を処方されるも改善なく,意識障害,ショック状態で救急搬送された。血液培養よりサルモネラが検出され,来院時腹部CTで脾内に低吸収域を認めたが,超音波検査では脾嚢胞が疑われた。抗菌薬で解熱せず,第16病日の超音波検査で脾嚢胞疑い部は内部不均一の占拠性病変に変化していったことより脾膿瘍と診断した。第17病日CTガイド下経皮的ドレナージを施行した。左胸水貯留により胸腔ドレーン留置を必要としたが,速やかに解熱し,炎症反応も改善した。定期的なCT検査で膿瘍の縮小を確認しながら,53病日膿瘍腔ドレーンを抜去し,62病日退院となった。【結語】サルモネラ脾膿瘍は診断に苦慮することもあるが,その治療として経皮的ドレナージ術が有用であった。
  • 大塚 恭寛
    2012 年 32 巻 5 号 p. 967-971
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例はアルコール性肝硬変(Child-Pugh分類Grade C)を有する62歳男性で,嘔吐に続く呼吸苦を主訴に嘔吐4時間後に当院を救急受診。食道造影にて下部食道右側壁に径1cmの破裂部を認め,右胸腔内穿破型の特発性食道破裂と診断。基礎疾患の重症度を考慮し,右胸腔穿刺ドレナージ・破裂部口側への経鼻的減圧チューブ挿入・中心静脈栄養管理・オメプラゾールと抗菌薬投与による保存的治療を選択した。第2病日に急性呼吸促迫症候群を併発し,気管挿管下の機械的人工呼吸管理とシベレスタットナトリウム投与を行い,第14病日に気管切開を行い,第22病日に呼吸器から離脱した。しかし分岐鎖アミノ酸製剤投与にても意識障害が進行し,連日のドレーン洗浄にもかかわらず緑膿菌検出を伴う胸水流出が持続し,第28病日の食道造影にて破裂部の存続を認めた。以後,進行性の肝・腎機能低下を認め,第34病日に肝不全のため死亡した。
  • 鈴村 和大, 岡田 敏弘, 裵 正寛, 矢田 章人, 黒田 暢一, 飯室 勇二, 平野 公通, 藤元 治朗
    2012 年 32 巻 5 号 p. 973-976
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    患者は86歳の女性で,嘔吐と腹痛を認め当科受診。左鼠径部に圧痛を伴う膨隆を認めた。腹部CT検査で左大腿ヘルニアの嵌頓,ヘルニア内容は小腸および大網と考えられ,腹腔鏡下にて緊急ヘルニア修復術を施行した。腹腔内を観察すると,大腿輪に小腸と大網が嵌頓しており,鉗子での牽引および体外からの用手的圧迫を併用することで嵌頓を解除した。ヘルニア解除後も嵌頓小腸の色調は悪く,嵌頓小腸の切除が必要と考えられた。感染の可能性が危惧されたため,メッシュを使用せず,iliopubic tractとCooper靭帯を腹腔鏡下にて縫縮しヘルニアの修復を行い,嵌頓小腸は腹腔鏡補助下にて小腸部分切除を行った。術後は問題なく経過し,術後第14病日に退院となった。嵌頓ヘルニア症例に対しての腹腔鏡下手術は低侵襲であり有用な術式と考えられた。
  • 工藤 岳秋, 中野 詩朗, 稲垣 光裕, 赤羽 弘充, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 折茂 達也, 及川 太
    2012 年 32 巻 5 号 p. 977-979
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性。血液透析(HD)患者。前日からの発熱,腹痛を主訴に当院を受診した。消化管穿孔の診断で緊急開腹。S状結腸憩室穿孔のためHartmann手術を行った。術後8日目まで人工呼吸器管理,術直後から24時間エンドトキシン吸着療法(PMX)を施行,術直後から10日間持続血液濾過透析(CHDF)を施行。術後12日目からHDを再開した。術後24日目に食道の長径20cmの全周性虚血性潰瘍からの出血による吐血を生じたが,15日間の絶食で保存的に軽快。術後20日目,35日目,61日目に腹腔内膿瘍に対し超音波ガイド下穿刺ドレナージを施行し,各10日間のドレーン留置を要した。術後92日目に気管支炎を生じたが抗生剤投与で軽快し,107日目にバスキュラーアクセス再造設目的に転院した。HD患者の場合でも,大腸穿孔に対しては早急に手術を行い,合併症に対して粘り強く対処することが重要と考えられた。
  • 渡邉 賢二, 小原 啓, 矢吹 英彦, 稲葉 聡, 庄中 達也, 北 健吾
    2012 年 32 巻 5 号 p. 981-984
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性。子宮筋腫による不正性器出血に対し,酢酸リュープロレリン投与を開始した1週間後に腹痛を認め,腹部造影CT検査で門脈・上腸間膜静脈血栓症の診断となった。血栓溶解療法を施行したが,右大腿静脈から挿入した中心静脈カテーテル周囲にも血栓を生じたため,下大静脈フィルターを挿入した。その後,小腸狭窄を認めたため手術を施行した。病理組織学的検査で穿孔部の静脈に血栓およびヘモジデリン貪食細胞を認めた。このため小腸狭窄・穿孔の原因として静脈うっ血による出血性梗塞が考えられた。本症例では凝固能異常や膠原病,悪性疾患などの血栓性素因を認めず,酢酸リュープロレリンが血栓症の原因であったと考えられた。酢酸リュープロレリンによる血栓症の報告は少なく,非常にまれな病態と考えられたので報告する。
  • 齊藤 健太, 早川 哲史, 北上 英彦, 中村 謙一, 野澤 雅之, 森本 守, 山本 稔, 田中 守嗣
    2012 年 32 巻 5 号 p. 985-988
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    十二指腸憩室は消化管憩室の中で結腸についで頻度が高いが,その合併症として穿孔は比較的まれである。今回,われわれは緊急手術を施行した十二指腸憩室穿孔の3例を経験したので報告する。症例は全例女性で平均年齢は66.7歳であった。初発症状は全例腹痛であったが,腹膜刺激症状を認めたものは1例のみであった。手術所見は平均手術時間174分,平均出血量180g,憩室の存在部位は全例下行脚であり,2例は自動縫合器による閉鎖後に漿膜筋層補強を追加し,1例は憩室部全層切離後に層々吻合を施行した。全例術後合併症を認めず,経過良好にて退院した。十二指腸憩室穿孔は比較的まれで診断が困難であるが,治療に移るタイミングが遅れると致命的となることもあり,腹部救急疾患としてつねに念頭に置く必要がある。自験例を含む十二指腸憩室穿孔55例の本邦報告例を集計し,本疾患に対する診断,治療に関して文献的考察を加え報告する。
  • 吉松 軍平, 坂田 直昭, 山内 聡, 赤石 敏, 藤田 基生, 久志本 成樹, 海野 倫明
    2012 年 32 巻 5 号 p. 989-992
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。
  • 石橋 玲子, 石川 紀彦, 川口 雅彦, 森山 秀樹, 渡邊 剛
    2012 年 32 巻 5 号 p. 993-995
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性。右閉鎖孔ヘルニアの保存的加療歴があった。腹痛にて当院を受診し,腹部造影CTにて右閉鎖孔ヘルニアを認めた。腹痛が軽快した後にCTを再検したが,ヘルニアの解除を認めず,小腸の拡張が増悪していたため緊急手術を施行した。手術は腹腔鏡下に施行し,ヘルニアが解除され,腸管壊死のないことを確認した。ヘルニア門の閉鎖にはC─QUR EdgeTMを使用した。低浸襲でかつ両側の閉鎖孔が観察できる腹腔鏡手術は,閉鎖孔ヘルニアの手術法として有用である。また従来のメッシュより収縮率が低く,腸管と癒着しにくいC─QUR EdgeTMは,ヘルニア手術において有用であると考える。
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