日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
33 巻, 5 号
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原著
  • 富沢 直樹, 荒川 和久, 安東 立正, 小林 克己, 黒崎 亮, 加藤 隆二, 荻野 美里, 竹吉 泉, 須納瀬 豊, 白石 卓也
    2013 年 33 巻 5 号 p. 793-801
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:当院のIIIb型膵損傷例の検討を行った。対象は2000年から当院で治療したIIIb型膵損傷10例である。診断では膵損傷が強度の例は全身状態が許せばERPを行った。ERPは4例に行い2例にステントを挿入した。体尾部損傷の5例は,全例に膵体尾切除を行った。膵頭部損傷の3例は広汎膵切除,外胆汁瘻+膵管内ステント,Letton&Wilson術式をそれぞれ1例行った。十二指腸損傷を伴った膵頭部損傷2例はPDを行い,1例は術中に出血傾向となりMOFで失った。膵管ステント挿入例ではステントが術野で確認できた。主膵管は全例術中に確認・処理が可能で術後膵液瘻は6例に認めたが,全例保存的に軽快した。以上よりIIIb型膵損傷における術前ERPは有用と思われた。全身状態不良例ではDCS(damage control surgery)を選択する治療戦略も必要と思われた。
  • 大谷 弘樹, 久保 雅俊, 宇高 徹総, 白川 和豊
    2013 年 33 巻 5 号 p. 803-808
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:1999年から2011年の13年間で,魚骨による消化管穿孔10例について検討を行った。平均年齢は70±10歳,発症形式は急性発症型が8例,慢性発症型は2例であった。入院時CT検査を施行した9例の穿孔部位は,胃1例,小腸4例,S状結腸2例であり,慢性発症型の2例は穿孔部位を確認できなかった。腹部CT検査を施行した9例中 4例にfree airを認め,4例とも術中に魚骨を確認し摘出できた。Free airを認めなかった5例中4例に開腹手術を施行したが,急性発症型2例では術中に魚骨や穿孔部位が確認できず,保存的治療を施行した1例は,1ヵ月間CT検査にて経過観察を行い,魚骨の消失を確認した。魚骨による消化管穿孔症例に対しては,腹部症状やCT検査の結果により治療方針を決定することが重要である。
  • 秦 史壯, 西森 英史, 秋山 守文, 池田 慎一郎, 平間 知美, 山田 真美, 矢嶋 知己, 大江 祥
    2013 年 33 巻 5 号 p. 809-813
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:2009年7月から2010年8月までに術後イレウスと診断され,当院で高気圧酸素療法(Hyperbaric Oxygen Therapy:以下,HBO)が施行された56例について検討した。男性33名,女性23名で平均年齢は68.4歳であった。HBOは1日1回行われ7回を1クールとし,イレウスの解除をもってHBOを終了した。息苦しさや閉所恐怖症などの精神的苦痛のため,5例は1回でHBOを中断した。56例中20例に胃管・イレウス管を併用した。イレウス解除の有効例は50例(89.3%)で,HBOの平均施行回数は5.22回(1~7回)であった。中断例を除く無効例は4例(7.8%)で平均施行回数は6回(3~7回)であった。1例は絞扼性イレウスと診断され緊急手術となった。残り3例は胃管・イレウス管による保存的治療が継続されたが,結局はイレウスの解除が得られず手術に移行した。HBOを併用した保存的治療に抵抗性を示す場合には,手術を考慮すべきと考えられた。
  • 山田 哲平, 渕野 泰秀, 新居 かおり, 槙 研二, 谷 博樹, 岩永 真一, 城崎 洋, 大谷 博
    2013 年 33 巻 5 号 p. 815-820
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:虫垂憩室炎は高い穿孔率を有するものの,無症状の虫垂憩室症における予防的虫垂切除術に関しては一定の見解は得られていない。今回われわれは,1993年から2010年までに当院で施行された虫垂切除術1,004例中,虫垂憩室症と診断された27例につき臨床病理学的検討を行った。平均年齢は49.4歳,男女比は16:11,平均病悩期間は2.8日間であった。全例に開腹虫垂切除術が施行された。術後病理検査ではすべて仮性憩室で,26例に虫垂憩室炎を,9例(33.3%)に穿孔を認めた。憩室症例の穿孔率は非憩室症例の穿孔率3.0%に比べ有意に高率であった。穿孔群は非穿孔群に比し有意に膿瘍形成症例,腹腔内洗浄ドレナージ症例が多く,術後平均入院期間が長かった。虫垂憩室症の穿孔のリスクは急性虫垂炎の10倍以上であり,虫垂憩室症を無症状で発見した場合には,注意深い経過観察と症状出現時の迅速な外科治療が必要と考えられる。
特集:Abdominal Compartment Syndromeの病態と治療
  • 大谷 俊介, 織田 成人, 渡邉 栄三, 安部 隆三, 大島 拓, 服部 憲幸, 仲村 志芳, 松村 洋輔, 橋田 知明
    2013 年 33 巻 5 号 p. 823-827
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:腹腔内圧(IAP)は正常値5~7(mmHg)で,通常膀胱内圧で代用する。IAP≧12をintra-abdominal hypertension(IAH)とし,IAP>20が持続し,新規臓器不全発症があるものをabdominal compartment syndrome(ACS)とする。ACSは腹部疾患由来のprimary ACS,腹腔外要因由来のsecondary ACS,およびACSに陥った腹部の再閉鎖等により発生するrecurrent ACSに分類される。治療は,(1)腸管内容物排除,(2)腹腔内フリースペース内容物の排除,(3)腹壁コンプライアンスの改善,(4)輸液管理最適化,(5)臓器潅流適正化を段階的に行う。IAHが改善しない場合,開腹管理を行う。近年ACS防止のために輸液を制限するdamage control resuscitationが推奨され,開腹管理後の創閉鎖についてもさまざまな方法が報告されている。
  • 佐藤 格夫, 白石 振一郎, 金 史英, 尾本 健一郎, 苛原 隆之, 磐井 佑輔, 久志本 成樹, 横田 裕行
    2013 年 33 巻 5 号 p. 829-835
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:Abdominal compartment syndrome(ACS)をきたし得る病態は内因性では急性膵炎や破裂性腹部大動脈瘤,外因性では全身熱傷や外傷が代表的であり,侵襲度が高く集中治療が必要である。急性膵炎,全身熱傷を含むICUにおける栄養ガイドラインでは可能なら早期経腸栄養が推奨されているものの,intra-abdominal pressure(IAP)が上昇している時に栄養投与が困難なことが多い。本稿では重症急性膵炎における早期経腸栄養の実態に関して自験例を後ろ向きに検討する。文献的な考察を加え,ACSをきたし得る病態における実践的な栄養投与のStrategyを提示する。
  • ─Vacuum packing closureの有用性─
    山本 博崇, 渡部 広明, 水島 靖明, 松岡 哲也
    2013 年 33 巻 5 号 p. 837-840
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:背景:腹部コンパートメント症候群(ACS)は早期診断と治療が必要だが,スクリーニングの開始基準や開腹減圧術後の一時的閉腹法に関する統一された見解はない。今回われわれはACSの危険因子とvacuum packing closure (VPC)の有効性について検討した。対象・方法:2004年以降,当施設で治療したACS症例24例を対象に,背景因子を検討した。また,当施設でdamage control surgery(DCS)を行った外傷96症例を対象に,VPCの有効性を検討した。結果:ACS発症例の多くに大量輸液,凝固障害,代謝性アシドーシスがみられ,外傷症例では腹部骨盤外傷と低体温が多くみられた。一時的閉腹法の検討では,VPCは皮膚縫合に比べ術後ACSの頻度が低かった。結論:大量輸液や凝固障害,代謝性アシドーシスはACSのリスクである。開腹減圧術後の一時的閉腹法としてはVPCが優れている。
  • 小網 博之, 伊佐 勉, 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成, 松村 敏信, 阪本 雄一郎
    2013 年 33 巻 5 号 p. 843-848
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:ACSが広く認識されるなか,当院でもopen abdominal management(OAM)を行う機会が増えている。今回,2009年4月からの31ヵ月間に行われた重症外傷後のOAM 4例(平均25.8歳,男性75%)に関して当院での現状を検討した。当院でのOAMの特徴は,(1)silo closure+持続吸引,(2)簡易縫縮法の2点である。全例が出血性ショックを伴う重症腹部外傷症例で,交通外傷が2例,高所墜落と重機横転による圧挫損傷が各1例であった。そのうち3例で来院同日にinterventional radiology(IVR)と止血術の両方を行った。Primary ACSと診断したのが1例,閉腹困難例が1例,Damage control surgeryを行ったのが2例だった。高所墜落例以外の3例は腹壁閉鎖でき30日生存例は2例だった。OAMは有用で一般外科医にとっても必要不可欠である。
  • 松本 松圭, 廣江 成欧, 清水 正幸, 山崎 元靖, 豊田 幸樹年, 折田 智彦, 佐藤 智洋, 北野 光秀
    2013 年 33 巻 5 号 p. 849-854
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:背景;近年,ダメージコントロール手術の繁用に伴い,腹部コンパートメント症候群を経験することが多くなった。そのため,通常の方法では閉腹できないことがある。そのような症例に対してわれわれはWittmann patch(以下,WP)を使用している。適応;緊急開腹手術にて腹壁の緊張が著しい場合には,一時的仮閉腹を行っている。閉腹手術の際には,腹腔内圧をモニターリングし,12mmHg以上の場合には,無理な閉腹は行わず,WPを使用する。成績;8例の症例に対して使用した結果,平均6.5日(4~8日)で閉腹可能であった。根治的閉腹術は導入後平均6.5日で施行されており,達成率は100%であった。今のところ全例に腹壁瘢痕ヘルニアは認められていない。結語;長期open abdominal managementでも,WPを使用し腹腔内圧をモニターすることで安全に閉腹ができる。
  • 小川 太志, 中野 公介, 米沢 光平, 小出 正樹, 細井 康太郎, 直江 康孝
    2013 年 33 巻 5 号 p. 855-863
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:(目的)腹部コンパートメント症候群で腹壁開放管理を施行した症例の閉腹法を明らかにする。(対象・方法)当施設で過去10年間に腹壁開放管理を施行した88例を対象とし,5年ずつ前期後期にわけ閉腹方法と特徴について検討する。(結果)前期40例,後期48例を比較すると,定型的腹壁閉鎖で有意差は認めなかったが,非定型的腹壁閉鎖では,前期で遊離植皮術,両側腹直筋鞘前葉反転法が施行されており,全例腹壁を一塊の肉芽で覆ってからの閉腹であった。これに対し後期では,14日以内の外腹斜筋内腹斜筋分離法による閉腹が多く,閉腹時腹腔内圧,閉腹時最高気道内圧上昇値はともに高いが,重篤な合併症は少なく,予後良好であった。(考察)腹腔内圧上昇回避と急性期非定型的腹壁閉鎖には,外腹斜筋内腹斜筋分離法が有用であると考えられた。(結語)腹壁開放管理後閉腹法として,腹腔内圧を考慮した非定型的腹壁閉鎖は有効であった。
  • 明石 英俊, 鬼塚 誠二
    2013 年 33 巻 5 号 p. 865-870
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:破裂性腹部大動脈瘤(rAAA)の手術成績はいまだに満足できるものではなく,その一つの大きな理由がabdominal compartment syndrome(ACS)により助長される多臓器不全(MOF)の発症である。しかし,最近の報告ではACSに対するopen managementの結果が報告されるようになって治療成績が向上し,Mortalityが10~20%前後の報告も散見される。破裂性腹部大動脈瘤でのACSの病態は大量の血液が後腹膜腔や腹腔内を占拠することで腹部内圧(IAP)が上昇し,ショックを伴い,臓器ならびに全身の組織は虚血に陥る。大量の輸液と輸血に加え,虚血・再灌流障害で,浮腫が増強される。このACSを予防,対策について1990年代後半から推奨されるようになったopen managementを中心に解説するが,IAP 20mmHg以上では二期的閉腹が推奨される。
症例報告
  • 今枝 政喜, 石川 玲, 小木曽 清二, 坂口 憲史, 高村 卓志, 小池 佳勇
    2013 年 33 巻 5 号 p. 871-874
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は79歳女性。2日前からの心窩部痛と嘔吐を主訴に受診した。意識レベルは清明でバイタルサインは安定していた。上腹部に軽度の膨隆と自発痛を認めたが圧痛や腹膜刺激症状は認めなかった。MDCTのMPR画像で横行結腸の腹側に拡張小腸像を認め,横行結腸を乗り越える部位での腸管beak signと腸間膜収束像も認め,大網裂孔ヘルニアと診断した。腸管虚血性変化を示す所見は認めず,腹部所見も軽快傾向にあったのでイレウス管挿入にて保存的加療を開始した。上部小腸の減圧は良好であったが,裂孔ヘルニア嵌頓は解除されなかったため第5病日に開腹手術を施行した。空腸が20cmに亘って異常大網裂孔内に陥入していたが,腸管の虚血性変化は認めなかった。開腹歴のないイレウス症例では本疾患も念頭に置く必要があり,診断にはMDCTによるMPR画像が有用であった。
  • 山本 孝夫
    2013 年 33 巻 5 号 p. 875-878
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:出血を伴う十二指腸GISTで,術前にtranscatheter arterial embolization(以下,TAE)を施行することにより,安全に膵頭十二指腸切除術を施行し得た症例を経験したので報告する。症例は39歳女性。2003年他院で十二指腸GISTの核出術を施行。2010年6月から下血が出現した。上部消化管内視鏡では,Vater乳頭部の約2cm肛門側の粘膜下腫瘍から出血があり,エピネフリン入り高張食塩水の局所注入で止血を行った。6日後の上部消化管内視鏡で再出血があり,TAEによって止血した後,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。十二指腸のGISTは腫瘍が膵と一塊をなすものについては膵頭十二指腸切除の適応であるが出血を伴う場合には,内視鏡やTAEによって出血を十分に制御して手術を施行することが望ましいと考えられた。
  • 尾本 健一郎, 島田 岳洋, 大石 崇, 磯部 陽, 松本 純夫
    2013 年 33 巻 5 号 p. 879-882
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:大腸内視鏡検査により,脾損傷をきたし脾摘出術を要した1例を経験した。症例は85歳男性。検診にて便潜血陽性であったため,近医にてミダゾラム,ペチジン塩酸塩での鎮静下に大腸内視鏡が施行された。挿入はスムーズで観察のみで終了した。検査終了30分後より左上腹部に疼痛が出現し血圧が低下しショック状態となったため当院へ転送となった。輸液および輸血で循環動態安定し,またCT上脾周囲に血腫,腹腔内出血を認めるも造影剤漏出なく,保存的加療の方針とした。その後状態安定するも第3病日に再度腹痛出現,出血性ショック状態となった。脾損傷の再出血によるものと判断し,脾動脈塞栓術を行ったものの静脈出血が主であったため止血が得られず動脈塞栓後に脾摘出術を施行した。術後経過は良好で第19病日に軽快退院となった。大腸内視鏡検査による脾損傷はまれではあるものの致死的経過をたどる可能性もあり留意すべきである。
  • 古郡 茉里子, 長谷川 公治, 小原 啓, 星 智和, 谷口 雅彦, 古川 博之
    2013 年 33 巻 5 号 p. 883-886
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は18歳,男性。2日前より続く発熱と下腹部痛にて当院へ救急搬送された。腹部は板状硬で,腹部造影CT検査にてfree airおよび小腸より連続する盲端部分を認め,Meckel憩室穿孔による急性汎発性腹膜炎の診断で,緊急手術を施行した。手術は腹腔鏡補助下で施行し,膿性腹水およびMeckel憩室の穿孔を認め,楔状切除および洗浄ドレナージを行った。病理組織学的検査所見では憩室先端付近で穿孔を認め,高度な炎症細胞浸潤と壊死を伴っていた。異所性粘膜の存在は認められなかった。近年の画像診断の進歩により,術前にMeckle憩室の診断が可能であった症例が増加してきている。急性腹症の診断の際,Meckel憩室も鑑別にあげた腹部CTの慎重な読影が重要であると考えられた。
  • 山田 秀久
    2013 年 33 巻 5 号 p. 887-890
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は66歳男性で前日から腹痛,嘔吐を認め,当院を受診した。腹部は膨満し,軽度の圧痛を認めた。腹部単純X線で腸閉塞と診断し入院となった。腹部CTで小腸は拡張し腸管閉塞部位に近接して石灰化を伴う直径4cmの球形の腫瘤を認めた。補液,絶食,イレウス管挿入による腸管減圧を行った。以上より結石を伴う空腸憩室による腸閉塞と診断し腹腔鏡手術を行った。腹腔内の癒着剥離後,空腸の腸間膜に硬結を触知した。硬結の周囲では空腸の癒着が高度であった。結石を含む空腸憩室は腸間膜内に存在し,周囲と強固に癒着していたため,病変部を含め小腸部分切除を行った。腸石を有する空腸憩室に対しては,腸閉塞や穿孔の危険性もあり外科的治療を考慮すべきである。
  • 中川 陽史, 山本 英夫, 山本 竜義, 籾山 正人, 日高 渉, 早川 直和
    2013 年 33 巻 5 号 p. 891-894
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は59歳,女性。ふらつきを主訴に近医受診。採血検査で貧血を認め,当院紹介。来院時,Hb4.5,下血も認めた。上部下部消化管内視鏡検査では明らかな出血源を認めなかった。CTにて空腸に濃染する2cm大の腫瘤を認め,小腸腫瘍からの出血と診断し,緊急手術を行った。Treitz靭帯から約30cmの空腸に2cm大の弾性軟,白色の腫瘍を認め,空腸部分切除を施行した。粘膜面には潰瘍形成があり露出血管を認めた。病理検査の結果,20×15mm,low-grade gastrointestinal stromal tu-mor(GIST)と診断された。小腸GISTは管外発育型が多く,腫瘍径が小さい段階で発見されることはまれである。今回われわれは20×15mmと小腫瘍径ながら,大量出血を契機に発症し,CTにて術前診断し得た小腸GISTの1例を経験したので報告する。
  • 伊藤 希, 辻本 広紀, 熊野 勲, 前島 理, 堀口 寛之, 松本 佑介, 吉田 一路, 高畑 りさ, 小野 聡, 山本 順司, 長谷 和 ...
    2013 年 33 巻 5 号 p. 895-899
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は60歳代,男性。2011年6月,早期胃癌に対し,腹腔鏡補助下幽門側胃切除,結腸前経路Roux-en Y再建術を施行した。同年10月,昼食摂取3時間後に心窩部痛が出現し,軽快しないため,当院に救急搬送された。来院時,腹部は膨満し,上腹部に比較的限局した圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査にて腹水貯留,一部の上部小腸の拡張,腸間膜脂肪織の濃度上昇を認めた。絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した。開腹時,乳び腹水約800mLを認め,結腸前経路で挙上した空腸と横行結腸間膜との間隙(Petersen's defect)に空腸の大部分が陥入しており,その空腸の鬱血および腸間膜の浮腫を認めた。用手的に整復した結果これらの所見は改善した。術後3日目に経口摂取を開始し,7日目に退院した。近年,腹腔鏡補助下胃切除術後の内ヘルニアの報告が増加している一方で,決定的な予防法がないため,術後その可能性を念頭に置いたフォローが必要と考えられた。
  • 南 泰山, 中村 英司, 森田 敏夫, 中村 篤雄, 森 眞二郎, 山下 典雄, 疋田 茂樹, 坂本 照夫
    2013 年 33 巻 5 号 p. 901-904
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は65歳,女性。突然の腹痛が出現したため,近医を受診した。身体所見と腹部CT検査より絞扼性イレウスを疑われ,当センターに搬入後,緊急手術を行った。開腹所見では血性腹水の貯留と腹腔内に腫瘍を認め,腫瘍に癒着していた大網に異常裂孔が生じ,同部位に小腸が嵌入していた。大網裂孔ヘルニアと診断し,腸管をヘルニア孔より徒手的に整復した。腸管はうっ血していたが,明らかな壊死や穿孔は認めなかったため,腸管切除は行わず,ヘルニア孔を閉鎖した。大網裂孔ヘルニアは内ヘルニアの中でも比較的まれな疾患であり,その成因は外傷や炎症などさまざまである。今回,われわれは腹腔内炎症性腫瘤に牽引されたことが誘因で発症したと考えられるまれな大網裂孔ヘルニアを経験したので報告する。
  • 小倉 由起子, 山崎 一馬, 児玉 多曜, 近藤 悟
    2013 年 33 巻 5 号 p. 905-908
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は36歳の男性。主訴は3週間前よりの腹部膨満感。腹部造影CT検査にて多量の腹水と腹膜の肥厚を認め,PET─CT検査にて肥厚した腹膜に異常集積を認めた。腹水は淡黄色透明でADAは高値,細胞診はclassII,一般細菌培養は陰性,結核菌の塗抹と培養はともに陰性であった。以上から結核性腹膜炎が疑われたが,癌性腹膜炎や中皮腫などとの鑑別を要するため全身麻酔下に腹腔鏡検査を施行した。腹膜,大網など腹腔全体に粟粒大の白色小結節が多数認められた。壁側腹膜と大網より採取した小結節にラングハンス型巨細胞を伴う小型の類上皮細胞肉芽腫を認めることから結核性腹膜炎と診断した。抗結核薬は4剤併用療法(INH,RFP,EB,PZA)を施行した。腹水は術後2ヵ月で著明に減少し社会復帰をはたした。6ヵ月後のCT検査にて腹水は認めず抗結核薬を終了としたが,1年6ヵ月後の現在結核性疾患の再発・再燃は認められない。
  • 当間 智子, 山本 義一, 高石 聡
    2013 年 33 巻 5 号 p. 909-912
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例:60歳代男性。主訴:下腹部痛。既往歴:20歳代にCrohn病と診断。15年前に小腸切除。13年前に難治性痔瘻にて人工肛門造設。以後5-ASA内服治療継続。現病歴:2009年8月突然の右下腹部痛にて当院受診。急性腹症の診断で入院。経過:来院時CTで終末回腸の狭窄が原因の単純性腸閉塞症と診断。回盲部の腸管気腫と回結腸静脈から肝内門脈に至る血管内ガス像を認めた。6時間後のCTで腸管気腫と門脈ガスは消失するも閉塞の改善ないため手術施行。回腸末端に狭窄があり,口側腸管内に2cm大の硬い異物を認めた。虚血腸管はみられず異物除去と狭窄形成術を施行。経過良好で軽快退院した。考察:腸管気腫や血管内ガスが腸閉塞症に合併する場合,腸管壊死の有無が臨床上問題となる。本症例では腸管虚血は術前より否定的であり,異物による機械的損傷が原因で腸管壁から門脈系血管にガスが入ったものと推察された。
  • 萩原 信敏, 松谷 毅, 野村 務, 宮下 正夫, 山下 直行, 内田 英二
    2013 年 33 巻 5 号 p. 913-917
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は,62歳男性。前医にて胸部食道癌に対し,右開胸開腹食道亜全摘,後縦隔経路胃管再建,腸瘻造設術を施行したが第10病日に胃管壊死と診断した。胃管壊死部切除と健常部を胸壁前に埋没,頸部食道皮膚瘻を造設した。食道再建術目的にて当科に転院となった。開腹にて有茎遊離空腸を採取,頸部食道と埋没した胃管の間に有茎遊離空腸を間置した。第4病日に嘔吐と腹痛を訴え,腹部CT検査を行った。門脈ガス血症と腸管嚢胞様気腫症を認め,緊急開腹となった。手術所見では腸瘻造設部肛門側の空腸が腹膜と癒着し,その癒着部と腸瘻造設部の2点を基点として肛門側の全小腸が背側から尾側へ入り込み内ヘルニアとなっていた。これを整復し,腸管壊死は認めなかったため腸管切除は行わなかった。術後早期に経口摂取可能となり第21病日に軽快退院した。食道癌術後の内ヘルニアに起因して発症した門脈ガス血症と腸管嚢胞様気腫症の報告は極めてまれと思われた。
  • 豊田 和宏, 菅原 由至
    2013 年 33 巻 5 号 p. 919-921
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は81歳,男性。2010年8月に他医で上行結腸ポリープの内視鏡切除を受けていた。2012年4月末に腹痛が出現し,右下腹部に限局し増悪したため当院を受診し,虫垂炎の診断で入院した。腹部X線写真では右下腹部にV字型に重なりあう2本の内視鏡用クリップがあり,CTで虫垂の先端に相当する位置にこれらを認めた。緊急開腹を行うと,虫垂は先端側が腫大し周囲に膿瘍が形成されていたので,虫垂切除術および腹腔ドレナージを行った。標本を観察したところ,2つのEZクリップのつめ部分が挟みあいV字型となっていたが,この交点の箇所が虫垂に刺さり穿孔を生じていた。脱落した内視鏡用クリップによる有害事象は極めてまれであるが,本例のように複数の挟みあうものが,虫垂あるいは憩室性構造に迷入し嵌頓すると,尖端部分による組織への圧迫損傷が加わり穿孔をきたしやすくなるため注意が必要である。
  • 加藤 洋介, 尾山 佳永子, 村杉 桂子, 奥田 俊之, 太田 尚宏, 原 拓央
    2013 年 33 巻 5 号 p. 923-926
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術既往歴がある急性胆嚢炎を2例経験した。症例1は70歳男性。無石胆嚢炎穿孔による胆汁性腹膜炎と診断。造影CT検査でグラフト血管の走行を確認し,緊急開腹手術を施行した。症例2は72歳男性。急性胆嚢炎(中等症)と診断し,保存療法を行った。血管再構成3D-CT検査でグラフト血管の走行を確認し,待機的に腹腔鏡手術を施行した。いずれも術中にグラフト血管を損傷なく確認し,合併症なく退院した。開腹,腹腔鏡下いずれの術式においても胆嚢摘出術を施行可能であったが,低侵襲性と,安全にグラフト血管を確認し得る点から,腹腔鏡手術の利点は大きいと思われた。右胃大網動脈によるバイパス術既往歴がある急性胆嚢炎に対しては,でき得る限り緊急手術を避け,十分な術前計画のもとに手術を施行することで,より安全性が担保されるものと思われた。
  • 豊川 貴弘, 寺岡 均, 北山 紀州, 埜村 真也, 金原 功, 西野 裕二
    2013 年 33 巻 5 号 p. 927-931
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は64歳の男性で,意識消失しているところを当院へ救急搬送された。来院時,意識は清明であったがショック状態のため入院となった。輸液,昇圧剤によりショック状態からは回復したが,翌朝にかけて下腹部痛が徐々に増強し腹膜刺激症状が出現した。腹部CT検査で肝表面,Douglas窩に腹水を中等量認め,小腸の壁内気腫像が出現した。非閉塞性腸管虚血症を疑い緊急手術を施行した。回腸末端より約15cm口側の回腸から約10cmにわたる壊死性変化を認め小腸部分切除術を行った。病理組織学的所見上,腸管壁の全層性壊死を認め,壊死型虚血性小腸炎と診断した。術後経過は良好で,術後第9病日に退院した。壊死型虚血性小腸炎は非常にまれな病態で,文献的考察を加えて報告する。
  • 村瀬 秀明, 大野 玲, 小林 建太, 上田 吉宏, 円城寺 恩, 石丸 神矢, 小畑 満, 石田 孝雄
    2013 年 33 巻 5 号 p. 933-935
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2013/09/27
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は67歳女性。進行胃癌に対して術前化学療法としてDocetaxel+CDDP+S-1の3剤を併用したDCS療法を計3コース施行した後,幽門側胃切除術を施行した。術後補助化学療法としてS─1を内服したが,食欲不振により1コースで中止となった。術後3ヵ月目に,食欲不振および嘔気を主訴に入院。腹部造影CTにて,膀胱壁に全周性の気腫像を認め,気腫性膀胱炎と診断した。尿道カテーテルの留置および抗生剤投与にて保存的に改善した。基礎疾患に悪性腫瘍を合併した気腫性膀胱炎の本邦での報告例は,これまでに9例であった。自験例では胃癌術後の食欲不振が要因となって低栄養状態が遷延し,気腫性膀胱炎が発症したと考えられた。
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