日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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33 巻 , 6 号
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原著
  • 宇高 徹総, 田中 真, 橋本 好平, 山本 博之, 山本 澄治, 久保 雅俊, 水田 稔
    2013 年 33 巻 6 号 p. 937-940
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:当科で手術した33例の閉鎖孔ヘルニアについて検討した。年齢は平均86.4歳,全例女性であった。全例が術前に骨盤CTで本症と診断できた。手術法は33例中18例に小腸部分切除を行った。術後入院期間は平均29.5日間と長期化したが,全例治癒退院できた。腸管切除の有無で腸管切除群と非腸管切除群に分けたが,腸管切除群の方が有意に発症から手術までの時間が長く,術後合併症も多く,術後入院期間も長かった。また,嵌頓腸管の整復時の腸管穿孔について比較検討したところ,水圧・用手圧迫群が牽引群に比べて有意に腸管損傷が少なく,術後合併症も少なく,術後入院期間も短かった。嵌頓腸管の整復では水圧法,用手圧迫法が推奨できる方法であると思われた。
  • 安井 良僚, 河野 美幸
    2013 年 33 巻 6 号 p. 941-945
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】小児期の卵巣茎捻転(以下,本症)の自験例を検討し,診断および治療について考察した。【対象および方法】2000年から2011年に,女性の急性腹症で,腹部CTにて卵巣嚢腫など卵巣腫大を認め,腹腔鏡手術を施行した7例を対象とし,年齢,腫瘍のサイズ,CT所見,治療法などにつき検討した。【結果】平均年齢は11.3±4.2歳。CTでの卵巣の最大径は平均75±26mmであった。7例中5例が本症と診断され,これらの症例では単純CTで卵巣壁および周囲にhigh densityな部位を認めた。本症に対しては卵巣切除術が行われてきたが,3例で病理学的にviableな原始卵胞が確認された。悪性の卵巣病変は認めなかった。また1例で術後,対側卵巣に卵巣嚢腫が出現した。【結論】本症の確定診断および治療に腹腔鏡が有用である。しかし卵巣捻転に対しては卵巣が肉眼的壊死と考えられても,可能な限り温存を優先するべきと考えられた。
  • 杉本 起一, 佐藤 浩一, 櫻田 睦, 水口 このみ, 松平 慎一, 平田 史子, 丹羽 浩一郎, 前川 博, 坂本 一博
    2013 年 33 巻 6 号 p. 947-952
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:目的:大腸癌穿孔における術後成績について調査し,予後予測因子や治療方針について検討した。方法:大腸癌穿孔49例を対象とした。結果:死亡群は12例(24.5%)であった。死亡群では,生存群と比較してAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアは有意に高かった(p=0.04)。17点以下と18点以上の2群に分けた場合,それぞれの死亡率は16.7%,71.4%となり,両群間で死亡率に有意差を認めた(p=0.007)。17点以下では,原発巣切除を施行し根治度A,Bであった30例における死亡率は6.7%であった。結論:APACHE IIスコアが大腸癌穿孔の予後予測因子として有用であることが示された。APACHE IIスコアが17点以下であれば死亡率が低いことから,原発巣切除による根治術は許容されるものと考えられた。
  • 小山 基, 村田 暁彦, 坂本 義之, 諸橋 一, 高橋 誠司, 吉田 枝里, 袴田 健一
    2013 年 33 巻 6 号 p. 953-961
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】大腸癌イレウスに対する治療選択と手術成績から治療戦略を検討する。【対象と方法】対象は2000年~2011年に経験した大腸癌827例のうちイレウスで絶食・TPN管理が必要となった108例。(1)背景因子と手術成績を腫瘍部位別に比較検討する。(2)T4直腸癌に対する治療成績を検討する。【結果】(1)腫瘍径は平均6.8cmで,壁深達はT3が79例,T4が25例。腹膜炎は9例で,緊急手術は33例。経鼻的減圧は右側結腸に多く,経肛門的減圧は直腸に多かった。一期吻合は右側91%,左側83%,直腸38%で施行。(2)術前化学療法の2期的根治術が直腸の21%で選択され,膀胱などの機能温存が可能であった。【結論】右側は一期吻合が可能で,左側や直腸では経肛門的減圧後の一期吻合を計画し,減圧不能の場合は吻合+予防的ストーマを検討する。T4大腸癌では術前化学療法後の2期手術も考慮される。
特集:大腸穿孔の治療方針
  • 宗本 義則
    2013 年 33 巻 6 号 p. 965-970
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:大腸穿孔は予後不良の疾患である。1991年1月から2013年4月までに当科で経験した大腸穿孔症例143例に対し患者背景,病態,予後などを検討し当院での治療戦略が妥当か,予後不良群の特定ができるか検討した。術後28日までの死亡例は22例(15.2%)であった。男性8例,女性14例,平均年齢は79歳(44歳~96歳)であり,既往並存疾患が20例(90.5%)であった。生存群と比較して,女性,高齢者(80歳以上),何らかの既往歴があり,穿孔原因が特発性,虚血性,穿孔部位が右側結腸,ショックをともなっている,および術後に人工呼吸器が必要になるような肺合併症がある症例の予後が不良であることが分かった。多変量解析では年齢,ショックの有無,穿孔部位,既往歴,虚血性の項目に有意差がみられ,なかでもショックの有無が予後に最も関与していた。予後不良群に対しては,今後抗ショック療法やPMX-DHPなどのさらなる集中治療が必要である。
  • 久保田 哲史, 井谷 史嗣, 中野 敢友, 黒瀬 洋平, 石井 龍宏, 高倉 範尚
    2013 年 33 巻 6 号 p. 971-977
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】大腸穿孔に対する緊急手術において,一期的吻合が安全に施行可能な条件を明らかにする。【対象および方法】2005年4月から2012年12月まで当施設で手術を施行した大腸穿孔の53例について,術式別の背景,短期成績を比較し,術式選択に影響を及ぼした因子,および予後因子を検討した。【結果】在院死亡率は18.9%であった。予後因子の多変量解析では,APACHEIIscore (AS)(≧20)(p=0.013)が独立した予後不良因子であった。術式別の術前因子を多変量解析した結果では,SIRSの有無(p=0.030)が人工肛門選択に関した独立した因子であった。人工肛門造設症例の内,閉鎖された症例は2例(7.1%)のみであった。【結論】AS(<20),SIRSなしの症例では,救命率を下げることなく一期的吻合が行える可能性が示唆された。
  • 清島 亮, 長谷川 博俊, 石井 良幸, 岡林 剛史, 鶴田 雅士, 星野 好則, 星野 大樹, 石田 隆, 菊池 弘人, 北川 雄光
    2013 年 33 巻 6 号 p. 979-982
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:消化管穿孔は術後に不幸な転機をたどることも多い疾患である。今回,穿孔部位が腹水CT値に与える影響に注目し,腹水CT値と予後との関係を明らかにすることを目的とした。当院で緊急手術を要した消化管穿孔症例で術前CT検査にて腹水CT値が計測可能であった62例を後方視的に解析した。穿孔部位別の腹水CT値を比較したところ,大腸で有意に高かった(胃・十二指腸15(5-21)HU,小腸21(10-30)HU,大腸28(14-46)HU,p<0.05)。また,腹水CT値と発症から来院までの時間の積(CT値・来院時間係数)は合併症の有無および在院死亡と有意に相関していた(合併症>800 vs. ≤800,p<0.05:在院死亡>1,000 vs.≤1,000,p=0.10)。今回の検討から,術前腹水CT値・来院時間係数を用いることにより消化管穿孔症例における合併症,在院死亡リスクを予測できることが示唆された。
  • 小杉 千弘, 幸田 圭史, 安田 秀喜, 鈴木 正人, 山崎 将人, 首藤 潔彦, 手塚 徹, 村田 聡一郎, 平野 敦史
    2013 年 33 巻 6 号 p. 983-988
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:2001年9月から2011年9月までの大腸穿孔緊急手術施行56例を対象とし,術後死亡率につきAPACHE II,SOFA,POSSUM の各スコアによる評価をした。死亡率は全体で11例(19.6%)だった。患者背景,手術方法で生存群と死亡群で有意差はみられなかったが,APACHE II,SOFA,POSSUMによる評価では,各スコアで有意に死亡例の点数が高かった。術後PMX-DHPまたはCHDF施行例と,非施行例を比較すると生存率に有意差は認めなかったが,PMX-DHPまたはCHDF施行例の各スコアの点数は高値であり,より重篤な症例だったことが判明した。大腸穿孔に対し,各スコアシステムを用いて患者の重症度を評価することが,術後集中治療指針決定に有用である可能性がある。またPMX-DHPおよびCHDFを用いる症例の絞り込みに,各スコアシステムが寄与することが期待される。
  • 斎藤 人志, 松江 俊英, 中嶋 和仙, 中村 喜亮, 林 圭, 向井 弘圭, 高島 茂樹
    2013 年 33 巻 6 号 p. 989-996
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】大腸穿孔に起因したSIRS症例に対するPMX-DHP療法の有用性と限界についてretrospectiveに検討した。【対象・方法】PMX-DHPを施行した大腸穿孔に起因したSIRS症例64例を対象に,その臨床所見と各種mediatorの経時的推移を救命例と死亡例について検討した。全例に手術が施行され,またCHDFを12例に併施した。【結果】53例(82.8%)が救命可能であり,また本療法の導入後における治療成績は導入前に比し有意に向上した。PMX-DHP施行前のAPACHE-II score,SOFA scoreはいずれも死亡例が救命例に比し有意に高点数であった。発症から手術までの経過時間,およびPMX-DHP開始までの術後経過時間は救命例が死亡例に比し有意に短時間であった。ドパミン投与減量可能症例は救命例が死亡例に比し有意に高率であった。臓器不全と予後の関係では死亡例が全例4臓器以上の障害を合併しており,臓器別では肝,中枢神経障害の合併例が有意に予後不良であった。血中IL-6,IL-10はいずれも救命例が死亡例に比し有意に低値を示し,PMX-DHP施行後の増減率は救命例で有意な減少がみられた。CHDFは12例に併施したが5例(41.7%)のみのが救命可能であった。【結語】SIRS状態を呈する大腸穿孔症例に対する本療法は良い適応であり,可及的早期の開始が肝要と思われた。しかし,4臓器以上の臓器障害合併例,および肝や中枢神経障害の合併例に対する救命は本療法のみでは困難ではないかと考えられる。
  • 小豆畑 丈夫
    2013 年 33 巻 6 号 p. 997-1004
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:敗血症性ショックを合併している腹腔内感染症患者の手術導入のタイミング決定は難しい。われわれは敗血症性ショックを合併した消化管穿孔患者に対して,early goal-directed therapy(EGDT)を初期蘇生として利用して,かつ患者の循環動態に関わらず手術を導入するearly infectious source control(EISC)を行う日大プロトコールを用いて治療を行ってきた。それらの症例を対象に手術導入までの時間と転帰の関係を検討した。患者は137例が登録された。手術導入までの時間が6時間を超えると60日生存が0%であることが示された。統計学的検討は,手術導入までの時間が60日生存を決定する重要な因子であることを示した。われわれは敗血症性ショックを合併した消化管穿孔患者の感染コントロール手術は,循環動態に関わらず6時間以内に開始することが望ましいと結論する。
  • 丹羽 浩一郎, 佐藤 浩一, 杉本 起一, 伊藤 智彰, 折田 創, 櫛田 知志, 櫻田 睦, 前川 博, 坂本 一博
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1005-1011
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:大腸穿孔の成因と治療成績,および予後予測因子について検討を行った。過去17年間に当院で緊急手術を施行した大腸穿孔182例を対象とした。死亡例は38例(死亡率:20.8%)であった。穿孔原因別に救命群と死亡群の2群に分けて検討した。大腸穿孔の原因として憩室(44.0%),大腸癌(30.2%),特発性(8.2%)の順に多かった。憩室,大腸癌を原因とする大腸穿孔では,多変量解析でAPACHIIscoreが独立した予後予測因子であった(それぞれp=0.002,p=0.038)。憩室を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが20点以上で死亡率85.7%と有意に高く(p<0.0001),また大腸癌を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが18点以上で死亡率75.0%と有意に高くなった(p<0.0001)。各症例の重症度を評価し,治療戦略を立てる際には,APACHEIIscoreが指標になる可能性が示唆された。
症例報告
  • 安 炳九, 末次 弘実, 高原 秀典, 横山 正, 永吉 直樹, 田渕 幹康, 杉山 朋大, 原 重雄, 神澤 真紀, 實光 章
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1013-1017
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は75歳男性。2011年11月膵癌に対し,膵頭十二指腸切除術ならびに空腸瘻造設術を施行した。術後経過は良好で術後22日目に空腸瘻チューブを抜去,術後34日目に退院した。以後外来にて経過観察中,2012年6月腹痛を主訴に当院受診した。腹部CT検査では肝表面に腹水の貯留およびfree airを認め,消化管穿孔の診断のもと,緊急手術を行った。手術所見では空腸瘻の腹壁固定部が裂け,遅発性空腸瘻穿孔と診断,穿孔部を含めて空腸を切除し,機能的端々吻合を施行した。患者は術後7日目にイレウスを呈したものの保存的に軽快し,術後30日に退院した。
  • 木村 明春, 広松 孝, 高良 大介, 尾辻 英彦, 前田 隆雄, 寺林 徹, 横井 剛, 待木 雄一
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1019-1022
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:進行胃癌による幽門狭窄の経過中に食道破裂をきたした1例を経験した。症例は65歳男性で,貧血に対する精査目的に施行した上部消化管内視鏡検査で,胃幽門部にBorrmann3型腫瘍を認め,幽門狭窄の状態であった。精査加療目的に入院となったが,入院13日目に嘔吐し,以後腹痛が出現した。呼吸苦も出現したため,胸腹部造影CTを施行し,食道破裂による縦隔炎と診断して緊急手術を施行した。左開胸開腹連続斜切開により胃全摘,下部食道切除,縦隔ドレナージ術を行った。術後,縦隔の持続洗浄ドレナージを行い縦隔炎は改善したが,肝転移の進行により術後5ヵ月で死亡した。胃癌に伴った食道破裂の報告は少なく,本邦では自験例を含めて12例のみである。本症例では進行胃癌による幽門狭窄のために胃内が緊満し,嘔吐に伴う食道内圧の上昇により食道破裂をきたしたものと考えられた。
  • 坂谷 彰彦, 今村 綱男, 田村 哲男, 小泉 優子, 小山 里香子, 木村 宗芳, 荒岡 秀樹, 竹内 和男
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1023-1026
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は30歳女性。当院受診9日前に強い右季肋部痛が出現し近医を受診。血液検査では炎症所見の上昇がみられたのみで腹部単純CT検査と腹部超音波検査で異常がみられなかったため経過観察とされた。その後,痛みの範囲が腹部全体に拡大したため他院胃腸科を受診し上部内視鏡検査を施行され,婦人科も受診したが痛みの原因は不明であったことから精査目的に当院紹介となった。造影CT検査施行した結果,動脈早期相で肝表面に層状の濃染像を認めたため肝周囲炎を疑い,クラミジアを標的とした抗菌薬投与したところ症状は速やかに改善した。後に膣分泌物クラミジアトラコマチスPCRの結果が陽性と確認されたことからFitz-Hugh-Curtis症候群と確定した。今回われわれは造影CTが診断に有用であったFitz-Hugh-Curtis症候群の1例を経験したことから若干の文献的考察を交えて報告する。
  • 瀧井 麻美子, 大平 雅一, 久保 尚士, 田中 浩明, 六車 一哉, 前田 清, 平川 弘聖
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1027-1030
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は79歳男性。腹部食道癌で1年前に右開胸および腹腔鏡補助下食道中下部切除,後縦隔経路で胃管再建術が施行された。腹痛で近医を受診。精査目的で施行された下部消化管内視鏡検査後,呼吸困難,血圧低下を認め当院に搬送された。胸部X線,胸腹部CT検査で食道裂孔ヘルニアによるイレウスと診断し,緊急手術を施行した。食道裂孔を通して挙上された胃管の左腹側より左胸腔内に空・回腸と横行結腸が脱出し,腸間膜の捻転で回腸末端は壊死に陥っていた。食道裂孔の開大部を縫合閉鎖し,回腸部切除術を行った。全身状態は徐々に改善し術後42日目に転院となった。本症の原因として食道裂孔部の横隔膜が脆弱なために,腹圧の上昇により初回手術時に縫縮した食道裂孔の離開が生じたと考えられたが,患者の栄養状態が不良で腸間膜の脂肪が少なく腸管の可動性が良好であったため腸管が胸腔内へ脱出しやすかったことも原因の一つとして考えられた。
  • 中村 直人, 伊藤 孝, 平良 薫, 大江 秀明, 土井 隆一郎
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1031-1034
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:85歳男性がショック状態で救急搬送された。造影CT検査でIIIb型膵損傷および腹腔内出血と診断し緊急手術を実施した。腹腔内には多量の血腫があり,膵頭部から体部移行部で膵の完全断裂を認めた。出血を制御しつつ膵体尾部切除術を行った。術後ドレーン排液中アミラーゼ濃度は高値であったが速やかに低下した。大きな合併症なく退院し,また耐糖能異常は出現しなかった。膵損傷の治療に際して臓器温存を考慮する必要はあるものの,他臓器損傷や血管損傷を伴っている場合には出血を制御しやすい膵切除術を選択することは合理的な治療選択である。膵損傷に対する術式は,既存の報告にとらわれることなく,損傷の程度や全身状態を総合的に判断して選択すべきであると考えられた。
  • 大内 晶, 浅野 昌彦, 青野 景也, 渡邊 哲也, 加藤 雄大, 片岡 正隆
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1035-1038
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は74歳男性,昼食に2日前のポークカレーを摂取したところ上腹部痛が出現した。腹部は平坦でやや硬,上腹部に圧痛と反跳痛を認め,腹部造影CTでは回腸の拡張,壁の菲薄化・造影不良と広範な門脈ガス血症を認めた。絞扼性イレウスまたは非閉塞性腸管虚血症による腸管壊死の診断で緊急手術を施行したが,開腹すると腹腔内に腸管壊死は認めず一部の回腸壁が分節状に白色・菲薄化していたのみだった。病理組織学的には粘膜上皮の壊死・脱落,炎症細胞の浸潤と芽胞を伴うグラム陽性桿菌の増殖を認め,診断は現病歴も合わせるとC. perfringensによる感染性腸炎が最も考えられた。門脈ガス血症は腸管壊死を伴う急性腹症の際にみられることが多いが,感染性腸炎でみられることもあり鑑別に際しては念頭に置く必要がある。
  • 吉田 周平, 奥田 俊之, 村杉 桂子, 村松 賢一, 出村 嘉隆, 加藤 洋介, 太田 尚宏, 尾山 佳永子, 原 拓央
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1039-1041
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:消化管内異物はそのほとんどが自然に排泄されるが,まれに消化管穿孔などの重篤な病状をきたすことがある。今回われわれはCT検査にて術前診断可能で,腹腔鏡補助下手術を施行しえた魚骨による小腸穿孔の1例を経験した。症例は78歳,女性。起床時より腹痛を認め当院受診。前日夕に焼魚(ブリ)を摂取している。CT検査にて魚骨による小腸穿孔と診断され,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に検索すると,骨盤部左側に小腸穿孔部を同定し,同部小腸の部分切除を施行した。術後経過は良好で第7病日に退院となった。魚骨による消化管穿孔においては近年MDCTの普及により診断精度が高まっている。穿孔部位を含めた的確な早期診断,治療方針の決定が可能であり,安全に腹腔鏡補助下手術を施行しえた。
  • 小川 由梨香, 二川 康郎, 鈴木 文武, 後町 武志, 石田 祐一, 矢永 勝彦
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1043-1046
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は61歳男性。39℃台の発熱にて近医を受診した。血液検査上WBC42,220/μL,CRP26.99mg/dLと炎症所見を認め,腹部CT検査で肝右葉に10cm大の膿瘍を認めた。Percutaneous Transhepatic Abscess Drainage(経皮経肝ドレナージ:以下,PTAD)を施行するも,排膿不良で当院紹介となった。当科入院時のPTADの排液の直接検鏡よりアメーバ肝膿瘍と診断した。腹部造影CT検査にて膿瘍と右肝静脈から右房まで血栓を認め,肝膿瘍に対しメトロニダゾール2.25g/日の投与,血栓症に対しヘパリン投与を開始した。メトロニダゾール投与25日目の腹部造影CT検査で膿瘍腔は縮小し,血栓も消失していた。肝膿瘍を認めた際には,鑑別診断として赤痢アメーバ感染を念頭に置き,また同診断がついた際には肝静脈血栓症を合併しうる病態であることを銘記する必要がある。
  • 川元 真, 高川 亮, 福島 忠男, 茂垣 雅俊, 舛井 秀宜
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1047-1050
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は21歳女性。生魚を摂取し,12時間後に下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部所見上は下腹部に著明な圧痛がみられ,造影CTで有症状部位に一致して限局性の小腸壁の肥厚,腹腔内遊離ガス像,腹水を認め,小腸穿孔の診断で同日緊急手術となった。手術所見では,小腸に2mm大の穿孔部位がみられ,周囲は発赤し浮腫状であり,小腸部分切除を行った。病理組織診断の結果,穿孔部近傍に好中球と好酸球の浸潤を伴う寄生虫像を認め,寄生虫による小腸穿孔と診断した。また,血液検査にて抗アニサキス抗体陽性でありアニサキス症による小腸穿孔と診断した。アニサキス症のうち小腸アニサキスは4~8%程度と報告され,その中でも小腸穿孔の報告は極めて少なく,2012年までの本邦医中誌検索では本症例を含め4例の報告しかない。今回われわれは小腸アニサキス症による小腸穿孔の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する。
  • 鈴木 桜子, 木村 充志, 芥川 篤史, 細井 敬泰, 山崎 公稔, 河野 弘
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1051-1055
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は55歳男性。腹痛を主訴に当院受診した。腹部の膨満と圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。腹部造影CT検査にて回腸壁の限局性肥厚像を認め,回腸腫瘍による腸閉塞と診断。同日,緊急手術を施行した。回腸末端より口側110cmの回腸に長径3cmの全周性の腫瘍を認めた。周囲リンパ節の腫脹は認めなかった。回腸部分切除術を施行した。病理組織検査にて小腸原発の濾胞性悪性リンパ腫と診断した。術後経過は良好で第17病日に退院した。当院血液内科で経過観察をしているが,現在再発は認めていない。小腸悪性リンパ腫は,腸重積により腸閉塞をきたすことが多く,本症例ように狭窄による発症は比較的まれである。この点をふまえ文献的考察を加え報告する。
  • 山本 基, 那須 亨
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1057-1060
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は50歳,女性,嘔吐を主訴に入院した。小腸造影ではTreitz靱帯の肛門側150cmに長さ5cmの狭窄を認めた。開腹歴はなかったため,詳細に病歴聴取をしたところ,症状発現の47日前に交通事故に遭い,シートベルトで下腹部を強く締め付けていたことが判明した。鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄と判断し,入院7日後に小腸切除術を施行した。狭窄部は硬化・萎縮し,全周性の潰瘍形成と,粘膜下組織および漿膜下組織での肉芽形成と線維化を認めた。狭窄の原因は,腸間膜損傷に基づく腸管の循環障害が全層性の虚血をきたし,それに引き続く器質的変化が2次的に小腸の狭小化をもたらしたものと考えられた。受傷時に明らかな臓器損傷を伴わない鈍的腹部外傷でも遅発性に小腸狭窄をきたす症例があることを患者に対して周知しておくことは重要である。
  • 成井 諒子, 井上 昌也
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1061-1065
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は29歳の女性。腹痛と嘔吐を主訴に当院受診した。腹部造影CTで骨盤内に拡張した小腸ループを認め,子宮が腹側に,S状結腸が背側に偏移していた。右子宮広間膜裂孔ヘルニアによるイレウスと診断した。イレウス管による減圧を行い,入院第10病日に単孔式腹腔鏡下に手術を施行した。右子宮広間膜に生じた径2cmの裂孔に約20cmの小腸が陥入していた。陥入小腸の血流は良好で切除の必要はなく,陥入小腸を還納し,裂孔を吸収糸で縫合閉鎖した。術後経過は良好で術後8日目に退院となった。子宮広間膜裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡手術は22例の報告があり,全身状態が良好で腸管の血流障害がない場合,緊急もしくは腸管減圧後の腹腔鏡下手術は有用な治療法であると考えられる。子宮広間膜裂孔ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡下手術は,現在まで報告例はなく有効な治療選択肢の一つであると考えたため,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 加藤 健宏, 寺崎 正起, 岡本 好史, 鈴村 潔, 神谷 忠宏
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1067-1070
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:成人臍ヘルニアは日常しばしば遭遇する疾患であるが,臍ヘルニアの破裂により腹腔内臓器が体外脱出をきたすことはまれであり,さらに腹水を認めない症例では極めてまれである。今回われわれは小腸の体外脱出をきたした臍ヘルニア破裂の1例を経験したため報告する。症例は88歳の女性で,腹痛と臍からの腸管脱出を主訴に当院救急外来を受診した。身体所見上,臍ヘルニア直上の皮膚が破裂し,小腸約40cmが体外に脱出し嵌頓・壊死をきたしていた。臍ヘルニア破裂による小腸脱出と診断し緊急手術を施行し,小腸部分切除・直接縫合閉鎖によるヘルニア修復術を行った。術後第9病日,合併症なく退院した。
  • 久保 博一, 國崎 主税, 大西 宙, 原田 真吾, 井上 英美, 田中 優作, 大山 倫男, 渡部 顕, 小野 秀高, 上田 倫夫, 大島 ...
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1071-1075
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は81歳,男性。胃癌に対して腹腔鏡補助下胃全摘術,Roux-en Y再建を施行した。術後14日目に十二指腸断端縫合不全を認め,computed tomography(CT)ガイド下穿刺によるドレナージを施行した。術後19日目にドレーンより血性の排液がみられ造影CT検査を施行したところ,固有肝動脈に15mm大の動脈瘤を認めた。緊急血管造影検査の直前に動脈瘤破裂をきたし,ショック状態に陥ったが,coilingによる塞栓術で止血した。一過性にASTは8,800U/L,ALTは6,000U/L,T-Bilは5.5mg/dLまで上昇し,酸素,プロスタグランディンE1,およびトロンボモジュリンの投与を行い,第59病日に改善を認めた。十二指腸断端縫合不全,腹腔内膿瘍が軽快するのを待って第87病日に退院した。今回われわれは,胃癌術後仮性肝動脈瘤破裂の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
  • 和田 英雄, 富永 哲郎, 古川 克郎, 黨 和夫, 柴崎 信一, 内藤 慎二, 岡 忠之
    2013 年 33 巻 6 号 p. 1077-1080
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は48歳の男性で,野球中に腹部を強打し,受傷より3週間後にイレウスの診断で当院へ紹介となった。外傷歴と小腸内視鏡検査を含む諸検査から腹部鈍的外傷後の遅発性小腸狭窄を疑った。ダブルバルーン小腸内視鏡検査にて狭窄部の拡張は困難で,受傷日より62日目に開腹手術を行った。Treitz靭帯から200cmの部位で小腸は高度に狭窄し,大網の癒着と腸間膜の肥厚を認めた。狭窄部を含む小腸部分切除術を行い,病理組織学的検査で外傷性の組織損傷が示唆されたため,腹部鈍的外傷による遅発性小腸狭窄と診断した。本疾患において術前に小腸内視鏡検査を施行し,狭窄部を同定した報告は極めてまれなため,文献的考察を加えて報告する。
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