日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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33 巻 , 8 号
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原著
  • 村上 真, 森川 充洋, 小練 研司, 廣野 靖夫, 五井 孝憲, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1237-1243
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    消化器外科手術において汎発性腹膜炎などの創分類classⅢ以上の症例ではSSIは依然高値である。今回,消化管穿孔による汎発性腹膜炎手術でのincisional SSI(以下,I-SSI)予防に持続吸引皮下ドレーンが有用かをretrospective検討した。2006年4月から2011年12月までの期間で,上部消化管を除く消化管穿孔例97例を対象に,持続吸引タイプ皮下ドレーンの有無でI-SSIの発生率を比較した。全体における皮下ドレーン留置群のI-SSIは12.9%で,非留置群の37.9%と比較し有意(p=0.0097)に低率であった。特に大腸穿孔でI-SSIが54.5%から7.1%まで低下した。皮下ドレーンは,使用症例を創分類Ⅲ以上の汚染手術とし,ドレナージチューブの抜去時期,効果的な留置に留意すれば,I-SSIの予防に有効な手段である。
  • 櫻井 丈, 天神 和美, 根岸 宏行, 瀬上 航平, 京井 玲奈, 嶋田 仁, 片山 真史, 諏訪 敏之, 小野田 恵一郎, 榎本 武治, ...
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1245-1249
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    はじめに:胃癌穿孔に対する治療は,急性腹症とて sepsis からの全身状態の改善を図ることと,癌として根治性を損なわずに治療を行う,という二つの目的があるが治療方針決定に難渋することがしばしばある。対象:2004年8月から2012年7月の間に上部消化管穿孔の入院例は321例で,154例が胃穿孔であった。そのうちの10例に胃悪性腫瘍による穿孔を認めた。成績:保存的治療が先行された症例は2例(20%)であった。残りの8例は一次治療として手術が選択されていた。5例(50%)が13ヵ月以内に癌死であった。3例(30%)が在院死亡と予後は極めて不良であった。まとめ:胃癌による穿孔は高齢者で高度進行例も多く,予後は極めて不良であった。生命危機回避を最優先し,治療方針を決定することが肝要であると考えられた。
  • 北村 勝哉, 山宮 知, 石井 優, 佐藤 悦基, 岩田 朋之, 野本 朋宏, 吉田 仁
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1251-1255
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    当施設の重症急性膵炎に対して蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法(continuous regional arterial infusion:以下,CRAI)を施行した60例の治療成績を検討した(中央値表記)。年齢は,53歳,男性47例,女性13例。厚生労働省予後因子は,4点,造影CT Grade 2が35例,Grade 3が25例であり,膵造影不良域合併を86.7%に認めた。投与経路は,腹腔および上腸間膜動脈の2経路が58例,腹腔動脈の1経路が2例であり,CRAI開始時期は,入院第1病日,施行期間は,5日であった。腹痛消失時期は,入院第5病日であり,晩期重症感染症合併率は,16.1%,致命率は,8.3%であった。CRAI治療前後で,膵炎重症度と炎症指標は有意に改善したが,randomized controlled trialによる検証が必要である。
  • 廣田 衛久
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1257-1263
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    目的)急性膵炎発症から48時間以内の造影CTの有用性を明らかにすること。方法)急性膵炎全国調査で得た臨床データを用いた。発症から48時間以内に造影CTを行った699人を,A)膵に造影不良域を認めた143人,B)認めなかった556人に分け,臓器不全,多臓器不全,感染合併症の罹患率そして致命率を比較した。次に,造影不良の範囲による予後の違いを明らかにするため,造影不良の範囲から3群に分け,同様に比較した。成績)膵に造影不良を認めた群が,すべての検討項目で有意に造影不良を認めなかった群を上回った。臓器不全:18.4%対4.2%。多臓器不全:12.1%対1.3%。感染合併症:12.7%対2.2%。致命率:8.8%対0.4%。膵造影不良の範囲が広くなると臓器不全と多臓器不全の罹患率および致命率は有意に上昇した。結論)発症48時間以内に施行された造影CTの膵造影不良所見は予後予測に有用な所見と考えられた。
  • 片橋 一人, 落合 秀人, 村上 智洋, 神藤 修, 宇野 彰晋, 深澤 貴子, 松本 圭五, 伊藤 靖, 鈴木 昌八
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1265-1268
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    平成20年4月から平成23年3月までの3年間に当院で緊急・準緊急手術が施行された小腸嵌頓ヘルニア35例(鼠径13例,大腿10例,閉鎖孔8例,大網裂孔2例,腹壁瘢痕1例,傍十二指腸1例)について,腸切除群15例と非切除群20例にわけて臨床所見および画像所見を比較検討した。発症から治療までの期間,入院期間,血液検査所見等は腸切除群と非切除群の間に明らかな統計学的有意差を認めなかったが,CT検査での嵌頓腸管のイレウス像は,有意差をもって腸切除群が多かった。小腸陥頓ヘルニアにおける腸管障害の評価には,造影CT検査が有用である。
症例報告
  • 蒲池 健一, 小澤 壯治, 林 勉, 數野 暁人, 伊東 英輔, 三朝 博仁, 千野 修
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1269-1274
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    患者は68歳,女性。心窩部痛を主訴に前医を受診し,精査の結果,胃癌の診断で当院を紹介受診した。栄養管理目的での入院加療中に突然吐血し出血性ショックとなった。初期輸液療法もショックから離脱できず外科的止血目的に緊急開腹手術を施行した。腫瘍は周囲のリンパ節と一塊となり膵頭部と胃十二指腸動脈に直接浸潤し,十二指腸内へ出血していた。出血をコントロールした後に膵頭部との剥離を行ったが腫瘍のみの切除は不可能であったため緊急膵頭十二指腸切除術を施行した。切除検体の病理組織学的診断はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫であり臨床病期はLugano分類のstageⅡ1E(pancreas)となった。術後は縫合不全から膵液瘻となったが保存的治療で軽快した。第41病日に化学療法施行目的に血液内科転科となった。外科的治療は胃悪性リンパ腫の第1選択ではないが本症例のように救命目的のための手術は今後も必要とされる。
  • 佐藤 孝幸, 磯谷 栄二, 中川 隆雄, 仁科 雅良, 須賀 弘泰, 増田 崇光, 堀江 良彰
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1275-1279
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    転移性膵腫瘍は比較的まれな疾患である。われわれは出血性ショックを伴う後腹膜血腫から発見され,診断された甲状腺乳頭癌膵転移を経験したので報告する。症例は39歳,男性である。10年前に甲状腺乳頭癌にて甲状腺亜全摘の既往があり,出血性ショックにて紹介受診となった。CT検査にて後腹膜血腫を認めたため,緊急経カテーテル的動脈塞栓術(Transcatheter arterial embolization:TAE)施行,脾動脈からの出血が認識され,一時止血された。しかし,その後再度血圧低下がみられたため,緊急手術となり,腫瘍内からの出血を認めた。病理組織学的検査より,甲状腺乳頭癌の膵転移と診断された。長期経過例であっても甲状腺乳頭癌においては膵臓への遠隔転移の可能性があり,さらには転移性膵腫瘍の診断,治療にあたっては原発巣の特徴を見据えることが重要であると考えられた。
  • 添田 暢俊, 齋藤 拓朗, 竹重 俊幸, 五十畑 則之, 遠藤 俊吾, 冨樫 一智, 三潴 忠道, 後藤 満一
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1281-1284
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性。既往歴:84歳にANCA関連腎炎。現病歴:早朝,下腹部痛を主訴として救急搬送された。来院時ショック状態でCTにて骨盤内に腹腔内遊離ガス像を認めた。下部消化管穿孔による敗血症性ショックと診断し,緊急手術を施行。S状結腸の穿孔部を縫合閉鎖し人工肛門を造設した。術後は急性循環不全・呼吸不全に対し,昇圧剤投与,人工呼吸管理,好中球エラスターゼ阻害薬投与と血液浄化療法(PMX─DHP+CHDF)などを要した。術後2日目から全身浮腫と胸水貯留を伴う急性肺障害を認め利尿剤を併用したが,全身浮腫と呼吸状態は増悪した。そこで手足温,自汗,微熱,脈はやや沈で緊張が良い等の所見から五苓散を煎薬として経鼻胃管より投与したところ,全身浮腫と呼吸状態が速やかに改善し,術後4日目に人工呼吸器を離脱し得た。五苓散は腹膜炎術後の難治性全身浮腫と急性肺障害に対する新たな治療の選択肢の一つになりうる可能性がある。
  • 呉林 秀崇, 木村 俊久, 小畑 真介, 佐藤 嘉紀, 竹内 一雄, 山口 明夫
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1285-1288
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で,原因不明の急性腹症にて当院救急外来に紹介された。当院での問診にて,エアーブロワーによる経肛門的な高圧空気注入後からの腹部症状と判明した。来院時の腹部理学所見では腹部は全体に膨満し,腹膜刺激症状を認めた。腹部X線検査およびCT検査では遊離ガス像および小腸から全大腸におよぶ腸管拡張を認めた。また下部消化管内視鏡検査において,S状結腸粘膜は断裂し,数条の縦走潰瘍様所見を認めた。消化管穿孔および汎発性腹膜炎の診断で,緊急開腹手術を施行した。手術所見では,直腸S状部,S状結腸,脾弯部,肝弯部に漿膜損傷を認め,特にS状結腸部には腸管壁全層に及ぶ壊死所見を認めた。拡大左半結腸切除術およびdiverting ileostomyを施行し,術後39日目に退院した。経肛門的高圧空気注入による結腸損傷は極めてまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 髙木 格, 藤井 康
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1289-1293
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアの嵌頓は比較的まれで,緊急開腹術が施行されることが多いが,最近用手的整復を行った報告例が増加している。今回われわれは用手的整復が可能であった本症の3例を経験した。症例は98歳2例,84歳1例の女性でいずれも発症後48時間以上経過し,腸閉塞状態となっていたが,CT所見と局所理学的所見により嵌頓腸管の壊死の可能性は低いと考え,用手的整復を行い良好な経過を得た。本疾患は発症24時間以内に診断されれば,ほぼ安全に整復可能であるが,24時間以上経過し腸閉塞状態を呈しても画像所見,理学的所見で炎症が軽度で発症後72時間までの症例ならば整復を試みてよいと思われた。整復に際しては大腿を外旋,外転,屈曲位とすることが重要で,この体位をとることにより1例は直視下に,2例は触診にて脱出腸管の膨隆を確認し長内転筋の外背側から閉鎖孔方向に垂直に圧迫することが可能であった。
  • 川嶋 秀治, 上田 健太郎, 國立 晃成, 川副 友, 山添 真志, 岩崎 安博, 米満 尚史, 加藤 正哉
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1295-1299
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性,脳性麻痺のため元々意思疎通が困難であったが,麻痺性イレウスの状態で当院を救急受診し,イレウス管にて保存的加療した。入院後に症状改善し,第4病日イレウス管造影で小腸ガスは消失し,イレウス管の先端は上行結腸まで進行していた。第5病日イレウス管の排液が血性となり,DICを呈したため,造影CTを施行したところ小腸壁の異常肥厚と腸管壁内ガス像を認め,腸管壊死を伴う腸重積と診断して緊急手術を施行した。空腸に約50cmの腸重積を認め整復した後,Treitz靱帯から連続性に壊死した空腸140cmを切除して,術後に集中治療を行ったが,DICが進行して第31病日に死亡した。切除腸管には腸重積の先進部となるような腫瘍性病変はなく,イレウス管が原因で発症し,急速に進行したまれな腸重積症と診断した。
  • 菊池 大和, 櫻井 嘉彦, 徳田 祟利
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1301-1304
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性。慢性腎不全のため,他院で血液維持透析を施行していた。透析中に突然熱発と右下腹部痛が出現し,症状持続するため当院に救急搬送された。腹部単純CTで上腹部にfree airと腹水を認め,腹膜刺激症状も認めたため緊急手術を施行した。Treitz靭帯から肛門側約130cmの部位に穿孔部位を認め,小腸部分切除を施行した。術後さまざまな合併症を繰り返し93日目に全身状態が改善せず永眠された。術後の病理結果では,小腸T細胞性悪性リンパ腫と診断された。小腸原発悪性リンパ腫は,全消化管悪性腫瘍のうちで0.5%と比較的まれな疾患であるが,その多くはB細胞性であり,T細胞性のものは極めてまれである。さらに本疾患は化学療法も奏功せず極めて予後不良であり,本疾患の報告例の蓄積が望まれる。
  • 田崎 達也, 日野 裕史, 金廣 哲也, 山岡 裕明, 市川 徹
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1305-1309
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性。5日間続く38℃台の発熱と腹痛のため当院を受診した。下腹部の広範囲に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認められなかった。右鼠径部に用手還納不能な鶏卵大の腫瘤を認めた。血液検査でWBC 12,800/μL,CRP 36.31mg/dLと異常高値を認めた。腹部CTで,広範囲の大網が高吸収域からなる層状構造を示し,右鼠径管に連続していることが確認できた。右鼠径ヘルニアによる続発性大網捻転症を疑い,入院翌日に手術を行った。下腹部正中切開で開腹したところ,捻転により広範囲に血行障害に陥った大網を認め,先端が右鼠径部に連続し,嵌頓していた。大網を還納し,捻転の頭側で大網を切除した。鼠径ヘルニアに対しては内鼠径輪縫縮のみを行い,術後19日目に改めてメッシュプラグ法で鼠径ヘルニア根治術を行った。腹痛を主訴とする鼠径ヘルニアにおいて,本疾患も念頭におく必要があり,診断にはCT検査が有用であった。
  • 東 勇気, 木下 淳, 尾山 勝信, 中川原 寿俊, 田島 秀浩, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 太田 哲生
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1311-1314
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性。D2郭清を伴う幽門側胃切除術の1ヵ月後に,右季肋部痛を主訴に救急外来を受診した。急性胆囊炎と診断し,開腹胆囊摘出術を施行した。切除標本では胆囊結石を認めず,胆囊壁は壊死に陥っていた。急性無石胆囊炎は発症が急激で,胆囊壊死や胆囊穿孔を伴う場合極めて重篤な転帰をとり,予後不良とされる。発症原因はさまざま報告されており,外科手術も原因の一つとされているが,術後早期に発症した無石胆囊炎の報告は少ない。また本症例では,炎症が高度であり,安全に手術を遂行するために胆囊粘膜破壊術を選択し,良好な経過をえた。高度な炎症を伴う胆囊炎に対して胆囊粘膜破壊術は安全に行える術式と考えられる。
  • 小倉 淳司, 井上 昌也, 岡田 禎人, 林 英司
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1315-1318
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は89歳,女性。以前より巨大胆石を指摘されていたが高齢であるため経過観察されていた。突然の嘔吐を主訴に救急外来受診。腹部CTで40mm大の結石が十二指腸球部に嵌頓しイレウスとなっていた。上部消化管内視鏡検査では十二指腸球部に嵌頓した巨大胆石を認め,内視鏡的截石術は困難であった。上部消化管造影では,胆囊十二指腸瘻を認めた。胆囊十二指腸瘻を通過した胆石が十二指腸球部に嵌頓したBouveret 症候群と診断した。第8病日,開腹的に経胃的截石術を施行し,胃体中部で大弯側より割を入れてBillrothⅡ法式に空置的胃空腸吻合術を行った。瘻孔閉鎖や胆囊摘出は施行しなかった。Bouveret症候群は非常にまれな疾患で高齢者に発症することが多く,治療法の選択に悩まされる。本症例は低侵襲を優先した空置的胃空腸吻合術のみに留めた。現在術後合併症を認めていない。若干の文献的考察を加え報告する。
  • 阪田 麻裕, 東 幸宏, 丸尾 啓敏
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1319-1322
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性。2008年頃より左大腿部痛と痺れがあり,近医整形外科で坐骨神経痛と診断されていた。2011年に上腹部痛と腹部膨満感が出現,他院を受診,CTで左閉鎖孔ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断,手術目的で当院紹介受診,緊急手術となった。開腹所見で,回盲弁より約50cm口側の回腸が左閉鎖孔に嵌頓,Richter型であり腸切除は要しなかった。preperitoneal approachでポリプロピレンメッシュを用いヘルニア根治術を行った。術後大腿部痛と痺れは消失,経過良好で12病日退院となった。閉鎖孔ヘルニアの典型的症状の1つに大腿内側に痛みが生じるHowship─Romberg signがあるが,本症例では大腿外側から背側にかけての痛みを術前に認め,術後に軽快したことが特徴的であった。閉鎖孔ヘルニアは整形外科的疾患と診断されがちな大腿部痛を初発症状とする症例もあり注意が必要である。
  • 小原 恵, 小野 文徳, 平賀 雅樹, 佐藤 学
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1323-1326
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性。土木業。20歳のときに胃十二指腸潰瘍で胃切除術を受けた既往がある。作業中に転倒した際,腹部に鉄筋が刺さって受傷し,当院に救急搬送された。来院時,意識は清明だが痛みのため座位しかとれなかった。腹部単純X線写真で鉄筋が明らかに腹腔内に貫通していることを確認したが,体位の問題などからCT検査は施行せず,救急外来から直接手術室に移動させて緊急手術を施行した。鉄筋は腹壁,横行結腸間膜,網囊,残胃後壁を貫通していた。開腹手術の既往により上腹部の癒着が高度で残胃の修復が困難であり,鉄筋の刺入ルートに沿ったドレナージを施行した。また,術後第1病日に左血気胸が判明し,胸腔ドレーンを留置した。術後第7病日に上部消化管造影を行い,穿孔部の閉鎖を確認して食事摂取を開始した。術後経過は良好であり,術後第20病日に退院した。状況に応じて適切な判断が求められる症例であり,文献的考察を加えて報告する。
  • 近藤 優, 森 美樹, 宮本 康二
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1327-1330
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例1は77歳,男性で吐気・腹部違和感が出現し当院を受診した。腹部単純CTで門脈ガス血症と診断し外来で経過観察した。2週間後のCTでは門脈内のガスは消失していた。症例2は89歳男性で腹痛・食欲不振で当院受診し,精査にて便秘による門脈ガス血症と診断し入院加療となった。入院後は排便にて腹痛は軽快し,第4病日のCTでは門脈内のガス像は消失した。症例3は91歳女性で嘔吐・下血・意識障害で当院受診した。腹部造影CTで小腸壁内ガス像・門脈ガス血症を認めた。精査で腸管壊死ではないと判断し入院加療となった。第3病日のCTでは小腸壁内ガス像・門脈内ガス像は消失した。門脈ガス血症は腸管壊死を伴った場合は予後不良な病態とされており早期手術が必要となるが,腸管壊死を伴わず保存的治療で軽快する症例報告が近年散見されるようになった。今回われわれは保存的加療にて改善した3症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 川井 廉之, 北岡 寛教, 関 匡彦, 福島 英賢, 瓜園 泰之, 畑 倫明, 奥地 一夫
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1331-1334
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    外傷性腸間膜損傷の手術を行う際,血腫によって損傷血管の同定は困難である。今回われわれは術前にマイクロカテーテルを損傷血管の中枢側に留置し,術中に色素を動注することで損傷部位の確認を行い得た症例を経験したので報告する。症例は32歳男性。高所からの転落のため当センターに搬送され,腸間膜損傷と右下肢の血流障害が疑われ血管造影検査を行った。回腸動脈に多発する仮性動脈瘤が認められ,コイルを用いて塞栓術を行った。腸管虚血の可能性があり引き続き手術を行った。術中に血管損傷部位の中枢側に留置したマイクロカテーテルから,色素を動注すると,腸間膜と小腸が区域性に青緑色に染色され損傷血管の支配領域を容易に確認でき,血腫全体の切除を目的とした腸管切除範囲と比較し切除範囲を縮小し得た。腸間膜損傷に対して,マイクロカテーテルからの色素動注は,損傷部位の確認と腸管切除範囲の縮小に有用と考えられた。
  • 福田 直人, 仁木 径雄, 佐野 允哉, 小倉 礼那, 和田 浄史
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1335-1339
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性。頻回の嘔気,嘔吐症状を主訴に当院緊急外来受診。腹部CT検査にてupside down stomach型の巨大食道裂孔ヘルニアと診断し,緊急入院となった。胃内視鏡検査ではグレードDのGERDを認めた。当初,保存的治療を行った後に食道裂孔ヘルニア修復術+Nissen噴門形成術を施行した。食道裂孔部は4×3cm大に開大していたため,メッシュを用いて閉鎖した。また胃底部横隔膜下縫合法による胃固定術も附加した。術後経過は順調で15日目に軽快退院となった。術後6ヵ月以上経過した現在,再発なく経過順調である。Upside down stomach型食道裂孔ヘルニアは比較的まれな疾患であるが,急性例では重篤な病態になり得る。早期診断と再発率の少ない確実な手術手技が必要であると考えられた。
  • 八木 康道, 伊井 徹
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1341-1344
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性。右下腹部痛を主訴に当院を受診した。右下腹部に限局して腹膜刺激症状を認めた。腹部CTにて回腸に約1cmの高吸収の線状陰影と周囲の脂肪濃度上昇を認めた。腹水やfree airは認められず,魚骨による小腸穿通および限局性腹膜炎と診断した。絶食と抗生物質による保存的治療を行った。腹痛および腹部所見の改善を認め,入院後第5病日のCTで魚骨が上行結腸へ移動したことを確認し経口摂取開始となった。第11病日のCTでは魚骨は体内には確認されず,体外に排出されたと考えられ退院となった。魚骨による小腸穿通には,保存的治療が奏効し魚骨が体外に排出される症例も存在し,その診断や経時的な経過観察においてCTが非常に有用であった。
  • 武田 泰裕, 藤田 明彦, 羽生 信義, 矢永 勝彦
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1345-1348
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性。著明な腹部膨隆を認め,他施設より救急搬送された。腹部は緊満し,下腹部に軽度の圧痛を認めた。腹部X線検査,および腹部CT検査にて腹腔内に多量の遊離ガス像および小腸壁内に広範な気腫像を認めた。間質性肺炎に対し,ステロイド内服中であり腸管囊胞様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:以下,PCI)を疑ったが,穿孔性腹膜炎を鑑別すべく審査腹腔鏡を施行した。腹腔内を観察すると小腸及び小腸間膜のほぼ全域にわたって泡沫状の気腫像を認めたが,壊死や腹膜炎を疑う所見はみられずPCIと診断した。術後経過は問題なく術後11日目に退院となった。本症例の診断,治療に審査腹腔鏡が有用であった。
  • 戸口 景介, 平林 邦昭, 硲野 孝治, 吉川 健治, 山口 拓也, 平賀 俊, 今井 稔
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1349-1353
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性。急激な腹痛および嘔気を認め当院に搬送された。腹部造影CTにて腹水および腸管壁内気腫を伴う絞扼性イレウスが疑われた。腹腔鏡下で観察後に開腹手術を施行した。盲端となる腸管が回腸を絞扼しており,さらに結節を形成していた。結節を解除したが腸管は壊死に陥っていたため腸管切除を必要とした。再建は単々吻合で行った。切除した回腸は約75cmの長さで吻合部は回腸末端から約10cmの部位であった。切除した回腸の肛門側から約45cmの部位で腸間膜対側に長さ12cmで先端が囊状になった腸管を認めメッケル憩室と診断した。絞扼性イレウスの原因は,メッケル憩室が結節を形成し回腸を絞扼していたためと診断した。開腹手術の際にまれに無症候性のメッケル憩室を認める場合があるが,その際切除すべきかどうかは定まった基準はない。しかし,このような特異的な形状のメッケル憩室は切除すべきであると思われた。
  • 山本 希治, 川元 俊二, 武野 慎祐, 乗富 智明, 星野 誠一郎, 山下 裕一
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1355-1358
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    Non-occlusive mesenteric ischemia(以下,NOMI)は救命率20%と低く予後不良の疾患である。症例は68歳男性,食後の突然の腹痛で当院へ救急搬送された。来院時施行した腹部造影CT検査で門脈内ガス像を認め,急性腸管壊死を疑い緊急手術を行った。手術所見では回腸末端から上行結腸にかけて非連続性の腸管壊死がありNOMIと診断した。右半結腸切除術を行い術後経過は良好であったが,術後19日目にNOMIを再発し,緊急再手術となった。手術所見は残存腸管の非連続性の腸管壊死を広範囲に認め,小腸大量切除,結腸部分切除,空腸瘻造設術を施行した。約3ヵ月後に空腸結腸再吻合術,胃瘻造設術を施行,術後短腸症候群に関して全身管理を行った。2度のNOMIの手術を行い短腸症候群となったが術後栄養管理を行い救命しえた症例である。現在術後5年,経過良好である。
  • 入村 雄也, 佐々木 邦明, 川村 武
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1359-1361
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌は,腸閉塞症状を伴うため適切なタイミングで治療を要する病態である。できれば術前の減圧を図り,一期的に手術を行うことが望ましい。腸閉塞症状の改善により腹腔鏡による根治術が可能であったとの報告もされているが,減圧困難で全身状態の不良な場合には,緊急で人工肛門造設術を行わなければならない症例もある。今回,緊急人工肛門造設術後に,腹腔鏡下で根治術を施行し得た2例を経験した。減圧後の根治術の際に術野の妨げにならないよう人工肛門造設部を工夫したことによって,腹腔鏡下で手術を施行することは可能であった。
  • 小久保 健太郎, 林 昌俊, 栃井 航也
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1363-1365
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性で,1年前に左大腿ヘルニアに対し腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行されていた。2012年4月,左鼠径部の腫脹・疼痛を自覚した。来院時,左鼠径部が鶏卵大に腫大し,腹部CT検査で左大腿部に軟部組織陰影を認めたため再発左大腿ヘルニア嵌頓と診断し,腹腔鏡併用大腿法でヘルニア修復術を施行した。腹腔内を観察すると嵌頓は解除されていた。併存病変・対側病変のないことを確認した。次に大腿法で大腿輪から脱出したヘルニア囊を明らかにした。再度気腹し腸管性状を観察し,嵌頓していた腸管の色調が良好であったため腸切除は不要と考え,大腿部よりMesh PlugⓇを用いて修復した。術後経過は良好で第7病日に退院した。 大腿ヘルニア嵌頓に対する腹腔鏡併用大腿法は,嵌頓腸管の血流障害の有無を確認でき,鼠径管内容物を破壊することなくヘルニアの修復が可能で,腹腔鏡下手術後の再発症例に有用であると考えられた。
  • 神山 博彦, 市川 亮介, 有馬 秀英, 杉山 祐之, 武井 雅彦, 行方 浩二, 津村 秀憲, 松本 文夫
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1367-1371
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性,胃癌と術後イレウスの既往がある。腹痛にて腸閉塞の診断で前医に入院した。胃管による減圧療法で症状は改善したが3日後に40℃の発熱と血圧の低下があり当院に搬送された。血圧は75/49mmHgでショックとDICを呈しており,ただちにショックとDICに対する治療を開始した。翌日,血圧は上昇せずDICも治療に反応しなかった。画像上診断困難な絞扼性イレウスがショック,DICの原因と考えられたため試験開腹術を行ったが,その所見はなく癒着剥離術を施行した。入院時の血液培養から腸内細菌であるKlebsiella oxytocaが検出されたためBacterial translocationによる敗血症性ショックが強く疑われた。術後経過は良好で第17病日に退院した。本症例のようにBacterial translocationは軽度のイレウスやイレウス治療の初期に起こるもあり注意が必要と思われた。
  • 岡村 明彦, 川久保 博文, 竹内 裕也, 中村 理恵子, 高橋 常浩, 和田 則仁, 才川 義朗, 大森 泰, 北川 雄光
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1373-1376
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性。側弯症術後。自宅療養中に呼吸困難・発熱を認め,当院を受診した。左膿胸の診断にて,胸腔ドレーンを挿入したところ,混濁した褐色調の胸水を排液した。ドレナージと抗生剤投与にて治療中,胸腔ドレーンより食物残渣を認めた。上部消化管内視鏡検査にて胃穹窿部の潰瘍性病変と中心の穿孔部を認め,上部消化管造影検査では胸腔内漏出を認めたため,胃潰瘍穿孔による胃胸腔瘻と診断した。経胸腔経瘻孔的に胃内にドレーンを留置した上で胸腔ドレナージを継続した。また内視鏡的に胃瘻造設後に経胃瘻的空腸チューブを留置し栄養管理を行った。その結果,炎症所見は改善し膿胸腔は縮小した。最終的には経胸腔経瘻孔的ドレーンを抜去し,瘻孔を閉鎖することが可能であった。胃胸腔瘻を形成した胃潰瘍症例はまれであり,報告も少ない。今回胃潰瘍穿孔による胃胸腔瘻の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
  • 勝田 美和子, 真々田 裕宏, 宮下 正夫, 内田 英二
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1377-1380
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性。サッカーボールが腹部にあたり,腹痛と嘔気が出現したため,同日近医を受診。腹部CT検査にて腹腔内出血および肝腫瘍が疑われ,当院へ紹介入院となった。腹部造影CT検査にて血性腹水および肝外性に発育する7cm大の多血性肝腫瘍を認めた。腫瘍の被膜様構造が一部不連続に観察され,ここからの出血が疑われた。腫瘍内部は低吸収域で,造影早期より濃染した。血管造影検査を施行したがすでに自然止血していたため,動脈塞栓術は施行しなかった。受傷4週間後に肝腫瘍切除術を施行した。肝腫瘍は有茎性で,肝実質(内側区域)と茎状の流入出血管のみで連続していた。腫瘍は病理組織学的検査にて肝血管筋脂肪腫と診断された。腫瘍の形状と発症様式が稀少な症例と考えられ,報告した。
  • 林谷 康生, 栗栖 佳宏, 赤木 真治, 田中 智子
    2013 年 33 巻 8 号 p. 1381-1384
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/07/02
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性。下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。右下腹部に圧痛と筋性防御があり,MDCTで小腸と連続する盲端の腸管様構造物とその周囲の脂肪織濃度の上昇と腹水を認め,Meckel憩室穿孔による汎発性腹膜炎と診断して緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内には混濁した腹水が貯留し,回腸末端から80cm口側に発赤,腫大したMeckel憩室を認めたため憩室切除を行った。病理組織学的には異所性胃粘膜を有する憩室で,小腸粘膜との境界部に潰瘍を形成し穿孔していた。Meckel憩室の診断には小腸造影やTcシンチグラフィーなどの特殊な検査が必要と考えられてきたが,2007年以降MDCTで診断されたMeckel憩室の報告が散見される。Meckel憩室はMDCTで盲端の腸管様構造物,blind-ending pouchとして描出され,急性腹症の診療においてこの特徴的な所見を見落としてはならない。
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