日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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34 巻, 1 号
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原著
  • 淺井 哲, 佐々成 太郎, 藤本 直己, 一ノ名 巧, 赤峰 瑛介, 田上 光治郎, 南原 幹男, 城田 哲哉, 小川 淳宏
    2014 年 34 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    2013年3月にTG13が発行されたが,それまで当院では胆管炎に対し第1版(JGL)に沿って診療を行ってきた。2008年9月から2012年の12月までの総胆管結石性胆管炎202例について検討した。JGLでは軽症/中等症/重症=28.2%/62.4%/9.4%であったが,TG13では軽症/中等症/重症=48.5%/42.1%/9.4%と中等症の割合が減っていた。中等症の緊急ドレナージ率は基準2項目以下と3項目以上でそれぞれ28.9%,58.3%と有意差を認めた(p<0.05)。重症例で菌血症以外の項目を満たす11例全例に緊急ドレナージが施行されていた。緊急ERCPの50.0%で一期的截石が施行されていた。生存率は98.5%,ERCP偶発症は6.4%でありJGLを遵守した安全な治療がなされていた。菌血症以外の項目を満たす重症例や3項目以上を満たす中等症例に対しては緊急ドレナージが必須である。
  • 高橋 哲也, 竹本 正明
    2014 年 34 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:IVRを施行された肝損傷の特徴を検討すること。対象と方法:2007年4月1日から2012年9月30日の当院での肝損傷症例を対象とし,急性期出血に対するTAEおよび後期合併症に対してIVRを施行された症例の特徴を後方視的に調査した。結果:肝損傷は43例で,損傷分類はⅠa型1例,Ⅰb型16例,Ⅱ型2例,Ⅲa型20例,Ⅲb型4例であった。急性期出血に対するTAEは9例に施行され,下大静脈損傷を合併していた1例に手術を併用した。急性期死亡はPs0.5未満の2例であった。後期合併症ではbiloma2例にエコーガイド下経皮的ドレナージ,胆汁漏2例にエコーガイド下経皮的ドレナージ後に手術,肝膿瘍1例に経皮的ドレナージ,仮性動脈瘤1例にTAEが施行された。結論:肝損傷に対するIVRは循環の安定した急性期動脈性出血と後期合併症のbiloma,肝膿瘍と仮性動脈瘤に有効であった。
  • 桑原 公亀, 石橋 敬一郎, 馬場 裕之, 隈元 謙介, 熊谷 洋一, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    2014 年 34 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    大腸穿孔128例を70歳以上(n=58)と70歳未満(n=70)の2群に分け,高齢者大腸穿孔の臨床的特徴を比較検討した。また,ロジスティック回帰分析による多変量解析を行い,在院死に与える因子を同定した。背景因子は,70歳以上の方が手術時間が短かったが(p=0.01),その他の因子は両群間で差を認めなかった。70歳以上では第1病日のsevere sepsis/septic shockの頻度が高く(p<0.01),SOFAスコアが有意に高く(p=0.02),在院死の頻度が高かった(p=0.03)。在院死に与える多変量解析では,70歳以上(p=0.02),ASA 3以上(p<0.01),発症から24時間以上(p<0.01),術前septic shock(p<0.01)が独立危険因子であった。高齢であること自体が予後因子になることを銘記して周術期管理を行う必要がある。
  • 秦 史壯, 西森 英史, 岡田 邦明, 山田 真美, 平間 知美, 池田 慎一郎, 矢嶋 知己
    2014 年 34 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    当院で手術を施行した鼠径部ヘルニア嵌頓症例を検討し,診断と治療法を考察したので報告する。2008年1月から2013年2月までに当院で手術を施行した鼠径部ヘルニア182例のうち嵌頓例は22例(12.1%)であった。外鼠径ヘルニア7例,大腿ヘルニア9例,閉鎖孔ヘルニア6例で,初診時にヘルニア嵌頓と診断された例は18例であった。徒手整復や自然整復された7例は待機手術となり,11例が緊急手術となった。一方,鼠径部への注意不足でヘルニア嵌頓と診断されなかった4例は,原因不明イレウスとしてHBO(Hyperbaric oxygen therapy:高気圧酸素療法)が施行された(待機手術)。術式は待機手術11例と緊急手術7例の18例がKugel法であった。急性腹症患者に遭遇した際,診察医はヘルニア嵌頓も念頭におき,身体的所見やCT画像所見で鼠径部近傍を確認することが肝要であると考えられた。
  • 呉林 秀崇, 五井 孝憲, 小練 研司, 澤井 利次, 森川 充洋, 村上 真, 廣野 靖夫, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
    2014 年 34 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈塞栓症は急速に全身状態を悪化させる予後不良な急性腹症であり,大量腸管切除術を要した場合,短腸症候群を呈しquality of lifeを低下させる。2006年1月から2012年12月までに外科治療を行った上腸間膜動脈塞栓症10例を対象として治療成績について検討を行った。9例は術前のmultidetector raw computed tomography(MDCT)にて上腸間膜動脈塞栓症と診断した。全例で緊急手術を行い,腸管大量切除術が必要となったのは2例,小腸部分切除術を施行したのが1例,7例は塞栓除去術を施行した。原病死例は認めなかった。大量腸切除例1例では短腸症候群を呈し,継続的な経静脈栄養を必要とした。MDCTによる診断技術の向上により,早期発見や精度の高い診断が可能であった。積極的な外科的治療で腸管温存が可能となり,良好な結果を得ることができた。
  • ―開腹法と比較して―
    橋詰 直樹, 寺倉 宏嗣, 吉元 和彦, 八木 実
    2014 年 34 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    【目的】小児急性虫垂炎に対して,当科における腹腔鏡下虫垂切除術(以下,LA)と開腹虫垂切除術(以下,OA)の手術成績と合併症を比較し,標準術式とした場合の有効性を検討した。【方法】15歳以下の小児例でOA群130例とLA群121例を対象とした。全例および肉眼的に壊疽・穿孔をきたした急性虫垂炎にLAとOAとの比較検討を行った。検討項目は術前白血球,術前CRP,手術時間,術後食事摂取開始日数,在院日数,術後早期合併症として創感染,術後腹腔内膿瘍,術後腸閉塞とした。【結果】手術時間は全例および壊疽・穿孔虫垂炎でLAが有意に長かった。術後食事摂取開始日数,在院日数,術後早期合併症の発症率は有意差を認めなかった。【結論】標準術式としてLAを施行する場合はOAと比較して長時間となるがLAはOAと同様な治療成績であり,標準術式として施行することが可能であると考えられた。
特集:腹部救急治療としてのヘルニアの診断と治療
  • 内藤 稔, 岡田 晃一郎, 難波 圭, 山本 治慎, 照田 翔馬, 徳毛 誠樹, 柿下 大一, 森 秀暁, 秋山 一郎, 國末 浩範, 太田 ...
    2014 年 34 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    腹部救急領域において鼠径部ヘルニア嵌頓にともなう腸閉塞はしばしば遭遇する病態である。手術既往のない腸閉塞を認めた場合には,ヘルニアの嵌頓を念頭において診察する。そして可能な限りCT検査を行う。単純で行うが,腎機能が保たれており腸管の循環障害を疑う際には造影CT検査を行う。われわれは,冠状断像を多用している。ヘルニア嵌頓の診断がつけば緊急手術となる。鼠径部ヘルニア嵌頓症例は,全身麻酔下に行うことを原則に行い,最近では腹腔鏡観察下に手術を開始している。腸管の穿孔がなく血流の改善が確認されればそのまま前方から腹膜損傷をしないようにメッシュを用いた根治術を行う。穿孔し腹膜炎になっている場合や閉鎖孔ヘルニアで嵌頓解除時に穿孔した場合などは,腸管切除と腹膜炎手術を優先し,二期的にヘルニア根治手術をメッシュを用いて行う。われわれの診断治療の方針を概略する。
  • ─鼠径部ヘルニア嵌頓について─
    田上 誉史, 坂東 儀昭, 三好 康敬, 尾方 信也, 豊田 剛
    2014 年 34 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    当院は,TAPP法を成人鼠径ヘルニアに対する第一選択とし,近年は,嵌頓症例においても積極的に腹腔鏡下手術を導入している。今回,自験例から腹部救急としての鼠径部嵌頓ヘルニアの診断と治療について検討した。(対象・方法)1995年から2012年までの期間で,初診診断が鼠径部嵌頓ヘルニアであった61例の臨床背景,病型,選択術式,予後をretrospectiveに検討をした。(結果)61例中16例は嵌頓ヘルニアの徒手整復後に待機的早期手術を施行した。45例は徒手整復不能なために緊急手術を行った。11例に腹腔鏡下手術を選択し,34例は前方アプローチ法による手術を行った。嵌頓ヘルニア症例の内訳は,Ⅰ型32例,Ⅲ型29例。男女比は男性31例,女性30例。平均年齢は70.7歳であった。脱出腸管の虚血,壊死の程度は,腹腔鏡所見が有用であり,鼠径部嵌頓ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は,安全に施行可能であった。
  • 間山 泰晃, 砂川 宏樹, 小倉 加奈子, 馬場 徳朗, 金城 章吾, 卸川 智文, 大城 直人
    2014 年 34 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    鼠径部ヘルニア嵌頓症例に対して指療法に影響を与えた因子を検討した。対象は2004年1月から2013年8月に当院で治療を行った鼠径部ヘルニア症例1,641症例(嵌頓症例63例)とした。症例を腸管切除群,腸管非切除群,待機手術群の3群に分けて後方視的に検討した。腸管切除群では他の群に比較し局所の所見が強く出る傾向にあった。血液検査所見では有意差のある所見は認めなかった。画像所見では腹水の有無が腸管切除群と待機群で有意差を認め,腸管拡張の有無も待機群と比較し多く認められる傾向にあった。局所の所見が強くかつ腹水,腸管拡張が認められる症例では腸管絞扼を強く疑うべきである。
  • 濱田 剛臣, 池田 拓人, 島山 俊夫, 田中 俊一, 塩月 裕範, 千々岩 一男
    2014 年 34 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    大腿ヘルニア嵌頓は高齢者で緊急手術の対象となることが多く,絞扼すると生命にも関わる。2003年1月から2011年9月までに当院で緊急手術を施行した大腿ヘルニア嵌頓症例47例をretrospectiveに検討し,非腸切除群と腸切除群に分類し,その臨床的特徴と予後不良因子を検討した。小腸が嵌頓していた42例(89%)のうち21例(44%)に腸切除が施行された。腸切除群は非腸切除群に比較し,イレウス症状が多く(p=0.01),手術に至る日数が長かった(p=0.01)。死亡例は4例(8.5%)で,軽快例に比較し,手術までの日数が長く,術前検査でTPの低値,CPK値,CRP値の有意な高値を認めた。多変量解析でCPK高値が独立した予後規定因子であった(p=0.0409)。大腿ヘルニア嵌頓による高齢者の腸管切除を回避し,死亡例を減少させるためには,早期診断と治療およびCPK高値に対する注意が重要である。
  • 三宅 邦智, 瀬下 明良, 板橋 道朗, 亀岡 信悟
    2014 年 34 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    鼠径部ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアは嵌頓により腸閉塞や腹膜炎をきたす疾患である。また今後高齢者社会において鼠径部ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは増加すると思われる。しかしながらヘルニア緊急手術においては腸閉塞,腸切除などの種々の問題があり,術式やメッシュの使用には一定の見解を得ていない。今回当科におけるヘルニア緊急手術時のKugel法について報告する。ヘルニア緊急手術でKugel法を6例に施行した。大腿,閉鎖孔ヘルニア症例は4例で平均年齢85.3歳(78~94歳),手術時間は平均76.6分(69~167分),出血量は平均5.5g(3~10g),術後在院日数は平均11.2日(6~17日),術後合併症はなく,再発症例も認めていない。高齢者が多い中Kugel法は低侵襲であり,問題なく行えた。ヘルニア緊急手術においてKugel法は汚染が高度でなく腹膜前腔の洗浄を十分に行えば有用な術式だと考えられた。
  • 山口 拓也, 城田 哲哉
    2014 年 34 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    【目的】当科における腸管切除術を要した鼠径部ヘルニア嵌頓症例に対するメッシュ使用の安全性につき報告する。【方法】2004年5月から2013年10月までに当科で施行した腸管切除術を要した鼠径部ヘルニア嵌頓18例を対象とし,手術術式を中心に検討した。当科では,腸管切除術を要した鼠径部ヘルニア嵌頓症例に対し,膿瘍症例,穿孔症例,大腸切除術を要した症例以外にはメッシュを用いたtension-free法を選択している。【結果】18例におけるヘルニア門の修復法はtension-free法11例(クーゲル法7例,メッシュプラグ法4例),従来法7例であった。メッシュ感染は全例で認めなかった。異なる皮膚切開創から腸管切除術を施行した症例は5例であった。【結論】腸管切除術を要する鼠径部嵌頓ヘルニアに対するメッシュの使用は,膿瘍や穿孔,大腸切除症例を除けば安全に施行できると思われた。
  • 中田 亮輔, 千原 直人, 鈴木 英之, 野村 聡, 村木 輝, 山岸 征嗣, 星野 有哉, 渡辺 昌則, 内田 英二
    2014 年 34 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    日々の診療において,鼠径ヘルニア嵌頓に度々遭遇する。われわれは徒手整復の行えなかった症例に対し,臍窩に留置したトロカールから腹腔鏡観察を行って治療方針を決定している。腹腔鏡を用いることで鼠径管の方向に沿った効果的な体外から圧迫が可能で,腸管の状態を確認し,愛護的に臓器を整復することができる。整復後に腸管損傷の有無,腹水の性状から腹腔内汚染度を判断し,治療方針を決定している。感染リスクを認めない場合にはTAPP法を施行し,腸管切除を要する場合には臍窩創を延長し体外で腸管切除,吻合を行っている。感染が危惧される場合には,後日二期的TAPP法を施行している。また,初診時に徒手整復された症例についても,偽還納や遅発穿孔の有無を確認するため,翌日,腹腔鏡観察で治療方針を決定している。鼠径ヘルニア嵌頓に対する腹腔鏡観察は治療方針の定型化に有用であると考えられた。
症例報告
  • 小倉 淳司, 岡田 禎人, 林 英司
    2014 年 34 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性。左下腹部痛に軽度圧痛と嘔吐を主訴として救急外来を受診した。小児期に完全内臓逆位の指摘を受けていた。血液検査で白血球・CRP値の上昇を認め,腹部CTで左下腹部に虫垂と思われる構造物の腫脹が認められた。完全内臓逆位症に合併した急性虫垂炎と診断し,保存加療目的に入院となった。腹部症状の改善を認めたが,本人の希望もあり,第4病日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術後経過は良好で術後第3病日に退院した。腹腔鏡下虫垂切除術は臓器の位置関係を容易に把握でき,さらに単孔式とすることで整容性に優れ,安全な術式になりうると考えられた。
  • 三宅 亮, 松山 純子, 寺坂 勇亮, 角原 敦夫, 松山 晋平, 三宅 昌, 柴田 信博
    2014 年 34 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は27歳男性。食事後の炭酸飲料水の“一気飲み”(約500mL)直後に,突然の上腹部痛が出現し,救急車で搬送来院した。胸腹部造影CT検査で縦郭気腫と上腹部の遊離ガスを認めた。上部消化管破裂が疑われたため,水溶性造影剤(ガストログラフィンⓇ)による上部消化管造影検査を行った。胃体上部小弯側から造影剤の流出を認め,特発性胃破裂と診断し緊急手術を行った。胃体上部小弯側に,裂創部を認め,裂創部周辺は虚血変化がなかったため,裂創部を2層に縫合閉鎖して腹腔洗浄ドレナージを行った。術後経過は良好で,術後12日目に歩行退院した。炭酸飲料水の“一気飲み”による胃破裂は,本邦での最初の報告である。
  • 久保 直樹
    2014 年 34 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性。虫垂炎の手術既往あり。右肺癌(癌性胸膜炎)に対し抗癌剤治療で入院中であった。2週間ほど前より腹痛を認めていたが腹部症状が強くなりCTを施行したところ,下行結腸に閉塞部を認めイレウスの診断で外科紹介となった。明らかな腫瘍性病変は認めず腸間膜内ヘルニアが疑われ緊急手術を施行した。術中所見では大網の索状物により下行結腸が絞扼されていた。腸管壊死は認めず索状物切除のみを施行した。術後4日目ごろより右季肋部と左側腹部痛を認めるようになった。さらに炎症反応高値を認めたため術後6日目にCTを施行したところ前回絞扼部の結腸穿孔による腹膜炎と壊疽性胆囊炎を認め再手術となった。左半結腸切除,腹腔内洗浄ドレナージ,横行結腸人工肛門造設術,胆囊摘出術を施行し再手術後49病日で退院となった。開腹術後の索状物による腸閉塞症は小腸がほとんどで,大腸はまれであり文献的考察を加え報告する。
  • 松波 昌寿, 草薙 洋, 北川 美智子, 深澤 基児, 加納 宣康
    2014 年 34 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性。2008年5月に他院で胆石症,急性胆囊炎に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行された。2012年6月に右腰部痛を主訴に当院を受診した。右腰部に約7cm大の圧痛を伴う発赤した腫瘤を触知した。腹部CT検査にて右外腹斜筋から広背筋,脊柱起立筋にかけての腹壁と右横隔膜下にも膿瘍を認めた。右腰部膿瘍に対しては切開排膿術を施行し,膿瘍腔には小結石を複数個認めた。右横隔膜下膿瘍に対しては抗生剤による加療を行ったが,膿瘍腔の縮小を認めなかった。エコーならびにCTガイド下に穿刺を試みるもドレナージが不十分であったため,切開排膿術を施行した。この膿瘍腔にも小結石を複数個認めた。結石分析では共に純コレステロール結石であった。術後経過は良好で第28病日に退院となった。術後1年が経過した現在,膿瘍の再燃は認めていない。
  • 伊藤 貴洋, 小出 泰平, 須崎 真
    2014 年 34 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性。交通事故にて腹部を打撲し,当院へ搬入された。下腹部にシートベルト痕,軽度の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。CTで異常所見は認めず自宅で経過観察となったが,受傷翌々日に前胸部痛の増悪があり,当院へ再受診した。胸部単純写真で腹腔内遊離ガスを指摘,CTでも腹腔内遊離ガスを認め当科紹介となり手術を行った。循環動態は安定しており,腹腔鏡にて観察したところ,Treitz靱帯より180cmの空腸に5mm大の穿孔 (日本外傷学会消化管損傷分類Ⅱa) を認めた。損傷部を結節縫合し洗浄ドレナージを行った。術後経過は良好で術後9日目に退院となった。外傷性小腸穿孔での腹腔鏡下手術の報告は少なく,文献的考察を含め報告する。
  • 佐藤 護, 向井 秀泰
    2014 年 34 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性。腹痛を主訴に前医を受診し,腹部造影CTで結腸間膜から後腹膜に存在する血腫内に膵十二指腸動脈の拡張を認めたが,造影剤の血管外漏出はなかった。加療目的に紹介受診となり,緊急血管造影を行いコイルによる塞栓術を施行し,病状は安定した。来院時,発熱と炎症反応の上昇を認め,入院時の血液培養では口腔内常在菌であるStreprococcus-anginosusが検出され,MEPMの投与を早期に開始した。初診時の約3日前よりう歯による左下顎痛,腫脹,熱感を認めていたため,う歯による下顎膿瘍からの全身性感染症による感染性動脈瘤と推測された。その後,血腫による十二指腸の通過障害をきたしたため,絶飲食,経鼻胃管挿入,TPNで保存的に加療したが,通過障害の軽快には長期間を要した。今回,われわれは,う歯による感染性動脈瘤が原因と考えられた膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する。
  • 松野 邦彦, 松谷 毅, 萩原 信敏, 野村 務, 内田 英二
    2014 年 34 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は,84歳の男性。貧血を主訴に来院し,精査にて胸部進行食道癌と診断した。既往歴は,78歳時に脳梗塞,心房細動,2型糖尿病であった。全身状態は比較的良好で手術を強く希望された。胸腔鏡下食道切除,開腹にて胃管作製し胸骨後経路で頸部食道胃管吻合術を施行した。術後第2病日に尿量減少,腎機能低下から持続的血液濾過透析療法を施行し,第3病日も継続して除水した。第4病日に軽度の腹痛を訴えたが,腹部X線検査から腸管運動の減弱と判断した。第5病日に不穏状態となり腹部CT検査を行い門脈ガス血症と腸管囊胞様気腫症を認め,代謝性アシドーシスが増悪したため,緊急開腹となった。術中所見では,回腸末端の口側90cmの小腸が非連続的に壊死していたが,上下腸間膜動脈の拍動は触知でき,壊死部腸管切除術を施行した。病理学的に非閉塞性腸間膜虚血症と診断した。術後は集中治療室にて集学的治療を行ったが,多臓器不全で死亡した。
  • 楯川 幸弘
    2014 年 34 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    腹腔内遊離ガスを認めるが,明らかな消化管穿孔を有しないもの,または原因の不明なものは特発性気腹症と報告されている。症例は,Cornelia de Lange syndromeの13歳,男児。嘔気,下痢,熱発により外来を受診した。感染性腸炎による腸閉塞と診断し入院した。入院後,腹部膨満が著明になりCT を施行し,腹腔内遊離ガス,縦隔気腫,皮下気種を認めた。穿孔性腹膜炎を疑い緊急手術を施行し,膿性腹水を認めたが,穿孔部位は明らかではなかった。術後遺残膿瘍が疑われ再開腹術を施行したが,膿性腹水を認めなかった。術後長期挿管管理となったため,気管切開を施行した。術後腸閉塞を併発し,保存的に経過観察した。しかし,症状は改善せず腸閉塞解除術を施行した。今回,術後治療に難渋した特発性気腹症,縦隔気腫,皮下気腫を呈したCornelia de Lange syndromeの1症例について報告した。
  • 宇野 能子, 中島 紳太郎, 阿南 匡, 衛藤 謙, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
    2014 年 34 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性で急激な腹痛を主訴に発症から2時間後に当院に搬送された。来院時,全腹部で腹膜刺激症状を認め,腹部造影CTで十二指腸水平脚の欠如と,右上腹部の前腎傍腔へ脱出する拡張腸管を有する囊状構造と上腸間膜静脈の左方移動を認めた。造影効果不良な小腸の広範な拡張も伴っており,右傍十二指腸ヘルニア嵌頓に合併した小腸軸捻転による絞扼性イレウスと診断して発症より5時間で緊急開腹術を行った。術中所見で下十二指腸窩をヘルニア門として空腸起始部より約50cm肛門側から90cmにわたる空腸が脱出しており,さらに小腸は約270度捻転していた。虚血に陥った範囲は嵌頓した小腸より肛門側190cmまでの全長260cmにわたっていた。壊死腸管を切除・吻合し,ヘルニア門を吸収糸で閉鎖して手術を終了した。以上,右傍十二指腸ヘルニア嵌頓と小腸軸捻転よる絞扼性イレウスの1手術例を経験したので報告する。
  • 神賀 貴大
    2014 年 34 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    今回われわれは肝転移からの腹腔内出血をきたした胃原発絨毛癌を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は83歳の男性で,間欠的な左下腹部痛を主訴に来院した。腹部造影CTにて肝外側区域および肝後区域に血管腫様の造影効果のある腫瘍と肝および脾周囲にCT値が100前後の腹水の貯留を認めた。肝血管腫の破裂による腹腔内出血と診断し,緊急手術を施行した。手術所見では肝外側区域の腫瘍表面の被膜が裂けて出血しており,肝部分切除術を施行した。切除標本は約8cm大の海綿状の腫瘍であり,病理検査で絨毛癌の診断となった。術後の上部消化管内視鏡で胃に2型腫瘍を認め,生検では多核異型細胞がhCG染色で陽性となる低分化腺癌であり,胃原発絨毛癌と診断した。肝腫瘍は胃原発絨毛癌の肝転移と診断した。術後に肝転移から再出血があり,TAEで止血した。肝転移が急激に増大するとともに全身状態が悪化し,術後第40病日に永眠した。
  • 川勝 章司, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 圭太郎, 前田 敦行, 高山 祐一
    2014 年 34 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で約5年前に出現した左鼠径部の腫脹の増大を主訴に当院を受診した。腹部超音波で左鼠径部に2ヵ所のヘルニア門を認め,頭側からは小腸と思われる腫瘤像が,尾側からは脂肪組織と思われる腫瘤像が脱出していた。内外鼠径ヘルニア合併の診断で手術を施行した。局所麻酔下に左内鼠径輪から恥骨方向に鼠径靭帯と平行に皮膚切開を加えた。続いて外腹斜筋腱膜を切開して鼠径管を開放すると下腹壁動静脈の内側から脱出する内鼠径ヘルニアを認めるとともに内腹斜筋腱膜を貫通して脱出するSpigelヘルニアを認めた。外鼠径ヘルニアは認めなかった。内鼠径ヘルニア,Spigelヘルニアともにメッシュプラグ法で修復した。Spigelヘルニアは比較的まれであり広く認知されているとは言い難い疾患であるが高齢化とともに増加が予想されている。術後の再発率は0.7%と低率であり,慎重に診断し治療を行うことが重要であると考えられた。
  • 和田 英雄, 吉田 一也, 藤井 敏之, 竹重 元寛
    2014 年 34 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の女性。腹痛と嘔吐を認め,当院を受診していたが,当初は胃炎と診断されていた。同日夜間に嘔吐を繰り返すようになったため,当院を再診し経過観察入院となり,翌日イレウスの診断で当科へ紹介となった。上腹部の圧痛と,高度の炎症反応を認め,腹痛は経時的に増悪していたため,絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を行った。開腹すると,虫垂の先端がループ状に回腸間膜に癒着しており,バウヒン弁から10cm口側の回腸係蹄が,10cmにわたって絞扼されていた。絞扼を解除すると,腸管の血流が改善したため,腸切除は行わず,虫垂切除術を施行した。虫垂の先端の癒着部は,病理組織学的にカタル性の急性虫垂炎と診断された。絞扼性イレウスは,外科医であれば臨床の現場でしばしば遭遇する疾患であるが,虫垂自体が絞扼帯になることはまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する。
  • ─本邦報告58例の検討─
    香川 哲也, 香川 幸子
    2014 年 34 巻 1 号 p. 147-151
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    当院で経験した妊娠中の絞扼性イレウス4例のうち2例を呈示する。症例1:34歳,妊娠29週,初妊婦。突然の上腹部痛・頻回嘔吐にて救急外来を受診した。糞便性イレウスの診断で入院したが,母体症状悪化に伴い胎児の高度遅発一過性徐脈が出現したため,緊急帝王切開を行った。回腸に壊死を認め切除した。児はNICUで加療したが軽快した。症例2:39歳,妊娠38週,経産婦。急激に発症した上腹部痛にて救急搬送された。腹部造影CT検査にてclosed loop型腸閉塞(紋扼性イレウス)と診断し,同時帝王切開にてイレウス解除術を行った。回腸が索状物に絞扼されていたが壊死には陥っていなかった。母児共に良好に経過した。本邦報告58例の文献的考察を加えて報告する。
  • 魚嶋 晴紀, 伊藤 亮治, 加藤 一郎, 賀古 眞
    2014 年 34 巻 1 号 p. 153-156
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性。7年前より常染色体優性多発性囊胞腎,多発性肝囊胞を指摘されていた。転倒し腹部を打撲した直後より,心窩部痛持続するため当院を受診した。腹部CT検査にて腹水貯留と肝囊胞被膜の断裂が認められ,外傷性肝囊胞破裂と診断した。腹膜刺激症状は認められず,保存的に外来観察としたが,翌日呼吸苦が出現し,胸部単純X線写真で右胸腔内に大量の胸水が認められた。肝囊胞内液の胸腔内流入と考え,経皮的に胸腔ドレーンを留置し排液した。その後胸水は消失し,入院第6日ドレーンを抜去した。入院第8日発熱と腹膜刺激症状が出現し,エコー検査で肝囊胞内にsludge echoが認められ,肝囊胞感染と診断した。抗菌薬投与と経皮的肝囊胞ドレナージ術を施行。術後は症状改善し,入院第42日軽快退院した。
  • 繁光 薫, 吉田 和弘, 浦上 淳, 羽井佐 実, 猶本 良夫
    2014 年 34 巻 1 号 p. 157-160
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は21歳時にWernicke脳症を発症し介護施設入所中の49歳,女性。誤嚥性肺炎で入院歴があり,2年前に急性胃拡張をきたし上腸間膜動脈症候群を指摘されたが,保存的に軽快していた。前日より腹部違和感を訴えていたが食事を続け,翌日嘔気・腹満・腹痛増強し救急車で来院。来院後急激に呼吸・意識状態悪化,ショック状態となった。CTで著しい胃の膨満と十二指腸水平脚以降の虚脱,肝上面のfree airを認め,緊急手術を施行した。胃は骨盤内まで膨満・拡張し,噴門側2/3の漿膜面は壊死していた。胃体上部は菲薄化し,径4cm程度の穿孔を認めた。噴門側3/4胃切除を行い,食道瘻・残胃瘻を造設した。術後集中治療を行ったが術翌日永眠された。上腸間膜動脈症候群に基づく胃壊死・胃破裂はまれであり現在までで2例目の報告である。急性腹症患者においてCTで胃壊死・胃破裂が疑われた場合,緊急手術が救命に不可欠である。
  • 工藤 道弘, 窪田 健, 岡本 和真, 市川 大輔, 小松 周平, 藤原 斉, 塩崎 敦, 小西 博貴, 中西 正芳, 栗生 宜明, 生駒 ...
    2014 年 34 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性。平成20年当院で施行された上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部に4mm大の粘膜下腫瘍を指摘された。その後1年毎の内視鏡フォローを行い,2011年7月の時点で大きさは7mmであった。2012年12月黒色便,吐血をきたし当院救急搬送となった。上部消化管内視鏡検査では胃穹窿部に巨大な潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認め,活動性の出血を伴っていた。内視鏡的止血術では出血の制御が困難であったことから,緊急胃全摘術を施行した。患者は術後9日目に軽快退院となった。臨床経過,および術後病理診断より高リスクのGastrointestinal stromal tumorと診断され,現在イマチニブ投与中である。胃粘膜下腫瘍は2cm未満,悪性所見がなければ年1~2回の内視鏡フォローで良いとされているが,本症例のごとく短期間に急速増大し,破裂をきたす症例も存在することから,慎重な経過観察が必要と考えられた。
  • 豊田 和宏, 菅原 由至
    2014 年 34 巻 1 号 p. 167-171
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性。以前から腸閉塞を繰り返し,他院で6度の治療歴があった。その際の精査によりMeckel憩室が関連した腸閉塞が疑われていたが,仕事の都合などのため根治的治療はされていなかった。今回,腸閉塞が再発し当院を救急受診した。今回は根治的治療を希望したため,仕事を継続しながら保存的治療をし,後に都合がついたところで入院し,単孔式腹腔鏡手術を施行することで社会生活の維持に配慮した。鏡視観察では,Meckel憩室が連続する肛門側小腸と癒着することで小腸が屈曲し,閉塞していた。創外への挙上は容易で,Meckel憩室および小腸閉塞部を含む小腸部分切除術を単孔式腹腔鏡手術で問題なく施行できた。第5病日に退院し,翌日から出勤した。Meckel憩室の合併症に対する外科治療は比較的珍しいが,小児や若年者に多いため,職場や就学への早期復帰が可能で整容性にも優れている術式選択に利益があると思われた。
  • 大西 貴久, 加藤 一郎, 川本 龍成, 折原 暁
    2014 年 34 巻 1 号 p. 173-176
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性。左鼠径部痛にて近医を受診した。左鼠径ヘルニア嵌頓の診断で徒手整復後に根治手術を目的に当院へ転送となった。来院時には下腹部の腹膜刺激症状を伴う圧痛が著名であり,腹部造影CTにて腹腔内遊離ガス像がみられたため消化管穿孔の診断で緊急手術を行った。S状結腸に腫瘤性病変を触知し口側腸管壁の虚血性変化と周囲のやや混濁した腹水を認めた。穿孔部ははっきりしなかったがS状結腸癌のヘルニア嵌頓後の穿孔と考え,Hartmann手術を実施した。病理組織学的診断において中分化型腺癌の診断が得られ,嵌頓を示唆する腫瘍口側壁の菲薄化を認めた。術後経過は良好で術後17日目に退院した。S状結腸癌が鼠径ヘルニア嵌頓後に穿孔をきたした1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 渡邊 貴洋, 和田 英俊, 佐藤 正範, 宮木 祐一郎, 杤久保 順平, 椎谷 紀彦
    2014 年 34 巻 1 号 p. 177-180
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性で,心窩部痛,嘔吐で受診された。既往に胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後のグラフト感染による下行大動脈人工血管置換,有茎大網充填術があった。精査の結果,大網充填経路から胃と横行結腸が脱出した横隔膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下修復術を施行した。脱出臓器は容易に腹腔内に還納可能で,ヘルニア門の径は4×5cmであった。拳上した大網を絞め過ぎないようにヘルニア門を直接縫合閉鎖し,10×12cmのComposite meshを縫合部の横隔膜に被覆固定した。合併症なく術後5日目に退院した。現在,術後9ヵ月経過し無再発である。横膈膜ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は低侵襲で有用な手技であった。
  • 林 裕樹, 狩俣 弘幸, 佐辺 直也, 白石 祐之, 西巻 正
    2014 年 34 巻 1 号 p. 181-183
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2014/07/30
    ジャーナル フリー
    成人臍ヘルニアは比較的まれな疾患で,持続携行式腹膜透析(以下,CAPD)施行中に発症した報告例は少ない。今回,CAPD施行中に発症した成人臍ヘルニア嵌頓に対し,緊急手術を施行した1例を経験したので報告する。症例は40歳の女性。慢性腎不全にてCAPDを施行しており,CAPDカテーテルからの排液混濁を主訴に外来受診。CAPD関連腹膜炎が疑われて入院となった。翌日臍部に有痛性腫瘤が出現。臍ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。ヘルニア囊内に嵌頓した小腸を認めたがヘルニア門を切開して嵌頓を解除した所,腸管の血流は速やかに改善した。腸管は切除せず腹腔内に還納し,ヘルニア門を単純閉鎖した。術後は血液透析を導入し,合併症なく経過し退院した。CAPD患者は腎予備能が低下しており,合併症が生じると重篤な結果に陥りやすい。術後合併症を避けるためにも嵌頓例の迅速な診断,早期の手術が重要であると考えられた。
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