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桐山 勢生, 高田 忠敬, 吉田 雅博, 真弓 俊彦
2014 年 34 巻 3 号 p.
621-625
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
急性胆管炎,胆囊炎の国際版診療ガイドラインであるTG07のTG13への改訂では,国際的な標準として定着していた診断基準も改訂された。今回,多施設症例集積研究によって診断基準の診断能を検証することによって「実地臨床での実施と評価」を行い,改訂の必要性が検討された。その結果,TG07急性胆管炎診断基準は,life-threateningとなる危険がある急性疾患の診断基準として感度が低く十分でないことが確認された。この原因として診断項目の組み合わせが不適切であったことが考えられ,診断項目を炎症,胆汁うっ滞,胆管閉塞という3つの病態に再分類することによって新しい診断基準に改訂された。一方,TG07急性胆囊炎診断基準では診断能は良好であることが確認された。しかし,確診の表現が曖昧で使いにくく,一部に実地臨床と乖離したところがあったため,これを修正することによって新しい診断基準に改訂された。
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横江 正道, 桐山 勢生, 真弓 俊彦, 吉田 雅博, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
627-632
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
Tokyo Guidelines(TG07)は世界初の急性胆管炎・胆囊炎の診療ガイドラインとして世界中で使用されているが,発刊から5年以上の歳月を経て,2013年改訂に至った。日本国内には国内版とTG07の2つのガイドラインが存在し,臨床現場における2つの重症度判定基準をめぐる問題を解決する必要があった。急性胆管炎では中等症の判定をめぐって,異なる重症度判定基準とその設定に課題があり,急性胆囊炎では重症の判定をめぐる課題があった。こうした問題に対して,急性胆管炎では中等症の判定に判定因子を設定することで初期診断時にも判定できるよう改訂した。急性胆囊炎の重症に関しては,臓器不全を伴う胆囊炎を重症とする考え方を採用した。重症度は治療方針に直結することから,ドレナージや手術の適応を考える上での因子を検討し改訂案に組み込んだ。
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─超音波画像を用いて─
畠 二郎, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
633-636
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
TG13における超音波画像診断について概説した。胆囊炎では胆囊腫大,壁肥厚,結石,デブリエコーに加えてsonographic Murphy signを基本的な超音波所見とした。またより重症な胆囊炎を示唆する所見として胆囊周囲低エコー域や胆囊粘膜剥離,気腫性胆囊炎,壊疽性胆囊炎があげられる。一方胆管炎の超音波診断は胆管拡張や結石,腫瘍などの間接的所見の描出にとどまることが多く,必ずしも良好な診断能とはいえないと思われた。これらに胆囊炎胆管炎の基本的な超音波所見に変更はないが,機器の改良によりさらに明瞭な所見が得られるようになったことから,TG13ではほぼすべての画像を刷新している。
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─CT,MRIを用いて─
蒲田 敏文, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
637-643
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
2005年の急性胆管炎,胆囊炎の診療ガイドライン第一版ならびに2007年のTokyo Guideline for the management of acute cholangitis and cholecystitisの画像診断の項では画像所見として,胆管拡張,狭窄,結石が記載されている。しかしながら,これらの所見は胆管炎の原因とはなるが,必ずしも胆管炎の直接的な画像所見とは言い難い。そのため旧ガイドラインでは,“胆汁感染の有無を画像所見より判定することができないため,画像診断により急性胆管炎を診断することは困難である”と述べられている。今回の改定では,急性胆管炎の画像診断におけるダイナミックCTの有用性について強調した。すなわち,急性胆管炎では高率にダイナミックCT動脈相で肝に一過性の不均一濃染が認められる。この濃染は胆管炎の改善とともに消退ないし消失する。急性胆囊炎の画像診断においてもダイナミックCTは有用であり,特にダイナミックCTの動脈相で認められる胆囊周囲肝実質の一過性濃染は急性胆囊炎の診断に役立つ所見である。
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露口 利夫, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
645-648
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
早期腹腔鏡下胆囊摘出術は軽症胆囊炎における第一選択の治療法である。しかし,中等症以上の胆囊炎では重篤な合併症である胆道損傷などのリスクを考慮する必要がある。胆囊ドレナージは早期手術のリスクを有する例に対するサルベージ療法と位置づけられる。具体的には,保存的治療に反応しない胆囊炎のうち,①中等症以上の急性胆囊炎,②surgical high riskのため手術が行えない,③患者の手術拒否,④施設の事情により早期手術が行えない,などが適応となる。
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糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 土屋 貴愛, 栗原 俊夫, 石井 健太郎, 辻 修二郎, 池内 信人, 梅田 純子, 田中 麗奈, ...
2014 年 34 巻 3 号 p.
649-652
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
TG07では急性胆管炎に対するドレナージ治療として外科的ドレナージ,経皮経肝ドレナージ,そして内視鏡的経乳頭的ドレナージ(胆管ステンティングおよび経鼻胆管ドレナージ)の手技と成績について記載されていた。昨年出版されたTG13は,従来の手技に加えて特殊なドレナージ法としてバルーン小腸内視鏡を用いた胆管ドレナージや超音波内視鏡を用いた胆管ドレナージも紹介している。また,通常のERCPによる経乳頭的胆管ドレナージに関しても,従来の造影法による胆管挿管法のみならずガイドワイヤーによる胆管挿管法(ワイヤーガイディットカニュレーション)の紹介とその成績についても言及しており,TG07に比してあらゆる点を網羅した内容となっている。特にこうした手技を理解しやすくするために動画配信をガイドラインとしては初めて試みており,医師のみならずコメディカルにも“やさしくてわかりやすい”内容となっている。
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矢野 晴美, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
653-658
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
要旨:Tokyo Guidelines 2007(TG 07)における胆道炎の抗菌薬に関する推奨事項を再検討し,新しい知見や新薬に関する情報を統合した新しい国際ガイドラインTG 13が2013年に発表,策定された。現在,TG 13が直面する代表的な課題は以下である。1.耐性菌の蔓延率が地域により大きく異なるため,地域の感受性パターンに準拠したガイドラインが必要であること,2.急性胆管炎・胆囊炎の患者に対して,血液培養は,アウトカムを変えるのか。3.血流感染を伴う胆管炎・胆囊炎では,治療期間はどのくらい必要か。4.腸球菌はどの患者に対して抗菌薬での治療対象とすべきか。5.嫌気性菌は,どの患者に対して抗菌薬で治療対象とすべきか。6.待機的Endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP)の予防投与薬は何が最適なのか。今後TG 13は,よりよいガイドラインへとさらに進化・発展するサイクルをつくる必要がある。
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山下 裕一, 高田 忠敬
2014 年 34 巻 3 号 p.
659-664
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
2013年出版されたガイドラインの“手術法の選択とタイミング”の改訂について述べる。変更点は,重症度別の推奨治療重傷度を提示したことである。軽症胆囊炎:発症後72時間以内の症例は,早期の腹腔鏡下胆囊摘出術を推奨する。中等症胆囊炎:初期治療後に胆囊摘出術(開腹,腹腔鏡下)または胆囊ドレナージを検討する。発症から72時間以上の症例では,早期や緊急の胆囊摘出術を行い,手術の適応でない症例では胆囊ドレナージを行う。重症胆囊炎:臓器不全を伴い全身状態悪化のため抗菌剤投与と臓器サポートと緊急胆囊ドレナージを行う。後日に胆摘術を行う。注意喚起のために重篤な合併症の提示を行った。胆管損傷は問題となる合併症であるが,その2%程にグリソン内の胆管,門脈,肝動脈に損傷を起こす“Extreme bile duct injuries”の報告がある。開腹移行時に高度委縮胆囊に順行性胆摘術の施行例に起こり易い。
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三浦 文彦, 佐野 圭二, 天野 穂高, 豊田 真之, 和田 慶太, 伊藤 博道, 青柳 賀子, 池田 豊, 貝沼 雅彦, 高田 忠敬, 吉 ...
2014 年 34 巻 3 号 p.
665-670
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
国際版第2版(Tokyo guidelines 2013:以下,TG13)の急性胆管炎・胆囊炎の診療ガイドラインの発刊に伴って,フローチャートが改訂された。TG13フローチャートでは,血液培養と胆汁培養の施行を推奨することになった。胆管炎フローチャートでは,総胆管結石による軽症例に対しては,胆管ドレナージと同時に成因に対する治療を行ってもよいことにした。胆囊炎フローチャートでは,胆汁性腹膜炎等の高度の局所炎症を伴う中等症に対する緊急手術以外は,腹腔鏡下胆囊摘出術を提唱することになった。モバイルアプリは,TG13のダイジェスト版で,診断基準,重症度判定基準,フローチャート,バンドル,抗菌薬療法の図表が掲載されている。バージョンアップにより新たな情報の発信が可能で,今後ガイドラインにとって重要なツールになり得ると考えられた。
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岡本 好司, 高田 忠敬, 吉田 雅博, 真弓 俊彦, 三浦 文彦
2014 年 34 巻 3 号 p.
671-676
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
Management Bundleとは,診療上活用されるべき重要な項目をまとめて表示し,集学的に効率よく診療を行える様にまとめて(束:Bundle)適用すべく設定されるものである。Bundle活用により,ガイドラインは単に作成されるだけでなく,適切な使用により該当疾患の予後を改善する。Tokyo Guidelines 2007(TG07)ではManagement Bundleの設定はなかったが,今回改訂のTokyo Guidelines 2013(TG13)ではManagement Bundleを新規に設定した。診療ガイドラインにおいて,強く推奨される検査,治療項目をManagement Bundleに設定した。使用しやすい様にCheck Listを作成し,ベッドサイドでの確認を容易にした。具体的には,診断と重症度の評価,検査法の指定,初期治療と重症度別の治療の推奨と時間的制約,搬送基準,原疾患の扱い等について急性胆管炎Bundle,急性胆囊炎Bundleを設定した。Management Bundleは,TG13を有効に使うための重要な項目であり,Bundle活用は本疾患の予後を改善することが期待される。Bundleの活用がどれほどの予後を改善するか,今後のさまざまな施設からの報告が期待される。国際的な共同多施設研究などの新たなエビデンスが構築され,Bundleの追加・変更等により,さらなる本ガイドライン改訂がなされていくと考える。
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間山 泰晃, 砂川 宏樹, 小倉 加奈子, 卸川 智文, 大城 直人
2014 年 34 巻 3 号 p.
677-679
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
胆囊動脈瘤は胆囊炎に併存する比較的まれな病態で,通常は胆道出血の原因として認めることが多い。今回,急性胆囊炎に併存した未破裂胆囊動脈瘤の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。症例は41歳女性,右季肋部痛を主訴に外来を受診した。血液検査では,炎症反応の上昇を認めた。腹部CT検査では胆囊腫大・壁肥厚を認め,胆囊頸部には9mm大の造影効果を伴う円形腫瘤を認めた。急性胆囊炎,胆囊動脈瘤と診断し保存的治療を先行しPTGBD留置を行った。施行後1ヵ月でも胆囊動脈瘤は消失せず,血管撮影検査と胆囊動脈塞栓術を施行し,その後腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した。術中出血も少なく,安全に手術を施行可能であった。未破裂胆囊動脈瘤の報告は少なく,治療に関しても一定の見解はない。今回われわれは,PTGBDによる炎症消失と動脈塞栓術を併せ施行し,安全に手術を完遂できた。
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中田 亮輔, 鈴木 英之, 小峯 修, 野村 聡, 千原 直人, 渡辺 昌則, 内田 英二
2014 年 34 巻 3 号 p.
681-684
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は54歳,男性。学童期より完全内臓逆位を指摘されていた。発熱,左下腹部痛を主訴に当科受診,腹部単純CT検査にて急性虫垂炎と診断し,緊急手術の適応と判断した。臍窩約2cmの皮膚切開にて開腹,EZアクセスⓇを用いたmulti─channel port法による単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。内臓逆位症は出生5,000〜10,000人に1人の割合で発症するまれな疾患である。特異な解剖学的位置関係から診断に難渋することがあり,手術には細心の注意が必要とされる。本疾患を合併した症例に対する腹腔鏡下手術は,低侵襲に腹腔内の観察,診断を行い,治療に移行できるため,有用な方法であると考えられた。
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下田 朋宏, 松谷 毅, 松田 明久, 丸山 弘, 吉田 寛, 内田 英二
2014 年 34 巻 3 号 p.
685-689
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は,78歳の女性。虚血性腸炎,結腸憩室炎の既往がある。現病歴は,両側卵管留膿腫の診断で,当院婦人科にて子宮全摘出術および両側付属器切除術を施行した。術後7日目に発熱を認めたため胸腹部CT検査を行ったところ,後腹膜から縦隔まで広がる気腫症を認めた。腹部所見では,腹膜刺激症状および筋性防御は認めなかった。大腸内視鏡検査とガストログラフィンによる造影検査で,直腸S状部穿孔と診断し緊急手術を施行した。術中所見は,直腸S状部の腸間膜付着部の穿孔とその周囲に壊死組織を認めた。また右側結腸の後腹膜腔から右腎筋膜周囲に膿瘍を認めた。気腫は小腸間膜,横行結腸間膜にも存在し,小網腔から食道裂孔を通じ縦隔にまで達していた。ハルトマン手術を施行し,右側結腸から後腹膜,食道裂孔から下縦隔の洗浄ドレナージを行った。術後は良好に経過し,術後36日目に軽快退院した。
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渡部 裕志
2014 年 34 巻 3 号 p.
691-695
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
門脈ガス血症は腸管虚血や炎症,拡張など,種々の原因によって生じる病態である。従来,腸管壊死に伴う予後不良の兆候であり,緊急手術の適応とされてきたが,近年は保存的に軽快した症例も増加している。今回われわれは保存的に治療しえた門脈ガス血症の2例を経験したので報告する。症例1は63歳男性。上腹部痛により発症。造影CTにより,肝内門脈,門脈本幹,上腸間膜静脈にガス像を認めたほか,胃と小腸の拡張と壁内気腫,結腸の一部に壁肥厚と壁内気腫を認めた。また,腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈の狭小化,腸管の造影不良を認めた。広範囲な腸管虚血に伴う門脈ガス血症と診断。症例2は93歳女性。嘔吐,上腹部痛により発症。造影CTにより,門脈ガス血症,十二指腸の造影不良,壁内気腫を認めた。十二指腸の広範囲な虚血と診断。2症例とも腹部所見や年齢を考慮し,保存的に加療し,軽快退院した。
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寺川 裕史, 中川原 寿俊, 松井 大輔, 的場 美紀, 正司 政寿, 中沼 伸一, 牧野 勇, 林 泰寛, 宮下 知治, 田島 秀浩, 高 ...
2014 年 34 巻 3 号 p.
697-700
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は76歳,女性。腹痛を主訴に近医を受診し,精査にて重症急性膵炎と診断された。治療が開始されたものの循環動態が悪化し,当院救急搬送となった。予後因子5点,CT Grade2の重症急性膵炎であった。CTでは横行結腸間膜に腸管外ガスが広がっており,汎発性腹膜炎,DICを呈していたことから緊急手術を行った。横行結腸間膜には穿通による脂肪壊死の所見を認めたものの,横行結腸にはあきらかな壊死の所見を認めず,回腸人工肛門造設術,腹腔ドレナージ術を施行した。結腸瘻や結腸狭窄を認めたが,大腸切除を行わず保存的に軽快し,術後155日目に退院となった。手術から約1年経過した現在,結腸狭窄は改善し日常生活が可能である。急性膵炎の大腸合併症はまれである。今回,結腸穿通,結腸狭窄を伴う重症急性膵炎の1例を経験したので報告する。
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永易 希一, 河合 雅也, 嵩原 一裕, 丹羽 浩一郎, 石山 隼, 杉本 起一, 神山 博彦, 髙橋 玄, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 ...
2014 年 34 巻 3 号 p.
701-704
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
結節性多発動脈炎による直腸穿孔と,術後拳上腸管壊死による人工肛門脱落をきたして二度の緊急手術を要した症例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する。症例は62歳女性で,約15年にわたりシェ―グレン症候群として当院膠原病内科で経過観察されていた。2011年9月下旬に下肢の脱力が出現し,同症候群による末梢神経障害を疑われ入院となった。プレドニゾロンを2週間内服したが症状の改善がなく,ステロイドパルス療法を施行した。パルス療法が終了した翌日に直腸穿孔を発症し,Hartmannの手術を施行した。ステロイドによる消化管穿孔と考えていたが,病理診断では結節性多発動脈炎による直腸穿孔であった。また,人工肛門として拳上したS状結腸にも病変は及んでいた可能性があり,術後第20病日に人工肛門は壊死脱落し,横行結腸に人工肛門を再造設した。
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向井 俊平, 日高 英二, 高柳 大輔, 島田 翔士, 竹原 雄介, 石田 文生, 工藤 進英
2014 年 34 巻 3 号 p.
705-708
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
要旨:症例は66歳の女性で,腹部巨大腫瘤にて当院に紹介となった。 CT検査で腹部から骨盤腔にかけて約10cmの腫瘤を認め,GIST,肉腫,悪性リンパ腫といった悪性疾患を考え手術を予定するも同意が得られず経過を観察していた。初診より51日後,意識消失のため緊急入院となった。入院時は敗血症性ショック状態で,昇圧剤,抗生剤投与による保存的治療を行ったが改善せず,腫瘍摘出と小腸,虫垂,S状結腸の合併切除を施行した。術後経過良好で第17病日に退院となった。敗血症を併発した小腸GISTはまれで,文献的考察を加え報告する。
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山本 澄治, 橋本 好平, 佐藤 博紀, 久保 雅俊, 宇高 徹総, 水田 稔
2014 年 34 巻 3 号 p.
709-712
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
横隔膜下膿瘍は外科診療においてまれではないが,限局化した膿瘍腔が穿破したとする報告は数例のみである。今回われわれは限局性の横隔膜下膿瘍の経過中に穿破から汎発性腹膜炎を発症した1症例を経験したので報告する。症例は82歳の男性で10日前より下痢と発熱を自覚し近医にて加療された。その後,症状は軽快するも食欲不振のみ持続するため受診した。CT検査にて限局性右横隔膜下膿瘍を認めたが症状が軽度であり,後日入院予定として帰宅した。9時間後に急な悪寒を自覚し再受診した。再受診時のバイタルサインはショック状態で腹部全体の違和感も訴えるため再度CT検査を施行し,右横隔膜下膿瘍の穿破による汎発性腹膜炎を認めた。緊急開腹手術を施行し右横隔膜下膿瘍の穿破による多量の膿汁腹水と膿瘍腔と交通のない胆囊炎を確認した。胆囊摘出術と腹腔内洗浄ドレナージ術を施行した。術後経過は良好で,入院21日目に軽快退院した。
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神賀 貴大
2014 年 34 巻 3 号 p.
713-717
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
患者は23歳の男性で,右下腹部痛を訴えて受診した。腹部造影CT検査では右側腹部に低吸収域と高吸収域が同心円状に層構造を示す所見を認め,腸重積症の診断となった。腹腔鏡下で緊急手術を施行した。上行結腸に嵌入する回腸を認めた。先進部は肝彎曲部まで達しており,腹腔鏡下で整復することは困難であった。約9cmの上腹部正中切開を加えて片手を腹腔内に入れ,肛門側から重積した口側腸管を愛護的に押し出して整復した。触診および視診にて回腸から上行結腸までには器質的病変は認めず,腸切除は行わなかった。術後に下部消化管内視鏡を施行し,バウヒン弁から約20cm口側の回腸まで観察したが,腸重積の原因となるような器質的病変は認めず,特発性腸重積の診断となった。特発性腸重積症は整復して器質的疾患のないことが確認できればそれ以上の治療は不要であり,腹腔鏡手術の良い適応である。
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宇田 裕聡, 本田 倫代, 中川 暢彦, 長谷川 裕高, 佐藤 敏
2014 年 34 巻 3 号 p.
719-722
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は40歳,男性。運動会にて転倒し腹部を打撲,近医に搬送され熱中症の疑いにて当院へ転院搬送された。当院搬送時は,ショック状態であったが,急速輸液により回復した。US,CTにて大量の血性腹水の貯留と,肝外側区域の表面に突出する10cm大の腫瘍性病変を認め,同部位からの出血が疑われた。血管造影にて肝外側区域腫瘍からの造影剤の漏出を認め,引き続きジェルパートによる塞栓術を施行し,一旦は止血を得た。翌日に再出血を認めたため,左肝動脈のコイリングを施行し,止血を得た。血液型がA型Rh(─)で対応に苦慮したが,処置後経過良好で第45病日に退院となった。その後再破裂の危険性を考慮し,十分なICの後,約2年後に肝左葉切除術を行った。特異な血液型を考慮し,術前に自己血を1,200g貯血した。病理組織学的検査にて海綿状血管腫と診断された。術後経過良好で第9病日に退院となった。外傷性肝血管腫破裂に対し,肝動脈塞栓術を先行し,待機的手術により切除しえた1例を経験した。
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松下 英信, 佐藤 雄介, 武田 重臣, 川瀬 義久
2014 年 34 巻 3 号 p.
723-725
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
毛髪胃石とは,経口的に摂取された毛髪に胃液が作用して固形物となったものであり比較的まれな疾患である。今回,われわれはさらにまれな腸閉塞をきたした重複毛髪胃石の症例を経験したので報告する。症例は12歳の女児で,5日前からの腹痛・嘔吐を主訴に近医を受診し,胃腸炎の診断にて様子をみるも軽快せず,当院へ紹介され受診した。腸閉塞の診断で,当院小児科に入院となった。イレウス管を挿入し保存的治療を行うも症状改善なく,イレウス管造影および腹部CTなどの画像で腸重積が疑われ手術を施行した。手術所見は,回盲弁から約80cmと100cm口側の回腸内に2個の毛髪塊を認め,回腸内毛髪塊による腸閉塞の診断で小腸を切開し毛髪塊を摘出した。術後経過はおおむね良好であった。術後にカウンセリングを行い,メンタルケアを開始。その後も再発徴候はみられていない。
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深田 真宏, 金谷 欣明, 奥本 龍夫, 藤井 徹也, 丸山 修一郎, 横山 伸二
2014 年 34 巻 3 号 p.
727-731
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
腹腔鏡下胆囊摘出術(Laparoscopic Cholecystectomy:以下,LC)の合併症として肝被膜下血腫の国内での報告例は少ない。今回われわれはLC後,肝被膜下血腫を発症し経カテーテル治療を施行し,その後心筋梗塞を相次いで発症した1例を報告する。症例は69歳男性で右季肋部痛を主訴に来院した。諸検査にて急性胆囊炎と術前診断し,LCを施行した。術後貧血の進行,血小板減少,さらに肝機能異常を認めた。術後3日目の腹部造影CT検査にて肝被膜下血腫と診断し,同日の血管造影にて後区域枝に造影剤血管外漏出を認め,動脈塞栓術を施行した。術翌日夜間から呼吸困難感,SpO2の低下が出現したため血液検査・心電図検査を行い急性心筋梗塞と診断した。近隣の循環器科に搬送の後,緊急冠動脈バイパス術が施行された。その後肝被膜下血腫は縮小治癒した。LC後肝被膜下血腫について若干の文献的考察を加えて報告する。
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尾本 健一郎, 大石 崇, 磯部 陽, 松本 純夫
2014 年 34 巻 3 号 p.
733-736
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
原発性腹膜癌の初発症状は多量の腹水貯留による腹部膨満などが多く,腸閉塞症状はまれである。今回,癒着性腸閉塞として加療されていたが手術を契機に診断された1例を経験した。症例は71歳女性。左付属器切除術,子宮膣上部切断術および2度の腸閉塞歴がある。嘔吐,右下腹部痛で当院受診。CT画像で腸管の拡張がみられ,石灰化が目立っていたが腹水は少量であり,あきらかな腫瘤を指摘できなかったことから癒着性腸閉塞の再発として入院となった。保存的加療されていたが,全身状態悪化のため第5病日に手術を施行した。回腸約40cmが一塊となっており,後腹膜と強固な癒着を呈していた。小腸部分切除術を施行した。術後第40病日に軽快退院。病理診断で卵巣漿液性乳頭状腺癌と類似し,原発性腹膜癌と診断した。漿膜面の腹膜播種による硬化から腹膜癌が腸閉塞の原因と考えられた。
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柴田 健一, 高橋 良輔, 矢野 充泰, 高須 直樹, 蜂谷 修, 木村 理
2014 年 34 巻 3 号 p.
737-740
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は77歳の男性。左篩骨洞の悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)の診断で,R-CHOP療法を施行され,寛解となり経過観察されていた。2年後に下腹部痛と嘔吐を主訴に当院に入院となった。CTで回腸の腸重積と診断された。同日,小腸部分切除術を行った。肉眼的に7.0×4.5cmの表面不整な隆起性病変を認めた。病理検査で,悪性リンパ腫の再発と診断された。悪性リンパ腫は寛解にいたっても,再発し,腸重積で発症することがある。悪性リンパ腫の既往のある腸重積症例においては,小腸再発も念頭に入れ,早期に手術を施行することが望ましいと考えられた。
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松本 紘典, 馬越 健介, 児島 洋, 菊池 聡, 竹葉 淳, 相引 眞幸
2014 年 34 巻 3 号 p.
741-745
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
フリー
症例は,63歳の男性。突然の左下肢痛,脱力を主訴に近医を受診し,ガス壊疽の診断の下,当院紹介となった。来院時,全身状態は安定しており,腹部症状はなく,左大腿の腫脹,発赤,疼痛を認めた。血液検査では著明な炎症反応の上昇と,CTで下行結腸周囲の炎症性変化および後腹膜から左膝上部にかけての膿瘍形成とガス像がみられた。下行結腸での後腹膜穿通からの左大腿ガス壊疽と診断し,まず後腹膜から左大腿部の洗浄ドレナージ術を行った。続いて行った大腸内視鏡検査にて下行結腸癌を認め,待機的に腹腔鏡下に原発巣の根治手術を行った。大腿ガス壊疽の原因病態として消化管疾患も考慮する必要がある。ガス壊疽部の確実なドレナージで早期に全身状態の安定化を得られれば,待機的に低侵襲で根治性の高い手術治療を選択することが可能である。
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林 泰寛, 高村 博之, 正司 政寿, 中沼 伸一, 古河 浩之, 牧野 勇, 中川原 寿俊, 宮下 知治, 田島 秀浩, 北川 裕久, 太 ...
2014 年 34 巻 3 号 p.
747-751
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
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劇症肝炎は,その急激な病態の進行から他臓器障害を発症する例にもしばしば遭遇する。今回われわれは劇症肝炎に急性膵炎を合併した2例を経験した。2例の肝障害の内訳はB型慢性肝炎急性増悪1例,原因不明1例であった。2例ともに内科的治療が奏功せず,肝移植を予定した。劇症肝炎に対する治療に並行して膵炎に対する治療も行ったが奏功せず,肝移植を中止せざるを得なかった。劇症肝炎に対する治療は肝移植を含め,一定の成績が期待できるため,他臓器合併症の予防と治療が重要であり,急性膵炎の合併にも十分な注意を払う必要がある。劇症肝炎に合併する急性膵炎においてはB型肝炎ウイルスの関与が知られている。一方で,近年high mobility group box 1の急性膵炎の病態への関与も示唆されており,その特性を利用した治療が期待される。
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若林 正和, 河野 悟, 相崎 一雄
2014 年 34 巻 3 号 p.
753-756
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
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大腸絨毛腫瘍は多量の粘液分泌に伴う脱水や電解質異常をきたすelectrolyte depletion syndrome(電解質喪失症候群:以下,EDS)を合併することがあり,癌化率も高い。今回われわれは,EDSを呈した直腸絨毛腺癌の1例を経験したので報告する。症例は76歳,男性。食欲不振,下痢,意識消失発作を主訴に救急搬送された。血液検査所見にて,腎機能障害,電解質異常を認め入院となった。毎日1,000mL以上の粘液便を認め,下部消化管内視鏡検査にて直腸に約2/3周性の巨大な絨毛腫瘍を認めた。EDSを呈した直腸絨毛腫瘍の診断で腹会陰式直腸切断術を施行し,術後は速やかに脱水や電解質異常が改善した。病理検査結果にて30%の割合で高分化型腺癌を認めた。術後8年現在,再発は認めていない。
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寺井 恵美, 佐々木 愼
2014 年 34 巻 3 号 p.
757-760
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
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症例は65歳,男性。下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部CT検査で虫垂の腫大と壁肥厚を認めたほか,ぶどうの房状の形態を呈し憩室の多発が疑われた。周囲脂肪濃度は上昇しており,虫垂憩室炎の診断のもと緊急手術を施行した。虫垂は腫大し,多発した憩室の一部が穿孔していた。検体を用いた造影検査により穿孔を伴う複数の憩室を同定した。病理組織学的にも虫垂憩室炎と診断され,穿孔した憩室も含め全て仮性憩室であった。虫垂憩室炎は穿孔率が高く,有症状で虫垂憩室を伴う虫垂炎あるいは虫垂憩室炎は症状の程度にかかわらず保存的治療ではなく手術を検討すべきであると考えられているが,その一方で術前に虫垂憩室を診断するのは困難である。今回われわれは術前に診断しえた虫垂仮性憩室炎穿孔の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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佐藤 拓也, 新井田 達雄, 大石 英人, 飯野 高之
2014 年 34 巻 3 号 p.
761-763
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
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症例は65歳,女性。腹痛を認め近医受診。腹部レントゲンで腸閉塞と診断され入院。イレウス管を挿入し経過観察するも改善を認めないために当院紹介入院。入院時のCTで右腎盂のサンゴ状結石,右膿腎症,右腰部皮下膿瘍,腹腔内全域に膿性腹水を認めた。Free airは認められなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術施行。術中所見で腹腔内に白苔を伴った膿性腹水を多量に認め,右腎周囲に高度の炎症象を認めた。消化管穿孔の所見はなく,右膿腎症による腹膜炎と診断し,腹腔洗浄ドレナージ術と右腎摘出術を施行した。消化管に閉塞起点となる病変は認められず,入院時に認められた腸閉塞は,汎発性腹膜炎に伴った麻痺性イレウスであると診断した。術後は,腎摘出時に損傷した下十二指腸角の縫合不全を認めたが改善し術後4週間で紹介元の病院へ転院となった。膿腎症を起因とした汎発性腹膜炎は比較的まれと思われ若干の文献的考察を加え報告する。
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堀 義城, 仲本 博史, 板垣 亮平, 長谷川 弥子, 新井 俊文, 畑中 正行
2014 年 34 巻 3 号 p.
765-769
発行日: 2014/03/31
公開日: 2014/09/29
ジャーナル
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症例は46歳男性。突然の下腹部痛を主訴に当院救急搬送された。CTでS状結腸間膜の背側に限局した小腸拡張像を認め,S状結腸間膜ヘルニアによるイレウスと診断し緊急手術を施行した。腹腔鏡で腹腔内を観察したところ,S状結腸間膜左葉に欠損を認め,同部位より脱出・嵌頓した小腸20cm程度は血流不全に陥っていた。嵌頓解除後ヘルニア門を閉鎖し,嵌頓していた小腸を臍部より体外に誘導して切除し,機能的端端吻合で再建した。術後経過は良好であった。S状結腸間膜ヘルニアは比較的まれな腹部救急疾患であるが,腹腔鏡手術で良好な治療経過を得ることができる。文献的考察を加え報告する。
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