日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
34 巻 , 6 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
原著
  • 岡田 剛史, 小練 研司, 藤本 大裕, 澤井 利次, 森川 充洋, 村上 真, 廣野 靖夫, 五井 孝憲, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 ...
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1089-1094
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    当院で経験したS状結腸軸捻転症20例を後ろ向きに検討し,臨床的特徴や治療方針について考察した。初診時に腸管壊死を疑った2例で緊急手術を施行,18例で内視鏡的整復を先行した。18例中,6例は整復不成功のため緊急手術を行った。他の2例では整復成功後早期に再捻転し緊急手術を行ったものの2例とも死亡した。また3 例は複数回の整復既往や高度な結腸の拡張を認め,再発を危惧し待機的にS状結腸切除術を施行した。腸管壊死群8例と非壊死群12例を比較すると,壊死群でCRP値が高く,造影CTで腹水ならびに腸管血流低下を認める割合が有意に高かった。現状では非壊死と診断した場合は内視鏡的整復が第一選択とされているが,自験例では内視鏡的整復を先行した18例中,11例で最終的に手術が必要であり,内視鏡的治療で治癒しない症例が相応の割合で存在することを念頭においた患者マネジメントが重要と考えられた。
  • 小杉 千弘, 幸田 圭史, 田中 邦哉, 鈴木 正人, 山崎 将人, 首藤 潔彦, 松尾 憲一, 平野 敦史, 有光 秀仁, 村上 崇, 白 ...
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1095-1099
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下小腸腸閉塞手術施行22例を対象とし,腹腔鏡下手術の中期的成績を検討した。術後平均観察期間は1,605日。開腹移行は2例で行われたが,20例は腹腔鏡下手術完遂可能だった。平均手術時間93.5±58.5分,平均出血量22.7±34.9mL。初回排ガス1.5±0.7日目,経口摂取開始1.6±0.8日目で,術後在院期間は10.5±9.2日だった。術後合併症は1例に創感染,在院中腸閉塞再発を1例認めた。在院中再発例は前回の狭窄切除部の肛門側に別の狭窄が存在していた。1例で術後7年目に腸閉塞の再発で手術を行った。腸切除吻合部への小腸癒着が原因だった。小腸腸閉塞に対する腹腔鏡下手術は,術後早期回復と入院期間短縮を図れる。しかし多発する狭窄部位を有する症例もあり注意を要する。中期的に観察すると再発をきたす症例も存在し,再発および開腹移行率を下げるためには,腸管損傷を避ける手技,術前減圧が重要である。
  • 渡辺 一裕, 河原 秀次郎, 共田 光裕, 榎本 浩也, 菅野 宏, 三澤 健之, 秋葉 直志, 矢永 勝彦
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1101-1105
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    2006~2010年の5年間に当科で施行された直腸前方切除術症例で吻合再建法にdouble stapling techniqueを用いた176例を対象とし,術後縫合不全に対するわれわれのドレーン管理法の有効性についてretrospectiveに検討した。術後縫合不全は11例(6.3%)にみられたが,再手術が必要であった症例は6例(3.4%)であり,全例が高位前方切除術後であった。それらの症例には開腹洗浄ドレナージ手術が行われ,右下腹部にdiverting ileostomyが造設された。一方,低位前方切除術後の術後縫合不全症例5例ではドレーンによる保存的治療が有効であったため再手術に至った症例がみられなかった。術後縫合不全に付随する炎症および膿瘍の範囲が限局化する症例に対しては保存的治療が有効で,骨盤腔内にその範囲が限局する症例に対するわれわれのドレーン管理法の有効性が示唆された。
  • 野田 昌宏, 盛 真一郎, 出先 亮介, 馬場 研二, 喜多 芳昭, 柳田 茂寛, 柳 政行, 奥村 浩, 石神 純也, 夏越 祥次
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1107-1112
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    2012年1月から2013年12月までに当教室で経験したフルニエ壊疽6例を検討し,2008年から2013年までに検索しえた101例を加えた107例の検討を行った。自験例6例中Fournier’s gangrene severity index(以下,FGSI)およびUldag Fournier’s gangrene severity index(以下,UFGSI)が高値であった2例は周術期に死亡した。107例の検討では周術期死亡は10%であり,平均年齢59.3歳であった。84%に基礎疾患を有し,糖尿病が最多であった。嫌気性菌の関与が35%にみられ,混合感染も多く認められた。治療は適切なドレナージ,デブリードマンが最も重要であり,嫌気性菌をカバーした広域抗菌薬投与,全身管理,創部の適切な管理が必要である。FGSIと UFGSIは,フルニエ壊疽の重症度判定と予後予測に有用であった。
  • 中村 利夫, 阿部 仁郎, 倉地 清隆, 原田 岳, 原 竜平, 阪田 麻裕, 石松 久人, 今野 弘之
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1113-1116
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    Crohn病の手術適応には狭窄,瘻孔,膿瘍などがあげられるが,緊急を要する遊離穿孔,出血などは一般にまれとされている。Crohn病の遊離穿孔に対する緊急手術例の術式,周術期合併症について検討を行った。対象は1996年より2012年までのCrohn病手術症例117例であり,そのうち遊離穿孔により緊急手術を要したのは9例(7.7%)であった。穿孔部位はいずれも回腸であり術式は穿孔腸管の切除を行い4例は一期的に吻合したが広範な腹腔内汚染を認めた5例では吻合は行わずストーマを造設した。術後合併症はイレウス1例,腹腔内膿瘍1例,創感染3例を認めたがいずれも重篤なものはなく,二期的にストーマを閉鎖した。遊離穿孔例では術後合併症の頻度が高く,広範な腹腔内汚染や全身状態の不良な症例ではストーマを造設し二期的手術を選択することが安全に治療を行ううえで重要である。
特集:門脈ガス血症と腸管気腫症の治療─手術のタイミングを含めて─
  • 鹿野 敏雄
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1119-1122
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    目的:門脈ガス血症は腸管壊死を示唆する予後不良の病態と認識されていたが,近年,軽症例や保存的治療例の報告もみられる。そのため,門脈ガス血症のどの症例に対して手術を行うか,判断に迷うことも多い。今回,門脈ガス症例の手術決定因子について検討した。方法:当院で経験した門脈ガス症例20例を手術必要群,手術不要群に分け各種所見を比較した。結果:手術必要群はほとんどが血流障害を伴う腸管壊死症例であった。WBC値,CRP値,門脈ガス量は二群間で差を認めなかったが,腹膜刺激症状は有意に手術必要群が多かった。結語:門脈ガス血症において腹膜刺激症状の有無こそが手術決定因子になり得ると考えられた。
  • 間山 泰晃, 砂川 宏樹, 小倉 加奈子, 馬場 徳郎, 卸川 智文, 大城 直人
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1123-1127
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    要旨:門脈ガス血症に対し保存的治療を行った症例が報告されている。しかし,保存的治療の適応に関しての報告は少ない。今回,われわれは当院における門脈ガス血症症例を後方視的に解析し,保存治療可能な因子を検討した。2007年1月から2014年5月までに当院で認められた門脈ガス血症33症例を解析した。保存的治療が可能であったA群14例,手術を要したあるいは死亡したB群19例の2群間にわけて検討した。単変量解析において年齢,消化管出血の有無,脈拍数,呼吸数,systemic inflammatory response syndrome(以下,SIRS)の有無,乳酸値,造影効果,腹水の有無などが有意な項目であった。多変量解析では有意な所見を得られなかった。高乳酸血症またはSIRSを有しない症例では,全例保存的治療可能であった。腸管虚血がなくまた画像で原疾患の確定がつかない症例に対してはSIRS,高乳酸血症を用いるとよい。
  • 小網 博之, 阪本 雄一郎, 井上 聡, 伊佐 勉
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1129-1134
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症は,これまで予後不良因子と考えられてきた。しかし,軽症例や救命例などの報告が近年増加するにつれ,腸管壊死を示唆する因子に関する報告が散見されるようになってきた。われわれは,2008年8月から2011年12月までに浦添総合病院に搬送された門脈ガス血症33症例を解析し,統計学的に有意差を認めた3つの因子(①血圧低下;108.0mmHg>,②LDH高値;>387.0U/L,③腸管気腫)を基に腸管壊死を示唆する新たな診断基準を作成した。この基準は,感度100%,陰性的中率100%,正診率87.9%と腸管壊死を除外するのに有効と考えられた。また,佐賀大学附属病院に搬送された14症例を基にして有効性の確認も行った。そして,これまでに内外で報告された門脈ガス血症の文献から腸管壊死に関連した因子に注目して考察を行った。今後,症例数の蓄積を行い,本邦から大規模な臨床研究が行われることを期待する。
  • 向井 洋介, 加藤 健志, 鈴木 玲, 賀川 義規, 向坂 英樹, 田村 茂行
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1135-1137
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症は腸管壊死の徴候の一つとされ,緊急手術の適応と考えられてきたが,最近では保存的加療で軽快した症例報告も散見される。しかし,最近の報告でも腸管虚血に伴う門脈ガス血症の致死率は改善していない。治療方針の選択には,壊死の範囲を身体所見や画像診断,血液検査などから総合的に判断することが重要である。全層壊死に陥っている症例は現在でも緊急手術の適応と考えられる。しかし,当院の症例では,画像診断で腸管虚血に伴う門脈ガス血症と診断された症例でも,腹膜刺激徴候がなく,CRP上昇が軽度である症例は保存的加療で軽快していた。症例数が少なくさらなる検討が必要だが,このような症例では全層壊死に陥っていない可能性があり,保存的加療を考慮しても良いのではないかと考えられた。
  • 原 義明, 中野 智継, 塩入 貞明
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1139-1145
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    2005年から2012年に経験した19例の門脈ガス血症について,手術の有無,転帰から比較検討した。原因は非閉塞性腸間膜虚血7例,腸炎3例,癒着性腸閉塞2例,小腸壊死1例,絞扼性腸閉塞1例,小腸捻転1例,医原性1例,原因不明3例だった。7例で手術を施行し,内訳は小腸部分切除3例,大量小腸切除+右半結腸切除1例,癒着剥離1例,人工肛門造設1例,試験開腹1例だった。原病死は手術例で1例,非手術例で3例だった。非手術例では死亡例の3例以外は腹膜刺激症状を認めず,保存的治療を選択する判断根拠の一つとなった。転帰で比較すると,診断時のAPACHE Ⅱ,SOFAスコア,乳酸値,ショックの有無で有意差を認めた。慎重な判断が必要だが,腹部所見が軽微かつCTで腸管壊死を示唆する所見に乏しい門脈ガス血症は保存的に治癒しうる。またAPACHE Ⅱ,SOFAスコアは門脈ガス血症の予後予測の指標となりうる。
  • 杉本 聡, 鄭 賢樹, 島田 守, 李 喬遠, 高山 昇一, 竹原 寛樹, 岡 博史
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1147-1151
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    腹部救急の現場において,門脈ガス血症と腸管気腫症はCTの汎用にて発見頻度が増えている。しかし手術が必要で時に重篤な経過をたどるものがある一方で,保存的に加療可能な症例にも遭遇する。治療・予後に重要となるのは腸管壊死の有無である。対象は当院で経験した門脈ガス血症もしくは腸管気腫症20例で,受診時の身体所見・血液検査所見・画像診断についてまとめた。さらに腸管虚血群・腸管非虚血群の2群に分け,病態・血液検査所見について検討を行い,これらの結果を踏まえて当院で診療の際に役立ているフローチャートを提示した。診断に迷う際には腹腔鏡検査が侵襲も少なく適していると考えられた。
症例報告
  • 渡辺 伸元, 松永 宏之, 宇野 雅紀, 大岩 孝
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1153-1157
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は35歳女性。便秘,腹痛を主訴に来院した。腹部CTで結腸に多量の便塊と小腸から結腸にかけて高度の拡張を認め,宿便性腸閉塞の診断で入院となった。保存的治療を試みたが,さらに発熱,炎症反応高値を認めたため閉塞性腸炎の診断で緊急手術を施行した。下行結腸で硬便が数珠状に連なり閉塞していた。横行結腸で双孔式人工肛門を造設した。術後は一旦経口摂取可能となったが再度腹部の膨隆が強くなった。腹部CTで腸管外にairを伴う多量の腹水を認め,消化管穿孔の診断で術後5日目に再度,緊急手術を施行した。腹腔内には便汁が充満し,人工肛門より口側の横行結腸に壊死,穿孔を認めた。拡大結腸右半切除および回腸ストマを造設した。敗血症性ショックとなったが2回目の手術より14日目に軽快退院となった。今回,健常な若年者が宿便性腸閉塞から閉塞性腸炎,大腸穿孔をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
  • 篠崎 由賀里, 隅 健次, 山地 康大郎, 田中 聡也, 佐藤 清治
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1159-1162
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
  • 賀島 肇, 山野 寿久, 黒田 雅利, 高木 章司, 池田 英二, 平井 隆二, 辻 尚志
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1163-1166
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    61歳男性。自宅玄関で正面から銃撃され当院へ救急搬送された。左側腹部に射入創および熱傷を認めた。CTで直腸近傍に銃弾があり,膀胱内および膀胱周囲に液体貯留を認め膀胱損傷,腹腔内出血と診断。緊急手術を施行した。膀胱は緊満腫大しており損傷・出血を認め,S状結腸にも損傷を認めた。膀胱の損傷部および,S状結腸の損傷部位を縫合した。肛門右側を切開,弾丸を摘出した。弾丸は左側腹部より射入し,S状結腸をかすめて膀胱壁を貫通し直腸右側に到達したものと考えられた。腹腔内にドレーンを留置し,肛門切開創にはペンローズドレーンを留置した。創部感染を認めたが,術後18日目に退院となった。本邦では銃弾による腹部外傷の発症はまれである。今回S状結腸,膀胱損傷をきたした腹部銃創の1例を経験した。循環動態の不安定な腹部銃創患者には一刻も早い緊急開腹手術が必要であるが,ショック症状がなければCTは有用な検査となりうる。
  • 小池 佳勇, 水谷 哲之, 橋本 瑞生, 佐藤 文哉, 坂口 憲史
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1167-1170
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は89歳女性,前日夜からの左下腹部痛,嘔気,嘔吐を主訴に受診した。来院時,左下腹部に軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めず。腸炎として経過観察入院となった。翌日に症状が悪化したため腹部造影CTを施行した。左下腹部の菲薄化したSpigel腱膜に腸管が嵌頓し,その嵌頓部より口側の腸管拡張を認めた。Spigelヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断し,同日に緊急手術を行った。開腹すると,腹直筋外縁のSpigel腱膜がヘルニア門となり,小腸の嵌頓を認めた。腸管壊死の所見は認めなかったため,腸管切除は行わず小腸を腹腔内に還納し,ヘルニア門を縫合閉鎖した。術後経過は良好で,術後6日目に退院となった。Spigelヘルニア嵌頓の一手術例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 前田 隆雄, 平松 聖史, 土屋 智敬, 尾辻 英彦, 田中 寛, 木村 明春, 待木 雄一
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1171-1174
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で,上腹部痛を主訴に受診し右季肋部に著明な圧痛を認めた。CTで肝S5に占居性病変と腹腔内に液体貯留像を認め,肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma;以下,HCC) 破裂を疑い緊急で腹部血管造影検査を施行した。右肝動脈の造影で肝S5に腫瘍濃染と血管外漏出像を認め,同部の破裂と診断しlipiodol+gelpartでTAEを施行した。その後初診時上昇していたPIVKA─Ⅱは正常化した。TAE施行より3ヵ月後,待機的に肝S5および腹壁合併切除術を施行した。病理組織学的所見では肝内の腫瘤性病変は壊死性組織を認めるのみで腫瘍の残存はなく病理組織学的完全奏効と診断した。術後経過は良好で術後13日目に退院となった。HCC破裂に対しTAE施行後二期的に肝切除を施行した症例は散見されるが,病理組織学的に完全奏効が得たれた症例はまれであり文献的考察を加え報告する。
  • 出雲 渉, 樋口 亮太, 福田 聡史, 方山 真朱, 宮崎 裕也, 佐藤 庸子, 小谷 透, 山本 雅一
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1175-1179
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性。切除不能腹膜癌に対し化学療法を施行中,好中球減少症に伴う腸管起源の感染に基づく敗血症性ショック,腹膜播種性転移による腸閉塞を呈していた。人工呼吸管理,昇圧剤使用中,循環動態維持目的の大量輸液(5時間で約12L)中に腹部膨隆・緊満,呼吸・循環動態の悪化を認め,abdominal compartment syndromeの診断に対し,減圧目的で開腹した。拡張した腸管に小孔を開けると便汁が噴水状に流出し,腸管内容の減圧を契機に呼吸・循環動態は著明に改善した。今回われわれは腸閉塞を背景に大量輸液が一因となって発症したabdominal compartment syndromeに対し緊急手術を施行し救命し得た1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 松村 勝, 福田 進太郎, 藤田 加奈子, 伊達 和俊
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1181-1184
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性で,約2年前から右鼠径部に軟な腫瘤を自覚していたが症状がないため放置していた。突然の右鼠径部痛で当科を受診した。腹部CT検査で右大腿ヘルニア嵌頓,ヘルニア内容は大網と診断した。手術は腹腔鏡下手術を行うこととし,腹腔鏡下に右大腿輪に嵌頓した大網を確認した。大網を鉗子で牽引することで,嵌頓を解除できたため,経腹腔内アプローチ(transabdominal preperitoneal hernia repair:以下,TAPP法)を行いBard 3D MAX®を用いて修復した。術後は経過良好で,4ヵ月経過したが再発所見は認めない。腹腔鏡下修復術は,大腿ヘルニア嵌頓症例に対して有用であると考えられた。
  • 渡部 裕志
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1185-1190
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    誤飲された消化管異物は,多くが消化,自然排泄されるが,まれに消化管損傷をきたし,急性腹症の原因となる。本邦では魚骨によるものが比較的多い。今回われわれが経験した魚骨による急性腹症8例について,文献的考察を加えて報告する。症例は55~86歳(平均74.1歳),男性4例,女性4例。主訴はすべて腹痛であった。穿孔または穿通部位は小腸6例,結腸2例であった。7例は治療前に魚骨による急性腹症と診断された。2例は保存的治療により軽快した。外科手術を実施した6例の内2例は腹腔鏡補助下手術が可能であった。魚骨による急性腹症は食事摂取などの病歴に加え,CTにより高率に診断可能である。多くの症例は外科手術の適応だが,保存的治療により軽快する症例もあり,治療方針の決定には画像所見や腹部所見を十分に考慮する必要がある。外科手術については従来の開腹手術に加え,腹腔鏡を用いることでより低侵襲な治療が可能になる場合もある。
  • 三上 和久
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1191-1195
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は72歳と98歳の女性で,片側の閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して超音波ガイド下非観血的整復術を施行し,後日待期的に鼠径法による修復術を施行した。その後異時性に反対側の閉鎖孔ヘルニア嵌頓を発症し,同様に整復後に待期的鼠径法を施行した。リスクが高い緊急手術を回避し,後日待期的に低侵襲手術を行うことが可能となる点で,術前の非観血的整復術は有用であると考える。術式については,鼠径法は低侵襲で優れた手術法ではあるが,対側の評価や治療が不可能という弱点がある。異時性両側性の2例を経験し,本疾患は両側症例の可能性もあり,今後は対側の評価治療が可能な術式を考慮すべきであると考えられた。
  • 桜井 嘉彦, 菊池 大和, 荒井 勝彦
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1197-1200
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性。下腹部痛と嘔気を主訴に近医を受診し,卵巣囊腫を指摘されて当院産婦人科を紹介受診したが,イレウスを発症していたため当科へ紹介入院となった。腹部は全体に膨満し,正中から右下腹部に著明な圧痛,腹膜刺激症状を認めた。CT検査でS状結腸の絞扼性イレウスが疑われたため,緊急手術を施行した。開腹所見では,約10cm大の右卵巣囊腫により伸展された卵管が索状物となり,S状結腸とともに結腸間膜を束ねるように約1周半程度巻き付き,S状結腸が閉塞,壊死に陥っていた。絞扼腸管切除(ハルトマン手術),卵巣囊腫・卵管切除を施行し,術後経過は良好で入院後28日目に軽快退院した。腹部手術歴がなく,卵巣腫瘍・卵管により発症した結腸の絞扼性イレウスはまれであり,文献的考察を加え報告する。
  • 富家 由美, 野村 尚弘, 長縄 郁絵, 三輪 高也
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1201-1204
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性。交通外傷による下腹部打撲で近医へ搬送。CTでは右腸骨骨折のみで腹腔内に異常所見を認めず,安静にして2週間で退院。しかし退院2週間後に下腹部痛再燃あり当院受診。CTで回腸末端の壁肥厚,腸間膜の浮腫状変化と口側小腸の拡張を認めた。絶食で一旦軽快するも,4ヵ月にわたり症状再燃,軽快を繰り返したため手術施行。回腸末端から20cmで小腸の発赤,狭窄と腸間膜の浮腫状変化を認め,口側小腸は拡張しており狭窄部位を含め小腸部分切除を施行した。病理検査では全周性の潰瘍形成を認め,粘膜下層の線維化,漿膜下層の浮腫状変化を認めた。腸間膜の損傷により腸管の循環障害が起こり,2次的に腸管の狭窄をきたしたと考えられ,外傷後の遅発性小腸狭窄と診断した。
  • 栂野 真吾, 渋谷 雅常, 永原 央, 大谷 博, 櫻井 克宣, 田中 浩明, 六車 一哉, 前田 清, 平川 弘聖
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1205-1208
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性。認知症で当院精神科入院中,黒色便および腹部膨満感の精査目的に腹部CT検査を施行したところ腹腔内遊離ガスを認め当科紹介となった。腹痛なく血液検査所見も軽微な炎症反応上昇のみ,また腹部CT検査でも腸管気腫を伴う小腸の拡張のみであったが消化管穿孔を否定できず,緊急手術を行った。腹腔内の汚染はなく,消化管穿孔や血流障害も認められなかったが,小腸の拡張と腸管・腸間膜の気腫性変化を認めた。術中内視鏡検査を施行し,多発性びらん・小潰瘍が認められ,虚血性変化やNSAIDs潰瘍による腸管気腫症が疑われたが確定診断には至らなかった。腸管気腫症に伴う腹腔内遊離ガスと診断し試験開腹で終了した。腹腔内遊離ガスを伴った腸管気腫症では消化管穿孔の可能性も否定できず,手術適応の判断に難渋することもあるが,理学所見・血液検査所見・画像検査所見などからその適応を総合的に判断する必要があると考えられた。
  • 奥田 洋一, 山本 雅由
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1209-1212
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    73歳男性。S状結腸癌術後。腹痛,嘔吐を主訴に近医を受診し,イレウスと診断され当院紹介となった。腹部X線とCTで腸管の拡張を認めたため,術後癒着性イレウスの診断でイレウス管を挿入した。イレウス管からの排液量は減少せず,症状の改善も認められなかったため,治療開始後7日目に手術を行った。開腹すると,回腸末端より30cm口側の回腸に癒着により形成された索状物(バンド)があり,回腸が強くしめつけられていた。バンドを解除すると腸管はすでに離断されていたが,腸管の粘膜面の露出は認めなかった。断裂された回腸断端を部分切除後,端々吻合を行った。術後経過は良好であった。索状物による腸管の途絶・閉塞をきたした例は極めてまれである。本症例は腸管のバンドによる絞扼が,いわゆるclosed loopの形ではなく腸管の一部を横断するように形成されていたことで腸管の途絶が生じたと考えられた。
  • 棚橋 俊介, 松友 寛和, 池庄司 浩臣
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1213-1217
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性。圧痛を伴う腹部腫瘤を主訴に当院を受診した。腹部CTで空腸起始部に13×11×9cm大の腫瘍を認めた。MDCT 3D画像で腫瘍は第1空腸動脈で栄養されていた。入院翌日に発熱と腹膜炎症状を呈したので緊急手術を行った。腫瘍皮膜は先端部で破綻しており,内部が壊死して消化管内と交通していた。栄養動脈を早期結紮して,十二指腸水平脚を切離することで切除しえた。病理学的にc─kit陽性,CD34陽性で,空腸GISTと診断した。術後イマチニブ療法を導入して,2年の無再発生存期間を得た。空腸起始部の巨大腫瘍の切除には,MDCT 3D画像による立体解剖の把握が有用である。穿孔性腹膜炎で発症した小腸GISTは比較的まれであるが,穿孔例であっても,完全切除を得て補助化学療法を行うことで,予後の改善が期待できると考える。
  • 濵田 博隆, 原口 尚士, 保 清和, 崎田 浩徳, 今村 博, 田辺 元, 夏越 祥次
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1219-1222
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性。肺癌の診断で放射線治療,化学療法を開始した。化学療法中に急激な腹部膨満感と嘔吐を発症。低栄養状態によるるい痩に加え経口摂取不能,嘔吐が重なり重度の脱水で入院された。CT,腹部超音波検査で胃・十二指腸水平脚の著明な拡張と肛側腸管の虚脱を確認し上腸間膜動脈症候群と診断した。担癌状態による体重減少(約9ヵ月で約20kg減少)に臥床状態の生活が重なり上腸間膜動脈症候群を発症したものと考えられる。胃管挿入による十二指腸の減圧,食後の体位指導で保存的に改善した1例を経験したので報告する。
  • 村山 良太, 永田 直幹, 佐古 達彦, 坂本 喜彦
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1223-1226
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    74歳男性。転倒により腹部を打撲し,その18時間後に当院へ搬入となった。搬入時のバイタルサインは安定しており,腹部造影CT検査では脾損傷(日本外傷学会分類Ⅲb),左腎損傷(同分類Ⅲb)を認めた。保存的治療を選択し,受傷3日目のCT検査では動脈相において脾実質内に楕円形の仮性動脈瘤を認めた。受傷6日目のCT検査では仮性動脈瘤はまが玉状(コンマ状)に形態変化をきたし,受傷13日目に血管造影および仮性動脈瘤の塞栓術を行った。その後の経過は良好で退院となった。脾損傷後の仮性動脈瘤の多くは自然消失するが,一旦破裂すると開腹術や脾摘を余儀なくされる。破裂の予測因子は不明だが,形態変化を認める場合はその部分が脆弱で破裂の危険が高いと推測されるので,すみやかに塞栓術を行うべきである。
  • 溝口 資夫, 田上 聖徳, 加藤 健司, 才原 哲史, 夏越 祥次
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1227-1232
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    Vibrio vulnificus感染症は重篤になりやすく,近年注目されている感染症である。今回,急激な経過をたどり死に至った症例を経験したので,文献的解析も含めて報告する。症例は78歳,男性。友人から貰った生牡蠣4個を摂取した翌日より息苦しさが出現し,増悪する呼吸困難・嘔吐・下痢を主訴に救急搬送された。入院後,ただちに人工呼吸器管理と薬剤治療を開始するが,全身状態は急激に悪化し,入院28時間後に死亡した。死亡直前には四肢に黒色の水泡形成を認めた。本患者はアルコール性肝硬変で外来通院治療中であり,病歴から本感染症が疑われ,水泡内容物から湾曲した桿菌を認めた。後日,血液培養検査で本感染症と確定診断された。肝硬変などの合併症を有する患者に対しては,本疾患を念頭に置き,日和見感染症である本感染症に対する注意を喚起することは重要であると思われた。
  • 杉原 奈央, 宮崎 純一, 田村 公佑, 柚木崎 紘司, 李 兆亮, 金 鏞民, 島谷 昌明, 内野 基, 池内 浩基, 阿部 孝
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1233-1236
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例;41歳男性。慢性腎不全,腎性貧血(Hb 8.0 g/dL),糖尿病,高脂血症,高血圧症で他院へ通院中であり,週に3回の維持透析を受けていた。貧血の進行と黒色便を認めたため,上下部消化管内視鏡,CT等を繰り返し施行するも出血源は不明であった。また,鉄剤投与と頻回の輸血を受けていたが,貧血は改善しなかった。原因不明の消化管出血と診断され,精査加療目的で当院を紹介受診となった。小腸カプセル内視鏡で空腸に出血性の腫瘍性病変を認めた。さらに経口ダブルバルーン小腸内視鏡で上部空腸に2/3周性の2型進行癌を認め,生検では腺癌(低分化腺癌>>中分化腺癌)であった。原発性小腸癌の診断で,他院外科で空腸部分切除術を施行された。腫瘍は上部空腸に存在し,術後の病理組織診断では,2型の中分化管状腺癌であり,リンパ節転移はみられなかった。
  • 野村 明芳, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 京田 有介, 大端 考, 渡邉 昌也, 金本 秀行, 大場 範行, 高木 正和
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1237-1240
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性,2010年に切除不能直腸癌に対しS状結腸双孔式ストマを造設後,化学療法が奏功し無再発無治療生存中であった。1週間前から抑うつ状態となり,自殺企図を繰り返すようになっていた。今回腹部より出血して倒れているところを発見され搬送された。腹部にためらい創を多数認め,ストマも損傷していた。しかしストマパウチ内に小腸片が多数認められたことから,視認はできなかったがストマを離断し腹腔内へ到達,小腸を体外に脱転し,切除したと考えられた。緊急開腹術を施行すると,ストマ刺創を確認することができ,またTreitz靭帯より40cmの空腸が40cm切除され,出血を伴っていた。双孔式ストマは全層にわたって損傷しており,同部を切除の上,下行結腸単孔式ストマを再造設した。本症例は非常に稀有な例であるが,自傷行為の症例では視認しえない事態が起こることを念頭に置き,対応することが望ましいと考えられた。
  • 若林 正和, 河野 悟, 相崎 一雄
    2014 年 34 巻 6 号 p. 1241-1244
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性。上行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した。第5病日に右下腹部の5mmポート孔より挿入されていたドレーンを抜去したところ,5時間後に抜去部より小腸の脱出を認め,小腸は嵌頓し壊死に陥っていた。同日緊急手術で小腸部分切除術を施行し,第19病日に軽快退院した。ポートサイトヘルニアの多くは10mm以上のポート孔に生じ,5mmのポート孔に生じることはまれである。今回われわれは,ドレーン抜去部の5mmポート孔より腹壁外へ,腸管脱出嵌頓をきたし,小腸部分切除術を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
feedback
Top