日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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35 巻, 3 号
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委員会報告:日本腹部救急医学会プロジェクト委員会NOMI ワーキンググループ
  • 鈴木 修司, 近藤 浩史, 古川 顕, 河井 健太郎, 山本 雅一, 平田 公一
    2015 年 35 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    非閉塞性腸管虚血(NOMI)は,腸間膜血管に器質的閉塞が存在しないにもかかわらず,腸間膜虚血や腸管壊死を呈する疾患である。1974年Siegelmanらによる血管造影を用いた診断基準がgold standardであったが,最近のmultidetector-row computed tomographyの普及や超音波検査の進歩により腸管虚血を客観的に評価しうる検査法の精度が向上してきたため,新診断基準の確立が望まれている。NOMIは早期に特異的な症候はなく,重症化して診断されるため,一般に予後不良である。NOMIと診断されれば,腹膜刺激症状がない場合は血管拡張薬血管内投与の適応となるが,腹膜刺激症状をきたし,腸管壊死が疑われる場合には外科手術が必要であり,NOMIの診断の標準化と治療の新たなアルゴリズムの構築が望まれる。
原著
  • 島居 傑, 柳澤 真司, 北村 伸哉, 小林 壮一, 岡庭 輝
    2015 年 35 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    2002年1月から2012年12月までに手術を施行した大腸穿孔症例94例を対象とし在院死に関する予後因子を検討した。また,SOFA scoreを用いて臓器障害を評価し,その予後への影響を検討した。11例の在院死亡例を認め10例が急性期病態に関連した死亡例であった。多変量解析の結果,術前PT-INR>1.5が独立した予後不良因子と判明した。SOFA scoreは生存例と比べ死亡例で有意に高く,各パラメータの比較では術前の呼吸器系,中枢神経系,腎機能の項目と,術後の呼吸器系,心血管系,中枢神経系の項目が死亡例で有意に高かった。一方,術前・術後ともに肝機能や凝固系の項目に差はなかった。術後の腎機能の項目にも差はなく,術後腎機能障害が顕著になった症例にはCHDFを用いた管理が奏功した可能性が示唆された。大腸穿孔ではさまざまな臓器障害を呈し重篤となるため,早期の予後不良例の認知と適切な管理が重要である。
  • 山元 良, 篠崎 浩治, 加瀬 建一, 小林 健二
    2015 年 35 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    トロンボモジュリン製剤である遺伝子組換え型ヒトトロンボモジュリンは,敗血症性DICの治療薬として近年注目されてきているが,腹部緊急手術後の使用に注目した研究は少ない。そこで,当院で過去約3年間に経験した腹部緊急手術を要した敗血症性DIC症例を対象に,同製剤の使用と周術期の治療成績を後方視的に検討した。投与群24例,非投与群19例であり,投与群でAPACHE Ⅱ scoreが有意に高く (p=0.02),術後ICU入室率,人工呼吸器使用率が高かった (p<0.001,p=0.004)。出血性合併症や死亡率に有意差はなく,投与群では敗血症性DIC診断後の新鮮凍結血漿の投与量が少なかった (p=0.02)。以上により,同製剤は腹部緊急手術の周術期でも安全に使用できることが確認され,敗血症性DIC診断後の輸血量を減らせる可能性が示唆された。
  • 青木 悠人, 山田 岳史, 菅 隼人, 松本 智司, 小泉 岐博, 進士 誠一, 松田 明久, 原 絵津子, 内田 英二
    2015 年 35 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    【目的】絞扼性イレウスを早期に診断するためには壊死をきたしていない腸管の軽度の血流低下を診断する必要がある。われわれは造影CTを用い,小腸壁CT値(以下,iCT)を上腸間膜静脈CT値(以下,vCT)で補正する方法を考案し,その有用性を検討した。【方法】対象は当科イレウス手術症例のうち治療前に造影CTを施行された絞扼性イレウス(絞扼群)20例と単純性イレウス(単純群)24例。小腸壁の造影効果を客観的に評価するためにiCTとvCT値から小腸壁・SMV造影効果比を算出し,両群間で比較した。【結果】小腸壁・SMV造影効果比は単純群と比較し絞扼群において有意に低値であり,絞扼性イレウスの診断感度0.95,特異度0.83であった。【結論】小腸壁・SMV造影効果比は腸管の血流低下を客観的に評価することを可能とする。
特集:各種胆道ドレナージ法の役割と評価
  • 高屋敷 吏, 清水 宏明, 加藤 厚, 久保木 知, 大塚 将之, 吉富 秀幸, 古川 勝規, 高野 重紹, 岡村 大樹, 鈴木 大亮, 酒 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    近年では胆道ドレナージ法の主流は内視鏡的アプローチ(以下,EBD) であり,経皮経肝アプローチ(以下,PTBD) 症例は減少してきている。最近6年間のPTBD自験例136例の適応は,胆道・消化管再建後が65例(47.8%),胆管末梢側への選択的ドレナージが43例(31.6%),狭義の内視鏡治療困難が28例(20.6%) であった。今日におけるPTBD適応とは乳頭部あるいは末梢胆管への到達困難や内視鏡検査不能などEBDのcontraindicationに収斂され,ダブルバルーン内視鏡などの新規技術の進歩により,その位置付けはさらに限定されていくことが想定される。しかし,他に選択肢がない状況下で確実な胆道ドレナージを要することから,個々の症例における診療上の重要性はむしろ増していくと考えられ,このような経験症例が少ないが必須の手技を修練し,技術を向上させ維持していくことが今後の課題である。
  • ─経乳頭的胆道ドレナージ困難例に対する当科における成績─
    平野 敦史, 山崎 将人, 川口 大輔, 廣島 幸彦, 森 幹人, 小杉 千弘, 松尾 憲一, 首藤 潔彦, 田中 邦哉, 幸田 圭史
    2015 年 35 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    当科での内視鏡的経乳頭的胆道ドレナージの成績と経乳頭的ドレナージ困難症例に対する対処法および経皮経肝的経路を併用したランデブー法施行例について報告する。2009年2月より2013年8月までの経乳頭的処置・ドレナージの総数は315件であった。目的とした胆管深部挿管・ドレナージが不能であった17例を対象とした。プレカッティングを10例に,経皮経肝的ドレナージを7例に施行し,合併症なく全例で減黄が可能であった。ランデブー法は,経皮的経肝的経路単独でのSEMS留置困難症例(ガイドワイヤーの誘導が困難)や内瘻化症例,繰り返す経乳頭的処置を要する症例,PTBD逸脱症例(合併症対策目的)の4例に施行した。比較的一般的な手技を用いた経皮経肝的経路併用ランデブー法は悪性疾患にのみならず,良性疾患に対しても施行可能で,臨床的に有用な方法と思われた。
  • 池田 哲夫, 武石 一樹, 伊藤 心二, 播本 憲史, 山下 洋市, 赤星 朋比古
    2015 年 35 巻 3 号 p. 223-231
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    胆管狭窄は胆汁鯵滞による胆管炎や肝機能障害を引き起こし,患者の予後に関わる合併症のものである。最も古くから行われている外科的胆道ドレナージに加え,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)が行われてきた。近年,術後胆道合併症に対する診断,治療としても内視鏡的ドレナージが選択される機会が増えつつある。内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)が困難な症例に対して,われわれ1990年代より,内視鏡的アプローチと経皮的アプローチを組み合わせた(Combined percutaneous and endoscopic approach(CPE))for internal biliary drainage を行ってきた。本法は内視鏡的および経皮的手技両方の習熟が必要であるため,胆道ドレナージの第一選択とはなりにくいが,開腹手術を行っても治療困難と考えられる場合にも,比較的低侵襲な最終的手段となり得る方法である。本稿ではこれらの胆道ドレナージの適応の歴史的変遷を簡単に述べ,CPEの具体的な方法と必要なtechniqueについて概説する。
  • 亀山 哲章, 宮田 量平, 冨田 眞人, 三橋 宏章, 馬場 誠朗, 天田 塩
    2015 年 35 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    現在胆管ドレナージは内視鏡的アプローチが第一選択となっている。術後再建腸管症例に対してもダブルバルーン内視鏡の普及により行われるようになってきているが,内視鏡的アプローチが困難な症例に対しては,経皮経肝胆管ドレナージ(以下,PTBD)が必要になる。PTBDは,当初はX線透視下に行われていたが,現在では,エコー下穿刺法が一般的に行われている。しかし,エコー下に非拡張胆管を描出し穿刺針を挿入することは困難であることがある。非拡張胆管に対しPTBDが必要な場合はX線透視下PTBDが有用であることがあり,その手技について症例を提示し,安全に施行する手技的ポイントを紹介する。
  • ─ダブルバルーン内視鏡を用いたERCPによる内視鏡的アプローチの有用性について─
    島谷 昌明, 高岡 亮, 光山 俊行, 徳原 満男, 加藤 孝太, 三好 秀明, 池浦 司, 岡崎 和一
    2015 年 35 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    術後再建腸管を有する症例,特にRoux-en-Y再建例に対する胆道ドレナージ法は,内視鏡的胆道ドレナージが困難なことから,経皮的胆道ドレナージ法が第一選択とされてきた。しかしながら,ダブルバルーン内視鏡(以下,DBE)の登場により盲端部への深部挿入が可能となり,特に有効長の短い処置用DBEを用いることで,通常のERCPで用いられる処置具の使用が可能となり,内視鏡的な胆道ドレナージを高率に完遂することができるようになってきた。今回,術後再建腸管を有する胆道疾患に対して,short type DBEを用いた内視鏡的胆道ドレナージの有用性について概説する。
  • 殿塚 亮祐, 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 土屋 貴愛, 石井 健太郎, 辻 修二郎, 池内 信人, 鎌田 健太郎, 田中 麗奈 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    【はじめに】近年,悪性胆管・十二指腸閉塞に対する低侵襲治療として胆管ステント(BS)と十二指腸ステント(DuS)を留置するダブルステンティング(DS)が試みられている。悪性胆管・十二指腸閉塞の治療法には,外科治療や経皮的治療,内視鏡的治療等があり,生命予後や胆管・十二指腸閉塞時期,閉塞部位により治療法を選択することが重要である。【当科の成績】当科で施行した16例の内視鏡的DSの成績は,手技成功率,臨床改善率はともに100%,早期偶発症は認めなかった。BS,DuS開存期間(中央値)はそれぞれ40日,46日であった。また,本検討の胆道ドレナージ手技として,ERCPと超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)を用いたが,両手技での成功率や偶発症率,ステント開存期間に有意差は認めなかった。【おわりに】ERCPとEUS-BDを用いた内視鏡的DSは低侵襲かつ安全に施行可能であると考えられる。
  • 小林 慎二郎, 中原 一有, 天神 和美, 瀬上 航平, 星野 博之, 片山 真史, 末谷 敬吾, 小泉 哲, 大坪 毅人
    2015 年 35 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    【目的】膵頭十二指腸切除(PD)における内視鏡的外瘻 (ENBD) と内瘻 (EBS)の優劣を検討。【対象と方法】PD症例97例を対象,ENBDとEBSの成績を比較。(検討1)初回ドレナージ法の違いで減黄に要した日数と追加処置が必要であった割合を比較。(検討2)手術時のドレナージ法の違いで術後合併症の発生率を比較。【結果】(検討1)減黄日数の平均はENBD 12.8日,EBS 18.1日,中央値はENBD 9日,EBS 18日であった(p=0.036,0.049)。追加処置はENBDで4.1%に施行され,EBSで72%に施行されていた(p<0.01)。(検討2)SSI,膵瘻,感染性合併症総数の発生率はENBD 23.2%,17.9%,39.3%で,EBS 20.5%,15.4%,33.3%であった(N.S)。【結語】ENBDはPD前の初期減黄法としては優れていると考えられた。
  • 細川 勇一, 永川 裕一, 佐原 八束, 瀧下 智恵, 中島 哲史, 粕谷 和彦, 土田 明彦
    2015 年 35 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(Panccreatoduodenectomy:以下,PD)では術前に閉塞性黄疸を伴うことが多く術前胆道ドレナージが本邦を中心に一般的に行われてきた。一方,近年,術前胆道ドレナージは胆道感染症を引き起こし,それが感染に関連する術後合併症へとつながる可能性が報告されている。加えて,PD術後合併症で最も問題となる膵液瘻発生と術前胆道感染症との関連性も指摘されており,術後合併症防止のため,術前胆道感染対策が重要である。本稿ではPDおける術前胆道ドレナージの諸問題ならびに膵液瘻をはじめとするPD術後合併症と術前胆道感染症との関連について概説する。
症例報告
  • 松井 琢哉, 安田 顕, 渡邊 貴洋, 山本 稔, 北上 英彦, 早川 哲史
    2015 年 35 巻 3 号 p. 267-270
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡検査(以下,EUS)を誘引とした膵仮性囊胞破裂により腹腔内出血をきたし緊急手術により救命した1例を経験した。症例は43歳男性で,多量の飲酒歴あり。近医で膵尾部の囊胞を指摘され当院へ紹介となった。アルコール性慢性膵炎に伴う膵仮性囊胞の診断で経過観察されていたが,囊胞の増大を認め入院となった。内視鏡的ドレナージを考慮しEUSを施行後,腹痛と血圧低下を認めショックとなった。再検したCTで囊胞の急激な増大と腹腔内の液体貯留を認め,膵仮性囊胞破裂による腹腔内出血と診断し緊急手術を行った。術中所見では腹腔内に大量の血性腹水を認め,囊胞前壁を形成する胃底部後壁の漿膜が裂け囊胞が破裂しており,膵体尾部脾合併切除術を施行した。膵仮性囊胞の合併症のなかでも,囊胞破裂による腹腔内出血は比較的まれである。自験例では破裂前に施行したEUSが,破裂の誘引になったと考えられる。
  • 林 昌俊, 栃井 航也, 小久保 健太郎, 丹羽 真佐夫, 高橋 啓
    2015 年 35 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性,10年前より骨髄異形成症候群(MDS)で経過観察されRCMD-RS,IPSS-Int1と診断されていた。2月に,右下腹部痛で受診,壊疽性急性虫垂炎と診断した。血小板1.4×104/μLと低下しており保存的治療を施行することにした。絶食,メロペネム1.5g/dayを投与し症状改善,10日後に退院した。虫垂炎発症3ヵ月後に血小板を輸血しつつ腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。病理検査はカタル性虫垂炎であった。血小板の著明な低下を認めるMDSに発症した急性虫垂炎に対するinterval appendectomyは,血小板輸血の準備も行うことができ良い適応と考えられた。
  • 吉岡 将史, 野村 務, 松谷 毅, 萩原 信敏, 藤田 逸郎, 金沢 義一, 眞鍋 恵理子, 内田 英二
    2015 年 35 巻 3 号 p. 275-278
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性。逆流性食道炎のため内服加療中であった。逆流症状増悪,嗄声,咳嗽を自覚,当院受診。外来でショック状態となり集中治療室に入院した。誤嚥性肺炎による急性呼吸促迫症候群と診断され,呼吸器管理,昇圧剤,抗生剤投与などの加療を行った。約1週間で軽快,一般病棟へ転棟した。胸腹部CT,上部消化管造影,上部消化管内視鏡にてⅢ型食道裂孔ヘルニアを認め,それによる逆流が誤嚥性肺炎の原因と考えられたため,腹腔鏡下逆流防止術(Toupet法+メッシュによる食道裂孔補強)を施行した。術後経過は良好で,術後5日目に退院。入院期間は29日であった。本邦ではまだ腹腔鏡下逆流防止術は一般的ではないが,高齢者で重篤な誤嚥性肺炎を認めたⅢ型食道裂孔ヘルニア症例において,肺炎治療後すみやかに本手術を行うことは,逆流による肺炎の再燃を防ぐとともに早期の社会復帰を可能にする点で有用であると考えられた。
  • 安 炳九, 三井 康裕, 松川 浩之, 高原 秀典, 田渕 幹康, 松本 卓也, 菅原 安章, 勝谷 誠, 高尾 雄二郎, 原 重雄, 小野 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 279-284
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性。既往歴として慢性膵炎ならびに,27歳時に胃潰瘍の手術(広範囲胃切除術)があった。2013年6月中旬,嘔吐,下痢を主訴に受診,血液生化学検査ならびに腹部CT検査で慢性膵炎の急性増悪と,それに伴うDICと診断,集中治療を行った。第6病日に炎症所見の増悪をきたしたため,同日CT検査および内視鏡的膵管造影検査を施行したところ,感染性膵囊胞とそれに交通する主膵管の破綻を認めたため,経乳頭的に主膵管破綻部から囊胞内へ内視鏡的経鼻膵管ドレナージチューブを留置した。症状改善に伴いチューブを抜去したが,感染の再燃をきたしたため,チューブを囊胞内に再留置した後,待機的手術を施行した。術中所見では,囊胞腔は残胃の背側で,膵体部との間に存在し,同部は炎症により高度に癒着をきたしていたため,残胃全摘+膵体尾部切除を施行した。術後経過は良好で,術後19日目に退院した。
  • 三宅 益代, 藤井 一博, 長嶺 弘太郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 285-287
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性。2010年より多発性骨髄腫の診断で当院血液内科通院中であった。2014年1月,咽頭痛を主訴に当院血液内科を受診,胸部単純X線検査で右横隔膜下に遊離ガスを認めたため当科紹介となった。腹部造影CT検査では腹腔内遊離ガスのほか,壁内気腫を伴う拡張腸管を広範囲に認め,気腹症を伴った腸管囊胞性気腫症と診断した。血液検査ではCRPの上昇を認めたが,発熱,腹痛はなく腹膜刺激徴候も認めなかったため,保存的加療の方針とした。入院後も症状増悪なく経過し,第6病日に施行した腹部造影CT検査では腹腔内遊離ガス,腸管壁内気腫は完全消失していた。第11病日に退院となった。気腹症を呈する腸管囊胞性気腫症では消化管穿孔を疑い緊急開腹手術が施行される報告もあるが,本症例のごとく腹膜刺激徴候を認めない場合は保存的加療で回復する可能性が高く,手術適応については慎重に検討する必要があると思われた。
  • 石多 猛志, 大石 英人, 石井 雅之, 飯野 高之, 佐藤 拓也, 新井田 達雄, 遠田 譲
    2015 年 35 巻 3 号 p. 289-292
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性。妊娠31週より切迫早産と診断され近医で内服加療行われたが,妊娠35週3日の時点で,腹痛の増悪と嘔吐がみられ当院入院となった。その後も腹痛と嘔吐が続いたため,腹部単純X線撮影を行いイレウスが疑われ腹部単純CT施行した。腹部単純CTで左側腹部に拡張小腸と,周囲に腹水も認めた。絞扼性イレウスの疑いで,妊娠35週6日緊急手術となった。帝王切開術を施行後,小腸の閉塞部を検索するとS状結腸間膜窩に小腸が嵌頓していた。嵌頓を環納し,嵌頓部小腸に血流障害を認めなかったため,腸管切除は行わなかった。母子ともに術後の経過特に問題なく術後8日目で退院となった。S状結腸間膜窩ヘルニアはまれな疾患で,本邦では妊娠中に発症した報告例は認めなかった。今回われわれは,妊娠中に発症したS状結腸間膜窩ヘルニアの1例を経験したので報告する。
  • 黒田 顕慈, 仲田 文造, 天道 正成, 中尾 重富, 堀 武治, 横松 秀明, 西下 正和, 石川 哲郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 293-297
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    72歳の男性が,突然の左側腹部痛と水様便を認めたため,当院を受診した。腹部単純CT検査を施行したところ,下行結腸周囲に消化管外ガス像と周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。結腸穿孔による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した。腹腔鏡で観察したところ,結腸脾弯曲部の著明な発赤と浮腫を認め,腸間膜への穿通が考えられた。腹腔内汚染は軽度であり,腹腔鏡補助下で結腸部分切除術を行った。切除標本の粘膜に縦走潰瘍を2条認め,病理検査にて基底膜直下に膠原線維帯の肥厚が存在したことからcollagenous colitisと診断した。本疾患はランソプラゾール内服が原因の1つと考えられており,本患者に発症前5ヵ月間投与されていた同薬剤の内服を中止した。術後6ヵ月現在,再燃は認めていない。
  • 根岸 宏行, 湊 栄治, 嶋田 久, 岸 龍一, 嶋田 仁, 野田 顕義, 大島 隆一, 片山 真史, 小林 慎二郎, 櫻井 丈, 小泉 哲 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 299-302
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性。軽自動車運転中の単独事故で腹部を打撲し,当院救急搬送となった。腹部造影CTで膵頭部領域に血腫および造影剤の血管外漏出を認め,shock vitalであったため緊急手術を施行した。開腹すると多量の血性腹水を認めた。十二指腸および上行結腸を授動すると十二指腸水平脚周囲に血腫を認めた。膵下縁で大量の出血を認めており,門脈本幹に裂傷が認められた。この門脈裂傷を縫合閉鎖したが,門脈が狭小化してしまい門脈血流の維持は困難と考えられたため,門脈を結紮切離した。術後経過は良好で,術後第36病日目に退院となった。腹部外傷における門脈損傷はまれであるが,高い死亡率が報告されており,死亡率を低下させるため,早期に出血コントロールすることの重要性が述べられている。今回われわれは外傷性門脈損傷に対し,門脈結紮術を施行することで早期に出血をコントロールし,救命した1例を経験したので報告する。
  • 宇田 裕聡, 村井 俊文, 上原 有貴, 篠塚 高宏, 野嵜 悠太郎, 中村 俊介, 阪井 満, 永田 二郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 303-305
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性。突然発症した強い腹痛を主訴に当院へ救急搬送された。当院搬送時は,バイタルサインは安定していたが,腹部板状硬,上腹部中心に腹部全体に強い圧痛と筋性防御を認めた。同日施行した腹部CTで横行結腸に腸重積の所見を認め,先進部は上行結腸が疑われた。腹部所見からはこの時点での消化管穿孔の可能性も否定できず,また,非観血的な整復術も考慮されたが,整復術による穿孔部の悪化も危惧され,緊急手術とした。術中所見では腹腔内に漿液性の腹水を少量認め,上行結腸に強い浮腫状変化を認め,腫瘤状であった。開腹時に重積は解除されていたが,腫瘤は極めて硬く,周囲リンパ節も腫大しており悪性疾患の存在が否定できず,術中の循環動態は安定していたことからリンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を行う方針とした。右半結腸切除術,D3郭清を施行した。摘出標本では,上行結腸粘膜に高度の浮腫を認め,2cm大の白色線状の虫体が検出された。病理組織学的検査で,腸アニサキス症による結腸腸重積症と診断された。
  • 鈴木 克幸, 原 康之, 本間 理, 髙屋 快, 白幡 康弘
    2015 年 35 巻 3 号 p. 307-310
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性。心窩部痛・嘔吐を主訴に前医を受診し,胸腹部造影CT検査所見で最大径50mmの巨大脾動脈瘤と完全内臓逆位を指摘され,手術目的に当科紹介となった。完全内臓逆位という破格があり,動脈瘤が直径50mmと大きいため開腹手術を選択した。脾動脈瘤と膵臓との癒着が高度であり,脾動脈瘤の切除は膵損傷および術後膵液漏の危険性が極めて高いと判断し,脾動脈結紮+脾臓摘出術を施行し,術後合併症なく経過した。脾動脈瘤は比較的まれな疾患であり,最大径50mm以上の報告例は極めて少ない。また,完全内臓逆位を伴う脾動脈瘤の手術例の報告はない。今回われわれは完全内臓逆位を伴う最大径50mmの脾動脈瘤に対して手術を施行したので,文献的考察を加え報告する。
  • 土屋 博紀, 佐藤 真輔, 間 浩之, 大島 健志, 永井 恵里奈, 瀧 雄介, 高橋 道郎, 京田 有介, 渡邉 昌也, 大端 考, 金本 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 311-314
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    下部消化管病変に対する内視鏡検査,治療は低侵襲かつ有用な治療法として広く普及しているが,低率ながら消化管穿孔の危険を伴う。医原性穿孔は検査前の下剤投与により腹腔内汚染が抑えられているため,腹腔鏡下手術の適応となりうる。今回,われわれは医原性大腸穿孔に対して腹腔鏡下手術を施行した3例を経験した。手術時間は平均139分,術中出血量はいずれも少量であり,経口摂取開始は平均3.3日,平均術後在院日数は8日で3例全例とも合併症なく退院した。医原性大腸穿孔に対する腹腔鏡下手術は,発症早期に行えば安全で確実な治療の選択肢の一つと考えられる。
  • 安井 和也, 高嶌 寛年
    2015 年 35 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性。吐下血を主訴に上部消化管内視鏡検査を施行したが,十二指腸第2部まで明らかな出血源を認めなかった。次第に出血性ショックとなり腹部造影CTを施行した。十二指腸第4部に造影剤漏出を認め,経カテーテル的動脈塞栓術を選択し止血を得た。数時間後腹部膨満が増強しCTで再出血および穿孔を疑われ緊急手術を施行した。十二指腸第4部の憩室には出血部位が存在せず,口側の第3部憩室から出血を認めたため憩室縫縮術を施行した。第4部憩室は狭窄を危惧し無処置とした。術後12日目に急激な貧血の進行を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行した。第4部の憩室内露出血管が存在し,内視鏡的クリッピングで止血を得ることができた。その後再出血なく経過した。十二指腸遠位部の憩室出血に対し,さまざまな止血アプローチを行い治療した。循環動態や憩室の存在部位に応じて,手術や動脈塞栓術も念頭に置いて治療する必要があると考えられた。
  • 松田 真輝, 澤野 誠, 大河原 健人
    2015 年 35 巻 3 号 p. 321-323
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症は,敗血症から死亡することも多い重篤な疾患である。今回,骨盤内炎症性疾患 (以下,PID)を呈した本疾患例を経験した。症例は58歳女性で,敗血症性ショックを伴うPIDの診断で当院転院となった。WBC 18,800/μL,CRP 51.5mg/dLと顕著な炎症所見を認め,急性腎不全も併発していた。造影CTでは子宮附属器の炎症所見ならびに少量の腹水を認めた。開腹所見では,骨盤内臓器および後腹膜の著明な炎症を認めた。その後もショック状態の改善はなく,劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症の可能性が高いと判断した。後腹膜開放ドレナージ術を追加し持続的血液濾過透析も開始したが,入院後43時間で死亡した。後に腹水および膣培養からStreptcoccus pyogenesが検出された。PIDと判断した症例でも,敗血症など重篤な経過を辿る場合は本疾患を考慮する必要があると考えられた。
  • 裵 正寛, 飯室 勇二, 平野 公通, 矢田 章人, 末岡 英明, 藤元 治朗
    2015 年 35 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性。肝細胞癌再発に対する肝S8亜区域切除術後7日目より発熱をきたした。抗菌剤の投与を行ったが,改善せず,造影CT検査で肝切離面膿瘍が疑われたため術14日目に経皮的ドレナージを行った。その翌日,突然下血をきたした。下部消化管内視鏡検査で回腸末端に小潰瘍が多発していた。活動的出血はみられなかったため保存的加療を行ったが,術24日目に再度大量の下血をきたし,造影CT検査で小腸内に造影剤の漏出像がみられたため緊急血管造影検査を施行した。すると,空腸第1枝末梢に血管外漏出像が認められたため動脈塞栓術を行ったところ,止血が得られた。術後は腸管壊死や再出血なく,術51日目に軽快退院となった。消化管出血の部位同定に造影CT検査や血管造影検査は有用であり,動脈塞栓術は出血性小腸潰瘍に対する有効な治療法の一つと思われた。
  • 藏田 能裕, 当間 雄之, 藤城 健, 河野 世章, 大平 学, 郡司 久, 青柳 智義, 成島 一夫, 太田 拓実, 花岡 俊晴, 石井 ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 331-334
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例1は80歳,男性。下血のため当院へ搬送された。内視鏡で十二指腸潰瘍からの出血を認めたが,止血不能であった。MDCTで胃十二指腸動脈からの造影剤漏出を認めたため緊急血管造影を行った。同動脈からの血管外漏出を認めマイクロコイルで塞栓術を行い止血を得た。症例2は57歳,女性。吐下血をきたし当院に救急搬送された。出血性十二指腸潰瘍と診断され,内視鏡的止血を行うも再出血を繰り返し,4回目の出血時にショックとなった。MDCTでは胃十二指腸動脈が潰瘍底を走行していた。出血源と考え緊急TAEを行い,仮性動脈瘤の消失と循環の安定を得た。上部消化管出血で内視鏡止血困難な場合には手術やTAEが考慮されるが,血管内アプローチが比較的容易な出血に対してはTAEが手術に優る場合がある。侵襲性の点からまずTAEの適応を考慮することが重要であり,その判断にはMDCT画像が極めて有用である。
  • 竹林 隆介, 磯崎 博司
    2015 年 35 巻 3 号 p. 335-338
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    60歳,女性。主訴は心窩部痛。胃内視鏡で多量の残渣,胃角に胃潰瘍を認め入院治療となった。5日目より腹痛と腹部膨満感を認めた。腹部CTでは拡張した小腸の肛側に含気性食物塊を認め,この食物塊によるイレウスと診断,9日目に開腹手術を施行した。回盲弁から口側約150cmに異物塊を認め,小腸壁を横切開して摘出した。異物塊は4cm大の結石であった。術後8日目から再び腹痛を認めた。腹部CTで拡張した小腸と含気性食物塊を認め,術後14日目に再開腹した。前回縫合部周囲小腸が癒着し一塊となっており,縫合部の肛門側に2個の異物塊を認め,一塊の小腸とともに切除した。2個の異物塊は初回手術時の結石と酷似しており,術後検索で,初回手術時CTで胃内に結石が描出していることが確認された。本例は胃石イレウスに対して術中検索が不十分であったため,残存していた胃石の再排出により再びイレウスを生じ,再手術を要した教訓的症例である。
  • 川井 陽平, 永田 二郎, 篠塚 高宏, 野嵜 悠太郎, 中村 俊介, 宇田 裕聡, 村井 俊文, 森岡 祐貴, 阪井 満
    2015 年 35 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性。ジョギング中に突然左下腹部痛と吐き気を発症し,当院救急外来を受診した。身体所見では,下腹部に圧痛を認めた。腹部造影CT検査で,左子宮円索の尾側に陥入するS状結腸ループを認め,子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断した。直腸診を行うと,直腸の左側に外側から圧排する半球状の腫瘤病変を触知し,同部位に圧痛を認めた。直腸診の後に腹痛は軽快し排便を認め,嵌頓が解除されたと考えられた。そこで待機的に腹腔鏡下手術を施行した。腹腔鏡を挿入すると子宮広間膜の左に径2.5cm大,右に径5cm大の異常裂孔を認めた。またS状結腸の腸間膜に索状の発赤を認め,嵌頓腸管と考えられた。裂孔を縫合閉鎖して手術を終了した。術後経過は良好で術後第3病日に退院となった。子宮広間膜ヘルニアの報告例は散見されるが,嵌頓腸管はほとんどが小腸であり,緊急手術での対応となる。本症例につき若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 二階 春香, 石澤 義也, 高橋 礼, 中井 款, 森田 隆幸
    2015 年 35 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は開腹歴のない36歳の男性。受診の約24時間前から持続する上腹部痛・嘔吐のため,当院に搬送された。初診時,腹部は軽度膨満していたが,圧痛は軽度で筋性防御はなかった。腹部CT検査では,小腸拡張像と少量の腹水を認め,胃と十二指腸水平脚の間に小腸の狭窄部を認めた。内ヘルニア嵌頓が疑われ,同日緊急開腹術を施行した。開腹したところ,Treitz靭帯より肛門側210cm~220cmの回腸が,大網の異常裂孔を通り網囊内に嵌入し,小網の幽門側にある異常裂孔より腹腔へ脱出していた。徒手整復をした後に,小網・大網の裂孔を縫縮した。術後経過は良好であり,術後5日目に退院となった。今回,極めてまれな大網小網裂孔網囊ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
  • 新井 洋紀, 松谷 毅, 松田 明久, 丸山 弘, 吉田 寛, 内田 英二
    2015 年 35 巻 3 号 p. 351-354
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    62歳,男性。1年前に他院で下部直腸癌の診断で化学放射線治療後に経肛門腹式括約筋温存直腸切除,J型結腸囊肛門吻合,回腸双孔式人工肛門造設術を施行した。術後に結腸膀胱瘻を認めたため,回腸双孔式人工肛門を左下腹部に再造設した。今回,自作の人工肛門装具をおさえる器具をつけてテニスを行っていたところ,腹痛が出現し人工肛門からの腸管脱出に気づき当科受診となった。用手還納を試みたが,脱出した腸管は還納されず,時間経過とともに腸管の壊死所見が出現したため緊急手術を施行した。脱出腸管を含めた人工肛門を切離,摘出し,旧人工肛門部に回腸で単孔式人工肛門を造設した。切除標本から先進部に腫瘍は認めなかったが,自作器具によって人工肛門周囲の圧が局所的に高まり,双孔式人工肛門部の口側小腸が著明に脱出し緊急手術となった症例を経験したので報告する。
  • 中西 香企, 谷口 健次, 田中 健士郎, 平田 伸也, 園原 史訓, 神崎 章之, 横山 裕之, 望月 能成
    2015 年 35 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンスルホン酸カルシウム(アーガメイトゼリー®)は急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症の治療に用いられる陽イオン交換樹脂の一つである。副作用としては便秘をはじめとする消化器症状がよく知られている。また重大な副作用として腸管穿孔の報告があり,添付文書でも注意勧告がなされている。今回,同剤内服中に大腸穿孔を起こした3症例を経験した。本症例と文献的な検討を行った結果,穿孔部はS状結腸,直腸に集中していること,ほとんどの症例で便秘を認めることが特徴であった。本剤内服中に便秘になり,便塊が停滞し機械的な損傷から大腸穿孔をきたすものと考えられた。本剤を投薬する際には,浸透圧性下剤,刺激性下剤をうまく使いながら適切に排便コントロールを行うことが重要であり,関係者に広く啓発していく必要があると思われる。
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