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─Needle knifeを用いたprecut法を中心に─
後藤 大輔, 河本 博文
2016 年 36 巻 1 号 p.
53-62
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
経乳頭的胆管深部挿管困難な症例に対し,needle knifeを用いたprecut法は挿管率の向上に有効である一方で,技術的な難易度が高く,さらに膵炎や出血,穿孔といった偶発症の可能性もあり,熟練者が行うべき処置とされ普及していない。われわれが行っているfreehandによるneedle knifeを用いたprecut法は,口側隆起の粘膜を長めに切開し,粘膜下の白色索状物である括約筋を視認したうえで胆管側の括約筋を切開し,胆管口を露出させる手技である。乳頭の基本的な構造を理解し,needle knifeによる切開の方向,長さ,深度を見極めることで高い確率で胆管口を露出でき挿管が可能となる。そのため,胆道内視鏡治療に習熟するためには是非ともマスターすべき手技と考え,本稿ではわれわれの行っているprecut法とその有用性を概説する。
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─出血,穿孔,急性膵炎,胆道炎,ステントトラブルを中心に─
新後閑 弘章, 前谷 容, 大牟田 繁文, 権 勉成, 齋藤 倫寛, 徳久 順也, 成木良 瑛子
2016 年 36 巻 1 号 p.
63-71
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
ERCP関連手技は偶発症発生率の高い手技であり,熟練した胆膵内視鏡専門医が行ってもさまざまな偶発症が発生する。ERCP関連手技の早期偶発症の予防と対策について述べた。乳頭処置後出血は動脈性出血ではIVRなどが必要になることもある。穿孔は消化管穿孔,乳頭部穿孔,胆管穿孔に分けて考え外科的治療が必要なこともある。急性膵炎は一時的膵管ステント留置,Wire guided cannulation,NSAIDs投与が有効と考えられている。胆管炎,胆囊炎はドレナージが必要なことが多い。ステントトラブルは閉塞,逸脱・迷入,出血などの病態によって対応が異なる。バスケット嵌頓はエンドトリプターやESWLなどで対応することができる。ERCP関連手技において偶発症発生は不可避であり時に重症化することがあり,もし偶発症を疑った場合には迅速に正確な診断を行い,それに対する適切な対処が重要である。
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梅田 純子, 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 土屋 貴愛, 辻 修二郎, 池内 信人, 鎌田 健太郎, 田中 麗奈, 殿塚 亮祐, 本定 三季, ...
2016 年 36 巻 1 号 p.
73-77
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
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内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)は胆管結石除去や良性・悪性胆道狭窄に対するドレナージなど,胆膵治療内視鏡において基本となる手技である。EST施行時の出血は膵炎,穿孔とともに致死的となりうる偶発症の一つでありその対応と注意点を知ることは重要である。術中にみられる軽度の出血であれば冷水やエピネフリン加生理食塩水などの散布にて自然止血が得られることが多いが,より出血量が多い場合や後出血に対しては止血処置が必要となる。内視鏡的止血法の種類には,薬剤散布法,局注法,熱凝固法,そして機械的止血法としてクリップ止血法,バルーンカテーテルやmetal stentによる圧迫止血法がある。内視鏡処置無効例や多量の出血によりショック状態を呈している症例では迅速にIVRや外科的治療ヘの移行を検討すべきである。
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清水 哲也, 水口 義昭, 吉岡 正人, 松下 晃, 金子 恵子, 川野 陽一, 勝野 暁, 神田 知洋, 高田 英志, 中村 慶春, 谷合 ...
2016 年 36 巻 1 号 p.
79-85
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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ERCPは胆膵疾患の診断に不可欠な手技となり,ERCPを応用したさまざまな手技が活用されている一方,ERCPの偶発症は重篤化しやすく慎重を要す手技である。ERCP合併症の中でも後腹膜穿孔は死亡率が高く,その診断と対処が重要である。1999年1月から2015年5月までのERCP自験例 4,076例のうちERCPの後腹膜穿孔を10例(0.25%)に認め,その原因と対応を検討した。穿孔部位は,乳頭部3例,胆管3例,膵管2例,十二指腸2例であり,原因は,乳頭部穿孔ではEST,胆管穿孔では砕石処置具の挿入,膵管穿孔ではカテーテル操作,十二指腸穿孔では内視鏡の挿入による損傷であった。後腹膜穿孔を疑う際にはENBDや胃管で減圧しCTで後腹膜穿孔の重症度を確認する。CTで後腹膜に液体貯留を認め,かつ発熱や疼痛のある症例は緊急手術を行う。後腹膜気腫のみ,もしくは少量の液体貯留のみで無症状の症例は保存的加療を行い経時的に疼痛や液体貯留をフォローし,所見の悪化がある際は緊急手術を考慮する。
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鈴木 修司, 出雲 渉, 山本 雅一
2016 年 36 巻 1 号 p.
87-90
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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フリー
(目的)膵頭部腫瘍は黄疸や急性胆管炎のため,Tokyo guideline 2013にて内視鏡下胆管ドレナージが推奨される。内視鏡下胆管ドレナージ困難例に対する工夫を検討した。(方法)対象は2012年3月から2013年8月までの内視鏡下胆管ステント留置術274例の内,ステント留置困難5例(1.8%)である。(成績)5例は全例膵頭部癌で,胆管挿管困難は3例,十二指腸狭窄によるERCP挿入困難は2例であった。胆管挿管困難例はすべてPTBDを施行し,内瘻化した。1例は後日内視鏡下胆管ステントを挿入した。十二指腸狭窄例は十二指腸ステントを挿入した後内視鏡下胆管ステントを挿入した。5例とも合併症は認めなかった。(結語)膵頭部腫瘍による胆管閉塞では内視鏡下胆管ドレナージがfirst choiceであるが,挿管困難の際はinterventional radiologyを併用した手技の対応が重要である。
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菊池 大和, 櫻井 嘉彦, 田上 創一
2016 年 36 巻 1 号 p.
91-93
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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フリー
症例は20歳女性。4年前から心窩部痛を繰り返していた。近医受診し胆石症を指摘され,当院に手術目的に紹介受診となった。術前ERCPで,左右肝管の低位合流,左右肝管の間に交通(副交通胆管枝)を認め,そこから胆囊管の分岐を認めた。術前にENBDTを留置し,腹腔鏡下胆囊摘出術を安全に施行し得た。術前に胆囊管の分岐異常を知ることは極めて大切であり,ましてや若年の胆石症に対しては,疑いをもって術前検査することが大切である。
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入村 雄也, 坪井 一人, 恒松 雅, 武田 泰裕, 良元 和久, 梶本 徹也, 柏木 秀幸
2016 年 36 巻 1 号 p.
95-98
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は87歳男性。腹痛,下痢,嘔吐を主訴に当院に救急搬送された。腹部全体に強い圧痛を認め,血液検査にて炎症反応および血清CEAが552.6ng/mLと異常高値を示した。腹部CTで腹水の貯留および遊離ガス像を認め,消化管穿孔と診断し同日緊急手術を施行した。開腹すると,横行結腸から直腸S状部に至るまで腸管の壊死を認めたためハルトマン手術を施行した。術後第22病日に行った血液検査では血清CEAは2.4ng/mLと正常化し,病理組織学的診断でも悪性所見を認めず,壊死型虚血性腸炎と診断した。高CEA血症をきたす病態として,まれではあるものの,重度の虚血性腸炎も含まれ,これらを視野に入れた診療が望まれる。
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槐島 健太郎, 石崎 直樹, 渡邉 照彦, 大迫 政彦, 田畑 峯雄
2016 年 36 巻 1 号 p.
99-102
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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門脈ガス血症を伴った急性虫垂炎はまれである。われわれは同疾患の手術症例を経験した。本邦報告7例目であり,文献的考察を含め報告する。症例は73歳女性。3日前より持続する右下腹部痛と38℃台の熱発に引き続いて発生した嘔気,嘔吐にて紹介医を受診しイレウスの診断で当院紹介された。腹部は著明に膨満し板状硬で,全体に圧痛があり,腸蠕動は低下していた。血液検査で炎症所見上昇,腎機能悪化を認めた。腹部単純CTで肝表面のfree air,小腸の広範な拡張,肝外側区域の門脈ガス像,骨盤内小腸の腸管気腫を認めた。以上より骨盤腔内小腸の壊死による汎発性腹膜炎を疑い,緊急開腹術を行った。開腹すると腸管は発赤し著明に拡張していたが壊死,穿孔は認めなかった。回盲部で糞石を有する虫垂が壊死して穿孔していた。門脈ガス血症を伴った穿孔性虫垂炎と診断し,虫垂切除と腹腔ドレナージ術を行った。術後経過は良好であった。
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高橋 啓, 林 昌俊, 栃井 航也, 小久保 健太郎, 丹羽 真佐夫
2016 年 36 巻 1 号 p.
103-106
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は44歳の女性。子宮内膜症のため近医で内服治療中であった。36歳時には月経随伴性気胸のため胸腔鏡下右肺部分切除術を施行されている。今回,前日より続く腹痛のため当院救急外来を受診した。腹部CTでは回盲部に回腸の狭窄を認め腸閉塞と診断した。開腹すると腹腔内には漿液性の腹水を中等量認めた。回腸末端は捻れるように強固に後腹膜と癒着し,同部で口径差を認めた。癒着剥離による狭窄解除は困難であったため,回盲部切除術を施行した。病理組織学的検査では小腸漿膜内に異所性子宮内膜の増生を認め,回腸子宮内膜症と診断した。術後経過は良好で,術後約6ヵ月を経過した現在,腸閉塞の再燃は認めていない。腸管子宮内膜症はS状結腸や直腸の発生が多く,小腸に発生する頻度は7%と比較的まれであるため今回報告する。
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藏田 能裕, 大島 郁也, 尾崎 正彦, 松原 久裕
2016 年 36 巻 1 号 p.
107-110
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は53歳の男性。突然の腹痛を自覚し,当院紹介受診となった。腹部CTでは右前腎傍腔に径15cm大の後腹膜血腫が存在し,緊急血管造影検査を施行した。血管造影では空腸動脈・左胃動脈・下膵十二指腸動脈に多発する動脈瘤と後下膵十二指腸動脈からの出血を認めたため,マイクロコイルや塞栓物質を用いて止血を試みたが,止血困難であり,開腹手術に移行し動脈結紮術による止血術を施行した。術後,十二指腸狭窄を発症したが,内視鏡的治療により軽快,退院した。臨床経過により,Segmental arterial mediolysis(SAM)と診断した。SAMは,原因不明の血管疾患で,腹腔内出血をきたして発見されることが多い。膵十二指腸動脈からの出血をきたした場合,IVRは,その解剖学的特性から止血に難渋することもあり,また,合併症も報告されている。手術を含めた止血方法の的確な選択が重要であると考えられた。
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岡﨑 靖史, 大島 郁也, 篠藤 浩一, 尾崎 正彦
2016 年 36 巻 1 号 p.
111-114
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は38歳,女性。前日の夕食後より左上腹痛を訴えて近医を受診。内ヘルニアの疑いで当院紹介受診となった。腹部CT検査では左上腹部に一塊となった小腸を認め,横行結腸は尾側に偏移していた。絞扼所見のない左傍十二指腸ヘルニアと診断し,翌日待機的に手術を施行した。腹腔鏡にて観察するとヘルニア門はTreitz靭帯の左側に存在した。陥入していた約250cmの小腸は,容易に腹腔内に還納することができ,ヘルニア門は腹腔鏡下で結節縫合にて閉鎖した。術後の経過は良好であり,術後第8病日に退院となった。CT検査は傍十二指腸ヘルニアの診断に優れており,腹腔鏡下手術は本症に対する有用な治療法と考えられる。今回われわれは術前診断し得た左傍十二腸ヘルニアに対して,腹腔鏡下修復術を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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足立 利幸, 金高 賢悟, 米田 晃, 藤田 文彦, 高槻 光寿, 黒木 保, 江口 晋, 山野 修平, 猪熊 孝実, 田崎 修
2016 年 36 巻 1 号 p.
115-119
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は70代女性。自殺目的に酸性洗剤150mLを服用した。家人に付き添われ近医受診,入院加療となった。2日目にショックとなり当院へ緊急搬送となった。緊急上部消化管内視鏡では,食道粘膜は全周性に発赤し,胃壁は幽門側を中心に黒色に変性していた。腹部CTで,回盲部に壊死性変化を疑ったため,同日,緊急開腹手術とした。術中所見では,血性腹水とともに菲薄化した胃幽門を認めた。回盲部は壊死性変化を伴い一塊となっていた。小腸は全長にわたり発赤,浮腫状変化を認めていたため,再建に利用するのは困難であり,幽門側胃切除,回盲部切除を施行し,人工肛門とした。回盲部におよぶ腸管損傷であったが二期的手術を前提とした壊死部切除を行い救命し得た。酸性異物による腸管損傷部位は上部消化管の報告が多く下部消化管に及ぶものは少ない。腸管損傷をきたしやすい部位を腸管の生理的反応から考察し報告する。
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佐藤 裕二, 高橋 昌宏, 後藤田 裕子, 宇根 良衛
2016 年 36 巻 1 号 p.
121-124
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
55歳,男性,腰痛・下肢痛を主訴に受診。食事・水分摂取可能で排便はあった。右側腹部の膨隆と発赤・圧痛あるも腹膜刺激症状はない。CTで21.0×14.0×10.6cmの腹腔内外に連続する後腹膜気腫・膿瘍を認め,腸腰筋,腹横筋,内外腹斜筋,広背筋に及んでいた。回腸末端部から上行結腸の腸管壁肥厚と腹腔内肝下面に遊離ガスを認めた。腸管穿孔による後腹膜膿瘍,腹膜炎と診断,手術を行った。腹水は少量,上行結腸は短縮し強固な癒着があった。盲腸・上行結腸切除,回腸─横行結腸吻合と洗浄,ドレナージを行った。切除標本では上行結腸に約2cmの穿孔と上行結腸,盲腸,虫垂の多発憩室があり,術後の組織学的所見では穿孔部の炎症,線維化と漿膜面の炎症細胞浸潤,膿瘍を認めた。第17病日に退院,術後7ヵ月再燃はない。大腸憩室後腹膜穿孔に伴う筋肉内膿瘍は進行が早く,早急な診断と治療方針の決定による有効な治療が必要と考えられた。
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宇田 裕聡, 村井 俊文, 篠塚 高宏, 野嵜 悠太郎, 阪井 満, 永田 二郎
2016 年 36 巻 1 号 p.
125-127
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は57歳の女性,心窩部痛と黒色便を主訴に救急搬送された。4年前まで十二指腸球部前壁のブルンネル腺腫を内視鏡検査で経過観察されていたが,その後通院を中断していた。腹部CT,上部消化管内視鏡検査で十二指腸腫瘍による消化管出血・空腸への逸脱と診断した。入院12時間後,強い腹痛と嘔吐が出現し,緊急内視鏡を施行したところ,腫瘍が空腸側へ嵌頓している所見を認めた。内視鏡的な整復が不可能であり,嵌頓の増悪による,腸管の虚血,穿孔,また出血の増悪による貧血の進行を懸念し,緊急手術の方針とした。術中所見では十二指腸球部前壁に基部をもつ有茎性腫瘍を認め,腫瘍はTreitz靭帯まで先進し嵌頓しており,十二指腸部分切除術を施行した。病理組織学的検査ではブルンネル腺腫瘍と診断された。空腸への嵌頓をきたし,緊急手術を施行した十二指腸ブルンネル腺腫瘍の比較的まれな1例を経験したため報告する。
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河島 毅之, 野口 琢矢, 久保 宣博, 宮本 伸二
2016 年 36 巻 1 号 p.
129-132
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は70歳男性。本態性血小板血症(ET)でアスピリンとhydroxyureaを服用していた。発熱と腹痛を主訴に当院を受診し,腹部CT検査で小腸腸間膜に穿通する線状構造物を認め,病歴聴取から魚骨による小腸穿通が疑われた。来院時の血液検査は血小板65.4万/μLであり,その他凝固能異常は認めなかった。汎発性腹膜炎への移行を考慮し,緊急に魚骨摘出術を施行した。術直後に一過性の出血傾向を認めた。術後5日目にドレーンを抜去したが,7日目に発熱,腹痛およびドレーン痕から腸液漏出を認め,縫合不全に伴う腹膜炎が考えられた。経皮的膿瘍ドレナージを行い保存的に加療したが,縫合不全は遷延し,退院は術後55日目であった。ET患者の手術症例は比較的まれであり,さらに病態的特徴からその周術期管理は難しい。今回,ET患者に発症した魚骨の小腸穿通の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
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柴田 英貴, 村上 雅彦, 大塚 耕司, 山崎 公靖, 五藤 哲, 藤森 聡, 渡辺 誠, 新谷 隆, 青木 武士
2016 年 36 巻 1 号 p.
133-137
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
成人に発症した特発性大腸腸重積の1例を経験したので報告する。症例は31歳の男性。腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CTで横行結腸にtarget signを認め,Douglas窩に少量の腹水を認めた。横行結腸腸重積の診断で緊急手術を施行した。腹腔鏡観察では横行結腸の中央で大網を巻き込むように重積を認めたが,腹腔鏡下で整復することが困難であったため小開腹して重積を解除した。重積腸管に虚血や壊死は認めなかった。陥入部の横行結腸を切開したところ明らかな腫瘤性病変は認めず,浮腫状に肥厚した粘膜のみを認めたため,これを切除して終了とした。病理組織学的所見では炎症による変化のみで器質的病変は認めず,特発性腸重積症と診断した。特発性腸重積症は非常にまれな疾患であり,中でも大腸・大腸型は本邦では3例目の報告となる。特発性腸重積症に対する腹腔鏡下手術を経験したので報告する。
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西﨑 大輔, 水野 克彦
2016 年 36 巻 1 号 p.
139-142
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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フリー
症例は20歳女性,未経妊。腹痛を主訴に救急外来を受診した。下腹部に強い圧痛を認めた。腹部CTで小腸の拡張像を認め,腹膜炎を疑ったが,虫垂の腫大は目立たなかった。内診で膿性帯下を認め,男性パートナーが淋菌感染症の治療中であったことから骨盤腹膜炎を疑った。疼痛が非常に強く,診断を兼ねた腹腔鏡下手術を行った。骨盤内の小腸や大網が粘度の高い膿で薄く覆われていた。肝周囲炎の所見は認めなかった。腹腔内を洗浄し,ドレーンを挿入して終了した。術後よりセフトリアキソンとミノサイクリンの投与を開始した。術後2日目より疼痛は軽減し,術後4日目に退院した。頸管粘液から淋菌DNAが検出され,急性淋菌性腹膜炎と診断した。淋菌性腹膜炎は頻度が低いものの疼痛が強く,急性腹症の原因として鑑別する必要がある。早期の腹腔鏡下ドレナージは診断を確定するのみならず,低侵襲で効果的な腹腔内洗浄や入院期間の短縮に有用と思われた。
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─十二指腸空腸端側吻合による再建─
川村 一郎, 高須 直樹, 佐藤 多未笑, 柴田 健一, 蜂谷 修, 木村 理
2016 年 36 巻 1 号 p.
143-146
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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19歳,男性。自動車事故による腹部打撲で救急搬送。CTで十二指腸管腔構造の不明瞭化などを認め,十二指腸損傷の診断で緊急手術となった。十二指腸下行脚の亜全周性の破裂,水平脚の挫滅,右側横行結腸の漿膜筋層損傷を認め,十二指腸空腸端側吻合術,結腸右半切除術を施行した。術後は大きな合併症なく経過し,第32病日に退院となった。外傷性十二指腸損傷は病変が後腹膜腔に限局すると所見が出にくいこともあり,診断に難渋することも多い。しかし,手術のタイミングが遅れると縫合不全のリスクが高くなり,救命率はかなり減少してしまう。手術では損傷部の単純縫合閉鎖のみではなく,吻合部を減圧し,消化液から保護することが重要である。また,術中は見落としをなくすため,確実にKocherの授動を行うことが必要である。受傷後早期に診断し,侵襲の大きな膵頭十二指腸切除術を回避して,適切な術式を選択すれば,救命は可能である。
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─本邦68例の検討─
山本 基, 那須 亨, 出口 真彰
2016 年 36 巻 1 号 p.
147-151
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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非外傷性の膀胱自然破裂は比較的まれな病態とされる。今回われわれは放射線照射後の神経因性膀胱炎に起因するとみられる膀胱自然破裂の1手術例を経験した。症例は68歳の女性,下腹部痛を主訴に来院した。23年前に子宮頸癌に対して広汎子宮全摘術・放射線療法を受けた。来院2時間後に腹痛の急激な増悪と白血球減少・アシドーシスの出現を認め,腹部造影CTでは腹水の出現を認めた。このため消化管穿孔または絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行したところ,膀胱頂部に穿孔を認め,同部を縫合閉鎖し手術を終了した。自験例を含む膀胱自然破裂68例の本邦報告例の検討から,膀胱自然破裂は従来考えられていたほどまれではなく,放射線照射の既往を有する患者が多いことが判明した。特徴的な所見に乏しい本症は,急性腹症患者の鑑別疾患の一つに加えておくべきで,診断治療には自科の考えにとらわれない,横断的な視点が必要である。
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石井 健太, 平松 和洋, 加藤 岳人
2016 年 36 巻 1 号 p.
153-158
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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症例1は70歳代, 女性。半日前からの心窩部痛を主訴に当院を受診した。腹部CTで十二指腸下行脚の憩室と後腹膜気腫を認め,十二指腸憩室穿孔と診断した。発症から来院までの時間が短く,後腹膜腔の液体貯留が少量であったため保存的治療を選択した。症状はすみやかに軽快し第19病日に退院した。その後2年間再発を認めていない。症例2は70歳代, 女性。3日前からの腹痛を主訴に当院を受診した。腹部CTで十二指腸下行脚の憩室と,後腹膜気腫,後腹膜液体貯留があり,十二指腸憩室穿孔と診断した。発症から時間が経過しており緊急手術を行った。穿孔部縫合閉鎖,大網被覆,胃空腸吻合,十二指腸・胆道ドレナージを行った。術後経過良好で,合併症なく第20病日に退院した。十二指腸憩室穿孔はまれな疾患であるが,診断には腹部CTが有用と思われ,また発症早期の症例では保存的治療が奏効する可能性がある。
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沖原 正章, 高野 公徳, 片柳 創, 小澤 陽介, 疋田 康祐, 佐野 達, 富田 晃一, 千葉 斉一, 河地 茂行
2016 年 36 巻 1 号 p.
159-162
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は49歳男性。既往に特記すべきものはなかった。1週間前より大量の水様下痢が出現し,脱力を主訴に救急搬送された。腹部造影CT検査にて腹腔内遊離ガス,多量の腹水,小腸の造影不良に加え,上腸間膜静脈から門脈と脾静脈に及ぶ血栓を認めた。敗血症性ショックを呈しており,同日緊急手術を施行した。広範囲に及ぶ小腸の壊死と多量の汚染腹水および腹腔内膿瘍を認め,術中超音波検査では静脈血栓は末梢の肝内門脈まで進展し血栓除去は困難と考えられた。壊死小腸の切除・腹腔内洗浄ドレナージを施行したが,術後3日目に死亡した。血液,腹水,膿瘍内容の培養からは,いずれもSalmonella entericaが検出された。基礎疾患のない成人にサルモネラ感染症が敗血症を呈すること,門脈血栓症を合併することは極めてまれであり,貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告する。
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丸山 傑, 岡本 廣挙, 川島 健司, 藤井 秀樹
2016 年 36 巻 1 号 p.
163-167
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
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フリー
症例は57歳,男性。以前,胆石胆囊炎を発症したが,以降通院しなかった。6年後,腹痛,嘔吐が出現し,胆石イレウスと診断され入院となった。腹部CT検査にて十二指腸水平脚に30mm大の石灰化腫瘤影を認め,その後,結石は空腸内にまで移動した。以降イレウス症状を繰り返したため,保存的加療困難と考えて手術を施行した。手術は単孔式腹腔鏡下に結石の嵌頓部位を同定し,臍部の小切開創から小腸を体外に導出し,切開し,採石を行った。胆石イレウスに対する標準的術式は定まっていないが,小腸に存在する結石に対しては,腹腔鏡下での解除が望ましいと考える。十二指腸に嵌頓した結石に関しても小腸に移動するとする報告が多数存在し,同様に低侵襲な治療が可能であると考えられる。今回,結石の経時的移動の観察により,低侵襲な治療が可能となった貴重な症例を経験したので報告する。
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和久 利彦
2016 年 36 巻 1 号 p.
169-172
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は26歳,女性。自転車同士の衝突の際,ハンドル先端で上腹部を強打した。増強する上腹部痛で受傷4時間後に救急搬送された。腹部全体の圧痛,上腹部の腹膜刺激症状,血中アミラーゼ高値,腹部CTでの液体貯留,膵体部の30mm大の高吸収域から主膵管損傷を疑い,受傷6時間後に緊急手術を施行した。膵体部でⅢb型の膵損傷を呈していたが,他臓器に損傷は認めなかった。術式は,膵脾機能温存を図るためBracey法を選択した。術後は,縫合不全や膵液瘻もなく経過し,第28病日目に退院した。術後8年目の現在,膵内外分泌能に異常はなく,尾側膵管の開存性は保たれていると考えられた。バイタルが安定したⅢb型膵体部損傷の術式として,Bracey法も安全な術式であると考えられる。
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三宅 亮, 村田 厚夫, 中沼 寛明, 古城 都, 西中 徳治
2016 年 36 巻 1 号 p.
173-176
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
開放性骨盤骨折は出血や骨盤内深部感染症を引き起こし,高い死亡率を示す重症外傷の一つである。われわれは,墜落外傷による他臓器損傷と出血性ショックを伴った開放性骨盤骨折に対し,ダメージコントロール手術を実施し,fecal diversionとして人工肛門造設と直腸用カテーテルを併用し深部感染予防に対処し救命し得た1例を経験したので報告する。
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長野 真由子, 田端 正己, 加藤 憲治, 阪本 達也, 藤村 侑, 前田 光貴, 春木 祐司, 大澤 一郎, 岩田 真, 三田 孝行
2016 年 36 巻 1 号 p.
177-181
発行日: 2016/01/31
公開日: 2016/04/26
ジャーナル
フリー
症例は86歳女性。入院4日前から腹痛の出現と改善を反復した。受診当日に突然,腹部全体に強い痛みが出現し,当院に救急搬送された。腹部は平坦であったが全体に強い圧痛を認め,筋性防御および反跳痛を伴っていた。CTでは肝表面に腹腔内遊離ガスを認め,肝および脾周囲に少量の腹水が貯留していた。また,回腸─回腸型の腸重積と同部に回腸腫瘤を認めた。回腸腫瘤による腸重積および腸管穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した。術中所見では回腸末端から約60cm口側に順行性の腸重積を認め,先進部に弾性軟の腫瘤を触知し,その口側に穿孔を伴っていた。重積腸管と穿孔部を含め約60cm回腸を切除した。切除標本で重積先進部に最大径約65mmの弾性軟の有茎性粘膜下腫瘍を認め,病理組織学的には炎症性線維性ポリープと診断された。頻度は少ないが,成人腸重積や穿孔の原因として本症の存在を念頭におくことが重要である。
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