日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
36 巻 , 6 号
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原著
  • 宇高 徹総, 松本 尚也, 山本 澄治, 久保 雅俊
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1007-1012
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    2008年1月から2015年12月までの8年間に大腸穿孔と診断し緊急手術を施行した96例について,術前予後因子に関して臨床的検討を行った。11例の在院死亡を認め,急性期病態に関連した死亡は10例(10.4%)であった。死亡群の術前の各因子を検討した結果,多変量解析で術前PLT<100,000/μL,術前人工透析あり,術前ショックありが独立した術前予後因子となった。術前SOFA scoreは生存群と比べて死亡群で有意に高く,各パラメーターの比較では,凝固系,心血管系,腎機能の項目が死亡群で有意に高かった。大腸穿孔ではさまざまな臓器障害を呈し重篤になるため,早期の予後不良因子を有する症例の見極めと集学的な管理が重要である。

  • 柳橋 浩男, 小杉 千弘, 首藤 潔彦, 森 幹人, 平野 敦史, 佐塚 哲太郎, 菊地 祐太郎, 廣島 幸彦, 松尾 憲一, 田中 邦哉, ...
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1013-1019
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    保存的治療後のinterval appendectomyの概念が広がりつつあるが,その手術適応やタイミングについては主観的判断の要素も含まれ議論の余地は多い。当科での待機的腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic interval appendectomy: LIA)の臨床所見と周術期成績を準緊急的腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic emergency appendectomy: LEA)と後方視的に比較した。その上でLIA選択のための客観的判断基準として,入院翌日の白血球数,CRP値,CT所見での膿瘍の程度,小腸拡張の有無,腹水の程度を用いた重症度スコア(IAスコア)を構築した。IAスコアを用いたLIAとLEAの分別能は感度91.9%,特異度90.9%であり,4点以下は保存加療が可能でLIA適応あり,5点以上はLEAを念頭に置いた入院管理を行う必要がある。

特集:腹部外傷における腹腔内出血コントロール―Interventional RadiologyとDamage Control Surgeryの適応の限界―
  • 村田 希吉, 関谷 宏祐, 大友 康裕, 齋藤 大蔵
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1023-1026
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    Damage Control Surgery(以下,DCS)の適応基準については多くの議論がある。今回,われわれは日本外傷データバンク(以下,JTDB)から開腹手術を受けた外傷患者4,447例を抽出し,DCSを受けた532例と通常の開腹手術を受けた3,915例を分析した。DCS群は来院時のバイタルサインが悪く,FAST陽性率,輸血率,死亡率いずれも高かった。ロジスティック回帰分析では脈拍,体温,意識レベル,受傷機転が独立したDCS予測因子であった。この予測因子をカテゴリー化し,重み付けをしてDamage Control Indication Detecting Score(DECIDE score)を作成したところ,死亡率との相関を認め,体温,意識レベル,受傷機転の3つの情報でDCSの適応判断が可能であった。Cut off値5点での死亡率は30.8%,感度64.8%,特異度70.0%であった。本スコアはプレホスピタルで判断可能であり,術前から外傷チーム内での意識共有が可能である。

  • 金子 直之
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1027-1032
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    【方法】過去29年間に経験した脾損傷150例を,治療方針により3群(Ⅰ期:手術主体(1988~1995,40例),Ⅱ期:積極的TAE(1996~2002,41例),Ⅲ期:早期開腹(2003~2016,69例))に分け,TAEの功罪について検討しつつ治療の成功率(治療方針の変更有無)と脾温存率について比較した。【結果】治療方針の変更が各期に7%,17%,9%あった。Ⅱ期には初療でTAEを行った11例中5例で後に脾摘となり,これらはすべてCTで造影剤の脾外漏出を伴っていた。また疼痛管理のため持続硬膜外麻酔を要した症例と,一旦退院後に脾梗塞・膿瘍・胸水で再入院を要した症例を経験した。Ⅲ期には循環動態不安定と,CTで造影剤の脾外漏出を認めるものは開腹適応とし,温存術を意識した。結果,最終的温存率は各期で43%,51%,78%であった。【結語】現行の治療方針は途中変更が少なく温存率を最も高くできる。

  • 松田 真輝, 澤野 誠, 大河原 健人, 佐川 幸司
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1033-1036
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    【背景】Damage Control Surgery の概念が拡がり,術前CTの省略やガーゼパッキングが一般的になった。しかし,医療技術が進歩した現在では一期的な根治的止血(definitive hemostasis:以下,DH)は可能であると考えている。【対象と方法】過去10年間で,循環動態が不安定な外傷性腹腔内出血に対して開腹手術を施行した症例を対象とした。ガーゼパッキングを最後に施行した2012年9月以前を前期群,それ以降を後期群として,両群間で比較した。【結果】前期群94例,後期群35例であり,injury severity score(以下,ISS),損傷臓器,病着から執刀開始までの時間,および手術時間は両群間で有意差はなし。術前CT施行率は全期間で高い水準にあった。院内死亡率は,後期群で有意に減少した。【結論】医療技術が進歩した現在,大量腹腔内出血に対しても,術前CTによる出血源を特定し,DHを指向した治療方針は妥当である。

  • 益子 一樹, 服部 陽, 阪本 太吾, 中山 文彦, 安松 比呂志, 本村 友一, 斎藤 伸行, 八木 貴典, 原 義明, 松本 尚
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1037-1042
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    腹部臓器損傷に対するわれわれの戦略は以下のごとくである。①3項目のDamage Control Score(以下,DC score)から蘇生の要否を迅速に評価。②循環が安定し,造影CTが撮影可能であった症例には,TAEを考慮。③循環不安定症例や腹膜刺激症状を伴う症例には開腹手術優先,術後TAEを考慮。2011年10月からの3年間に開腹手術を行った腹部外傷症例を,戦略決定,止血戦術の選択について後方視的に検討した。スコアとDamage Control Surgery(以下,DCS)施行率には相関がみられ,DCS群はnon─DCS群と比較して生理学的,解剖学的に重症群であり,適切な症例選択がなされていた。Damage Control Resuscitation(以下,DCR) with DCSとした症例のうち初療室開腹群は手術室開腹群と比べて緊急度が高く,われわれのDCR戦略,止血戦略は遵守されていた。切迫心停止4例を含む8例の予測生存率50%未満の生存例を得ることができたが,戦略,戦術の選択,その成績には何らかの評価指標を定めていく必要がある。

  • 金 史英, 萩原 純, 石井 浩統, 松居 亮平, 萩原 令彦, 片桐 美和, 増野 智彦, 新井 正徳, 辻井 厚子, 横田 裕行
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1043-1051
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    止血を要する腹部外傷は非手術的治療(NOM)に大きくシフトしたが,すべてでNOMが可能とは限らず,止血法の選択が重要である。われわれは腹腔内出血制御症例の転帰改善のための課題を抽出することを目的とし,自施設の症例を後ろ向きに検討した。対象と方法:2006年1月より2013年6月までの腹腔内出血制御症例。【結果】全84例中,8例(9.5%)が死亡した。59例に腹腔内単独止血を要し,手術単独止血2例(3.4%)が死亡し,TAE選択は全例救命した。骨盤に出血制御を要した症例は18例で5例(27.8%)が死亡し,骨盤の非出血制御例と比べ有意に死亡率が高かった。【結語】骨盤の出血制御の成功が腹腔内出血制御症例の転帰を改善することが示唆された。

  • 船曵 知弘, 折田 智彦, 佐藤 智洋, 北野 光秀
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1053-1059
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    【背景】腹部鈍的外傷患者におけるCTや経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)の有用性の報告は多い。【目的】CTを加味した日本外傷学会分類から治療方針の考え方,TAEの適応と限界を調査する。【方法】5年間にCTで肝損傷と診断した症例を抽出し,日本外傷学会分類2008に血管外漏出像(extra)を加味し,初期の治療方針とその成功率を検討した。【結果】肝損傷は50例,TAEも行わない非手術的治療を選択したのは33例で,いずれも追加治療は必要なかった。TAEは14例で,2例は腹部コンパートメント症候群(ACS)のために開腹手術(OM)を行った。1例は循環動態の改善がないためにOMを行った。計画的にOMとTAEとの両者を併用したのは2例であった。【考察】TAEの適応はCTでのextraであるが,循環動態によって治療方針を転換する,ACSの出現によって追加治療(OM)を施行する判断を遅延させてはならない。

  • 近藤 浩史, 棚橋 裕吉, 大澤 まりえ, 山本 敬洋, 横山 太郎, 菅原 利昌, 古井 滋
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1061-1067
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    高エネルギー外傷による重傷骨盤骨折は,出血性ショックの原因となる後腹膜血腫や合併損傷,多発外傷を生じる重篤な状態を引き起こし,死に至ることも少なくない。高エネルギー外傷では骨盤正面X線写真を系統的に読影し,すみやかに治療戦略を立てる。骨折部の安定化や止血術には簡易固定法,創外固定,骨盤パッキング,動脈塞栓術がある。動脈塞栓術は広く普及し,その有用性が報告されている。骨盤骨折の診断,治療方法を理解することは重要であり,本稿では骨盤骨折の診断から動脈塞栓術の方法について概説する。

症例報告
  • 上村 淳, 岡野 圭一, 若林 彩香, 野毛 誠示, 浅野 栄介, 臼杵 尚志, 鈴木 康之
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1069-1072
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は90歳の男性で,昼食後より右下腹部痛が出現し救急搬送となった。右下腹部に圧痛・筋性防御を認め,造影CTを施行したところ,腸管拡張,腸管壁の造影不良とwhirl sign,多量の腹水を認めたため絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した。腹腔内では小腸─小腸間で結節(true knot)を形成し,絞扼により腸管虚血は広範におよんでいた。まず腸管結節を解除した後,305cmの腸管切除を必要とした。しかし小腸の長い症例であったため,残存小腸は300cmと比較的十分な長さを確保することができた。術後経過は良好で術後19日目にリハビリを継続するため転院となった。腸管結節形成症は二つの腸係蹄が結びつき結節を形成する疾患であり,その多くは回腸─S状結腸間型である。われわれは非常にまれな小腸─小腸間型腸管結節形成症(true knot)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 渡邊 裕策, 古谷 圭, 友近 忍, 的場 勝弘
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1073-1076
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は61歳の男性で,腹痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診し,診察中に突然ショック状態となった。CTで腹腔内出血が疑われ,緊急開腹手術を施行した。腹腔内に大量の血液と小腸間膜内の破裂した血腫を認め,血腫のある腸間膜とその領域の空腸を切除した。術後約30時間後に再度ショック症状が出現し,CTで術後出血を疑い再開腹を行った。前回手術時異常のなかった下行結腸間膜内に血腫を形成しており,血腫の拡がる腸間膜とともに結腸左半切除術を施行した。本症例は外傷や出血性疾患,抗血栓薬服用など出血原因となりえる背景が認められず特発性の腸間膜血腫と診断した。特発性腸間膜血腫は原因不明のまれな疾患であるが,過去に再発をきたした報告はない。今回われわれは連日にわたり異なる部位より出血を繰り返した特発性腸間膜血腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 上坂 貴洋, 奥田 耕司
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1077-1080
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,女性。下腹部膨満感を主訴に当院消化器内科を受診し,その後2ヵ月間憩室炎および膀胱炎として保存的に治療されていた。突然の下血を認めたため再受診し,腹部CTでS状結腸内の異物による憩室穿孔および膿瘍形成,結腸膀胱瘻が疑われたため,同日当科紹介,緊急入院となった。バイタルサインが安定していたため準緊急でS状結腸切除術および膀胱部分切除術を施行した。摘出標本ではS状結腸の憩室に30mm大の魚骨が迷入,結腸壁を貫通しており,これが原因で結腸穿孔および結腸膀胱瘻を形成したものと考えられた。魚骨による結腸膀胱瘻の形成は比較的まれであり本邦での報告は過去2例しかない。若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 北山 紀州, 渋谷 雅常, 前田 清, 永原 央, 大谷 博, 大平 雅一, 平川 弘聖
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1081-1084
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は41歳女性。大量下血を主訴に近医を受診し,上部・下部消化管内視鏡検査,腹部CT検査を施行するも出血源を同定しえず,下血が継続するために精査加療目的に当院へ転院となった。小腸出血を疑い,ダブルバルーン内視鏡検査を施行したところ,回腸中部に露出血管を伴う微小な粘膜下腫瘍を認め,点墨ののち腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した。病理組織学的検査の結果,小腸平滑筋腫と診断された。小腸出血の術前診断は困難とされてきたが,近年ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の普及により術前診断しえた報告が散見されるようになってきた。今回われわれは,ダブルバルーン内視鏡検査により出血源を同定し,腹腔鏡手術を施行した小腸平滑筋腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

  • 鳴坂 徹, 林 同輔
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1085-1088
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は90歳女性。S状結腸癌,多発肝転移疑いで当院紹介受診。下部消化管内視鏡でS状結腸に全周性の2型進行大腸癌を認めた。scopeは通過不能であり,CTで多発肝転移を認めたため緩和目的に大腸ステント(WallflexTM metallic stent 22mm×9mm)を挿入。挿入後3日目に嘔気と腹痛出現。CTで腹腔内にfree airと腹水を認め,消化管穿孔を疑い緊急手術施行。術中所見では口側,肛門側ともにステント端で腸管壁が菲薄化し穿孔していた。S状結腸の癌腫は小腸間膜に浸潤固着し弯曲していたため,ステントが拡張する際のaxial force(屈曲した腸管を直線化する力)によりステント端が腸管に先あたりして穿孔したと考えられた。他臓器浸潤による腸管の弯曲と可動性低下は,ステント留置後に遅発性穿孔をきたすリスクと考えられ,留置の際にはこの可能性を念頭に置く必要があると考えられた。

  • 吉武 健一郎, 池田 直哉, 中村 浩志, 尾本 和, 神代 祐至, 西蔭 徹郎, 兼信 正明, 椿 昌裕, 加藤 奨一
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1089-1092
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,女性。自宅前で転倒,腹部を打撲し,腹痛を主訴に救急外来受診。腹部全体に圧痛,筋性防御を認めた。腹部造影CTでは,左上腹部から骨盤内に境界明瞭で,内部はやや不均一な濃度を示す径24cm程の腫瘤が描出された。腫瘤上部に内容液の被膜外漏出を疑う所見があり,外傷を契機とした成熟囊胞奇形腫破裂に伴う汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した。開腹所見で巨大な右卵巣腫瘍を認め,腹腔内には脂肪成分に富む腫瘍内容物が流出しており, 術前診断通り外傷性右卵巣成熟囊胞奇形腫破裂であった。左卵巣にも4cm大の同様の腫瘍を認めたため,両側付属器切除術とドレナージを施行した。病理組織所見では,卵巣成熟囊胞奇形腫を背景として偶発的に微小な扁平上皮癌の病巣を認めた。軽快退院後は,婦人科で経過観察中である。術前診断が可能であった外傷性卵巣成熟囊胞奇形腫破裂の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 松田 和広, 村上 雅彦, 青木 武士, 藤森 聰, 榎並 延太, 山崎 公靖, 五藤 哲, 渡辺 誠, 大塚 耕司
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1093-1097
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    鈍的単独膵損傷は比較的まれな外傷である。膵単独損傷に対しLetton-Wilson手術を施行した2例を経験したので報告する。症例1は17歳の男性,バスケットボール中に上腹部を受傷。受傷翌日に腹痛の増悪を認め,腹部CTにて膵体部に低吸収域を認めた。ERPにてⅢb型膵損傷と診断し緊急手術を施行。術中所見では門脈腹側で膵実質の完全断裂を認めた。若年で全身状態も良好であったため膵温存手術を選択しLetton-Wilson手術を施行した。症例2は22歳の男性,野球中に選手間で接触し受傷。腹部CTおよびERPにてⅢb型膵損傷と診断し緊急手術を施行。症例1同様に膵実質の完全断裂を認め,同手術にて再建した。2例とも重篤な合併症なく軽快退院した。膵損傷に対する手術は個々の症例に応じて適切な術式を選択する必要があるが,若年者で膵温存が期待できる場合,Letton-Wilson手術も考慮すべき術式と考えられた。

  • 伊藤 直, 西川 佳友, 春木 伸裕, 江田 匡仁, 原田 幸志朗, 川上 賢一, 高須 惟人, 辻 秀樹
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1099-1102
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    四肢の急性動脈閉塞症は疼痛・蒼白・運動麻痺などの虚血所見を示す。今回,腹部鈍的外傷の症例で下肢虚血の症状・所見がなく,腹腔内損傷に気を取られたため全身CTの初期読影で腸骨動脈閉塞が診断できなかったが,すみやかな放射線科読影により救肢できた経験をした。55歳男性が交通事故で腹部鈍的外傷を受け,強い腹痛を訴えたが下肢虚血の症状・所見がなく,CTで消化管穿孔・腹腔内出血と診断して緊急手術を始めた。術中に放射線科医が左総腸骨動脈閉塞を指摘し,血行再建を行い救肢した。緊急治療が必要な疾患に対し早期に治療介入するには,外傷時全身CTでは系統的な初期読影が必要であり,「FACT(Focused Assessment with CT for Trauma)からはじめる3段階読影」は有用である。また,放射線科医による読影・多断面再構築像作成での読影サポートなど,院内多発外傷連携が重要である。

  • 牛田 雄太, 平松 聖史, 関 崇, 鈴木 優美, 尾崎 友理, 新井 利幸
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1103-1106
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は83歳男性。右下腹部痛を主訴に当院を受診した。来院時右下腹部に圧痛を認めたが,腹膜刺激徴候は認めなかった。血液生化学検査では炎症反応が軽度上昇し,腹部造影CT検査では虫垂は50×32mmに腫大し,内腔に液体貯留を認めた。虫垂壁は一部菲薄化し,根部の連続性が不明瞭であった。壊疽性虫垂炎あるいは虫垂粘液囊腫を疑い,同日手術を施行した。開腹すると,腫脹・緊満した虫垂を認め,根部で約720度捻転していた。捻転を解除すると虫垂は囊状に腫大し,大部分は壊死に陥っていたが穿孔は認めなかった。虫垂粘液囊腫の捻転と診断し虫垂切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的診断は,low-grade appendiceal mucinous neoplasmであった。術後経過は良好で,第6病日に退院し現在まで2年10ヵ月再発を認めていない。

  • 佐野 史穂, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 佐野 周生, 齋藤 健一郎, 三井 毅
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1107-1100
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,男性。多発肝転移,リンパ節転移を伴うStage ⅣのRb直腸癌に対しMiles手術を行った。術後4日目,ドレーンより血性排液を認め,CTで転移巣内の血腫とその内部への造影剤の漏れを認め,転移巣の破裂と出血と判断し,緊急TAEを施行し止血した。その後再出血は認めずmFOLFOX6+Cetuximabの投与を開始したが,転移巣の増大に伴い黄疸が悪化し,肝不全の進行により術後28日目に死亡した。転移性肝癌は一般的にvascularityに乏しく,硬い被膜を有するため,自然破裂はまれであるとされており,大腸癌の肝転移巣の破裂の報告は本邦では本例が3例目,直腸癌に限ると本例がはじめての報告であった。本症例では,腫瘍径の急激な増大を認め,腫瘍内圧増大による血管の破綻や被膜の破裂が疑われた。

  • 貝原 正樹, 伊藤 康博, 船曳 知弘, 江川 智久, 長島 敦, 北野 光秀
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1111-1114
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    われわれは,肝膿瘍治療中に生じた仮性肝動脈瘤に対して血管内治療を施行した症例を経験したので報告する。症例は60代,男性。食欲不振を主訴に,前医受診し,多発肝膿瘍の診断,入院となった。抗菌薬治療後は炎症所見改善し,全身状態も改善傾向であった。加療2週間後に当院に転院し,治療評価目的で造影CTを施行したところ,A6分枝に約2cm大の仮性動脈瘤を認めた。同日緊急IVRを行い,塞栓術を施行した。経過良好にて術後第14病日に退院した。本症例は,画像評価で偶発的に発見された仮性動脈瘤であったが,肝膿瘍治癒過程で良好な経過をたどっていたとしても,本疾患を念頭に置いて定期的な画像評価を行う必要性があると考える。

  • 山城 直嗣, 伊藤 康博, 江川 智久, 長島 敦, 北野 光秀
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1115-1119
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は36歳の女性。前医より肝腫瘍の増大を指摘され,精査目的に当院紹介となった。腹部CT造影検査および腹部超音波検査で,肝S4に約50mm大の腫瘤像を認め,肝細胞腺腫と考えられた。受診直後より連日39℃以上の高熱が持続した。保存的治療を行うも軽快せず,腫瘍もさらに増大傾向を示した。肝表面に露出した病変であり経皮的肝針生検は施行できないため,診断的治療目的で肝部分切除術を施行した。病理学的に肝Inflammatory pseudotumorと診断された。術直後から解熱し,術後経過良好にて第6病日に軽快退院となった。肝Inflammatory pseudotumorは良性腫瘍であるが,特異的画像所見がなく,診断に難渋することが多い。本症例のように,良性腫瘍と考えられるが,針生検が困難で,腫瘍の急激な増大かつ臨床症状を伴う症例では,手術による診断的治療も選択肢の1つとして考慮された。

  • 喜安 佳之, 太田 智之, 加納 宣康
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1121-1124
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性,心窩部痛を主訴に来院し膵酵素の上昇とCTで膵の腫大を認め膵炎と診断された。急性腎不全と呼吸不全が進行し, 重症急性膵炎と診断された。腹部膨満が増悪し入院6日目に膀胱内圧が25mmHgを超え,血圧が維持できなくなったためAbdominal Compartment Syndrome (以下,ACS)の診断で外科的減圧術を施行した。筋膜のみを白線で正中切開し腹膜は保存した。腹腔内圧は11mmHgまで減少し血圧は安定した。術後創部はVacuum Packing Closureで管理し術後18日目に両側腹直筋前鞘翻転法とComponents Separation Method(以下,CSM)を併用して閉創した。術後筋膜壊死は認めなかった。急性膵炎によるACSに腹膜を温存した減圧術を行い両側腹直筋前鞘翻転法とCSMを併用して再建した報告はないが有用であった。

  • 野々山 敬介, 北上 英彦, 安田 顕, 松井 琢哉, 藤幡 士郎, 山本 稔
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1125-1129
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は86歳,男性。1ヵ月前に右下腹部痛と発熱を認めたが,放置していた。その後,症状は軽快したが食思不振が続くため,当院を受診した。腹部CTで腫瘤形成性虫垂炎が疑われたが,腫瘍性病変の可能性も否定できなかったため,精査後にinterval laparoscopic appendectomy(以下,ILA)の方針で外来通院とした。その11日後,再度発熱し当院を受診し,血液検査で肝機能障害および炎症反応の上昇,腹部CTで肝S6に膿瘍形成を認めた。肝膿瘍に対する治療を優先し,肝膿瘍が改善した後にILAを施行した。近年では虫垂炎に続発する経門脈性肝膿瘍はまれである。今回われわれは,腫瘤形成性虫垂炎の経過観察中に生じた肝膿瘍の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

  • 長谷部 圭史, 平松 聖史, 関 崇, 鈴木 優美, 牛田 雄太, 尾崎 友理
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1131-1134
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,女性。過去に子宮脱・膀胱脱に対するペッサリー挿入が原因で直腸膣瘻を形成していた。ペッサリー抜去後も直腸膣瘻は治癒せず,それに伴う子宮留膿腫の形成を認めていた。外来で経過観察中の2012年7月突然の腹痛を主訴に当院を受診。下腹部に圧痛,腹膜刺激徴候を認めた。経膣的超音波検査,腹部CT検査で子宮留膿腫,腹水の貯留,腹腔内の遊離ガスを認めた。消化管には憩室や壁肥厚などの異常所見は認めなかったが,急性穿孔性腹膜炎と診断し,緊急開腹術を施行した。開腹すると子宮に穿孔を認め,留膿腫穿孔による腹膜炎と診断した。子宮全摘術,両側付属器切除術を行った。直腸膣瘻も切除し,直腸は縫合閉鎖した。本症例は,子宮留膿腫穿孔を念頭に置いていれば,経過とCT所見から術前診断しうる症例であった。また直腸膣瘻に起因した子宮留膿腫穿孔は過去に報告例がなく,まれな症例であると考える。文献的考察を加えて報告する。

  • 川田 三四郎, 西脇 由朗
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1135-1138
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は26歳,女性。以前から月経時に右下腹部痛を自覚することがあった。月経4日目に食思不振,腹痛,発熱を主訴に近医を受診し,急性虫垂炎の疑いで当院を紹介受診した。腹部US検査,CT検査所見から急性虫垂炎と診断。虫垂切除術を行った。虫垂は先端部が腫大し硬結がみられた。病理組織検査で,虫垂先端部付近の筋層から漿膜下層に子宮内膜を認め虫垂炎子宮内膜症および蜂窩織炎性虫垂炎と診断された。肥厚した子宮内膜により虫垂内腔が閉塞し虫垂炎を発症したことが示唆された。他臓器に内膜症の所見がないことを確認し,現在術後12ヵ月無症状で経過観察中である。虫垂子宮内膜症は比較的まれな疾患であるが,時に虫垂炎の原因となりうる。形態的異常を認めることが多く,病理学的検索が重要である。文献的考察も加えて報告する。

  • 滝口 光一, 佐藤 和磨, 齊藤 亮, 輿石 直樹
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1139-1143
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    64歳男性。腹部の張りを認め,来院された。炎症反応の上昇を認め,CTで十二指腸水平脚に線状の high densityな構造物と周囲の小腸間膜にairを認めた。魚の摂取歴があり,魚骨の十二指腸水平脚穿通と診断した。緊急内視鏡を施行し,魚骨を摘出した。さらに腸管内容物の漏出を防ぐため,透視下で穿通部近傍に胃管を留置し,持続吸引を行った。その後保存的治療で改善し第12病日に退院された。十二指腸魚骨穿孔・穿通は頻度が低く,本邦では本症例を含めて25例の報告があった。水平脚に限ると9例しかなく,手術を行わず,保存的治療で改善したものは本症例のみであった。今回われわれは内視鏡的に魚骨を摘出したことに加え,胃管による持続吸引を用いて保存的に治療できた症例を経験したので報告する。

  • 古木 裕康, 菅野 仁士, 松谷 毅, 萩原 信敏, 野村 務, 町田 幹, 内田 英二
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1145-1148
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は49歳,女性。10年前より年に1~2回程度,右下肢痛を伴う下腹部痛を認めていたが,半日程度で症状は自然に消失しており,坐骨神経痛と診断されていた。今回,右下肢痛を伴う下腹部痛が軽快せず,当院救急外来を受診した。直腸診にて直腸に壁外性腫瘤を触知し,同部位の圧痛および右下肢痛の増強を認めた。腹部CT検査を行い,右坐骨ヘルニア嵌頓と診断した。緊急手術を施行し,右坐骨孔にRichter型に嵌頓した小腸を認め,牽引し解除した。腸切除は施行せず,ヘルニア門を卵巣で被覆した。坐骨ヘルニアはまれな疾患であるが,原因不明の繰り返す下腹部痛に坐骨神経痛を伴う場合には,坐骨ヘルニアを鑑別診断としてあげ,現病歴・既往歴の十分な聴取をしたうえでの直腸診が有用であると考えられた。

  • 肱川 健, 山田 正法, 權 雅憲
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1149-1151
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    子宮全摘出術後の膣断端離開は,まれな病態である。今回われわれが経験した症例は,71歳女性,多発性筋炎にて長期間ステロイド剤を内服していた。2011年3月,子宮脱に対して膣式子宮全摘・膣前壁形成術を施行した。術後経過は良好であったが,同年12月に膣断端離開とこれによる腸管の脱出をきたし,緊急開腹手術にて膣断端縫合術を施行した。しかしながら,2012年5月に再度断端離開・腸管脱出をきたし,再度開腹手術にて膣断端再縫合術を施行した。ともに脱出小腸の壊死は認めず,腸管の切除を要しなかった。今回の症例では,ステロイド剤使用による創傷治癒異常が膣断端離開に関与した可能性がある。ステロイド内服患者においては,術後のより慎重な観察や確実な膣断端処理が必要と考えられる。

  • 林 裕樹, 宮平 工, 国吉 史雄, 花城 直次
    2016 年 36 巻 6 号 p. 1153-1157
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2017/01/18
    ジャーナル フリー

    症例は83歳男性。下血精査にて来院し,上行結腸に径50mm大の巨大憩室を認めた。憩室出血の診断で保存的に改善し,経過観察の方針となった。1年後に突然の右側腹部痛を主訴に外来受診。CTで巨大憩室が径67mm大と拡大を認め,さらに周囲脂肪織混濁とfree airも認め,巨大憩室穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術となった。手術は開腹下結腸右半切除術,腹腔ドレナージ術を施行した。腸管浮腫は軽度であったため回腸結腸は一期的に吻合した。切除標本では65×72mm大の憩室を認め,内腔は糞便で占拠されていた。術後経過は良好で術後13日目に自宅退院となった。病理では固有筋層は不明瞭で仮性憩室と考えられた。巨大憩室は比較的まれな疾患で穿孔や腹腔内膿瘍の危険性が高い。本邦報告例の予定手術群と緊急手術群を比較すると緊急手術群で転帰不良であり,耐術能がある場合には予定手術による腸管切除が望ましいと考えられた。

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