日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
37 巻 , 3 号
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原著
  • 吉田 祐, 五井 孝憲, 呉林 秀崇, 森川 充洋, 小練 研司, 村上 真, 廣野 靖夫, 片山 寛次
    2017 年 37 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    当科で経験した閉鎖孔ヘルニア29症例を対象とし,周術期成績,治療法について後ろ向きに検討した。年齢中央値は87歳,BMI中央値は16.7,男女比は2:27であり痩せ型の高齢女性に多かった。全症例において腹部CT検査で診断が得られ,緊急手術が施行された。腸管切除群13例と非切除群16例に分けて検討したところ,術前CRP値や発症から手術までの時間は腸管切除群で有意に高値であった。また手術時間,術後合併症,術後在院期間は腸管切除群で有意に増加していた。嵌頓腸管の整復方法について牽引法と水圧法で比較を行ったが,水圧法群において腸管切除率や整復時の腸管損傷率はより少なかった。腸管穿孔や嵌頓腸管の切除を回避するためには早期診断・早期手術が重要であり,嵌頓腸管の整復は水圧法を第一選択とするべきであると考えられた。

  • 高村 博之, 太田 哲生, 藤村 隆, 大坪 毅人, 齋藤 人志, 瀬下 明良, 高田 和男, 中村 伸理子, 鍋谷 圭宏, 西村 元一, ...
    2017 年 37 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    日本腹部救急医学会の倫理委員会では,本学総会での研究発表や本学会誌への論文投稿において遵守すべき医学系研究に関する倫理指針を作成した。本指針は世界医師会のヘルシンキ宣言と文部科学省・厚生労働省が定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」などの指針を基に,より臨床の現場に即した形に修正したものである。臨床研究は,症例報告などの倫理審査が不要な研究と観察研究や介入研究などの事前の倫理審査が必要な研究とに分けられる。倫理審査が必要な研究は,倫理審査に基づく施設長の許可を得てから実施する必要がある。本学会では,移行措置として,倫理審査委員会を常設していない施設からの観察研究の発表については,施設長の許可とオプトアウト,包括同意が得られていれば,学会独自の簡易審査を可能とした。しかし,介入研究については,いかなる施設であっても事前の倫理審査が必要である。

症例報告
  • 原 貴信, 金高 賢悟, 井上 悠介, 藤田 文彦, 高槻 光寿, 江口 晋
    2017 年 37 巻 3 号 p. 407-411
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代女性。間欠的腹痛を主訴に近医を受診した。腹痛時のCTで小腸内にtarget signを認め,腸重積症の疑いで紹介となった。原因精査目的の経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行し,回盲弁より約60 cm口側に腸管内に突出する芋虫様腫瘤を認めた。腫瘤は腸粘膜に覆われ,先端に発赤・潰瘍を伴っていた。肉眼的性状および病変部位から,内翻Meckel憩室を先進部とする腸重積症と診断した。腸重積は自然に解除されており,待期的に手術を施行した。腹腔鏡下に内翻したMeckel憩室根部の同定は容易であったが,内翻した憩室の用手的解除は適わず,小腸切除を施行した。病理組織学的検査では粘膜固有層から粘膜筋板にかけて異所性膵組織,幽門腺様組織を認めた。自然軽快を繰り返す難治性の腹痛に対し,ダブルバルーン小腸内視鏡検査による術前診断は手術に際した十分な全身評価を可能にし,術式の決定において有用であった。

  • 高清水 清治, 佐藤 勤, 菊地 功, 提嶋 眞人
    2017 年 37 巻 3 号 p. 413-416
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は統合失調症で治療中の50歳代,男性。磁石が自分を守ってくれるという妄想があり,1ヵ月にわたり事務用磁石を連日のように摂取していた。腹痛が出現し当院を受診した。腹部全体に圧痛,反跳痛があり,腹部単純X線写真で小腸ガスと磁石の集塊,CTで磁石,腹水貯留,遊離ガスを認めた。小腸穿孔による急性汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。開腹所見ではTreitz靭帯より40cmの空腸内に計55個の磁石が2群に分かれて存在し3ヵ所に穿孔を認めた。穿孔部を含む小腸を切除した。術後敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群をきたしたが,術後5週間目に軽快し退院した。複数の磁石の異食後にはそれぞれが引き合うために内瘻形成,イレウス,穿孔など多彩な病状を呈する。複数個の磁石が消化管内に滞留していると判明した場合,症状が軽微でも重症化する可能性があるため,早期に手術を行う必要があると考えられた。

  • 藏田 能裕, 当間 雄之, 大平 学, 松原 久裕, 織田 成人
    2017 年 37 巻 3 号 p. 417-420
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は46歳,女性。S状結腸癌による大腸閉塞に対して,経肛門的イレウス管による減圧術を施行した。手術待機中に心室細動(VF)による心肺停止となったが,除細動により心拍再開を得た。引き続き脳低温療法を施行したが昏睡状態にあった。経過中に腫瘍穿孔をきたし,ハルトマン手術を施行した。その後,神経学的後遺症なく回復した。術後5ヵ月目に,根治的肝切除と人工肛門閉鎖術を施行した。その後,異時性の肺転移に対して術後1年4ヵ月・2年10ヵ月で,肝転移に対して術後1年6ヵ月・2年4ヵ月で複数回の切除を要し,3年3ヵ月で切除不能の多発肺転移となるも,化学療法により初回手術から4年8ヵ月の生存を得た。VFによる心停止後ケア中に腫瘍穿孔をきたした進行大腸癌の1例を経験したので報告する。

  • 高野 竜太朗, 松谷 毅, 萩原 信敏, 野村 務, 内田 英二
    2017 年 37 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    腰ヘルニアにおいても鼠径ヘルニア同様,近年Tension-freeの概念に基づいた人工繊維素材を用いた修復法が報告されている。今回われわれは,成人鼠径ヘルニア用半吸収性メッシュ(ULTRAPRO plug:以下,UPP)を用いて修復した特発性上腰ヘルニアの1例を経験した。症例は87歳の女性。左背部腫瘤を主訴に受診した。左背部に7×5cm大,無痛性で用手還納が可能な腫瘤を認めた。腹部CT検査で左上腰三角より皮下へ脱出する下行結腸を認め,上腰ヘルニアと診断し手術した。背部アプローチで,上腰三角部に脱出するヘルニア囊を確認し還納した。ヘルニア門の直径は約3.5cmであり,UPP(Mサイズ)を用いて修復した。術後3日目に退院し,術後2年経過した現在再発を認めていない。半吸収性で術後の異物感が少ないUPPは,形状もヘルニア門に適合することから,上腰ヘルニア修復術に有用であった。

  • 堀井 伸利, 小坂 隆司, 秋山 浩利, 國崎 主税, 遠藤 格
    2017 年 37 巻 3 号 p. 427-430
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例1:73歳男性。早期胃癌で腹腔鏡補助下胃全摘術(以下,LATG),D1郭清,結腸前Roux-en-Y再建施行後1年3ヵ月経過。突然の腹痛を認め,当院受診。CTで左上腹部に拡張した腸管と腹水を認め絞扼性イレウスを疑い緊急手術を施行した。術中所見ではPetersen's defectに小腸の陥入を確認し整復を行ったところ色調の改善が得られ,腸切除は行わず手術を終了した。症例2:68歳男性。LATG,D1+郭清,結腸後Roux-en-Y再建施行後2年で腹痛を認め,当院を受診した。CTで上腸間膜動脈を中心としたwhirl signと拡張腸管の造影効果の減弱を認め,絞扼性イレウスを疑い緊急手術を行った。術中所見ではPetersen's defectに肛門側の小腸が陥入し内ヘルニアを起こしていた。整復により色調の回復を確認したため腸切除は施行せず手術は終了した。Petersen’s herniaは腹腔鏡下手術の件数増加とともに報告例が急増しつつある病態でありPetersen's herniaへの今後の対応を検討するため文献的考察を加え報告する。

  • 村木 隆太, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 瀧 雄介, 渡邉 昌也, 大端 考, 金本 秀行, 大場 範行, 鈴木 誠, 高木 正和
    2017 年 37 巻 3 号 p. 431-436
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    患者は61歳,男性。3週間前からの腹痛を主訴に当院を受診した。造影CT検査で右胃大網動脈末梢側で血管径の拡張と造影剤漏出を示唆する血管外の造影領域を認め,動脈瘤破裂による出血が疑われた。診断治療目的に血管造影を施行したところ,右胃大網動脈に動脈瘤の形成が認められ,造影剤の血管外漏出部位は明らかではないものの出血は継続していた。経カテーテル的動脈塞栓療法を試みたが,止血が困難であったために手術の方針となった。血腫ごと右胃大網動脈瘤の切除を行い,術後経過は良好であった。病理組織学的には動脈瘤の原因はSegmental Arterial Mediolysisと診断された。

  • 古谷 裕一郎, 杉田 浩章, 島田 雅也, 斎藤 健一郎, 宗本 義則, 三井 毅
    2017 年 37 巻 3 号 p. 437-441
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性。右下腹部痛と腹部膨満を主訴に当院を受診した。腹部CTで骨盤内に腫瘍径14cmの分葉状腫瘍を認め,下部内視鏡検査と注腸検査でS状結腸への圧排による亜腸閉塞所見を認めたため,緊急手術を施行した。手術所見として骨盤内腫瘍はS状結腸と連続し,小腸間膜への浸潤を認めS状結腸部分切除ならびに小腸部分切除を施行した。さらに多数の腹膜播種を認め肉眼的に完全切除した。病理組織学的所見はc-kit陽性を認め,高リスクのS状結腸原発gastrointestinal stromal tumor((以下,GIST)であった。大腸原発GISTはGIST全体の5%とまれで多くは直腸が原発であり,結腸原発GISTはさらにまれである。今回われわれは亜腸閉塞を契機に発見されたS状結腸原発GISTの切除例を経験したので,これまでの結腸原発GISTの報告例とその特徴についても併せて報告する。

  • 高野 靖大, 飯野 年男, 久保 寿朗, 矢永 勝彦
    2017 年 37 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,女性。2015年8月,起床時より心窩部不快感を自覚し,腹痛,嘔吐が出現したため当院救急外来を受診した。来院時,心窩部に圧痛,筋性防御,反跳痛を認めた。腹部CT検査では空腸内に泡沫状の低吸収域を認め,その口側腸管の拡張を認めた。腹膜刺激症状を認めたため,絞扼性腸閉塞を疑い緊急手術を施行した。開腹所見ではTreitz靭帯より140cmの空腸に移動性の内容物を触知し,その口側腸管は拡張していた。同部位空腸に小切開を加え,内容物を除去したところ膨張した乾燥くらげであった。術後経過は良好で,第10病日に退院となった。乾燥くらげが原因である食餌性腸閉塞は極めてまれであり報告する。

  • 真田 祥太朗, 宇野 泰朗, 西 鉄生, 福岡 伴樹
    2017 年 37 巻 3 号 p. 449-453
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は79歳男性。起床時からの腹痛を主訴に同日夜間,救急車で当院に搬送された。来院時,左側腹部に軽度の圧痛を認めたが,バイタルサインは保たれていた。腹部造影CTで上腸間膜静脈から門脈にかけての広範な血栓および上部小腸の浮腫状壁肥厚,腹水貯留を認め,上腸間膜静脈血栓症と診断した。即座にヘパリンナトリウムを使用した抗凝固療法を開始し厳重に経過観察を開始し,IVRや緊急手術を検討していたが,徐々に血栓の縮小と症状の軽快を認めワルファリンカリウム内服で一旦退院が可能となった。経過中に上部小腸の瘢痕性狭窄を生じ,待機的に腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した。術後経過は良好で,現在エドキサバンを内服し外来通院中である。

  • 福田 明輝
    2017 年 37 巻 3 号 p. 455-460
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    1990年にはじめて報告されて以来,閉塞性大腸癌に対する治療戦略の1つとしてself-expandable metallic stent(自己拡張型金属ステント:以下,SEMS)が使用され,本邦でも保険収載以降,留置報告が多くなっている。近年ではbridge to surgery(術前一時的留置:以下,BTS)としてのSEMS留置が多く報告されるようになり,当院でも2014年より28例経験し,技術的成功率,臨床的成功率はそれぞれ100%,82%で合併症率は7%であった。また,28例のうち腹腔鏡下手術が25例で行われていた。閉塞性大腸癌に対するSEMS留置は,安全で低侵襲な減圧法であるといえる。

  • 山近 大輔, 金谷 剛志, 杉田 輝地
    2017 年 37 巻 3 号 p. 461-465
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は81歳女性。成人型スティル病の診断でステロイドを内服していた。腹痛と38度台の発熱を主訴に当院へ搬送された。採血では高度の炎症反応を認めた。腹部CT検査では骨盤内に子宮に接する形で腫瘍を疑わせる所見を認め,膀胱内にはガス像を認めたため,この腫瘍に起因する膀胱瘻が疑われた。子宮の粘膜面には異常を認めず,下部消化管内視鏡検査でも癌の診断はできなかった。ガストロ注腸検査では直腸膀胱瘻と直腸小腸瘻を認めた。診断に難渋したが,骨盤MRIを施行したところ子宮頸部後壁における膿瘍が疑われ,切開すると白色の膿汁が確認でき,HE染色でフィラメント状のG(+)桿菌が確認できたため放線菌症と診断した。治療はペニシリン大量療法を行い,繰り返す尿路感染に対して人工肛門を造設した。今回われわれは直腸膀胱瘻,直腸小腸瘻を伴い,悪性腫瘍との鑑別が困難であった骨盤放線菌症の1例を経験した。若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 青木 誠, 萩原 周一, 渋谷 圭, 江原 雅之, 澤田 悠輔, 大嶋 清宏
    2017 年 37 巻 3 号 p. 467-470
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代,男性。上腹部痛で発症し,前医で行った造影CT検査で上腸間膜動脈塞栓症を認め発症2日後に当院紹介受診となった。外来受診時の臨床所見,血液検査および画像検査から明らかな腸管壊死を示唆する所見はなく,血管造影を行った。血管造影では,上腸間膜動脈本幹の中結腸動脈分岐部から血栓閉塞を認めた。ウロキナーゼを動注するとともに冠動脈用血栓吸引カテーテルを用いて血栓吸引を行い上腸間膜動脈の血流再開が得られた。最終的に腸管切除術を回避することができた。上腸間膜動脈塞栓症については早期診断とともに閉塞部位に応じた早期血管内治療が腸管温存につながると考えられる。

  • 池田 知也, 山内 淳一郎
    2017 年 37 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    25歳,妊娠6ヵ月の妊婦。腹部への銃撃を受け来院。搬入時,意識清明で,血圧120/60mmHg,脈拍140/minであった。心窩部に射入口と大網の脱出,左季肋下に射出口と小腸の脱出を認めた。腹部は膨隆し,広範に圧痛を認めた。腹壁下に児頭を触知し,胎児超音波検査で,胎児心拍は停止していた。腹部銃創による,子宮破裂の診断で,緊急開腹手術を行った。腹腔内には出血と子宮から脱出し死産となった胎児を認めた。腹腔内を検索すると,空腸損傷と子宮底部に完全子宮破裂が同定された。子宮の収縮は良好で,活動性の出血はなかった。小腸部分切除術と子宮破裂部の縫合閉鎖を行った。術後は順調に経過し,第7病日に退院となった。

  • 西幹 和哉, 三原 俊彦, 岡田 憲幸, 山元 康義, 向井 友一郎
    2017 年 37 巻 3 号 p. 475-477
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性。20年以上前より徐々に増大する臍ヘルニアを認めるも放置していたが,自制不可の激しい腹痛が出現し救急搬送された。腹部は臍が直径20cm,高さ10cm大に隆起し皮膚の色調変化も認められた。腹部造影CT所見では腸管脱出を伴う臍ヘルニアがあり腹水も認められ,腹腔内小腸には浮腫性・虚血性変化がみられ,ヘルニア門での小腸間膜の捻じれによる絞扼性イレウスと診断し,同日緊急手術を施行した。ヘルニア囊内の腸管は虚血を認めるも壊死は認めなかった。腹腔内には血性腹水を認め,ヘルニア門に陥入していた腸間膜の還流領域と思われる小腸が約100cmにわたって壊死していた。同部位の腸管は切除吻合した。今回,われわれはヘルニア門部での腸間膜虚血により,ヘルニア囊内に嵌頓した腸管にも虚血を認めたが,腹腔内腸管により高度な虚血と壊死をきたしたまれな臍ヘルニアによる絞扼性イレウスを経験したので報告する。

  • 杉田 浩章, 斎藤 健一郎, 奥出 輝夫, 島田 雅也, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 三井 毅
    2017 年 37 巻 3 号 p. 479-482
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は76歳の女性。2年前に胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術をBillroth Ⅱ法(以下,B―Ⅱ)再建・結腸前経路で施行した。背部痛と嘔気を主訴に救急搬送され,CTでB―Ⅱ再建輸出脚小腸の内ヘルニアと軸捻転の所見,腹水の出現を認めたため緊急手術を施行した。術中所見では腹腔内に乳白色の腹水を認め,結腸前経路のB―Ⅱで再建された挙上空腸と横行結腸間膜との間隙に輸出脚小腸が内ヘルニアを起こし軽度の捻転も認めた。内ヘルニアと捻転の解除を行い,腸管虚血所見は認めなかったため腸切除は行わず手術終了とした。本邦における胃切除後の乳糜腹水を伴う内ヘルニア発症例は6例のみとまれであり,B―Ⅱ再建後の症例は本症例のみであった。腹水を伴う内ヘルニアや小腸軸捻転には発症早期の手術が必要であるが,乳糜腹水の出現は腸管血流が保たれていることが多く,腸管切除を回避できることを示唆する所見の1つであると考えられる。

  • 上田 悟郎, 桑原 義之, 三井 章, 高須 惟人, 早川 俊輔, 榊原 堅式
    2017 年 37 巻 3 号 p. 483-487
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は66歳の女性。顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)のため,当院内科でステロイドの内服治療中であった。1週間前から続く全身倦怠感,下腹部痛,頸部痛を主訴に来院した。腹部は軽度の圧痛のみであったが,頸部から前胸部上部にかけて,顕著な皮下気腫を認めた。気腫の原因検索を目的に全身CTを施行したところ,S状結腸腸間膜内の膿瘍形成と,S状結腸周囲から後腹膜,さらに縦隔,頸部にまで拡がる気腫がみられた。S状結腸部での腸間膜側への穿孔と,それに伴う広範囲な気腫と診断し,緊急手術を施行した。腸管の後腹膜穿孔では,腹腔内穿孔に比べ,臨床所見に乏しく,診断が困難とされる。本例では,長期のステロイド治療もあり,さらに臨床所見が軽微であったと思われた。また,結腸の穿孔で頸部に皮下気腫をきたすことは比較的まれであり,本邦報告例を含めて検討した。

  • 田中 孝太, 丸山 正裕, 河野 陽介, 岩瀬 史明
    2017 年 37 巻 3 号 p. 489-492
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は101歳男性。夜間嘔吐しているところを家族に発見され,当センターに救急搬送された。搬送時,下腹部痛が著明であった。腹部造影CTにより膀胱破裂を認めたため膀胱自然破裂と診断し,緊急手術を施行した。膀胱破裂部を縫合し,膀胱瘻を造設した。術後経過は良好であり術後22日目に療養病院に転院した。原因は加齢と前立腺肥大による慢性尿閉と考えられた。膀胱自然破裂は外傷性破裂と比較してまれな疾患であるが,高齢化により今後膀胱自然破裂は増加すると考えられ,高齢者の腹痛の原因として念頭に置く必要がある。

  • 広本 昌裕, 村上 雅彦, 加藤 博久, 新谷 隆, 小池 礼子, 佐藤 篤, 長谷川 智行, 渡辺 誠, 大塚 耕司, 青木 武士
    2017 年 37 巻 3 号 p. 493-496
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は44歳女性。嘔吐と下腹部痛を主訴に当院受診した。初診時,腹部造影CTで骨盤内に拡張した小腸と右側に偏位した子宮を認めた。イレウス管による減圧を図ったが症状の改善を認めなかった。イレウス管造影後に腹部単純CTを施行したところ,子宮左側の小腸に狭窄を認め,左子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断し腹腔鏡下に手術施行した。左子宮広間膜に生じた約3cm大の裂孔に,回腸末端より約120cmの回腸が約10cmにわたり陥入していた。嵌入腸管の血流および漿膜面の色調は良好で切除の必要性はなく,左子宮広間膜裂孔を吸収糸で縫合閉鎖した。術後経過良好で術後5日目に退院となった。今回,比較的まれな子宮広間膜裂孔ヘルニアの1例を経験した。腸管減圧後の腹腔鏡手術は低侵襲で有用であると考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。

  • 徳田 彩, 今川 敦夫, 奥村 哲, 豊田 翔, 水村 直人, 小川 雅生, 川崎 誠康
    2017 年 37 巻 3 号 p. 497-501
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は87歳女性。3ヵ月前に心不全および慢性腎不全増悪で当院入院となった。冠動脈に有意狭窄を認めたため,経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)を施行し抗凝固療法が開始された。また慢性腎不全に対しては維持透析を導入した。2週間前に軽快退院したが,2日前からの腹痛を主訴に当院に救急搬送された。腹部CT検査で腹腔内遊離ガスと腹水を認めたため,消化管穿孔疑いで緊急手術を施行した。小腸に多発潰瘍,穿孔を認め,小腸部分切除を施行した。術後4日目に病理組織学的検査でコレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolization:以下,CCE)による小腸潰瘍穿孔と診断し,術後5日目にlow density lipoprotein(LDL)アフェレーシスとステロイドパルス療法を開始したが,消化管再穿孔をきたし,術後16日目に死亡した。CCEによる小腸穿孔はまれであるが予後が悪く,若干の文献的考察を加え報告する。

  • 藤幡 士郎, 野々山 敬介, 渡部 かをり, 山本 稔, 北上 英彦
    2017 年 37 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    脾膿瘍は比較的まれな疾患である。脾膿瘍に対し脾臓摘出術を行わずに経皮的ドレナージと抗生剤単独療法を行った2例,および抗生剤単独療法を行った1例を経験したので報告する。脾膿瘍は死亡率が高いが,脾膿瘍の要因や病態によっては従来の第一選択である脾摘出術を回避し治療を完遂できると考える。しかし,経皮的ドレナージ治療を行った場合,その約3分の1は手術治療を要するため,厳重な管理が求められる。

  • 植村 慧子, 仙丸 直人, 東海林 安人, 湯浅 憲章
    2017 年 37 巻 3 号 p. 507-510
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は66歳女性。階段10段の高さから転落し,左上腕骨近位端骨折と左第7~9肋骨骨折の診断で当院整形外科入院となった。受傷後第11病日に左上腕骨骨折接合術を施行した。第12病日に血圧低下,貧血が進行しショック状態となり当科紹介となった。腹部CTで脾周囲に血腫,脾実質の一部に造影欠損と被膜の断裂,腹腔内に造影剤漏出像を認め,外傷性脾損傷後の遅発性脾破裂とそれに伴う出血性ショックと診断した。多量の輸液により循環動態が安定したため緊急で血管造影を行ったところ,脾動脈遠位の分枝から脾外への造影剤漏出像を認めたため経カテーテル的動脈塞栓術を施行した。経過を振り返ると,受傷後第3病日の腹部CTで,動脈相で早期濃染する脾内仮性動脈瘤が存在しており,今回の遅発性脾破裂の原因になった可能性が考えられた。

  • 桒田 亜希, 内藤 浩之, 平野 利典, 海氣 勇気
    2017 年 37 巻 3 号 p. 511-514
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    患者は83歳,男性。朝,下痢あり。夕方になり激しい嘔吐が出現した。改善しないため救急要請し当院に搬送された。CTで胃壁内気腫,門脈内ガスを認めた。腹膜刺激症状なく,全身状態は安定していたため,同日入院とし保存的治療を施行した。翌日のCTでは胃壁内気腫および門脈ガスは消失した。上部消化管内視鏡で胃大弯に発赤,白苔の付着を認めた。胃粘膜培養は陰性であった。経過は良好で,第5病日より食事を開始し,第10病日に退院となった。今回われわれは保存的治療で軽快した門脈ガス血症を伴う胃壁内気腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

  • 鈴木 優美, 平松 聖史, 関 崇, 牛田 雄太, 尾崎 友理, 新井 利幸
    2017 年 37 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性。下痢・経口摂取量低下で救急外来を受診した。来院時発熱あり,会陰・鼠径部を中心に皮膚に高度の発赤・握雪感を認め,ショックの状態であった。CTで右大腿~体幹部の軟部組織に広範な気腫像を認め,フルニエ壊疽による敗血症性ショックと診断した。ただちに皮下感染巣を切開排膿し,抗菌薬・昇圧剤投与などの集中治療を開始した。来院時のCT上,直腸に不整な壁肥厚像を認めたため,colon fiber(CF)を施行したところ全周性の2型腫瘍を認め,生検で直腸癌と診断した。フルニエ壊疽,敗血症は改善し,待機的に腹会陰式直腸切断術を施行した。直腸癌がフルニエ壊疽を契機に発見されることはまれである。若干の文献学的考察を加え報告する。

  • 山崎 達哉, 村上 雅彦, 青木 武士, 草野 智一, 五藤 哲, 藤森 聰, 渡辺 誠, 大塚 耕司
    2017 年 37 巻 3 号 p. 521-524
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    54歳,女性。腹痛,嘔吐を主訴に救急外来受診。臍部を中心に腹部全体に圧痛を認めるも,Blumberg徴候および筋性防御は陰性であった。腹部造影CT検査で,腹水貯留に加え,回腸末端付近の小腸にwhirl signを伴う一部造影不良域を認めたため,絞扼性イレウスの疑いで同日緊急手術を施行した。腹腔鏡で腹腔内を観察したところ,壊死腸管を広範囲に認め,腹腔鏡での安全な絞扼の解除は困難と判断し,開腹手術に移行した。回腸末端付近の小腸間膜に約3cm大の裂孔を認め,同部位に小腸が嵌入捻転し壊死に陥っていた。小腸間膜裂孔ヘルニアに伴う絞扼性イレウスと診断し,壊死小腸の部分切除術を施行した。術後経過良好で,第10病日に退院となった。成人発症の小腸間膜裂孔ヘルニアは比較的まれな疾患であり,文献的考察を含め報告する。

  • 佐々木 大祐, 大島 隆一, 小倉 佑太, 岸 龍一, 四万村 司, 田中 圭一, 國場 幸均, 大坪 毅人
    2017 年 37 巻 3 号 p. 525-528
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/22
    ジャーナル フリー

    症例は34歳女性。散歩中に1mの高さから植木を飛び越えたときに,転倒し枝が臀部に刺さり受傷。創部より出血および便の付着を認め,腸管損傷疑いで当院に救急搬送となった。肛門周囲皮膚の9時方向に径3cmの挫創があり血腫と便の付着を認めた。腹部CT検査では直腸の右側に腸管外ガス像を認めたが,腹腔内に遊離ガス像は認めなかった。注腸検査では造影剤の腸管外漏出を認めた。以上より杙創による直腸損傷と診断し緊急手術を施行した。経肛門的に観察すると肛門縁より3cmの直腸に1/3周性の穿通創を認めた。洗浄後,経肛門的に損傷部を縫合しドレーンを留置して,一期的縫合閉鎖とした。経過は良好で術後19日目に退院した。杙創とは,鈍的な先端をもつ物体が身体を貫通することにより生じた穿通性損傷であり比較的まれな外傷形態である。臀部においては骨盤内や腹腔内臓器損傷の有無を早期に診断し適切な治療を行う必要があると考えられた。

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