日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
37 巻 , 7 号
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原著
  • 吉住 有人, 松本 正成, 安冨 淳, 草塩 公彦, 鈴木 大, 伊良部 真一郎, 高村 卓志, 山本 奈緒, 宇田川 郁夫
    2017 年 37 巻 7 号 p. 979-983
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    【はじめに】下部消化管穿孔に対する手術は手術部位感染(以下,SSI)が起こりやすく,近年SSIに対して局所陰圧閉鎖療法(以下,NPWT)の有用性が強調されているが,予防的施行の報告は少ない。【対象および方法】2012年4月から2016年8月まで当院で緊急手術を施行した下部消化管穿通・穿孔症例35例を対象とし,予防的なNPWT施行の有無で2群に分けてSSI発生の有無,創閉鎖までの期間,退院までの期間について検討を行った。【結果】35例のうち,予防的にNPWTを施行した症例は9例,それ以外の症例は26例で,SSIは前者で1例,後者で13例に発生し,予防的にNPWTを施行した症例で有意にSSI発生率が低かった(P<0.05)。創閉鎖までの期間・退院までの期間については有意差を認めなかった。【結論】下部消化管穿孔症例の創傷管理において,予防的なNPWT施行はSSIの発生率を低下させうると考えられた。

  • 田中 穣, 瀬木 祐樹, 小松原 春菜, 野口 大介, 奥田 善大, 河埜 道夫, 近藤 昭信, 長沼 達史, 西出 喜弥
    2017 年 37 巻 7 号 p. 985-989
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    鼠径部ヘルニア嵌頓における腸管虚血の可逆性について信頼できる術前評価因子を明らかにすることを目的に,鼠径部ヘルニア嵌頓例を検討した。【方法】鼠径部ヘルニア嵌頓緊急手術20例を腸切除の有無により切除群8例と非切除群12例の2群に分け比較検討した。【結果】切除群と非切除群間に有意差を認めた項目は発症から受診までの時間,血清CRP値,嵌頓した腸管内容のCT値(以下,嵌頓腸管内容CT値)の3項目でロジスティック回帰分析を行ったところ,嵌頓腸管内容CT値のみが有意な独立因子であった。また,嵌頓腸管内容CT値のROC曲線から求めたCut Off値は,20HUで感度は62.5%,特異度は91.7%であった。【結語】嵌頓腸管内容CT値によって腸管虚血が可逆的か否かを判別できる可能性がある。嵌頓腸管内容CT値は,用手還納を試みる際や術中に腸切除が必要か否かを判定する際に有用な指標となり得ると考えられた。

  • 柴 浩明, 小林 徹也, 松本 倫, 阿部 正, 金子 健二郎, 小澤 博嗣, 田辺 義明, 矢永 勝彦
    2017 年 37 巻 7 号 p. 991-994
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    【目的】Laparoscopic appendectomy(LA)は病変へのアプローチが容易で,効率的に腹腔洗浄可能だが局所の炎症が強い症例では開腹移行が必要となる場合もある。開腹移行例の特徴について検討した。【対象】2013年1月から2016年9月に当院で施行した急性虫垂炎に対する手術203例。【結果】LA施行例は173例(85.2%)。6例で開腹移行を要しその理由は虫垂動脈からの出血に対する止血困難1例,回盲部への強い炎症波及5例であった。術直前の腹部CTでは5例で腹水貯留を認めた。病理診断は2例で悪性疾患(carcinoma in adenoma,mucinous adenocarcinoma)を認めた。術後合併症は創感染1例,再手術例はなかった。【結語】術前に腹水を認める症例では開腹移行を念頭に置きLAに臨む必要があり,また,局所高度炎症例では悪性疾患の併存にも留意する必要がある。

  • 坂部 龍太郎, 山口 拓朗, 大塚 裕之, 吉村 幸祐, 桒田 亜希
    2017 年 37 巻 7 号 p. 995-1000
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    2007年から2016年に手術を施行した上腸間膜動脈閉塞症12例の治療成績について検討した。平均年齢は74.5歳,男性4例,女性8例。基礎疾患は心房細動が8例,慢性腎不全(透析)が6例,弁膜症が5例などであった。閉塞部位は茂木分類A型が3例,B型が9例であった。12例中8例(A型2例,B型6例)に対して血栓摘除を施行し,そのうちB型の5例で腸管切除を回避できた。周術期死亡率は25%であった。腸管切除なし群と腸管切除あり群の比較では,腸管切除あり群においてLactateが有意に高値であった(P=0.007)。生存群と死亡群の比較では,死亡群においてPLTが低値,AST,LDH,CPKが高値の傾向がみられたが,統計学的有意差はなかった。上腸間膜動脈閉塞症における腸管壊死の予測因子として,Lactateが有用であることが示された。

症例報告
  • 橋本 至, 林 勉, 嶋田 裕子, 村上 仁志, 長谷川 誠司, 福島 忠男, 利野 靖, 益田 宗孝
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1001-1003
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は49歳の男性で,2016月4月に健康診断でバリウムによる上部消化管造影検査を施行した。検査当日の夜間より腹痛が出現し,翌日当院を受診した。理学的に腹膜刺激症状を認め,血液検査所見で炎症反応が高値であった。腹部CTで,小腸の一部にバリウム貯留像を認め,腸管外への漏出像も認めた。消化管穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を行った。開腹所見で,回腸末端より約50cm口側回腸にMeckel憩室を認め,憩室の基部付近に約5mmの穿孔があり,腸管内容液が流出していた。Meckel憩室を含む小腸部分切除を行った。組織学的検査所見では異所性胃腺などは認めなかった。本症例は,Meckel憩室内へのバリウム貯留による化学的刺激が契機となり,憩室自体に炎症を引き起こし,穿孔を発症したと考えられた。

  • 中村 祐介, 中川 宏治, 林 達也, 宮崎 勝
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1005-1008
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性。ゴルフプレー中に突然激しい心窩部痛を自覚し,当院へ救急搬送された。バイタルサイン変動や腹膜刺激兆候は認めなかったが,造影CT検査で上腸間膜動脈(以下,SMA)塞栓症を指摘され,ただちに血管内治療を開始した。治療後は集中治療室での緊密な経過観察としたが,18時間後に高熱が出現し,CT検査で盲腸に腸管壊死を疑う所見を認めたため,緊急開腹手術を施行した。手術所見では盲腸にびまん性の腸管壊死を認めたが,小腸には明らかな異常所見を認めなかった。手術は二期的手術の方針とし回盲腸切除術を行い,72時間後の再手術で回腸人工肛門造設術を施行した。患者は最終的に再術後42日目に軽快退院した。急性SMA塞栓症に対する血管内治療の効果には限界があり,治療後も腸管虚血に備えた緊密な経過観察が必要である。また腸管壊死をきたした際には,継時的に進行する腸管壊死に対して二期的手術が有用な治療方針と考えられた。

  • 浅野 聡子, 井上 宰, 手島 仁, 臼田 昌広
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1009-1013
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    子宮内膜症によって腸閉塞をきたすことはまれだが,病歴と所見から術前診断し,腹腔鏡手術で腸閉塞を解除できた1例を経験したため報告する。症例は38歳,女性。20歳から子宮内膜症と診断され,22歳で両側卵巣チョコレート囊胞摘出術後,37歳時に2度,月経周期に一致した腸閉塞を発症し以後内服治療をしていた。前回腸閉塞から約1年後に腹痛・嘔気のため当院救急外来を受診,再度腸閉塞と診断された。子宮内膜症に起因した腸閉塞と診断し入院10日目に腹腔鏡手術を施行した。術中所見では左卵巣のチョコレート囊胞に回腸が強固に癒着し,その近傍の回腸に腸管子宮内膜症を認めた。両者が腸閉塞の原因と考え,同部位を部分切除した。経過は良好で,術後5日目に退院した。今後同疾患に対して腹腔鏡手術の適応が増加すると考えられるため,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 柿﨑 裕太, 原 康之, 宮城 重人, 川岸 直樹, 大内 憲明
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1015-1018
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は46歳,女性。37歳時にIgA腎症による腎不全に対して生体腎移植施行。2015年11月から腰背部痛が出現,CTで8.4×4.7cm大の傍大動脈リンパ節腫脹あり,生検でPost-transplant lymphoproliferative disorder(PTLD)の診断。2016年1月に激しい腹痛,嘔吐が出現,腹部CTで腸管浮腫を伴う限局性の腸閉塞像と腹水貯留を認めた。症状は激烈だったが,造影CTで腸管壊死の所見はなく,腫瘍の急速な増大に伴う腸間膜圧排により浮腫をきたし麻痺性腸閉塞に至ったと判断。同日cyclophosphamide 1,000mgを投与,翌日にdoxorubicin 60mgを投与,第5病日のCTで腫瘍は縮小傾向を示し,腸管浮腫所見も改善。その後も化学療法を継続し完全奏効に至った。PTLDに伴う腸閉塞では,病態を見極めて化学療法先行の治療戦略が有用である症例があると考える。

  • 安藤 菜奈子, 篠田 憲幸, 寺西 太, 堅田 武保
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1019-1022
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代女性。慢性過敏性肺炎と重症筋無力症に対する長期ステロイド投与歴があった。4年前にS状結腸憩室穿孔に対してハルトマン手術と下行結腸人工肛門造設を行った。その6ヵ月後,コントロール困難な人工肛門周囲皮下膿瘍のため,横行結腸に双孔式人工肛門が造設された。今回左上腹部痛で来院し,腹部単純CTで腹腔内遊離ガスと空置腸管である下行結腸の憩室周囲に炎症所見を認めた。下部消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った。空置腸管である下行結腸の腸間膜対側に5mm大の憩室穿孔を認めた。双孔式人工肛門の肛門側から空置腸管を切除し,下行結腸人工肛門を閉鎖した。空置腸管の穿孔原因として,長期ステロイド使用による腸管壁の脆弱化と,双孔式人工肛門を便が通過したことによって,狭窄した空置腸管に便が流入し,内圧が上昇したことが考えられた。今回2ヵ所の人工肛門の間で大腸穿孔をきたした極めてまれな症例を報告する。

  • 貝田 佐知子, 山口 剛, 大竹 玲子, 竹林 克士, 三宅 亨, 植木 智之, 赤堀 浩也, 北村 直美, 園田 寛道, 清水 智治, 仲 ...
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1023-1026
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性。嘔吐,意識レベルの低下を主訴に当院救急搬送となった。腹部造影CTで小腸の拡張とその遠位回腸に造影効果不良部分があり絞扼性イレウスの診断で,同日緊急手術を施行した。Treitz靭帯から2m程度肛門側の小腸が小腸に巻きつく形で絞扼しており,これを解除すると小腸の色調は改善した。絞扼小腸に1cmの帯状血流不良部分を認め,拡張小腸にspot状の血流不良部分を複数箇所認めた。これらは温めても十分には回復せず,蛍光ICG法を施行したところ,直動脈から腸管内の微小血管は造影され血流は保たれていると判断した。小腸切除は施行せず,すべての血流不良部分を小腸の短軸方向に漿膜筋層縫合をかけて補強した。術後は誤嚥性肺炎に対する集中治療を要したが,遅発性小腸穿孔など腹部の合併症はきたさず術後112日目に退院となった。

  • 高島 順平, 伊藤 康博, 小林 陽介, 江川 智久, 長島 敦, 北野 光秀
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1027-1030
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    経皮内視鏡的胃瘻造設術後にまれな合併症である胃脱出嵌頓をきたした1例を経験したので報告する。症例は86歳,女性。脳梗塞後で4年前にPEGを施行され,最近腹圧の上昇に伴う胃瘻チューブの抜去を繰り返していた。今回,咳嗽時に胃瘻チューブの抜去と同時に胃も体外へ脱出したため,当院へ搬送となった。外反した胃が腹壁上に露出した状態で,粘膜は暗赤色調と虚血も疑われたが,CT上虚血を疑う所見はなかった。用手還納は困難であったため緊急手術とした。脱出した胃は外反した胃壁そのもので嵌頓していた。腹壁を一部切開し嵌頓を解除し,外反を修復したところ漿膜の色調に異常は認めなかった。胃切除せず,欠損部位をprimary closureし,胃瘻を再造設した。術後経過良好で経腸栄養再開可能であった。胃瘻造設後の合併症としてこれまで胃脱出の報告はなかった。胃瘻チューブの自然抜去を繰り返すような症例では胃脱出の可能性も考慮すべきである。

  • 杉本 敦史, 多田 正晴, 北條 雄大, 平田 真章, 藤田 悠介, 川崎 有亮
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1031-1033
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は70歳女性。深夜に突然の腹痛を自覚して起床し,救急外来受診となった。身体所見では臍左側を最強点とする軽度の圧痛,反跳痛,筋性防御を認めた。CT検査では細かなfree airと小腸内に異物を疑う高吸収域を認め,また同部位より口側腸管の拡張も認めた。異物による消化管穿孔を疑い,同日緊急手術を施行した。術中所見では回腸末端より160cm口側の小腸に3cm大の鋭利な異物が穿破しており,異物による小腸穿孔および汎発性腹膜炎と診断した。異物を含み5cmの小腸部分切除術を施行した。術後問診によって5日前にナツメの甘露煮を食べた際に種子を誤飲していたことが判明した。術後経過は良好で術後8病日に退院された。植物種子による消化管穿孔は本邦において3例報告されるのみで非常にまれであり,ナツメの種子によるものは本邦初報告である。術前には異物誤飲を確認できておらず,詳細な問診が重要であると考える。

  • 高山 裕司, 力山 敏樹
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1035-1038
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,女性。心房細動に対して抗凝固薬を内服中であった。右季肋部の疼痛と腫脹を主訴に近医を受診したところ,腹壁血腫が疑われ,抗凝固薬を中止して経過観察された。しかし,徐々に増大するため当院へ紹介された。腹部造影CT検査で腹壁血腫が疑われたが,入院後も増大するため手術を施行した。手術所見では血腫疑いの腹壁病変は膿瘍であった。膿瘍内に11mm長の魚骨が認められ,膿瘍形成の原因と考えた。腹腔内との連続性は明らかでなく,開腹せずに膿瘍腔の洗浄ドレナージ術のみを行い,手術を終了した。術後経過は良好で,術後8日目に退院となった。魚骨誤飲による腹壁膿瘍形成はまれで,過去の報告では術式として開腹あるいは腹腔鏡手術が選択される症例が多い。今回われわれは,診断に難渋し,局所手術で治癒しえた魚骨の消化管穿通による腹壁膿瘍の1例を経験したので文献的考察を含め報告する。

  • 永岡 智之, 石田 直樹, 中川 祐輔, 梶原 伸介
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1039-1042
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例1は77歳,女性。認知症のため施設入所中であった。腹痛と嘔吐を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と小腸内にらせん状の低濃度陰影を認めたため,腸重積や腫瘍,異物を疑い手術を施行した。回腸末端より150cm口側腸管を切開すると7cm大の椎茸が陥頓していた。症例2は59歳,男性。腹痛を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と回腸内に不整な低濃度陰影を認めた。椎茸によるイレウスが疑われ,ロングチューブを挿入し保存的加療を行ったところ,約24時間後に排便とともに2cmの椎茸が4片排出された。その後の腹部CTで低濃度陰影の消失とイレウス像の消失を確認した。食餌性イレウスはまれな疾患であり,術前診断が困難なことが多く,手術報告例が多い。今回われわれは,手術治療を行った症例と,保存的に治療可能であった症例をそれぞれ経験したので,文献的考察を加えて報告する。

  • 今井 紳一郎, 久保 直樹
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1043-1045
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    結腸憩室症のもっとも頻度が高い合併症は結腸憩室炎である。結腸憩室炎はときに膿瘍や瘻孔を形成し膿瘍ドレナージや手術治療を要する。われわれは上行結腸憩室炎に起因する後腹膜膿瘍と鼠径部膿瘍を形成した1例を経験した。症例は82歳の男性で,肺線維症の急性増悪に対してステロイドパルス療法中であった。発熱・右側腹部痛・右鼠径部痛が生じ,CT・USで上行結腸憩室炎,後腹膜膿瘍,右腸骨前面から右鼠径部に至る膿瘍を認めたため,鼠径部より膿瘍切開ドレナージを施行した。切開排膿時に便の流出はなく,膿瘍造影では腸管との瘻孔を認めなかった。鼠径部膿瘍は膿瘍ドレナージ後改善し,後腹膜膿瘍は保存的治療のみで消失した。肺線維症に対するステロイド治療を継続し,在宅酸素療法を導入のうえ自宅退院とした。膿瘍や瘻孔を形成した憩室炎症例の治療に際しては,適切に評価を行い,治療法を選択する必要がある。

  • 高野 靖大, 羽生 信義, 宮國 憲昭, 矢永 勝彦
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1047-1051
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は88歳,女性。2016年9月,夜間より突然の腹痛,嘔吐が出現したが,多量の排便後に症状が改善したため経過をみていた。翌朝,意識混濁,冷汗著明な状態で発見された。臨床所見より往診医に低血糖を疑われ,ブドウ糖注射を施行,意識レベルの回復を認めた後,当院救急外来を受診した。来院時,意識レベル清明,ショックバイタル,腹部膨満を認め,腹部CT検査で,多量の腹水とfree airが認められた。救急室で,再び意識レベルの低下を認め,上部消化管穿孔,敗血症性ショックの診断で緊急手術となった。開腹すると,腹腔内に大量の食物残渣と混濁腹水,胃体上部後壁に壊死を伴う約5cmの破裂孔を認め,胃局所切除術,洗浄ドレナージを施行した。術後ICU管理を行ったが,ショック状態から離脱できず,DICの進行を認め術後8日目に死亡した。成人に発生する特発性胃破裂は極めてまれで,予後不良な疾患であるため報告する。

  • 吉住 有人, 髙屋敷 吏, 露口 利夫, 宮崎 勝, 大塚 将之
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1053-1056
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    離断型胆汁漏に対して,術後肝切離面に留置した腹腔内ドレーンを利用して胆管内瘻化に成功した胆道IVR(Interventional radiology)の手技の工夫を報告する。症例は72歳,男性。肝内結石症に対する肝前区域切除術後に後区域枝の離断型胆汁漏を発症した。経皮経肝的あるいは経乳頭的アプローチのそれぞれ単独では胆管内瘻化困難であり,腹腔内ドレーンを一時的に瘻孔から上流胆管にカニュレーションし,それを介して離断胆管を内瘻化することに成功した。胆汁漏は肝切除後の重篤な合併症の1つであり,さまざまな病態を呈しているため画一化した治療は難しい。自験例で行った工夫は侵襲も少なく特別な設備が必要ないということから,通常のRendezvous法が困難な難治性胆汁漏に対して試みてもよい手技の1つと考えられた。

  • 安井 七々子, 岩川 和秀, 赤井 正明, 濵田 侑紀
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1057-1060
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性。パーキンソン病,精神発達障害で施設入所中であった。腹痛,嘔吐,発熱を主訴に紹介となった。来院時,腹壁は板状硬であり,腹部単純写真では下腹部全体にU字型の巨大な腸管ガス像を,腹部単純CTではS状結腸の著明な拡張を認めたため,S状結腸軸捻転を疑い,緊急手術を施行した。術中所見ではS状結腸軸捻転と盲腸軸捻転を併発しており,Hartmann術と回盲部切除術を施行した。術後は一旦軽快したが,イレウスを反復し,術後66日目に死亡した。S状結腸軸捻転症に盲腸軸捻転症を併発した症例の報告はなく,同時切除の報告例もない。診断には腹部単純写真やCTが有用であるとされ,絞扼による腸管壊死を伴うことが多く,迅速な診断・治療が重要である。

  • 本庄 薫平, 石山 隼, 五藤 倫敏, 坂本 一博
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1061-1065
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代の男性で,1ヵ月前から続く腹痛を主訴に前医を受診した。前医で施行した腹部CT検査で,S状結腸に内腔から壁外に突出する長さ5cmの線状の高吸収域を認め,異物による大腸穿通の診断で,当院へ紹介受診となった。腹部所見では左下腹部に軽度の圧痛を認めるのみで,血液学的所見で炎症反応の上昇もなかったことから,緊急手術の必要性は低いと判断し,大腸内視鏡検査を行った。大腸内視鏡検査では,爪楊枝の両端がS状結腸壁に刺さっており,把持鉗子で摘除した。その後の経過は良好で,第3病日目に退院した。患者は爪楊枝誤飲の自覚はなかった。本邦では,魚骨による消化管穿孔・穿通の報告は散見されるが,爪楊枝誤飲による大腸穿孔・穿通は比較的まれである。さらに,自験例のように内視鏡的に摘除したのは4例のみであり,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 前田 光貴, 田端 正己, 阪本 達也, 藤村 侑, 大澤 一郎, 加藤 憲治, 岩田 真, 三田 孝行
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1067-1070
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性。S状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した。術後3日目から食事を開始したが,術後6日目に腹痛と発熱が出現した。CTでは縫合不全の所見はなかったが,回腸壁の肥厚・浮腫が認められたため,小腸炎あるいは限局性腹膜炎と診断し,絶食・抗生剤を投与したが,改善傾向はなかった。13日目のCTでは腹腔内に多発膿瘍が認められたため,径の大きい右下腹部膿瘍のCTガイド下ドレナージを行った。一旦,症状は改善したが,19日目高熱と腹痛が再燃,CTでは腹腔内膿瘍は縮小していたが,広汎な腸間膜脂肪織濃度の上昇が認められた。腸間膜脂肪織炎と診断し,23日目からプレドニゾロン50mg/日の投与を開始した。投与後,腹痛・炎症反応はすみやかに改善し,プレドニゾロンを漸減,34日目から食事を再開し,45日目退院した。

  • 宮崎 徹, 上西 崇弘, 倉島 夕紀子, 大畑 和則, 金田 和久, 大河 昌人, 山本 隆嗣
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1071-1074
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性。食思不振と嘔吐を主訴に当院に入院した。上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚まで異常は認められなかったため,イレウス管挿入を試みたが空腸へは到達せず,造影剤を注入してもTreitz靭帯近傍で途絶していた。腹部造影CTでTreitz靭帯付近の空腸に造影効果の乏しい約2cmの腫瘤と,その口側の十二指腸に著明な拡張が認められた。以上より空腸腫瘍による腸閉塞と診断して開腹したところ,Treitz靭帯から約5cm肛門側の空腸に腫瘍が認められたため同部を切除し,肛門側空腸を挙上して十二指腸球部と吻合した。病理組織学検査においてHeinrich I型の異所性膵より発生した中分化管状腺癌と診断された。術後経過良好で術14日目に退院し,S-1による術後補助化学療法を17クール施行した。術24ヵ月後の現在も再発なく経過している。

  • 吉山 直政, 疋田 茂樹, 植田 知宏, 宇津 秀晃, 的野 吾, 田中 寿明, 森 眞二郎, 高松 学文, 赤木 由人
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1075-1079
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    食道破裂の治療方法は,食道の損傷状態や全身状態に応じて決定される。高度の食道損傷かつ全身状態不良の特発性食道破裂に対し,Tチューブドレナージ術により救命した2症例を経験した。症例1は68歳の男性。縦隔内限局型食道破裂で保存的加療を行うも奏効せず,発症後200時間で敗血症に陥り手術を行った。呼吸循環動態が不良であり,Tチューブドレナージ術と術後の胸腔内洗浄を行い,第132病日に転院となった。症例2は84歳の男性。嘔吐時に食道破裂と誤嚥性肺炎を生じた。呼吸状態が不良で,発症後6時間で手術を行った。Tチューブドレナージ術と術後の胸腔内洗浄を行い,第171病日に退院となった。食道破裂に対するTチューブドレナージ術は,全身状態不良でも短時間で施行可能である。

  • 八木 直樹, 富沢 直樹, 荒川 和久, 榎田 泰明, 岡田 拓久, 本多 良哉
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1081-1085
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性。2015年6月に検診の上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に全周性隆起性の粘膜肥厚を認め,当院消化器内科に紹介となった。腹部CT検査で同部位に囊胞病変を認め,胃粘膜生検と内視鏡下穿刺吸引細胞診で悪性所見は認めず,内容液の膵液型アミラーゼとCA19-9はともに異常高値を示した。幽門狭窄を伴う異所性膵の術前診断で手術の方針としたが,術前日に囊胞病変が腹腔内に破裂出血した。腹腔鏡下に腹腔内を観察すると陳旧性の血腫および血性腹水を認め,囊胞病変の破裂と診断した。異所性膵内の潜在癌を否定できず,腹腔内洗浄とリンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を行った。病理学的にはHeinrich Ⅱ型の異所性膵で,術経過は良好であった。まれではあるが自験例のように胃内腔狭窄や,出血破裂する異所性膵もあり,囊胞病変を伴う胃異所性膵は緊急手術を念頭に置き,検査・加療を進めていくべきであると考えられた。

  • 小林 龍太朗, 神谷 忠宏, 加藤 岳人, 平松 和洋, 柴田 佳久, 青葉 太郎, 高田 章
    2017 年 37 巻 7 号 p. 1087-1091
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性で突然の腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した。腹部造影CTで膵十二指腸動脈の不整と腹腔内に広範な血腫を認め,動脈瘤破裂に伴う出血と診断した。緊急血管造影を行い,後上膵十二指腸動脈瘤に経カテーテル動脈塞栓術(以下,TAE)を施行した。TAE後9日目に腹部膨満と嘔吐が出現し,上部消化管精査で十二指腸壁の浮腫に伴う狭窄と通過障害を認めた。経管栄養チューブを挿入し保存的治療を継続した。TAE後27日目に発熱と黄疸を認め,血液検査および腹部造影CTで急性胆管炎と診断し経皮経肝胆囊ドレナージを施行した。胆管炎はすみやかに改善した。十二指腸狭窄は緩徐に改善しTAE後52日目に退院した。血管造影所見から動脈瘤の原因はsegmental arterial mediolysisと考えた。またTAEによる虚血,浮腫によって十二指腸狭窄を生じ,その浮腫がVater乳頭まで波及し胆管炎を発症したと考える。

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