日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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38 巻, 4 号
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原著
  • 木戸川 秀生, 森口 智江, 野々村 遼, 田上 貴之, 上原 智仁, 野口 純也, 山吉 隆友, 岡本 好司, 伊藤 重彦
    2018 年 38 巻 4 号 p. 603-607
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    開腹歴のない小腸閉塞に対する腹腔鏡手術の有用性について検討を行った。対象は過去16年間に鼠径ヘルニア嵌頓を除く小腸閉塞に対して腹腔鏡手術を行った78例。開腹歴のない腸閉塞18例をA群,開腹歴のある腸閉塞60例をB群として比較検討した。絞扼症例はA群50.0%に対しB群28.3%とA群に多い傾向があった。腸閉塞の原因はA群では索状物によるものがもっとも多く(55.6%),一方B群では創への癒着がもっとも多かった(31.7%)。単孔式手術を行った症例はA群で61.1%,一方B群では15.0%であった。開腹移行率はA群11.1%,B群30.0%でA群は開腹移行率が低い傾向にあった。平均手術時間はA群85.4分に対して,B群137.5分と有意にA群は手術時間が短く術後在院日数もA群は有意に短かった。開腹歴のない腸閉塞は開腹歴のある症例と比較して手術成績が良好であり,腹腔鏡下手術のよい適応である。

  • 中山 文彦, 松本 尚, 山本 真梨子, 阪本 太吾, 安松 比呂志, 益子 一樹
    2018 年 38 巻 4 号 p. 609-615
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    外傷による上腸間膜動脈(以下,SMA)・上腸間膜静脈(以下,SMV)損傷は,発生頻度は少ないものの重篤な出血性ショックの原因となる。2011年からの6年間に当センターで診療した外傷症例6,084例中,開腹止血術が必要であったSMA/V損傷は52例(0.85%,鈍的損傷50例/鋭的損傷2例)で,そのうちFullenによる分類でZone Ⅰ~Ⅲの損傷26例(鈍的損傷24例/鋭的損傷2例)に血管に対する手術操作を要した。SMA損傷は結紮止血し,SMV損傷は可及的に修復するという治療方針によって,6年間で76.9%という救命率を得ることができた。SMA/Vの損傷では,心停止が切迫するような大量の血液流出により損傷部へのアプローチが困難な状況下であっても,迅速な止血と腸管虚血・うっ血の制御が求められる。SMA/Vへのアプローチ方法も含めた現時点でのわれわれの治療戦術はこれを達成できていると考えられた。

  • 藤井 智徳, 塩沢 英輔, 村上 雅彦, 大野 浩平, 北島 徹也, 柴田 英貴, 瀧本 雅文
    2018 年 38 巻 4 号 p. 617-626
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー
特集:敗血症・院内感染にいかに挑むか
  • 丸山 弘, 吉田 寛
    2018 年 38 巻 4 号 p. 629-634
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    救命救急センター入室170例を対象に鼻腔のMRSA保菌調査を積極的監視培養で行った。方法は,入室時に監視培養し,入室後1週間ごとに定期的監視培養を行った。入室時,MRSA保菌症例は11例(6.5%)であった。1週間未満に退室した症例(89例)は,MRSA保菌症例はなく,入室原疾患の多くは精神疾患と交通事故患者などであった。入室時MRSA保菌陰性で1週間以上入室し,定期監視培養を行った症例(70例)中,退室までにMRSAを伝搬させた症例は21例(30%)であった。MRSA伝搬群と非伝搬群に分け伝搬のリスク因子の検討を行った。MRSAの伝搬のリスク因子は気管挿管と高血糖が独立した因子であった。MRSA感染症は12例に発症した。12例全例が保菌者からの発症であった。MRSAの伝搬の多い期間ではこのようなリスク因子を検討し接触性感染対策の重要性を理解させることが有用であると考える。

  • 片寄 友, 伊勢 一郎, 林 洋毅, 中川 圭, 森川 孝則, 水間 正道, 大塚 英郎, 武藤 満完, 徳村 弘実, 元井 冬彦, 内藤 ...
    2018 年 38 巻 4 号 p. 635-641
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    【目的】待機的な肝胆膵術後敗血症の術前リスク因子を解析すること,および敗血症の予後に対する影響を検討することを目的とした。【方法】対象は2011年から2015年に東北大学病院あるいは東北労災病院で肝胆膵手術を施行した症例を対象とし,後向きに検討した。【結果】全症例は523例であり,敗血症発症率は膵頭十二指腸切除術,肝切除群,膵全摘群,腹腔動脈合併尾側膵切除術,肝膵十二指腸切除群でそれぞれ,6%,16%,10%,33%,56%であった。リスク因子の検討では,膵頭十二指腸切除術群はヘモグロビン12.8g/dL以下,肝切除群ではAPTT 33.6秒以上がリスク因子であることがわかった。敗血症発症から90日未満死亡例と良性例を除き全生存率を検討すると,肝切除群において敗血症例が予後不良であった。【結語】敗血症は長期予後も不良にするため,肝胆膵手術には敗血症を念頭に置いた周術期管理が必要である。

  • 徳光 幸生, 松隈 聰, 坂本 和彦, 徳久 善弘, 松井 洋人, 兼清 信介, 友近 忍, 飯田 通久, 鈴木 伸明, 武田 茂, 吉野 ...
    2018 年 38 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    当科でpolymyxin-B direct hemoperfusion(以下,PMX-DHP)を施行した敗血症性ショック症例を対象とし,生存群26例と死亡群7例の治療前後の因子を比較検討した。年齢,性別,腹腔内感染の有無,source control surgeryの有無に両群間で差はなかった。PMX-DHP導入前のvasopressor dependency index (VDI)値は生存群では低値,死亡群では高値で(P<0.05),生存群ではPMX-DHP開始6時間後の代謝性アシドーシスの改善が認められたが(P<0.05),死亡群ではむしろ悪化した(P<0.05)。循環動態が極度に悪化するほど進行した敗血症性ショックではPMX-DHPの十分な治療効果が得られない可能性があり,早期の治療開始と適応の限界点を考慮することが重要と考えられた。

  • 山根 祥晃, 大井 健太郎, 福田 健治, 山根 成之, 建部 茂, 野坂 仁愛
    2018 年 38 巻 4 号 p. 649-655
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    下部消化管穿孔や虚血は全身への感染から敗血症を生じ,しばしば臓器障害,DICをきたし生命を脅かす。重症敗血症に対する血液浄化療法としてポリミキシン固定化カラムや持続血液濾過透析が行われている。2014年に重症敗血症にAN69ST膜が保険収載され当院でも同年12月より導入を開始した。2010年1月から2018年1月までの下部消化管穿孔・虚血73例をAN69ST膜導入前後で前期35例,後期38例に分け,さらにA群(救命)・B群(晩期死亡)・C群(28日以内死亡)をサブグループとしてAPACHE Ⅱ・SOFA・急性期DICスコアを検討した。救命率は前期に比べ後期で上昇し,またDIC併存率は死亡群で高い他,後期A群で高い傾向にあった。AN69ST-CHDFは12例に実施し9例で救命し得た。下部消化管由来敗血症に対するDIC制御およびAN69ST-CHDFが救命率上昇につながる可能性が示唆された。

  • 古賀 睦人, 清水 潤三, 新野 直樹, 古川 陽菜, 末田 聖倫, 松村 多恵, 村上 昌裕, 川端 良平, 能浦 真吾, 長谷川 順一
    2018 年 38 巻 4 号 p. 657-661
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    血液培養は急性腹症の診断に有用な検査の1つとされているが,急性腹症診療における血液培養の意義はいまだ明らかではない。2015年1月から2016年12月まで腹部疾患に対して緊急手術を施行した連続する286例を対象とし,初療担当部署および各疾患における血液培養採取率,そして各疾患における血液培養陽性率と短期成績について検討した。血液培養採取率は54.2%で,初療担当部署別では他科病棟入院中,救急外来,内科病棟入院中で採取率が60%を超えていた。疾患毎の採取率では術後腹膜炎,消化管穿孔で採取率が60%を超えていた。2例のコンタミネーションを除く26例(9%)で血液培養陽性であった。消化管穿孔では37%と高値であった。血液培養陽性症例では術後抗菌薬投与日数,術後在院日数は長く,術後合併症発生率は高率であった。急性腹症においても敗血症が疑われる患者では血液培養は有益な検査と思われる。

症例報告
  • 河毛 利顕, 坂部 龍太郎
    2018 年 38 巻 4 号 p. 663-667
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    拡大肝左葉切除術後に右肝動脈破綻出血の併発による出血性ショックに対し,動門脈吻合で救命し得た1例を経験した。症例は65歳の女性で,黄疸を主訴に当科を受診した。諸検査で肝内胆管癌と診断した。拡大肝左葉切除,肝外胆管切除,右肝動脈合併切除,右肝動脈端々吻合を施行した。術後4日目,排便のため怒責したところ,腹腔ドレーンから出血を認め,出血性ショックとなり緊急再開腹止血術を施行した。右肝動脈吻合部よりも中枢側で血管破綻しており,右肝動脈右門脈端側吻合による動門脈吻合を施行した。ARDS,胆汁瘻,腹腔内膿瘍を併発したが,術後61日目に退院した。肝動脈は非常に豊富な側副血行路を有しているが,それらが完全に遮断されると,門脈血流があったとしても肝細胞の壊死は避けられない。動門脈吻合を施行することで肝壊死を回避し,動脈破綻による出血性ショックから救命することができた。

  • 山崎 康, 千野 修, 葉梨 智子, 田中 洋一, 幕内 博康
    2018 年 38 巻 4 号 p. 669-673
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性。貧血,タール便を認め,精査加療目的に入院となった。上部,下部内視鏡において明らかな出血源は認めなかった。CTで前縦隔から右鎖骨上リンパ節が腫大し,PETでは同部位,十二指腸,腰椎にFDGの集積を認めた。上部内視鏡再検査の結果,十二指腸下行脚に結節状隆起を認め,生検で低分化型腺癌と診断された。一時退院となったが,翌月に腹痛で再入院となった。CTでは小腸壁肥厚と球状異物を認め,腸閉塞を呈していた。問診では数日前に梅干の種子を誤飲したことが判明した。イレウス管による減圧治療で改善を認めないため,緊急手術を施行した。術中所見では小腸の癌性狭窄と同部の種子嵌頓を認めた。切除標本の病理組織学的検討から原発性小腸癌,多発リンパ節転移,十二指腸転移の診断となった。原発性小腸癌はまれな疾患であり,種子嵌頓による腸閉塞を契機に発見された報告は稀少であり,文献的考察を加え報告する。

  • 佐藤 啓太, 藤井 幸治, 坂口 充弘, 熊本 幸司
    2018 年 38 巻 4 号 p. 675-677
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性。脾腫と腹腔内リンパ節腫大を指摘され,頸部リンパ節生検でびまん性大細胞性B細胞悪性リンパ腫と診断されていた。安静時の急激な左側腹部痛とともにショック症状を呈して救急外来に搬送された。造影CT検査で腹腔内血腫と脾臓内にextravasationを認めた。輸液で血圧の回復を認めたため,Transcatheter arterial embolization(以下,TAE)での治療を選択した。術後経過は良好であり,術後7日から化学療法を開始した。悪性リンパ腫による脾破裂は比較的まれである。治療法は,開腹での脾臓摘出術が過去に多く報告されているが,全身状態によってはTAEによる止血で脾臓温存することも選択肢となりうる。

  • 高見 友也, 冨田 雅史
    2018 年 38 巻 4 号 p. 679-682
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    今回われわれは腹腔鏡下に治療し得た子宮広間膜裂孔ヘルニア2例を行ったので報告する。【症例1】帝王切開の既往のある34歳女性。腹痛を主訴に来院し,術後癒着性イレウスの疑いで経過観察となっていた。しかし腹痛が増悪したため,第4病日に腹腔鏡手術を行ったところ,子宮広間膜裂孔ヘルニアの診断となった。陥入していた小腸を還納し,裂孔を縫合閉鎖し手術を終了した。【症例2】妊娠歴のある57歳女性。3日前からの腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診。腹部造影CT検査所見で子宮広間膜裂孔ヘルニアの診断となり緊急で腹腔鏡手術を行った。術中所見では右側子宮広間膜に裂孔が認められ小腸が嵌頓していた。症例1と同様の手術を行い,2例とも術後経過は良好であった。腹腔鏡手術は手術侵襲を低減でき,整容性の点でも有利である。また腸管壊死を伴わない場合は腸管の還納と異常裂孔の縫合閉鎖で十分なため,腹腔鏡下で手術を安全に行えると考える。

  • 板倉 弘明, 池永 雅一, 太田 勝也, 遠藤 俊治, 山田 晃正
    2018 年 38 巻 4 号 p. 683-686
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例1は72歳,男性。主訴は腹痛。尿膜管膿瘍を切除した既往があり,1ヵ月前より創部に膀胱皮膚瘻を形成し,尿道カテーテルを留置していた。腹部造影CTはイレウスの所見で,腹水貯留を認めた。腹膜刺激症状を認め,急性汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹術を施行した。術中所見より膀胱穿孔による麻痺性イレウスと診断し,腹腔内洗浄ドレナージ術を施行し,穿孔部を縫合閉鎖した。症例2は86歳,女性。神経因性膀胱に対して尿道カテーテルを長期留置されていた。腹痛と発熱を自覚し,腹部造影CT所見より消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。術中所見より膀胱穿孔による汎発性腹膜炎と診断した。腹腔内洗浄ドレナージ術を施行し,穿孔部を縫合閉鎖した。他疾患を疑い緊急手術を施行したが自然膀胱破裂であった2症例を経験した。自然膀胱破裂はまれな疾患とされるが,急性腹症の原因となることを考慮すべきである。

  • 竹内 庸浩, 中尾 篤典
    2018 年 38 巻 4 号 p. 687-692
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は57歳女性。40℃の高熱が4~5日続き意識障害と血圧低下をきたした。血液検査所見で,炎症反応高値,血小板低値,止血凝固異常,肝胆道系酵素上昇と腎機能異常を認めた。腹部CTで胆囊内結石と胆囊壁の浮腫を認めた。臨床所見とあわせて,急性胆管炎による敗血症性DICと診断した。緊急ERCによる緊急胆道減圧後に,血液浄化療法を開始した。第5病日多量の下血し,収縮期血圧70mmHgとショック状態となり,Hbは12.3から7.0g/dLと低下していた。濃厚赤血球を8単位投与し,バイタルサインが安定した後に緊急内視鏡を施行した。十二指腸下行脚に多量の凝血塊が貯留し,内視鏡的止血術は不可能と判断し,腹部血管造影を施行した。前上膵十二指腸動脈に血管外漏出を認めゼラチンスポンジで塞栓術を施行し,内視鏡で完全な止血を確認し得た。EST後出血に対して,内視鏡止血が不可能な場合,経カテーテル動脈塞栓術は有用な止血法である。

  • 中村 祐介, 岡屋 智久, 鈴木 弘文, 唐木 洋一, 福田 啓之, 越川 尚男, 櫻井 洋一
    2018 年 38 巻 4 号 p. 693-696
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性。切除不能左肺癌に対して当院呼吸器内科でBevacizumabを含む全身化学療法が開始されたが,初回投与後9日目に右側腹部痛が出現し,結腸穿孔が疑われ緊急手術の方針となった。術中所見で上行結腸に特発性穿孔を認め,回盲部切除術を施行した。術後病理検査では結腸憩室穿孔の診断であった。術後13日目に創部皮下感染による広範な創哆開を生じ,術後25日目より陰圧閉鎖療法(以下,NPWT)を導入した。導入後の創部清浄化や肉芽増生は良好であり,術後74日目には創部閉鎖が得られた。Bevacizumabを含む全身化学療法施行後の消化管穿孔に対する緊急手術では,術後も骨髄抑制や創傷治癒遅延作用が遷延するため創部皮下感染ならびに創哆開のリスクが高く,発生した場合はしばしば難治性である。このたびNPWTがBevacizumab投与後の哆開創管理に有用であった1例を経験したため報告する。

  • 林 弘賢, 黒木 嘉人
    2018 年 38 巻 4 号 p. 697-700
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,女性。心窩部痛を主訴に当院救急外来を受診した。持続する心窩部痛と腹部CTでMorgagni孔に嵌頓する横行結腸を認めた。以前に2度同様の症状で当院を受診したが,症状は自然に改善したため,手術治療は拒否され経過観察となっていた。今回は症状の改善を認めず,以前から同様の症状を繰り返していたため,同日根治を考慮した緊急手術となった。手術所見では,横行結腸と大網の嵌頓を認め,用手的に腹腔内へ還納可能であった。腸管は穿孔や壊死所見は認めず,ヘルニア門は3cm×3cm大で周縁組織は強靭であったため,周縁組織を6針結節縫合しヘルニア門を閉鎖して手術終了となった。外来で経過観察しているが,現時点で再発所見は認めていない。

  • 寺崎 康展, 大島 隆宏, 奥田 耕司, 上坂 貴洋, 谷 道夫
    2018 年 38 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性。39ヵ月前に腰椎破裂骨折で後方固定術を施行するも骨癒合得られず29ヵ月前に左開胸開腹でTh12-L2前方固定術を施行。24ヵ月前に撮影した胸部単純X線写真により横隔膜ヘルニアが指摘されたが,無症状なため経過観察されていた。今回,嘔気,心窩部痛,下血あり当院受診。CTで左胸腔内へ胃,結腸,脾臓の嵌頓所見,および結腸壁の造影不良を認めたため,左横隔膜ヘルニア嵌頓および結腸壊死疑いで緊急手術を施行した。上腹部正中切開で開始。手術所見では,胃と結腸漿膜面の色調は問題なく,切除は行わなかった。約5cmのヘルニア門は2-0非吸収糸で縫合閉鎖を行った。医原性横隔膜ヘルニアは無症状で経過することもあるが,本症例のように遅発性に症状が出現することもある。したがって,診断した際には無症状であっても手術療法を考慮すべきと思われた。

  • 川野 雄一郎, 野口 琢矢
    2018 年 38 巻 4 号 p. 707-710
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は36歳,女性。前医で白血球減少を指摘され当院血液内科受診。精査の結果,急性骨髄性白血病と診断され化学療法開始された。治療開始後14日目より右下腹部痛を認め急性虫垂炎が疑われた。血液検査所見でWBC:360/μL(Neut:0%,Lymph:100%),RBC:246万/μL,Plt:2.1万/μLと高度の汎血球減少を認めた。腹部CTで虫垂は短径15mm大に腫大し中央付近に10mm大の糞石を認めた。急性虫垂炎と診断したが,高度の骨髄抑制状態であったため保存的治療を行い,G-CSF投与で骨髄機能の回復を待って手術を行う方針とし,14日後に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。白血病患者の虫垂炎では今後も化学療法が必要であることから手術をすべきであるという意見が多い。本症例では保存的治療で骨髄機能の回復を待って手術を施行することで術後合併症なく良好な経過が得られた。

  • 杉下 敏哉, 阪井 守
    2018 年 38 巻 4 号 p. 711-715
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性,腹満感を主訴に当院受診。CT検査で多発肝,直腸に壁肥厚像があり,便の貯留が著明で,大腸イレウスの状態であった。同日にWallFlex製のステントを挿入とした。その後,排便を認めた後に経口摂取を開始し,経過観察していた。ステント挿入後14日目に腹痛が出現したため, CT検査を施行したところ腹腔内にfree airを認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。術中所見では,ステント口側端で穿孔をきたしていた。ステントを含め局所を切除し救命し得た。大腸癌によるイレウスに対し,ステントは有用であるが,穿孔を併発すると,致命的になりうる。常に穿孔のリスクを考慮し使用すべきであると考えられた。

  • 小林 展大, 蔵谷 大輔, 花本 尊之
    2018 年 38 巻 4 号 p. 717-722
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は84歳,女性。1週間前から腹痛と嘔吐を自覚し,腸閉塞の診断で前医に入院したが,症状が改善しないため精査加療目的に当院転院となった。CTで左側腹部の小腸内に腫瘤を認め,USで腫瘤は高エコーを呈しており,異物の存在が疑われた。異物口側小腸は拡張しており,異物による腸閉塞と考えた。イレウス管を挿入したが症状は改善せず,小腸内視鏡での摘出もできなかったため,手術を施行した。鏡視下に異物を内包した小腸を同定し,臍部を小開腹して異物を摘出した。異物は3.5×3.0×2.5cm,黄色調を呈しており,結石分析で胆汁酸結石と診断された。過去の画像を検討すると,以前から十二指腸下行脚に憩室がみられ,6ヵ月前のCTで十二指腸憩室内に斑状のair densityを含む内部不均一な類円形腫瘤を認めていた。腸閉塞をきたした際のCTでは十二指腸憩室内の腸石は消失しており,落下腸石による腸閉塞と考えられた。

  • 嶌岡 成佳, 佐藤 功, 千野 佳秀, 田畑 智丈, 田儀 知之, 髙山 昇一, 松本 直基, 藤村 昌樹
    2018 年 38 巻 4 号 p. 723-726
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    胃の内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:以下,ESD)後の遅発性穿孔は,発症した場合には穿孔径が大きく,内視鏡的に閉鎖が困難であり,緊急手術を要する場合が多いといわれている。今回われわれは胃ESD後の遅発性穿孔に対する緊急腹腔鏡下手術を3例経験した。遅発性穿孔の原因として,切開剝離の際または止血の際の筋層への過通電により筋層が壊死するためと考えられている。そのため穿孔部位周囲の組織は脆弱化しており,術中内視鏡と腹腔鏡によって至適な切除範囲を決定し縫合閉鎖を行う必要があると考えられた。

  • 加納 由貴, 淺井 哲, 松尾 健司, 竹下 宏太郎, 一ノ名 巧, 赤峰 瑛介, 藤本 直己, 山口 拓也, 城田 哲哉
    2018 年 38 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は92歳の女性。Press through package(以下,PTP)を誤飲しその後呼吸苦・胸痛が出現し当院へ救急搬送された。胸腹部CTで食道・胃内に7個のPTPを認め緊急内視鏡的異物摘出術を施行した。内視鏡を挿入すると実際には食道・胃内にそれぞれ4つ合計8つPTP異物を確認し,摘出した。翌日胸腹部CT・上部消化管内視鏡検査でPTPが小腸・大腸含め消化管内に残存していないことを確認した。PTP誤飲は消化管穿孔を起こす危険があり緊急内視鏡的異物摘出術の適応となる救急疾患である。今回われわれは1つの症例で8個のPTPを誤飲した希少な症例を経験した。実際には胸腹部CTで想定された数よりも多くのPTPが摘出されており,PTP誤飲ではCTでは検出されないPTPの存在を念頭に置いて処置および経過観察をする必要があると考えられた。

  • 小西 智規
    2018 年 38 巻 4 号 p. 733-737
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は39歳男性。作業中に鉄板に挟まれ受傷し救急搬送された。来院時ショックではなかったが,腹部疼痛が著明で仰臥位をとれず左側臥位であった。FASTは陽性,CT検査で腰椎横突起骨折,腸骨骨折,腹腔内出血を疑う所見を認め緊急手術を施行した。約15cmの小腸腸間膜の断裂を認め,空腸静脈の枝と考えられる静脈性出血を認めた。止血し,他臓器損傷合併なきことを確認し手術を終了した。術後バイタルは安定していたが術翌日の腹部X線撮影で恥骨結合の開大を認めopen book型骨盤骨折と診断した。初期診療で仰臥位での診察,検査を行うことができなかったことが骨盤骨折を指摘し得なかった要因と考えられた。術後仰臥位をとることができfollow upのX線撮影を読影することで骨盤骨折の診断が可能であった。高エネルギー外傷では常に合併損傷を念頭に置き,初期診療のみならず入院後も注意深く対応することが重要と考えられた。

  • 谷浦 隆仁, 服部 晋司, 豊田 暢彦
    2018 年 38 巻 4 号 p. 739-743
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    子宮留膿腫による子宮穿孔はまれである。今回,腹腔鏡手術が診断と治療に有用であった穿孔性子宮留膿腫の1例を経験した。症例は83歳の女性。発熱と腹痛を主訴に受診した。右季肋部に圧痛と筋性防御を認め,腹部造影CTでは緊満した胆囊の一部に造影不良と腹水貯留を認めた。急性胆囊炎を疑ったが,同時に子宮の腫大,壁肥厚,腔内液貯留を認めており,また,子宮底部の壁の菲薄も認められた。子宮留膿腫穿孔の可能性も念頭に置いて,審査腹腔鏡を先行した。腹腔内に黄白色の腹水を認め,子宮底部には5mm径の穿孔が確認された。胆囊に著変はなかった。穿孔性子宮留膿腫と診断し, 腹腔鏡下に穿孔部の単純縫合閉鎖,腹腔内洗浄,経膣的ドレナージを行った。術後に敗血症性ショックを呈したが,救命することができた。本症例では,審査腹腔鏡で確定診断を得て,低侵襲治療を行うことができた。腹腔鏡手術は穿孔性子宮留膿腫の診断と治療の選択肢として有用と思われた。

  • 猪熊 孝実, 泉野 浩生, 山野 修平, 高橋 健介, 田島 吾郎, 平尾 朋仁, 山下 和範, 加藤 隼悟, 田﨑 修
    2018 年 38 巻 4 号 p. 745-748
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は16歳の男性。多数回殴られて受傷。近医を受診後,当院へ転院搬送となった。造影CTでⅢb型脾損傷,脾腫大,左気胸を認め,non-operative managementの治療方針で入院となった。入院後,発熱,咽頭炎,頸部リンパ節腫大を認め,採血で異型リンパ球の出現を認めた。抗体価測定ではEBV VCA-IgM陽性,EBNA抗体陰性であり,EBV初感染による伝染性単核球症と診断した。伝染性単核球症が来院時の脾腫大の原因と考えられた。入院後に貧血の進行や脾仮性動脈瘤の形成を認めず,第20病日に自宅退院となった。伝染性単核球症により脆弱した脾に外力が加わったことで起きた脾損傷と考えられた。

  • 渡邉 卓, 角 泰廣, 石上 雄太, 中野 良太, 加藤 喜彦, 宮原 利行, 中野 浩
    2018 年 38 巻 4 号 p. 749-752
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は75歳女性。自宅で意識消失をきたし当院救急外来に搬送された。当院到着後心肺停止状態となり蘇生処置を行い心拍が再開した。吐血と経鼻胃管からの血性排液があり,腹部CTで胃内に多量の血腫を認めた。上部消化管出血による出血性ショックと診断し,上部消化管内視鏡による止血を試みたが,多量の凝血塊のため出血源の同定が困難であった。十二指腸には異常を認めなかったことから胃出血と診断し,緊急手術を施行した。胃体下部前壁を切開し内腔を確認すると胃体上部後壁の潰瘍性病変からの動脈性出血を認め,止血困難であり救命目的で単純胃全摘術のみ行い二期的手術を行う方針とした。術後肺炎が遷延し気管切開術を要したが集学的治療で救命され,第35病日にRoux-Y再建術を行った。第129病日に退院となった。胃潰瘍からの出血で心肺停止をきたした症例に対して二期的手術を施行し救命し得た1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

  • 清板 和昭, 尾辻 英彦, 長谷部 圭史, 桒原 聖実, 萩原 康友
    2018 年 38 巻 4 号 p. 753-756
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性。腹痛を主訴に救急外来を受診した。腹部造影CTで十二指腸水平脚腹側の後腹膜に造影剤の血管外漏出,後腹膜の大量血腫,腹腔動脈起始部の狭窄を認めた。止血目的に腹部血管造影検査を施行した。上腸間膜動脈の造影で下膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めたが,カテーテルの選択的挿入ができなかった。正中弓状靭帯圧迫症候群による下膵十二指腸動脈瘤破裂の診断で緊急手術を施行した。右側結腸を授動し,膵頭部腹側の下膵十二指腸動脈に瘤を認め切除した。正中弓状靭帯を切開後,腹腔動脈領域の動脈性拍動が増強したことを確認した。術後,残存血腫に感染を認めドレナージ治療を要したが,それ以外の重篤な合併症はなく退院した。今回われわれは正中弓状靭帯圧迫症候群による下膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験した。

  • 山田 修平, 菅原 宏文, 高橋 雄大
    2018 年 38 巻 4 号 p. 757-761
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,男性。左季肋部痛を主訴に近医受診し,CTで腹腔内の囊胞性病変を認めたため当科紹介となった。腹腔内血腫を疑い吸引細胞診を行うも,間質成分と血液成分を認めるのみであった。本人の希望もあり経過観察するも腫瘤の縮小を認めず,腹腔鏡下に腫瘤を摘出した。摘出された腫瘤のほとんどは血腫であったが,最外側には紡錘形や上皮様の細胞が増生していた。免疫組織化学的にはc-kitおよびCD34が陽性であり,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:以下,GIST)と診断された。大網原発GISTは比較的珍しいだけでなく,画像上囊胞様の形態をとるのは非典型的であり,画像からGISTを鑑別にあげるのは困難であった。今回われわれは腹腔内血腫との鑑別が困難であった大網原発GISTの1例を経験したので,画像上の鑑別も含めて報告する。

  • 藤幡 士郎, 近藤 靖浩, 犬飼 公一, 原田 真之資, 野々山 敬介, 山本 稔, 古田 好輝, 本田 純一, 北上 英彦
    2018 年 38 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は85歳男性。近医でpercutaneous transhepatic gallbladder drainage(経皮経肝胆囊ドレナージ:PTGBD)施行中の胆囊炎に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行し,術後11日目に退院された。同日午後意識障害が生じ,同病院へ救急搬送され胆囊動脈からの出血が疑われた。血圧は60mmHg台で出血性ショックを呈していたが初期輸液によりすみやかに90mmHg台に回復し当院に搬送された。緊急手術への移行を準備しつつtranscatheter arterial embolization(経カテーテル的動脈塞栓術:以下,TAE)を施行し,肝動脈A8からの出血を認めコイルで止血した。腹腔鏡下胆囊摘出術後に遅発性の出血が起こることはまれである。本症例は遅発性に生じた動脈瘤非形成性の出血であり過去に同様の報告はみられない。高齢者に対しTAEによる低侵襲な止血術によって有効な結果が得られた。

  • 梶原 義典, 青山 克幸, 三宅 孝佳
    2018 年 38 巻 4 号 p. 767-770
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は95歳,男性。右季肋部痛を主訴に近医を受診。絞扼性腸閉塞の疑いで当院救急外来へ紹介受診となった。腹部造影CT検査では胆囊は腫大し,胆囊壁の造影効果は認められなかった。腹部MRI検査では胆囊管の嘴状所見が認められた。胆囊捻転症と診断し,同日緊急単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術を施行。胆囊は暗赤色を呈しており全体が壊死している状態で,時計回りに270度捻転していた。術後経過は良好で第2病日に退院。胆囊捻転症は通常の胆囊炎と比較して炎症が軽度であることが多く,手術手技が容易であることが多い。術前に胆囊捻転症と診断できれば,単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術でも十分施行可能と考えられた。

  • 中山 啓, 佐藤 就厚, 高井 優輝, 鎌田 徹, 神野 正博
    2018 年 38 巻 4 号 p. 771-776
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡で上行結腸癌を認めた。待機的に腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行し,術後5日目に3分粥を摂取した後に乳び腹水を生じた。翌日に筋性防御を伴う腹痛が出現し,腹部CTで腸管膜脂肪織濃度の上昇を認め,リンパ漏への感染による腹膜炎と診断し抗生剤加療を開始した。腹痛が出現してから7時間後にショック状態となったため,緊急で腹腔鏡下洗浄・ドレナージ術を施行した。腹腔内には黄白色の膿汁を大量に認めた。術前のドレーン排液培養よりA群溶連菌が検出され,劇症型A群溶連菌感染症(Streptococcal Toxic Shock Syndrome:以下,STSS)と診断した。術後にDICを呈したが,CHDFとPMX-DHPを含む集学的治療が功を奏し軽快退院となった。腹膜炎で発症するSTSSは比較的まれであり,文献的考察を加えて報告する。

  • 大山 慧, 民上 真也, 松下 恒久, 真船 太一, 佐治 攻, 榎本 武治, 有泉 泰, 大坪 毅人
    2018 年 38 巻 4 号 p. 777-781
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は16歳男性,既往歴に特記事項はなし。受診2週間前から腹痛が出現し紹介受診となった。腹部CT所見で回盲部に腸重積像を認め,緊急手術の方針となった。腹腔鏡下に観察し回腸が盲腸へ重積しており,回腸末端部に腫瘍性病変の存在が疑われ,腹腔鏡補助下回腸部分切除術を施行した。病理組織所見では中型~大型のリンパ球様細胞がびまん性に増生しstarry sky像を認め,免疫染色の所見よりBurkittリンパ腫と診断した。術後経過は良好で術後9日目に一時退院となった。術後化学療法は外科,小児科,血液内科での合同カンファレンスでレジメンを選択した。術後14日目より化学療法を導入して寛解が得られ,術後1年6ヵ月無再発生存中である。回腸末端部の腸重積で発症したAYA世代発症Burkittリンパ腫に対して緊急手術を施行し,術後早期の化学療法で寛解が得られた症例を経験したので文献的考察も加えて報告する。

  • 水村 直人, 奥村 哲, 豊田 翔, 小川 雅生, 川崎 誠康
    2018 年 38 巻 4 号 p. 783-785
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    経肛門異物では患者から正確な情報が得られない場合がある。十二指腸潰瘍の既往がある50歳代の男性が,食後からの心窩部痛で救急搬送された。CT検査では十二指腸周囲に遊離ガスと大量腹水を認めた。十二指腸潰瘍穿孔と初期診断したが,直腸診での鮮血,高い腹水CT値より外傷性下部消化管穿孔の可能性を考えた。最終的にプライバシーに配慮した問診を行い,肛門から同性パートナーの前腕を挿入したことが判明した。開腹所見では,直腸Rsが穿孔,S状結腸に漿膜筋層断裂を認め,ハルトマン手術を施行した。本症例は十二指腸潰瘍穿孔に極めて類似していたが,伏せられた受傷機転が穿孔部位の術前診断に重要であった。

  • 大島 健志, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 大端 考, 大場 範行, 高木 正和
    2018 年 38 巻 4 号 p. 787-791
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は42歳,女性。腹痛と嘔吐を主訴に前医を受診した。腸間膜脂肪織炎と腸閉塞の診断で保存的治療を受けたが,改善しないため当院へ転院した。入院後の腹部CT検査で腸管の固定不良と腸間膜の捻転による腸閉塞と診断して手術を行った。盲腸から下行結腸まで後腹膜への固定を認めない総腸間膜症を背景に,空腸起始部からS状結腸まで大網裂孔に嵌入した腸閉塞であった。手術はヘルニアを解除後にその原因となる大網を切除した。総腸間膜症は腸回転異常症の1つとされる。総腸間膜症に伴う大網裂孔ヘルニアの報告はこれまでになく,極めてまれな症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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