日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
41 巻, 7 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
原著
  • 木戸川 秀生, 朝岡 元気, 大坪 一浩, 田嶋 健秀, 又吉 信貴, 上原 智仁, 野口 純也, 山吉 隆友, 新山 新, 岡本 好司, ...
    2021 年 41 巻 7 号 p. 513-518
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    胃十二指腸潰瘍穿孔に対する単孔式腹腔鏡下穿孔部大網被覆術の有用性について従来の4ポート式手術と比較検討を行った。対象は吻合部潰瘍穿孔を除く胃十二指腸潰瘍穿孔に対して腹腔鏡手術を行った77例である。2011年以前の4ポート式手術(多孔群:64例)と2012年以降の単孔式手術(単孔群:13例)に分けて比較検討した。手術時間は多孔群112分に対して単孔群97分と有意に単孔群が短かった。多孔群で,すべてのドレーンが抜去された中央値は術7日目であった。術後在院日数は多孔群21日に対して単孔群17日と有意に単孔群で短かった。Clavien-Dindo分類Ⅲ以上の術後合併症は多孔群で11%,単孔群で0%であった。単孔式手術は,術式を工夫することで多孔式手術との比較においても遜色なく,手術時間の短縮と整容性の改善が期待できる。

症例報告
  • 井田 圭亮, 小林 慎二郎, 土橋 篤仁, 小泉 哲, 大坪 毅人
    2021 年 41 巻 7 号 p. 519-522
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    70歳台,男性。アルコール性慢性膵炎での入院歴と,膵仮性囊胞に対する複数回の内視鏡的ドレナージ歴あり。腰背部痛を主訴に救急搬送された。腹部造影CT検査で,胃体上部背側の膵体部に巨大な仮性囊胞を認め,下部食道から胃体部の造影効果が減弱していた。乳酸値の上昇もなかったので,厳重経過観察とした。しかし,16時間後に乳酸値の上昇と血圧の低下を認め,造影CT検査でも上部消化管の虚血性変化の改善はなかった。膵仮性囊胞感染に伴う急性胃壊死および敗血症性ショックの診断で緊急手術を施行した。手術所見では胃噴門部から大弯側の胃体上部が壊死に陥っていた。胃と食道を離断し,噴門側胃切除および囊胞胃吻合術を施行した。術後の縫合不全が懸念されたため,消化管再建は施行せず初回手術を終了した。その後全身状態,栄養状態の改善を待って,初回手術から5ヵ月後に挙上空腸を用いてdouble tract法による再建を施行した。

  • 尾本 健一郎, 浅倉 友理, 河原 直毅, 大西 賢, 島田 岳洋, 浦上 秀次郎
    2021 年 41 巻 7 号 p. 523-527
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性。玄関前で倒れているのを家人が発見し救急要請した。救急隊到着時心肺停止状態であったが当院到着後に蘇生された。膀胱温32.0度,Hb濃度2.3g/dLと中等度の低体温および高度の貧血であった。CT画像で一部小腸の造影効果が不良であり緊急手術とした。小腸が約60cmにわたり壊死しており腹腔鏡補助下小腸部分切除を施行した。翌日に十二指腸潰瘍からの出血があり内視鏡的止血を要したが第40病日に神経学的転帰は良好でリハビリ目的に転院した。病理組織学的にNOMIと最終診断した。出血性ショックにより心肺停止,低体温の状況で搬送され救命し得たまれなNOMIの1例を経験したので報告する。

  • 藤井 一喜, 關 匡彦, 中多 靖幸
    2021 年 41 巻 7 号 p. 529-532
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    20歳台,男性。3%過酸化水素水約40mLを自殺目的に摂取し,救急搬送となった。来院時,vital signは安定しており,咽頭痛を自覚していたがその他の症状はなかった。血液ガス検査では著明な代謝性アシドーシスであり,摂取1.5時間後の腹部CTでは肝内門脈と胃大弯側の静脈内に気腫像,小腸の浮腫状変化を認めたが,腹部造影CTでは造影不良域を認めなかったため腸管虚血はないと判断し保存的加療の方針とした。また,摂取3.5時間後の上部消化管内視鏡検査では,下部食道粘膜の剝離,胃粘膜のびらんが散見された。摂取22時間後の腹部CTでは門脈気腫は消失していた。摂取48時間後に再度上部消化管内視鏡検査を施行したが,粘膜障害の増悪所見は認めず,経口摂取を開始とし,第5病日に退院とした。門脈気腫は致死的な疾患で認められることが多いと報告されているが,過酸化水素水摂取による門脈ガス血症が疑われる場合は,保存的加療で改善すると考えられた。

  • 森本 喜博, 浅井 大智
    2021 年 41 巻 7 号 p. 533-536
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    Parasitic leiomyoma(以下,PL)は遊離した子宮筋腫が異所性に他臓器からの栄養血管を得て生着するまれな疾患である。今回われわれは腹壁に生着し絞扼性腸閉塞を伴ったPLの1例を経験したので報告する。症例は46歳女性。未産で腹部手術の既往なし。発熱と繰り返す嘔吐で救急外来を受診した。腹部CTでは絞扼性腸閉塞および石灰化を伴う腫瘤性病変を認め,初回手術では,腹腔鏡下腸閉塞解除術を施行した。再手術として腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は腹壁に入り込んでおり,小腸との癒着を認めた。小腸腫瘍も否定できなかったため小腸合併切除を施行し,病理組織学的検査でPLと診断された。成人女性,とくに子宮筋腫の既往がある場合は,腹腔内腫瘤に伴う腸閉塞の鑑別診断として本疾患も考慮すべきである。

  • 関 純一, 島田 翔士, 中川 美星子, 垣迫 健介, 大饗 園子, 髙野 洋次郎, 登内 晶子, 中原 健太, 竹原 雄介, 向井 俊平, ...
    2021 年 41 巻 7 号 p. 537-541
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    ポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate:以下,CPS)は陽イオン交換樹脂であり高カリウム血症の治療に用いられる。重大な副作用に腸管穿孔があり使用に注意が必要である。症例1は88歳女性,下腹部痛で前医を受診し,S状結腸穿孔,汎発性腹膜炎と診断された。緊急手術目的に当院に転院搬送された。当院で単孔式人工肛門造設術(Hartmann術)を施行した。病理組織学的所見で穿孔部に壁全層性の壊死を認め,同部位にCPSと思われる好塩基性物質の沈着を認めた。敗血症性ショックの改善なく術後7日目に死亡した。症例2は76歳男性,腹痛で来院し,S状結腸憩室穿孔の診断でHartmann術を施行した。病理組織学的所見では穿孔部と周囲の憩室の一部にCPSと思われる好塩基性の結晶が認められた。術後経過は良好であり,第60病日に退院した。今回われわれはCPS内服中にS状結腸穿孔を起こした2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 佐藤 博, 荒巻 政憲, 長澤 由依子, 田邉 三思, 蔀 由貴, 渡邉 公紀
    2021 年 41 巻 7 号 p. 543-546
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,男性。2年前幽門狭窄を伴った胃潰瘍と胆石に対して幽門側胃切除Roux-en-Y再建術と胆囊摘出術を行った。右上腹部痛を主訴に近医を受診し当院へ救急搬送された。CT検査で十二指腸憩室内の腸石による炎症が疑われ内視鏡検査を行ったところ下行脚外側に憩室があり結石が嵌頓していたため内視鏡的に除去した。憩室壁は菲薄化,一部壊死し穿孔の危険性が高いと判断,開腹術を行った。憩室は大きく,脆く容易に破れ切除は困難と判断,憩室基部粘膜を縫合閉鎖後に憩室壁でラッピングし減圧用に十二指腸断端部から12Fr胃管と総胆管にT-tubeを留置して手術を終了した。術後創感染,肝機能障害はあったものの保存的に軽快し第35病日に退院した。胃切除Roux-en-Y再建後に発症した腸石を伴った十二指腸憩室炎に対し憩室縫縮と減圧術を行った1例を経験したので報告する。

  • 松本 拓真, 坂本 義之, 諸橋 一, 三浦 卓也, 原 裕太郎, 袴田 健一
    2021 年 41 巻 7 号 p. 547-550
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性。腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行後,近医でフォローされていた。嘔気,食思不振,全身倦怠感を主訴に近医を受診し,直腸穿孔,後腹膜膿瘍,人工血管感染と診断された。保存的治療で改善せず手術目的に当科紹介された。腹部は圧痛なく,CTで人工血管周囲の膿瘍形成と直腸RSへの交通を認めた。緊急で,心臓血管外科と合同で右腋窩-両側大腿動脈バイパス術,人工血管抜去術,ハルトマン手術を施行した。術中所見で直腸RSの穿孔部とYグラフト左脚が近接しており,人工血管の刺激による直腸穿孔と診断した。術後経過は良好で第25病日に退院した。人工血管置換術後に起こる人工血管感染は予後不良な合併症である。消化管穿孔に伴う人工血管感染はまれで,直腸穿孔が原因であった報告はない。保存的治療は難しく,本症例では感染巣のデブリードマンおよび非解剖学的血行再建により救命し得た。

  • 小野 恵, 太田 育夫, 福田 隆人, 重岡 宏典, 平出 敦, 大西 勝博, 高橋 均
    2021 年 41 巻 7 号 p. 551-555
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    呼吸困難および起坐呼吸を呈した感染性多発性肝囊胞の症例を経験したので報告する。76歳の女性が呼吸困難,起坐呼吸を主訴に近医より紹介された。CT検査では多発性肝囊胞と肝右葉に13cm大の巨大肝囊胞を認め,この大きな囊胞が心臓,横隔膜,下大静脈,上部消化管を圧迫していた。圧迫を解除するため,ただちに経皮経肝ドレナージ術を施行した。臨床症状はすみやかに改善した。排液からは連鎖球菌が分離され,感染性肝囊胞と診断した。根治的処置として,第15病日にオレイン酸モノエタノールアミンによる硬化療法を行ったところ良好に経過した。呼吸困難,起坐呼吸の成因としては,左室の収縮力低下は認められず,心臓の拡張障害が考慮された。また横隔膜挙上が及ぼす影響も考えられた。今後,呼吸困難,起坐呼吸の症状を呈する症例についてもさらなる解析と蓄積が求められる。

  • 大西 義彦, 伊藤 康博, 杉浦 清昭, 西 雄介, 岸田 憲弘, 瀬尾 雄樹, 田中 求, 戸倉 英之, 高橋 孝行
    2021 年 41 巻 7 号 p. 557-560
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は9歳男児。前日からの腹痛を主訴に当院を受診し,腹部造影CT検査で絞扼性腸閉塞を認めた。近傍にMeckel憩室を疑う盲端構造と憩室から伸びる索状物を認めmesodiverticular band(以下,MB)による絞扼性腸閉塞疑いで同日緊急手術を施行した。術中所見では,bandによる絞扼性腸閉塞とMeckel憩室茎捻転を認め,bandを切離して絞扼と捻転を解除しても,憩室とその付着部の黒色調の腸管は改善せず,小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後7日目に退院した。Meckel憩室は頻度の高い消化管奇形であり,MBによる茎捻転や腸閉塞が知られているが,両者を合併する病態はまれである。卵黄動脈の遺残であるMBにMeckel憩室の血流が依存している可能性があるため,MBを伴うMeckel憩室茎捻転では憩室を含んだ腸切除を行うことで予後を向上させることができると考えられた。

  • 吉田 隼人, 若林 正和, 小堀 秀一, 青木 花奈, 堂本 佳典, 穗坂 美樹
    2021 年 41 巻 7 号 p. 561-564
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    小腸間膜リンパ管腫は比較的まれな疾患であり,急性腹症を呈することもあり注意が必要である。症例は10歳,男性。右下腹部痛を主訴に受診した。右下腹部に圧痛と反跳痛を認めた。血液検査では白血球12,000/μL,CRP 0.04mg/dLと軽度の炎症反応上昇を認めた。造影CTで虫垂の軽度腫大と,上腸間膜動静脈末梢でwhirling signを認めた。骨盤内に造影効果に乏しい囊胞性病変を認め,虫垂炎による膿瘍形成や小腸捻転を疑った。急性腹症として緊急手術を行った。腹腔鏡で観察すると,Treitz靭帯から約70cm肛門側の腸間膜に小腸に接する多房性囊胞病変を認めた。その囊胞性病変も含め小腸部分切除を施行した。虫垂炎の合併も否定できず虫垂切除も施行した。病理検査で虫垂は炎症細胞浸潤のみで,囊胞性病変は腸間膜リンパ管腫の診断であった。術後6日目に軽快退院し,現在まで2年間再発を認めていない。急性腹症を呈した小腸間膜リンパ管腫に対して,診断的治療を含めた腹腔鏡下手術が有効であった。

  • 髙橋 一臣, 茂住 武尊, 水野 豊
    2021 年 41 巻 7 号 p. 565-569
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    腸管子宮内膜症は子宮内膜症の10%あまりに認められる。小腸に発生するのはまれであるが,腸閉塞をきたすことが多い。症例は35歳,女性。手術歴なし。腸閉塞に対して2回の入院歴があり,外来で婦人科疾患の精査予定であったが症状が再燃したため入院となった。骨盤MRI検査で腸管子宮内膜症による腸閉塞が疑われ腹腔鏡下手術を行った。月経に伴う血性腹水と右付属器に内膜症性病変を認めた。回腸末端から10cm口側にも同様な病変があり腸閉塞の責任部位と考えられた。癒着剝離困難であり小腸部分切除術および右付属器摘出術を行った。病理組織学的検査では,漿膜下層から固有筋層にかけて子宮内膜組織の介在を認め線維化をきたし出血を伴っていた。生殖年齢女性の腸閉塞の原因として考慮すべき疾患であり,その診断にMRIは有用で,広範囲の観察が可能な腹腔鏡下手術は有益であると考えられた。

  • 杉山 宏和, 田上 修司, 河村 史朗
    2021 年 41 巻 7 号 p. 571-574
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は,62歳女性。急激な腹痛を主訴に受診し,CTで肝左葉下面に約8.5cm大の腫瘤像を指摘された。3日後に貧血の進行と腫瘍の増大を認め緊急手術を実施した。小弯に10cm大の腫瘤を認め可及的に切除し,最終診断は褐色細胞腫であった。術前および術中に,高熱や高血圧,多汗といった典型的な症状を認めず診断に苦慮した。術後経過は順調で術後経過2年間の経過観察で明らかな再発を認めていない。褐色細胞腫の異所性発生は,全体の約10%で腹部大動脈周囲に多い。遠隔転移がない場合には,外科的切除が第一選択になる。巨大例や異所性発生の場合,典型的な症状をとりにくく診断が困難であることが多い。今回,腹痛で発症し術前診断に苦慮した異所性巨大褐色細胞腫の1例を経験したので報告する。

  • 銭谷 成剛, 岩本 和哉, 内藤 敦, 大塚 正久
    2021 年 41 巻 7 号 p. 575-577
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,女性。横行結腸癌に対して単孔式腹腔鏡下横行結腸部分切除術を行い,pT4aN1M0 Stage Ⅲbの診断で術後補助化学療法としてカペシタビン・オキサリプラチン療法を8コース投与した。術後1年9ヵ月のCT検査で多発肝転移および腹膜播種を認めたため,イリノテカン・S-1・パニツムマブ療法を開始した。2コース目を投与して5日後,右上腹部痛および嘔気が出現した。翌日に救急外来を受診し,腸管気腫症の診断で当科入院となった。腸管虚血は積極的には疑われず,原因としてパニツムマブに伴う腸管気腫症が考えられ,保存的治療で軽快した。腸管気腫症の原因として腸管虚血の他に薬剤性も知られ,分子標的薬に伴う例も知られる。その場合保存的治療が選択肢となり外科的介入が避けられる可能性がある。

  • 伊藤 得路, 土井 正太郎, 濱田 徹, 安田 武生
    2021 年 41 巻 7 号 p. 579-582
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    茸による食餌性腸閉塞の2例を経験したので報告する。【症例1】既往歴に脳性麻痺のある56歳の女性。腹部手術歴はなし。腹痛と嘔吐を主訴に受診した。CT検査でair densityを伴う塊状物と口側腸管の拡張が認められた。意思疎通を図ることが困難であり,腸管壊死の可能性が否定できないため緊急手術を施行した。回腸末端から約30cm口側に可動性のある腫瘤を認め,切開して椎茸を摘出した。【症例2】39歳の女性。腹部手術歴はなし。腹痛と嘔吐を主訴に受診した。CT検査でair densityを伴う塊状物と口側腸管の拡張が認められた。前日に茸を含むすき焼きを摂取したことを聴取し,食餌性腸閉塞の可能性を考慮し,緊急手術を行った。回腸末端より50cm口側に塊状物を確認し,腸閉塞の原因と考えられた。腸を切開してエノキ茸を摘出した。腹部手術歴のない腸閉塞症例では食餌性腸閉塞を鑑別にあげ診療にあたる必要がある。

  • 栗田 安里沙, 伊吹 省, 星川 嘉一, 櫻井 嘉彦
    2021 年 41 巻 7 号 p. 583-586
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は78歳女性。呼吸困難と心窩部痛を主訴に救急搬送された。来院時はショック状態で,全身チアノーゼ,pH 6.9のアシドーシスを認めた。造影CT検査では上腸間膜動脈領域腸管の広範な造影不良域があり,腹腔動脈・上腸間膜動脈は根部の特定が困難だった。腸管虚血領域が広範であり全身状態不良で手術困難と判断し経過観察の方針となったが,翌朝に全身状態が著明に改善した。発症8日後のCT検査では,腸管血流の改善と上腸間膜動脈根部のわずかな描出を認めた。後日の血管造影検査では下腸間膜動脈から腹腔動脈と上腸間膜動脈への側副血行路を認め,この存在が上腸間膜動脈支配領域の腸管血流の維持に寄与したと考えられた。最終的に3ヵ月の入院治療を要したが食事摂取良好な状態で退院した。急性腸間膜動脈虚血症は緊急で侵襲的な治療を要することが多いが,非侵襲的治療のみで改善したまれな1例を今回経験したため文献的考察を加え報告する。

  • 田中 章博, 北山 紀州, 吉田 瑞樹, 西山 方規, 荒木 麻利子, 吉田 英樹, 中澤 一憲, 須浪 毅, 塚本 義貴
    2021 年 41 巻 7 号 p. 587-590
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は26歳,女性。急な下腹部痛を自覚し救急搬送となった。腹部CT検査で下腹部にwhirl sign,巨大腫瘤,腹水の貯留を認めたため,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内腫瘤は捻転した遊走脾であり,脾門部で4回転していた。捻転を解除後に色調の改善を認めたが脾臓が巨大であり温存する場合は固定が困難で,脾動静脈が長かったことから再捻転や内ヘルニアを生じる可能性を考慮し脾臓摘出術を行った。術後経過は良好に経過した。今回,われわれは巨大遊走脾茎捻転の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。

  • 草深 智樹, 金森 泰光, 加藤 弘幸
    2021 年 41 巻 7 号 p. 591-594
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性,統合失調症で他院で長期入院中の患者であり,腹部違和感を訴え腹部CTが施行された。腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで当院紹介となった。身体所見では腹膜刺激症状を認めず,血液検査でも炎症反応の上昇を認めなかった。しかし意思疎通が十分でなく,痛みの評価が困難であり,消化管穿孔の疑いで試験開腹術となった。開腹所見では汚染腹水は認めず,胃,小腸,大腸に明らかな穿孔部位を認めなかった。ドレーンをモリソン窩に留置し,手術を終了した。術後経過は良好で,術後21日目に退院となった。その1ヵ月後に嘔吐を認め,腹部CTで腹腔内遊離ガスを認め,再紹介となった。前回同様に異常所見に乏しく,特発性気腹症と診断し,保存的加療で軽快した。腹腔内遊離ガスを認めた場合でも,異常所見に乏しい症例では,本症例を念頭に置くことで,手術回避できる可能性があると考えられた。

  • 榎本 将也, 壽美 哲生, 立花 慎吾, 永川 裕一, 土田 明彦
    2021 年 41 巻 7 号 p. 595-597
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    95歳女性,腰椎圧迫骨折による体動時痛で,食事摂取困難となり救急搬送され,高度脱水による電解質異常,腎前性腎不全,意識障害の診断で緊急入院となった。全身状態軽快後の経過中に突然の発熱,人工肛門周囲の発赤と腫脹,著明な圧痛を認め,炎症反応が高値であった。CTを撮影し,人工肛門脚の穿孔が原因と診断した。超高齢かつ耐術能に乏しかったため,感染コントロール目的に局所麻酔下で切開ドレナージを施行し,禁飲食と抗菌薬による治療を開始した。治療により,腸管の穿孔部が外瘻化された後に炎症は軽快した。食事開始後にドレーンを抜去し,処置後12ヵ月で療養型病院へ転院となった。人工肛門脚の穿孔の治療は開腹手術が行われることが多いが,局所のドレナージで軽快した症例を経験したので報告する。

  • 梅谷 有希, 磯辺 太郎, 中川 将視, 古賀 史記, 加来 秀彰, 赤木 由人
    2021 年 41 巻 7 号 p. 599-602
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    腸管異物は自慰行為などにより経肛門的に挿入されたことで生じ,異物は下部直腸より口側まで挿入されることは少ない。今回われわれは,経肛門的に挿入された異物がS状結腸に停留し,腹腔鏡補助下に腸管切開し異物を摘出した症例を経験した。症例は67歳男性。自慰行為でボールなどの異物を肛門に挿入していた。2日前に挿入した異物が排泄できず,腹痛が持続することから当院救急外来を受診した。精査で,異物はS状結腸に存在していたため,全身麻酔下での下部消化管内視鏡検査による摘出,完全鏡視下での摘出を試みたが,可動性不良で粉砕困難であり,最終的にHALSで腸管切開による異物摘出を行った。本邦報告例を踏まえて,腹膜炎・消化管穿孔のない腸管異物に対しての治療アルゴリズムを作成したため報告する。

feedback
Top