日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
42 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
症例報告
  • 津留 悠壽, 室屋 大輔, 下河邉 久陽, 長尾 祐一, 和田 義人, 宗 宏伸, 明石 英俊, 下河邉 智久
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 485-488
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は86歳の女性。前医の血液検査で黄疸と肝機能異常を認め,エコー検査で総胆管結石と胆管拡張を指摘されて精査加療目的に当院紹介。CT検査で総胆管結石による閉塞性黄疸と診断した。胃癌に対して19年前に胃全摘出術およびRoux-en-Y再建術を施行されていた。再建腸管であったためショートタイプダブルバルーン内視鏡を用いて採石を試みたが,手技中に小腸穿孔をきたしたため腹膜炎の診断で緊急手術となった。穿孔部位であるY脚の小腸を縫合閉鎖し,胆道ドレナージとして胆囊十二指腸吻合を施行した。術後軽症膵炎および胸水を認めたが保存的に改善し,第22病日に退院となった。胆囊十二指腸吻合は上行感染や発癌などの観点から施行されなくなっているが,本症例のような高齢患者の緊急手術における胆道内瘻術として有用な術式であると思われた。

  • 岩田 力, 佐藤 文哉, 山口 竜三, 森山 瑞紀, 山本 亮
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 489-492
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    真性腸石による腸閉塞の1例を経験したので報告する。症例は85歳,男性。腹部手術歴なし。下腹部痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診した。腹部単純CTで小腸内に空洞を伴う構造物を認め,同部位より口側の腸管が拡張していた。食餌性や異物による腸閉塞を疑い,入院2日目に腹腔鏡補助下に手術を施行した。臍切開部より腸管を体外に引き出して検索を行うと,Treitz靭帯から120cmあたりの空腸に異物を認めた。腸管を切開し,結石様の異物を摘出して縫合閉鎖をした。摘出標本は黄色調,直径35×23mm(9.0g)の腸石で,成分分析では一部にデオキシコール酸を認め,最終的に真性腸石の一種である胆汁酸腸石による腸閉塞と診断した。

  • 室屋 大輔, 下河邉 久陽, 松村 勝, 長尾 祐一, 和田 義人, 宗 宏伸, 明石 英俊, 下河邉 智久
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 493-496
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は90歳の男性。便秘症に対して緩下剤を投与されていた。夜間嘔吐を繰り返したため当院救急搬入。腹部CT検査で門脈ガス血症と腸管気腫症を認めた。全身性炎症反応症候群は認めず,腹膜炎所見も認めなかったため,非壊死性腸疾患が原因と判断して高気圧酸素療法を含めた保存的加療を行った。第3病日に食事開始して症状再燃は認めず,第8病日に退院した。門脈ガス血症と腸管気腫症を伴うものは重症例が多いとされるが,保存的加療の報告が近年増加してきている。今回われわれは高気圧酸素療法を施行した門脈ガス血症を伴った腸管気腫症の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する。

  • 金澤 寛之, 高濱 龍彦, 亀谷 雄一郎, 金井 福榮, 鈴木 毅, 磯貝 純, 澁谷 みどり, 高原 明
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 497-500
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は59歳男性。上腹部痛がありショック状態であった。腹部造影CTでは腹腔内出血と右後腹膜に血腫形成を認めた。初期治療で循環動態は安定し,血管造影検査を実施した。正中弓状靭帯症候群(median arcuate ligament syndrome:以下,MALS)により,代償性に膵動脈アーケードは拡張蛇行していた。右結腸動脈からの選択的血管造影では,中結腸動脈の辺縁動脈と右胃大網動脈をつなぐ吻合枝に動脈瘤と数珠状狭窄を認め,segmental arterial mediolysis(以下,SAM)の関与による破綻を疑い塞栓術を行った。MALSにより変化した血行動態と,SAMの特徴である脆弱な動脈壁を考慮し必要最小限の塞栓術にとどめ,現時点で再発を認めていない。SAMは腹腔内出血を呈する腹部救急疾患であり,血管造影検査による臨床的診断が可能である。治療には保存的治療,塞栓術,および開腹手術と選択肢があり,開腹術バックアップのうえで低侵襲治療が可能である。

  • 箕輪 啓太, 野田頭 達也, 十倉 知久, 工藤 公平
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 501-504
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は83歳女性。来院前日に下腹部痛を自覚し,来院当日朝に家人が意識朦朧とした状態の本人を発見し,救急車で当院に搬送された。来院時は意識障害(JCS Ⅲ-100),収縮期血圧70mmHg以下,pH 7.089とアシドーシスを認め,造影CTを施行すると虚血性腸壊死が疑われたために緊急手術を施行した。術中所見から壊死型虚血性大腸炎の診断で結腸全摘術,人工肛門造設術を施行した。術後は循環動態,アシドーシスは改善したが,高乳酸血症の遷延,筋逸脱酵素の経時的上昇を認めた。第3病日に造影CTを施行し,非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia:以下,NOMI)の診断で,小腸部分切除術およびopen abdominal managementを施行し,第5病日に人工肛門再造設術を施行した。術後合併症で直腸断端の縫合不全による腹腔内膿瘍や短腸症候群の管理に難渋したものの保存的加療で軽快し,第140病日にリハビリ転院した。壊死型虚血性腸炎を疑った際にはNOMIが併発する可能性も考慮して,二期的手術も念頭に置くべきである。

  • 小野 仁
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 505-507
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は,84歳女性。右乳癌に対し,当科で外来内分泌治療を行っていた。某日左下腹部痛が出現し,当科を受診した。腹部X線検査で小腸ガス,ニボーを認め,腸閉塞と診断し,CT検査では移動盲腸を起点とした盲腸捻転を認めた。腸管の造影効果は保たれており,保存的加療を選択した。症状改善後,経口摂取を再開し,退院した。退院2ヵ月後に嘔吐,左下腹部痛を認め,当科を受診した。左下腹部に圧痛を認めたが,筋性防御は認めなかった。CT検査では,回盲部拡張部にclosed loopが生じており,腸管壁造影不良を認めた。盲腸捻転による絞扼性腸閉塞と診断し,同日緊急手術を施行した。拡張した回盲部は下腹部左側に位置していた。絞扼解除後の腸管の色調は良好だったが,上行結腸および盲腸の後腹膜への固定が不良なため,回盲部切除術を施行した。今回われわれは,比較的まれな高齢者盲腸捻転の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

  • 浦上 淳, 松下 和輝, 赤木 晃久, 石田 尚正, 髙岡 宗徳, 吉田 和弘, 羽井佐 実
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 509-512
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    内視鏡的胆管ドレナージ(endoscopic biliary drainage:EBD)に使用されるステント(endoscopic biliary stent:以下,EBS)は,約6%の頻度で逸脱し,まれに腸管穿孔を引き起こすことが知られている。総胆管結石による胆管炎に対し留置したEBSが約3年後に逸脱し,横行結腸穿通をきたした1例を経験したので報告する。症例は92歳女性。総胆管結石による急性胆管炎に対してEBSの留置が行われた。約3年後に発熱と左上腹部の膨満が出現したため当院を受診した。腹部単純CTではEBSが逸脱して横行結腸にあり,結腸壁を貫通し筋層内に先端が達していた。皮下にはairを伴う膿瘍を形成していた。腹腔内には膿瘍は認めなかった。局所麻酔下に皮下膿瘍の切開,排膿を行った。超高齢で寝たきり状態であることから,家族は積極的な外科治療を希望せずそのまま老人介護施設へ退院した。

  • 池本 圭一, 丹羽 由紀子, 岩田 萌, 堀部 文倫, 毛利 俊彦, 杉下 敏哉, 片桐 聡, 中澤 匡男
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 513-516
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:以下,NOMI)に対して術中ICG(indocyanine green)蛍光法による血流評価を行い,一期的手術により救命できた症例を経験したので報告する。症例は71歳男性。主訴は腹痛,嘔吐。来院時造影CTで小腸壁の造影不良,壁内気腫を認め,NOMIを疑い緊急開腹手術を施行した。Treitz靭帯より肛門側に約200cmから270cmの範囲で小腸の漿膜が,非連続性に黒色変化しており,壊死を疑う所見を認めた。ICG蛍光法を用いて観察を行うと,肉眼的に認められた色調変化を伴う腸管壊死範囲よりも口側にさらに20cm,肛門側にさらに10cmの領域で蛍光発光が不十分であった。この所見に基づき,100cmの腸管を切除し,残存腸管を機能的端々吻合した。術後は再虚血を疑わせる所見はなく経過良好で術後30日目に退院となった。

  • 土岐 朋子, 里見 大介, 福冨 聡, 石毛 孔明, 小倉 皓一郎, 森嶋 友一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 517-520
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は41歳,女性。間歇的心窩部痛,嘔気・嘔吐,下痢を主訴に来院した。症状は軽く急性胃腸炎疑いで帰宅となったが,翌日に血便がみられ再受診した。CTで腸重積の診断となり,緊急手術を施行した。盲腸が先進部で下行結腸まで重積していたが血流障害はなく解除は容易だった。盲腸,上行結腸は後腹膜に固定されていなかった。虫垂根部に腫瘤性病変を触知したため回盲部切除術を施行し,虫垂重積が判明した。腸回転異常と腸重積の合併はWaugh’s syndromeと名付けられている。成人での報告はまれであり,文献的考察を加えて報告する。

  • 飯島 靖博, 野竹 剛, 清水 明, 副島 雄二
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    誤飲による消化管異物は上部消化管内で発見されることが多く,内視鏡的に摘出されたり自然排出されたりすることが多いが,異物の種類によっては穿通や穿孔などの危険を伴うため開腹手術が必要になることがある。今回われわれは誤飲された有鉤義歯が十二指腸に嵌頓したため開腹手術を必要とした症例を経験したので報告する。症例は90歳の女性で,食事の際に義歯を誤飲した。2日後にかかりつけ医を受診し腹部単純X線で腹部に義歯の存在を認め当院紹介となる。上部消化管内視鏡では十二指腸水平脚に義歯の存在を確認できたが動揺性はなく内視鏡的摘出は危険と判断し開腹手術を施行した。十二指腸水平脚に義歯を触知し,膵臓の対側壁を切開し摘出した。十二指腸は一般的に異物が停滞しにくいとされている。しかし本症例の様に同部位に嵌頓する症例も報告されており,十二指腸異物についての文献的考察を交えて報告する。

  • 小野寺 優, 押切 裕之, 清水 健司, 東本 郁, 手島 仁, 臼田 昌広
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 527-531
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    心大血管手術後に発症する急性胆囊炎は,死亡率も高く治療に難渋する例もあり軽視できない合併症である。症例は25歳女性,Turner症候群の既往を有し慢性Stanford A型解離と大動脈弁狭窄症に対して弓部置換術および大動脈弁置換術を当院で施行された。術後は血液検査所見上,白血球とCRPの軽度高値を示したが明らかな臨床症状を認めず感染源は判然としなかった。術後第14病日に施行したCT検査で偶発的に胆囊壁の虚血と膿瘍形成を疑う所見を認め,壊疽性胆囊炎の診断で当科紹介となった。全身状態は安定し臨床症状に乏しかったが,胆囊炎から二次的に人工血管グラフトおよび人工弁感染を発症する可能性を考慮し緊急腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した。心大血管術後早期の再手術に対して腹腔鏡手術により手術侵襲を低減しつつ,胆囊炎の波及に伴う二次的な人工血管グラフトおよび人工弁感染を予防することができた。

  • 佐久間 崇, 大平 雅一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,男性。心窩部痛および嘔吐を主訴に当院へ救急搬送され,精査の結果,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。術中所見では,回腸末端より80cm口側に4cm長のMeckel憩室を認め,憩室の先端が回腸末端の小腸間膜に炎症性に癒着しループを形成していた。そのループをヘルニア門として小腸が60cm嵌頓し,絞扼性腸閉塞をきたしていた。癒着剝離し嵌頓を解除した。絞扼腸管に壊死所見は認めなかったため,Meckel憩室切除のみ施行し手術を終了した。術後18日目に退院し,退院後外来で経過観察中である。自験例のようにMeckel憩室の炎症性癒着が原因で発症した絞扼性腸閉塞の報告例は,本邦報告17例とまれである。憩室が炎症性に癒着する要因や憩室長の長さと発症頻度との関連に関して,文献的考察を加えて報告する。

  • 水谷 文俊, 出井 秀幸, 長谷川 洋
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 537-540
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳女性。50年前に帝王切開術を受けた下腹部正中切開創部に,8年前から腹壁瘢痕ヘルニアを認めていた。突然の下腹部痛のため当院へ救急搬送された。腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓と診断して,緊急で小切開と内視鏡操作を併用して腹腔外にメッシュを留置するendoscopic mini- or less-open sublay operation(以下,EMILOS)を施行した。術後4日目に退院し,術後2年経過したが再発所見は認めていない。EMILOSは,小切開創部から直視下で嵌頓腸管の状態確認と還納が可能であり,そのまま内視鏡操作を併用して腹腔外に十分な大きさのメッシュを留置することができる点,腹腔内にメッシュを留置した場合の合併症である術後癒着や腸管への侵食に起因する術後腸閉塞などを回避できる点,タッキングデバイスによる術後疼痛を回避できる点で有用と考えられたので報告する。

  • 植木 知音, 和田 秀之, 丹羽 弘貴, 水沼 謙一, 高橋 亮, 鈴置 真人, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 541-544
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する。症例は74歳,男性。右上腹部痛を主訴に近医を受診し,絞扼性腸閉塞の疑いで当院へ紹介された。腹部造影CTの軸位断で上腹部の小腸がclosed loopを形成しており,内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断し緊急で腹腔鏡手術を施行した。術中,横行結腸間膜の欠損部への空腸の嵌入を認め,横行結腸間膜裂孔ヘルニアと診断した。腸管壊死は認めず,ヘルニア門の縫合閉鎖のみで手術を終了した。術後経過は良好で,第21病日に退院した。本症はまれな疾患であり,術前診断は比較的困難とされるが,後方視的には造影CTの多断面再構成画像(multi-planar reconstruction:以下,MPR)で横行結腸間膜および小腸間膜の血管を同定することで診断が可能であった。MPR像が本症の診断に有用な可能性があると考えられた。

  • 緑川 隆太, 宮崎 大貴, 小嶋 聡生, 石川 博人, 岸本 幸也, 岡部 正之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は38歳,女性。左側腹部痛を主訴に受診した。左側腹部に圧痛を認め,血液検査で炎症反応上昇を認めた。腹部CTで左中腹部に脂肪組織を中心とする渦巻き状の構造物を認め,その周囲は脂肪織濃度上昇を伴い,左鼠径管に連続していた。左鼠径ヘルニアに続発した大網捻転症と診断し,腹腔鏡下大網切除および鼠径ヘルニア根治術を施行した。大網は左側腹部で捻転しており,末梢側は左鼠径ヘルニア門に癒着していた。捻転した末梢側の大網は壊死所見を呈したため切除しTAPP法でヘルニアを修復した。術後経過は良好で軽快し,退院した。今回鼠径ヘルニアに続発した大網捻転症に対し腹腔鏡・TAPP法を用い加療した例を経験した。大網切除とメッシュ使用によるヘルニア修復術は一期的に可能であり,その際腹腔鏡・TAPPを用いることは非常に有用であった。

  • 吉村 雪野, 多賀谷 信美, 松下 公治, 鈴木 淳一, 鈴木 淳平, 八木 隆太, 古谷 未央子, 黒崎 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 549-552
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    子宮全摘術後の腟断端離開による小腸脱は,まれな術後合併症であるが,近年増加傾向にあるといわれている。今回われわれが経験した症例1は,70歳女性で,膀胱癌のため,1年2ヵ月前にロボット手術下で膀胱全摘術,子宮全摘術,回腸導管造設術を施行された。3日前に腟脱の診断でペッサリーを挿入されたが,その後,違和感を主訴に受診し,経腟小腸脱の嵌頓状態と診断された。症例2は,43歳女性で,5ヵ月前に卵巣腫瘍で開腹下に子宮全摘術,両側付属器切除術を施行された。受診2日前に性交渉後,腹痛を主訴に受診,経腟小腸脱嵌頓状態と診断された。2例とも腹腔鏡下での観察により,腸管切除は施行せず,腟断端の修復を行った。はじめに経腟的に気腹し,腹腔内を観察することで,嵌頓解除後の腸管の状態の把握および腟断端修復時の腹腔内外からの安全な縫合閉鎖の確認ができ,経腟と腹腔鏡下の同時併用アプローチは有用な方法と思われた。

  • 益子 一樹, 安松 比呂志, 上田 太一朗, 山本 真梨子, 船木 裕, 利光 靖子, 川口 祐香理, 原 義明
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 553-556
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,女性。他院で人工股関節置換術後に消化管出血を発症し,当院消化器内科へ転送された。緊急上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部より動脈性の出血が観察され,収縮期血圧が40mmHgに低下したため当科に転科となった。蘇生的開胸術,胸部下行大動脈遮断に続いてダメージコントロール目的に緊急開腹術を施行した。幽門部から十二指腸の前壁を切開し,潰瘍底からの活動性出血に対して直接縫合止血術を施行した。術後に胃十二指腸動脈コイル塞栓を追加した。その後出血を認めず,循環,凝固能の改善を認めた24時間後に再手術を行った。初回手術で幽門部を離断していたため潰瘍を含む幽門部から十二指腸球部を切除し,残胃空腸吻合を行った。その後,意識障害残存と廃用に対するリハビリテーション継続目的で転院となった。十二指腸出血に対する前壁切開-縫合止血術は,ダメージコントロールに適した短時間かつ低侵襲な術式と考えられた。

  • 田中 秀治, 小森 充嗣, 岩田 至紀, 田中 千弘, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 557-560
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は87歳,女性。十二指腸潰瘍出血に対して前医で入院加療中,出血が持続し止血困難なため,当院へ転院搬送された。上部消化管内視鏡検査では,十二指腸球部後壁に巨大な潰瘍性病変を認め,潰瘍底の露出血管より動脈性出血を認めた。内視鏡的止血困難で,出血が持続し,出血性ショックとなり,緊急開腹手術を選択した。手術所見では,潰瘍は膵頭部へ穿通し,強固に癒着して剝離困難であった。膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy:PD)も検討されたが,出血性ショック,凝固障害,高齢の患者背景を考慮して,膵臓側に潰瘍底を残す幽門側胃切除術を施行した。術後膵液瘻なく経過は良好で,術後24日目に前医へ転院となった。膵臓への穿通性十二指腸潰瘍出血に対しては,迅速かつ慎重な治療選択が求められるが,今回高侵襲手術を回避した術式を選択し,救命し得た1例を報告する。

  • 栄 由香里, 中村 有佑
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    8歳男児。2日前からの腹痛を主訴に受診した。腹膜刺激症状と,腹部単純X線検査で腹腔内に4個の異物が認められた。再度の問診で数日前に数個のネオジム磁石を飲んだことが聴取できた。単純CT検査で,小腸内に4個の磁石が存在し,口側腸管の拡張と腹水が認められた。腸閉塞と消化管穿孔を疑い緊急手術を行った。2個の磁石はTreitz靭帯から40cmと220cmの部位で小腸壁を介して結合し,挟まれた小腸壁は壊死していたため小腸部分切除を行った。残りの2個は術中透視検査から十二指腸下行脚に存在していることが判明し,内視鏡下に摘出した。術後経過は良好で術6日後に退院した。複数個の磁石誤飲は,単独の誤飲と比べ磁石に挟まれた腸管壁や腸間膜の圧迫壊死による穿孔や穿通,瘻孔形成,腸管ループ形成による腸閉塞などの原因となりうる。誤飲の現場を親が目撃していないことも多く,詳細な問診や画像検査を行い診断する必要性が示唆された。

feedback
Top