日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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42 巻, 5 号
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原著
  • 孫 起和, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 高橋 崇真, 清板 和昭
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 5 号 p. 567-572
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腸穿孔は切除後に一期的吻合を行うかどうかは明確な基準は定まっていない。今回大腸穿孔における縫合不全のリスク因子の検討を行った。【対象および方法】2010年1月から2021年8月までに大腸穿孔に対して一期的切除吻合を行った114例を縫合不全あり19例と縫合不全なし95例の2群に分け,縫合不全のリスク因子を検討した。【結果】多変量解析では慢性腎不全(OR:7.27,95%CI:1.43-37.00,P=0.017),手術時間>150分(OR:4.47,95%CI:1.44-13.00,P=0.010),汎発性糞便性腹膜炎型(OR:5.33,95%CI:1.26-22.50,P=0.023)が独立した縫合不全のリスク因子だった。【結語】慢性腎不全,手術時間150分以上,汎発性糞便性腹膜炎型は大腸穿孔における縫合不全のリスク因子である。

症例報告
  • 箕輪 啓太, 野田頭 達也, 十倉 知久
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 573-576
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳女性。長芋掘りをしていたときに収穫機のバケットが腹部にぶつかって受傷し,近医を受診した。外傷性腹壁ヘルニアの診断で,手術加療目的に同日当院へ紹介された。上腹部に20×10cmの打撲痕を認め,同部位が膨隆していた。遅発性臓器損傷の可能性も考慮して,待機的手術の方針として入院。入院3日目に直接縫合による開腹ヘルニア修復術を施行した。経過良好で入院12日目に退院。術後3ヵ月経過しても再発は認めていない。本邦でヘルニア門の直径が10cm以上(large hernia)の外傷性腹壁ヘルニアは14例であった。早期手術6例は開腹術,待機的手術8例は腹腔鏡手術であった。メッシュ使用に関しては9例であり,開腹術は直接縫合が大半を占めていた。治療が遅滞することで組織の退縮が進行し,ヘルニア門の大きさに応じて腹壁欠損も大きくなり,直接縫合が困難となる可能性が高い。臓器損傷の有無や患者の全身状態に応じて可能な限り早期に手術すべきである。

  • 難波 和也, 黒田 雅利, 濱﨑 友洋, 高橋 達也, 池田 英二
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 577-580
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性。盲腸癌に対し腹腔鏡下結腸右半切除術を施行,術後病理結果はpT4bN3M1c1 StageⅣcであった。Bevacizumab併用化学療法を開始したが,5コース目開始2日後に下腹部痛が出現し救急搬送され,絞扼性腸閉塞の診断となり緊急手術を施行した。腹腔鏡でアプローチし,絞扼腸管は温存可能と判断して腸切除は行わなかった。しかし第6病日に急激な腹痛が出現,翌朝の腹部単純CTで腹水の増加とfree airを認めたため再度緊急手術を施行した。前回手術時に索状物によって絞扼された小腸に5mm大の穿孔を認め,小腸切除および機能的端々吻合を行った。術後経過は良好で,第21病日に退院となった。Bevacizumab投与中では術後縫合不全のリスクが懸念されるが,絞扼性腸閉塞の絞扼解除後に不可逆性の腸管狭小化を認めた場合には腸管切除および吻合を考慮すべきである。

  • 林 秀行, 伊藤 康博, 過外 真隆, 尤 礼佳, 原田 裕久
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 581-584
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は37歳女性。自宅で夫と口論になり,刃渡り25cmの包丁を自ら上腹部に刺し受傷した。現場ですでに包丁は抜去されており,当院に救急搬送された時点での呼吸循環動態は安定していた。CT検査で肝円索内に血腫および刺創路直下に管腔臓器を認めたため審査腹腔鏡を施行した。明らかな臓器損傷は認めなかったが,肝円索が血腫によって腫脹していたため,肝円索付着部を腹膜に沿って切開したところ,腹壁から静脈性出血を認め,腹腔鏡下に縫合止血した。腹部刺創は開腹手術の適応とされてきたが,現在は保存的加療も選択肢の1つとなり,手術適応について議論の分かれるところである。画像診断の進歩に伴い,診察上腹腔内への貫通を認めるも出血など限局している場合は腹腔鏡下手術を行うことも選択肢の1つと考えられた。

  • 阪井 守
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 585-589
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は53歳男性。腹部膨満感および嘔吐で前医より当院へ紹介。当院CT検査で右鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断された。徒手整復を行い還納されたが腹部膨満は改善せず翌日イレウス管を挿入した。イレウス管造影では回腸末端から上行結腸への造影剤を確認したが腸閉塞は解除されず整復後8日目に腹部CT検査およびイレウス管造影を再検査し回盲部嵌頓鼠経ヘルニアの偽還納が判明した。同日,鼠径部切開法では還納できず,開腹移行して嵌頓していた盲腸を含み回盲部切除術を行い,鼠径ヘルニアはLichtenstein法で修復した。本症例では盲腸が嵌頓し偽還納したことによりイレウス管造影で腸管嵌頓が解除したと判断し手術を行う時期を逸してしまった。鼠径ヘルニア回盲部嵌頓の還納後は偽還納という病態の可能性を常に考慮し早急に画像診断を行うべきであり,術式は腹腔鏡によるアプローチが有用であると考えた。

  • 吉田 祐, 中右 雅之, 吉村 昴平, 岡田 俊裕
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 591-594
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は30歳台の男性。急激に増悪する下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。来院時の造影CT検査では,虫垂は囊腫状に腫大し,虫垂壁に石灰化を認め,粘液囊腫が疑われた。また,虫垂は根部付近で屈曲し,遠位側が造影効果不良であったことから,軸捻転と診断し緊急腹腔鏡手術を施行した。術中所見では,暗紫色に変色した虫垂を認め,根部付近で540度捻転していた。明らかな穿孔は認めなかった。愛護的に捻転を解除し,虫垂切除術を施行した。術後経過は良好で,術後5日目に退院となった。虫垂軸捻転は虚血性変化から穿孔をきたしうる疾患であり,手術のタイミングを逃さないことが肝要である。今回,われわれは造影CT検査所見から虫垂粘液囊腫軸捻転と診断し,緊急で腹腔鏡手術を施行し,良好な転帰を得た1例を経験したため報告する。

  • 濱田 朗子, 河野 文彰, 宗像 駿, 田代 耕盛, 武野 慎祐, 落合 秀信, 七島 篤志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 595-598
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,男性。木工作業中に木片が飛散し,約8mm径の木片が右下腹部に刺さり近医を受診した。理学所見でショック症状を呈していたため当院救命救急センターに緊急搬送となった。初期輸液により,来院時にはバイタルは安定していたが,腹部CTで消化管穿孔および右外腸骨動静脈損傷を疑い緊急手術の方針とした。木片は小腸を損傷し後腹膜から右外腸骨静脈を貫通しており外腸骨静脈より出血していた。後腹膜を開放し外腸骨静脈を露出し,静脈を圧迫し出血のコントロールを行い外腸骨静脈を連続縫合で修復した。術後に右下肢に軽度の浮腫を認め造影CTでは損傷部に一致して血栓を認めたため抗凝固療法を開始した。血栓の増悪なく退院となった。外傷性の腸骨静脈損傷は比較的まれであるが,適切な対応が要求される致死的な病態である。迅速な視野の確保と一時止血,静脈の修復法,術後管理について習得しておくことが必要である。

  • 小池 弘太
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 599-601
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳女性。間質性肺炎で当院呼吸器内科通院中。以前より肝囊胞を指摘されていた。間質性肺炎に対し,胸部単純CTを行った際に肝囊胞破裂を認め,消化器内科受診。転倒歴があり,肋骨骨折も認めていたため,外傷性肝囊胞破裂と診断した。受診時バイタルサインは安定しており,腹部症状はなく,採血所見も異常がなかったため,外来で保存的加療とした。1週間後および1ヵ月後に再度腹部単純CTを行ったが,肝囊胞破裂の所見は改善しており,治癒と判断した。肝囊胞破裂を発症した場合は,手術や血管塞栓療法,ドレナージなどの治療を要することが多い。今回われわれは,保存的加療で治癒した症例を経験したので報告する。

  • 吉本 雄太郎, 山内 卓, 菅原 友樹, 福永 哲
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 603-606
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は33歳女性。下血を主訴に救急搬送され,腹部造影CTで小腸からの活動性出血を認めた。来院時,出血性ショックの状態であり,診断治療目的に腹部血管造影検査を施行した。空腸からの出血点を同定した後,N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による血管塞栓術を行った。一時的な止血を得たが,第14病日に再出血を認め,緊急手術を施行した。単孔式腹腔鏡手術を選択し,術中に空腸の限局的な出血斑と腸間膜の拡張血管から血管塞栓部位を肉眼的に確認し,小範囲の小腸切除で手術を終了した。術後経過は良好で,術後第9病日に退院した。小腸動静脈奇形による消化管出血は比較的まれで診断と治療に難渋することが多い。今回,単孔式腹腔鏡手術でNBCA塞栓術による漿膜面の変化から出血点を同定し,過不足のない小腸切除が可能であった症例を経験したので報告する。

  • 松本 理沙, 菅沼 利行, 岡田 晋一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 607-610
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は22歳の女性で,右下腹部間欠痛,血便を主訴に来院した。家族歴や既往歴に特記事項はなく,造影CT検査で横行結腸中央部付近に腸重積所見と内部に約3cm大の多血性腫瘍を認めた。下部消化管内視鏡検査を施行したところ,送気で重積が解除され,盲腸部に表面びらん潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認めた。腹腔鏡下回盲部切除術を施行し,切除標本の病理組織,免疫組織化学的検査でgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と診断した。適切な術前評価を行い,偽被膜損傷に注意すれば腸重積合併GISTに対する腹腔鏡下手術は腫瘍学的,手術侵襲的に有用と考えた。腸重積を伴うGISTの報告は少なく,若年性盲腸GISTに対し腹腔鏡下手術を施行した症例は自験例のみであるため報告する。

  • 佐藤 真生, 加藤 健, 齊藤 孝, 鈴木 克彦, 松平 直哉
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 611-613
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    73歳,女性。発熱を主訴に当院を受診し,肝膿瘍と胆石胆囊炎疑いの診断で入院した。血液培養でKlebsiella pneumoniae(以下,KP)が検出された。第6病日に左眼内炎の所見があり,視力は手動弁まで低下しており,転移性眼内炎と診断された。大学病院に紹介し,眼科手術が行われ,視力は指数弁まで改善した。経皮経肝膿瘍ドレナージも施行され,培養でKPが検出された。KPのムコイド型による肝膿瘍では,全身に膿瘍と炎症が転移するinvasive liver abscess syndrome(ILAS)が続発し,失明などの後遺症が問題になる。これに予防的に対応するにはPCR検査や培養検体を用いてのstring testが有用とされるが,自施設にそのような検査設備が限られている状況下では培養結果を待たずに眼科検索を検討するべきである。

  • 岩田 力, 佐藤 文哉, 山口 竜三, 森山 瑞紀, 山本 亮
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 615-617
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は14歳,男児。既往歴に気管支拡張症(カルタゲナー症候群の疑い)で小児科に通院中,また虫垂炎で保存治療歴がある。左下腹部痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診した。腹部CT検査では完全内臓逆位症の所見を認め,左下腹部に存在した虫垂は9mmに腫大していた。完全内臓逆位症に発症した再発性急性虫垂炎と診断し,準緊急で手術の方針となった。通常施行する場合と左右対称の手術用器具の配置で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。完全内臓逆位症を合併した腹腔鏡下虫垂切除術では脈管系の破格が問題になることは少なく,安全な術式になりうると考えられた。

  • 内藤 慶, 須田 光太郎, 佐野 渉
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 619-622
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性。嘔吐,下痢,右下腹部痛を主訴に当院を受診し,造影CTで腫大した虫垂と虫垂憩室を認めた。憩室穿孔に伴う重症化リスクを考慮して準緊急で腹腔鏡下虫垂切除術の方針とした。術中所見では虫垂に複数の憩室が散見され,自動縫合器で虫垂根部を切除し虫垂を摘出した。術後病理組織学的検査では複数の真性憩室と,憩室および虫垂壁内にリンパ球や形質細胞が主体の炎症細胞浸潤を認め,虫垂真性憩室を伴う虫垂憩室炎と診断した。虫垂憩室は比較的まれな疾患で,そのほとんどは仮性憩室であり真性憩室の頻度は非常にまれである。穿孔や膿瘍形成などの重症化リスクが高い点や,虫垂腫瘍との鑑別を要する点を考慮し,手術適応を含めた適切な治療方針の選択が求められる。腹腔鏡下に切除した虫垂真性憩室を伴う虫垂憩室炎の1例を経験したので報告する。

  • 箕浦 宏之, 内藤 正規, 萩原 千恵, 中村 隆俊, 内藤 剛
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 623-625
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は50歳台男性。心窩部痛,嘔吐を主訴に当院を受診し小腸穿孔,腹腔内膿瘍の疑いで外科紹介となった。腹部造影CT検査では左上腹部に約10cm大の被膜を伴った内部不均一な膿瘍があり,小腸との連続性を認めたため,小腸穿孔による腹腔内膿瘍および限局性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると,バウヒン弁から約60cm口側の回腸腸間膜対側に被膜で覆われた径10cm大の腫瘤を認めた。切除可能と判断し体腔外で腫瘍を含めた回腸部分切除術を施行した。病理組織学所見では腫瘤の内腔壁は腸管構造を保つ真性憩室であり,また急性炎症による憩室炎の所見を認め,Meckel憩室炎による膿瘍形成と診断された。膿瘍形成の原因としては,可逆性の茎捻転を繰り返したことが示唆された。術後経過は良好で,術後第8病日に退院となった。巨大Meckel憩室の憩室炎による膿瘍化はまれであり,文献的考察を加えて報告する。

  • 川端 一美, 宮本 勇人, 宮﨑 純一, 井上 祐真, 李 兆亮, 阿部 孝
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 627-631
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,男性。胃癌で幽門側切除の既往がある。右下腹部痛の主訴で来院され,CTで小腸イレウスがみられた。イレウスチューブを挿入し閉塞起点で造影すると腫瘤状の欠損がみられた。1ヵ月前に施行された上部内視鏡で50mm大の胃石を指摘されており未治療であったことから,落下胃石によるイレウスの診断で入院となった。イレウスチューブより連日コーラを注入することで次第にチューブ排液は減少し腹痛も改善した。しかし注入5日目に急激な腹痛がありCTを撮影したところ,回腸末端部で胃石が嵌頓しており,経肛門ダブルバルーン内視鏡による破砕術を行った。破砕翌日には腹痛は完全に消失しており,イレウスチューブを抜去した。退院前に念のため上部内視鏡を行うと胃内に胃石が残存しており内視鏡的破砕術を行った。

  • ─本邦報告例の集計─
    大塚 恭寛, 小松 悌介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 633-636
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    腰痛を主訴に整形外科を受診し,原発性肺癌の脊椎転移と診断された64歳男性。脊柱後方固定術後2日目から腹部膨満と胆汁性嘔吐が出現し,麻痺性イレウスの診断下に保存的治療を5日間施行されたが症状軽快せず,当科紹介となった。腹部に圧痛と筋性防御を認め,CTで多量の腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,原因として肺癌小腸転移をもっとも疑った。救命目的で緊急開腹すると,空腸に10mm径の穿孔と腸間膜リンパ節腫大を認め,穿孔部を含む小腸を切除して端々吻合で再建し,所属リンパ節の一部をsampling目的で摘出した。切除標本の病理組織診断は肺多形癌の小腸・リンパ節転移であった。術後18日目に化学療法目的で呼吸器内科に転科したが,治療導入前の再評価で全身転移の存在が判明し,患者自身が緩和医療を選択され,術後64日目に永眠された。

  • 伊藤 謙
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 5 号 p. 637-640
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性。1年前に右下葉肺癌に対して胸腔鏡下右肺下葉切除された。突然の腹部全体の自発痛を主訴に前医救急搬送となった。胸腹部CT検査で横行結腸肝弯曲部の右胸腔内への脱出を認め,医原性横隔膜ヘルニア嵌頓の診断となった。手術目的に当院に転院となり,腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した。腹腔鏡下に右横隔膜に嵌頓する横行結腸および40mmのヘルニア門を確認した。横行結腸を愛護的に腹腔内に還納し,ヘルニア門は非吸収糸を用いて水平マットレスで縫縮した。縫縮部を覆うようにSymbotexTM compositeメッシュを全周性に固定し手術を終了した。術後経過は良好で第10病日に退院となった。医原性横隔膜ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は低侵襲で有用であった。今回,肺切除後に発生した医原性横隔膜ヘルニアに対して腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した1例を経験したので報告する。

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