日本腹部救急医学会雑誌
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原著
  • 井田 和美, 内藤 敦, 能浦 真吾, 川端 良平
    原稿種別: 原著
    2026 年46 巻3 号 p. 396-401
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
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    【背景】大腸憩室炎による結腸膀胱瘻は,自然閉鎖が困難であり手術が第一選択となるが,術式や周術期管理に関してはいまだ定型化されていない。当院で経験したS状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻症例を対象に,後ろ向きに検討を行った。【対象】2013年4月から2024年10月までに当院でS状結腸膀胱瘻に対して手術を施行した19例を対象とした。【結果】男性16例,女性3例であり,年齢中央値は70歳(52〜87歳)であった。開腹手術は1例,腹腔鏡手術は18例であった。根治術を施行した18例のうち膀胱部分切除を施行したのは1例で,その他の17例は瘻孔切離のみであった。術後の膀胱カテーテル留置期間中央値は7.5日(2〜18日)で,術後合併症は創部感染,肺炎,麻痺性イレウス,縫合不全,膀胱瘻残存による尿漏出を各1例認めた。【結語】S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は腹腔鏡手術にて安全に治療可能と考えられた。

症例報告
  • 松田 洋直, 大谷 和広, 木幡 亮, 萱島 理, 田中 佑一
    2026 年46 巻3 号 p. 402-405
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は49歳,女性。入院の3日前に急性の下腹部痛と便秘を主訴に救急搬送された。初診時の単純CTで糞便性腸閉塞と診断され一度帰宅したが,その後も症状が改善せず再度救急搬送された。再診時の造影CTでS状結腸の狭窄および腸間膜血管と子宮動脈の交差像を認めたことから,子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断し同日入院した。待機的に腹腔鏡手術を施行し,左子宮広間膜の2×4cm大の裂孔から脱出しclosed loopを形成していたS状結腸を整復し,裂孔を縫合閉鎖した。術後経過は良好で,術後9ヵ月間再発を認めていない。子宮広間膜裂孔ヘルニアの結腸脱出例は文献上本症例を含めて8例のみとまれで,術前診断率は50%であった。診断の手がかりとなった子宮動脈と腸間膜血管の交差像は,後方視的には単純CTでも描出されており本疾患の診断に有用な所見と考えられた。多産・中年女性の大腸閉塞では,本疾患を鑑別にあげるべきである。

  • 北條 由実子, 筒山 将之, 櫻井 俊輔
    2026 年46 巻3 号 p. 406-409
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は41歳,女性。未経産婦。前医で経腟超音波ガイド下に採卵が行われ,腹痛が改善せず当院救急外来を受診した。経腟超音波検査で子宮周囲に点状高エコーと高エコーの塊が浮遊する無エコー域を認め,腹部造影CTで腸間膜血管からの造影剤漏出,多量の腹腔内液体貯留を認めた。採卵後の腹腔内出血を疑い緊急開腹止血術を施行した。術中,腸管と大網の子宮底部への癒着,S状結腸間膜損傷,S状結腸間膜血管からの出血を認め,腸間膜の損傷血管を縫合止血した。S状結腸の肉眼的な色調不良は認めなかったものの直動脈を損傷していた。ICG蛍光法で腸管壁を観察し,蛍光不良域を認めたためS状結腸を切除吻合した。生殖医療は年々施行例が増えており,産婦人科医以外も合併症の対応をする機会が増えていくことが予想される。また,ICG蛍光法による腸管血流の評価は虚血範囲を視覚的に確認でき,外傷や医原性の腸間膜損傷に対して有用であると考えられる。

  • 金野 剛, 上原 智仁, 田上 貴仁, 室屋 大輔, 又吉 信貴, 野口 純也, 山吉 隆友, 新山 新, 木戸川 秀生, 岡本 好司
    2026 年46 巻3 号 p. 410-413
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    71歳,男性で,腹部膨満感を主訴に前医受診し,腸閉塞の疑いで当科紹介となった。健康維持目的に梅干しの種子を殻ごと飲み込む習慣があった。腹部造影CT検査で左側横行結腸に造影効果を伴う壁肥厚と同部位の口側結腸から回腸まで拡張を認めた。拡張腸管内腔には梅の種子と考えられる辺縁が高吸収の腫瘤性陰影を多数認めた。緊急で下部消化管内視鏡検査を施行し,横行結腸に全周性の2型病変を認め,スコープは通過不能だった。大腸ステント留置を行い腹部膨満感は軽快したが,入院3日目の腹部単純X線写真でステント口側に種子の停滞を認めたため,早期手術が必要と判断し,腹腔鏡下左半結腸切除術を施行した。術後経過良好で術後10日目に自宅退院となった。全周性大腸癌に梅の種子が閉塞した症例に対して,大腸ステント留置を行い,腸管減圧が成功したが,ステント口側の梅の種子が停滞していたため,腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する。

  • 藤坂 悠司, 三上 和久
    2026 年46 巻3 号 p. 414-417
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は25歳,女性。右側腹部痛を主訴に受診し,腹部CTで回盲部腸重積を認め緊急入院となった。重積先進部には囊胞性病変を認め,横行結腸口側に位置していた。入院2日目,透視下で下部消化管内視鏡による整復を施行した。腫瘤は表面平滑・弾性軟であり,正常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍であった。入院4日目,腹部CTで腸重積の再燃を認め,緊急手術を施行した。腹腔鏡観察では横行結腸までの回盲部腸重積を認め,腹腔鏡下Hutchinson手技により術中整復を行った。臍小開腹創から体外に誘導し,腸切開下に病変位置の確認を行い,回盲弁からの距離を確認のうえで,粘膜側から盲腸部分切除により病変を一括切除した。病理組織所見よりリンパ管腫と診断した。自験例は,術中に腸重積の整復を行い,腸切開をして粘膜側から腫瘍位置の確認と切除という工夫により,腹腔鏡補助下盲腸部分切除という縮小手術が可能となった。

  • 大竹 廉正, 齋藤 勝, 要 知輝, 遠藤 英成
    2026 年46 巻3 号 p. 418-421
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は71歳,男性。2年前に前立腺癌に対してロボット支援前立腺全摘術が施行されていた。今回,食後の下腹部痛を主訴に前医救急外来を受診した。腹部造影CTで絞扼性腸閉塞の診断となり,当院に紹介され,緊急開腹手術を施行した。術中所見では,前立腺癌手術時にリンパ節郭清により露出された左外腸骨動脈と後腹膜との間隙に小腸が嵌頓していた。用手的に小腸を引き出し整復し,絞扼の原因となった左外腸骨動脈を損傷することなく小腸部分切除術を施行した。再発予防のため,左外腸骨動脈の外膜と後腹膜を3-0プロリンで縫合閉鎖した。術後経過良好であり,術後11日目に退院した。外腸骨動脈による絞扼性腸閉塞の報告例は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 丸山 大貴, 千葉 勇輝, 吉田 里佳子, 三浦 琢磨, 横沢 友樹, 鈴木 洋, 星田 徹, 亀井 尚
    2026 年46 巻3 号 p. 422-425
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    尿道カテーテルによる膀胱穿孔はまれだが重篤な合併症である。汎発性腹膜炎として手術が施行され,術中所見で診断に至ることも多い。症例は89歳,男性。前立腺肥大症に対する尿道カテーテル長期留置中に左下腹部痛で救急搬送された。単純CTで腹腔内遊離ガスとカテーテルによる膀胱壁貫通を疑う所見を認めた。追加した造影CT遅延相のCT urographyで腹腔内への造影剤漏出を認め,尿道カテーテルによる膀胱穿孔と診断した。バイタルサインが安定し,腹膜炎所見が限局的であったため,尿道カテーテル交換と抗菌薬投与による保存的加療を選択した。症状はすみやかに改善し,膀胱鏡で穿孔部の閉鎖を確認後,第35病日に転院となった。尿道カテーテルによる膀胱穿孔の診断において,順行性CT urographyは非侵襲的で有用な評価法になる場合がある。

  • 下形 将央, 坂本 友見子, 鶴丸 裕司, 大友 直樹, 旗手 和彦, 金澤 秀紀
    2026 年46 巻3 号 p. 426-430
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    鼠径ヘルニア嵌頓に対する緊急手術において,膀胱ヘルニアの合併はまれであるが,術中の予期せぬ遭遇は膀胱損傷をきたす危険がある。今回,CTで膀胱ヘルニアの合併を術前診断し,膀胱損傷を回避して安全にTAPP法を施行し得た1例を経験した。症例は84歳,男性。腹部膨満と右鼠径部痛で救急搬送された。造影CTで右鼠径ヘルニア囊内への小腸および膀胱の嵌頓を認め,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察し,小腸と膀胱に血流障害はなく小腸および膀胱部分切除は不要と判断した。嵌頓した膀胱は損傷なく剝離し,TAPP法でヘルニア修復を行った。術後合併症なく術後9日目に退院した。膀胱ヘルニアは術中に予期せず遭遇すると膀胱損傷のリスクが高いが,自験例は,鼠径ヘルニア嵌頓においてCTで膀胱ヘルニアの合併を適確に術前診断することが,膀胱損傷の回避に重要であり,その診断に基づくTAPP法が安全かつ有効な治療戦略であることを示唆する。

  • 村松 凱斗, 上村 卓嗣, 丸山 祥太, 水野 豊, 松倉 理佳子, 掛端 伸也
    2026 年46 巻3 号 p. 431-433
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は75歳,男性。腹痛を主訴に当院に救急搬送され,精査の結果GradeⅢの急性胆囊炎と診断し入院のうえ,集中治療管理と胆囊ドレナージを施行した。以後,胆囊炎は徐々に改善したが,胆囊ドレナージ排液が淡血性に変化したため第18病日に造影CTを再検したところ胆囊動脈瘤を新たに認めた。胆囊動脈瘤破裂の兆候はなかったため,準緊急的に動脈塞栓術を施行し,動脈瘤の血流は消失した。以後,胆囊壊死や胆囊炎の再燃はなく経過し退院となった。治療後約1年経過した時点で胆囊炎の再燃なく経過観察中である。急性胆囊炎に続発する胆囊動脈瘤破裂症例の報告は散見されるが,治療経過のなかで診断された未破裂胆囊動脈瘤の報告例は少ない。今回われわれは,急性胆囊炎に続発する胆囊動脈瘤に対し,責任血管を選択的に塞栓することで胆囊壊死を回避でき保存的に加療し得た症例を経験したので報告する。

  • 池村 京之介, 小嶌 慶太, 柴木 俊平, 坂本 純一, 横田 和子, 山梨 高広, 佐藤 武郎, 内藤 剛
    2026 年46 巻3 号 p. 434-437
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    爆傷は本邦では比較的まれな外傷である。腹部爆傷に対して腹腔鏡手術が有用であった1例を経験したので報告する。症例は40歳台,男性。工場でステンレスパイプの爆発により受傷し,救急搬送された。Vital signは安定しており,顔面,四肢のほか左側腹部に複数の挫創を認めた。腹部所見は創部の圧痛のみで,腹膜刺激兆候はなかった。造影CT検査で腹腔内遊離ガスと1つの腹腔内異物を認めたため,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に広く腹腔内を観察し,下行結腸前面の異物と同部位の漿膜損傷を認め,異物除去と腸管修復を行った。日本外傷学会消化管損傷分類2008のD Iaと診断した。術後15病日に自宅退院した。全身状態と腹腔内条件が許容できれば,腹部爆傷に対する腹腔鏡手術は有用な手段であると考えられた。

  • 小嶌 慶太, 横田 和子, 山梨 高広, 佐藤 武郎, 内藤 剛
    2026 年46 巻3 号 p. 438-441
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    50歳台,男性。腹部外傷の既往がある。近医より食思不振の精査加療目的に当院を紹介受診した。腹部造影CT検査で臍部の左右に均一に造影される腹膜腫瘤を認め,腹部超音波検査では低エコー腫瘤として認められた。画像検査からは腹腔内悪性疾患が疑われたため,病理診断を目的に腹腔鏡下生検を施行した。腫瘤性病変は大網に覆われて腹壁に埋没し,暗赤色で易出血性であった。病理学的検査では赤脾髄と白脾髄を有する脾臓組織が認められ,外傷の既往から脾症と診断した。術後経過は良好で術後6日目に退院した。脾症はincidentalomaとして発見されることが多く,脾外傷や脾摘の既往から本症を想起できれば非侵襲的検査により診断を得られる可能性はあるが,診断に難渋する場合は,低侵襲な診断手法として腹腔鏡下生検が有用である。

  • 江竜 俊喜, 森 治樹, 児玉 泰一, 丹後 泰久, 德田 彩, 塩見 尚礼
    2026 年46 巻3 号 p. 442-445
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    外傷性肝損傷のうち尾状葉(Spiegel葉)の損傷はまれで,その解剖学的特性から治療方針に関するエビデンスは乏しい。症例は13歳男児,背部への鈍的外傷受傷後2日目に腹痛を主訴に救急搬送された。来院時,収縮期血圧70mmHg,心拍数120回/分とショックバイタルを呈し,腹部造影CT検査にて尾状葉破裂および腹腔内出血を認め,The American Association for the Surgery of Traumaが規定したliver injury scaleのGrade Ⅲと診断した。非手術療法(non-operative management:以下,NOM)を選択し,活動性出血は確認されず,輸液により循環動態は安定した。入院2日目のCT検査で血腫は網囊内に限局し,症状も改善傾向となり,入院8日目に退院となった。AAST-LIS GradeⅢの小児肝尾状葉損傷で,輸液に反応し血行動態が安定し,造影CTで活動性出血を認めない尾状葉損傷では,厳密なモニタリングによる経過観察と緊急時にIVRおよび手術への移行可能な体制を前提として,NOMが治療選択肢となり得る。

  • ─JATECの重要性─
    大塚 恭寛, 横田 哲生, 吉住 有人
    2026 年46 巻3 号 p. 446-449
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は39歳の男性で,プレス機械に腹部を挟まれ,受傷4時間後に腹痛を主訴に当院を独歩受診した。高エネルギー外傷と判断し,外傷初期診療ガイドライン(以下,JATEC)に準拠したprimary surveyを適用したところ,循環に異常を認め,出血性ショックと診断した。初期輸液により循環が安定化し,secondary surveyにて腸間膜単独損傷と診断した。HCUに入室し,非手術療法の方針で輸血を含む集中治療を施行したが,入室4時間後に循環が再び不安定化し,transient responderと判断した。緊急開腹すると,2ヵ所の腸間膜に裂創による欠損と滲出性出血を認め,両腸間膜欠損部の腸管を切除しておのおのを端々吻合で再建した。術後経過は順調で,術後10日目に独歩退院した。来院形態にかかわらず,高エネルギー外傷が疑われる症例に対しては,JATECの理念に基づいた初期診療を行うことが重要と思われた。

  • 寺岡 晋太郎, 重田 健太, 岡田 一郎, 金 史英, 横堀 將司
    2026 年46 巻3 号 p. 450-453
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    大動脈十二指腸瘻(aorto-duodenal fistula:以下,ADF)は周術期の死亡率が高い疾患である。ADFの救命には術前・術中の一時止血が生死を分ける。われわれはADFに対する出血制御を目的として蘇生的大動脈内バルーン遮断(resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta:以下,REBOA)を行い救命し得た2例を経験した。症例1では術前に大量出血をきたしたADFに対してREBOAを施行し人工血管再置換術を施行した。症例2では循環動態が安定したADFに対して予防的にREBOAを留置し人工血管再置換術を施行した。1例に穿刺部の動脈解離を認めたが経過観察のみで改善し,2例ともに術後再出血なく退院した。ADFに対して一時止血を目的にREBOAを施行することは緊急手術をより安全に施行するために有用であると考えられた。

  • 大村 泰輝, 鈴木 貴久, 寳子丸 佳音, 牛窪 樹飛, 高島 堯, 口分田 尭, 中嶋 早苗
    2026 年46 巻3 号 p. 454-458
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    消化管穿通・穿孔の原因として異物は比較的まれである。今回,異物によるS状結腸穿通に対して,待機的な大腸内視鏡的摘出により軽快した1例を経験したので報告する。症例は70台女性。下腹部違和感,炎症反応高値を主訴に当院紹介受診。CTでS状結腸に腸管外への突出を伴う線状高吸収構造物,内腔にairを伴う膿瘍を認め,魚骨を疑う異物によるS状結腸穿通が疑われた。症状軽微であり,絶食抗菌薬治療の方針とした。入院後9日目に大腸内視鏡検査を施行し,S状結腸粘膜から貫通する鋭利な異物を確認し,鉗子にて摘出した。処置後のCTでfree airの出現や腹痛の増悪は認めなかったため,絶食抗菌薬治療を継続した。経過良好で,処置後5日目に食事を開始し,8日目に退院した。異物による大腸穿通は,全身状態が安定していれば,膿瘍径や炎症反応にかかわらず,内視鏡的摘出と保存的治療によって手術を回避できる場合がある。

  • 長田 俊一
    2026 年46 巻3 号 p. 459-463
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    70歳男性患者。高血圧症および糖尿病の既往歴あり。主訴として腹痛と下痢を呈した。当院入院5日前に他施設を受診し腸炎と診断されたが,症状が改善せず摂取困難をきたしたため当科へ紹介された。CT検査で回腸壁の薄化,血流障害,近位腸管拡張が認められ,小腸壊死が疑われた。緊急手術を施行した。回腸の全周性壊死および隣接領域における間欠的な部分壊死を確認した。20cmの回腸切除および吻合術を実施した。経過は順調で,入院13日目に退院した。病理検査ではコレステロール結晶を含む血栓塞栓症と診断された。本症は通常,大動脈や大血管におけるアテローム性プラークの破裂によりコレステロール結晶が小動脈に塞栓し,全身性多臓器不全を引き起こすが,小腸穿孔はまれである。明らかな誘因因子なしに生じた本症例の小腸穿孔について,文献を含め報告する。

  • 伊藤 雅典, 岡田 剛
    2026 年46 巻3 号 p. 464-467
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は40歳台,男性。2年ほど前からの繰り返す尿路感染で精査され,膀胱鏡で膀胱腸瘻が疑われて当院外科に紹介となった。膀胱鏡では膀胱頂部右側に1cmほどの表面平滑な腫瘤があり,腸管粘膜様の所見であり生検では大腸型の粘膜と診断された。画像検査では膀胱の右側壁に虫垂先端が貫入していた。また,5年ほど前に腹部違和感で撮像されたCTにおいて虫垂先端を中心に多数の憩室を認めた。これらより虫垂憩室炎による膀胱虫垂瘻の診断で泌尿器科と合同で腹腔鏡下手術の方針となった。手術では腹腔内は膀胱に癒着した虫垂を認めたが,悪性腫瘍などの関与を疑う所見は認めなかったため虫垂切除と膀胱部分切除とし,膀胱は縫合閉鎖とした。術後は良好な経過で10日目に退院した。虫垂憩室炎による膀胱虫垂瘻はまれな病態であり,悪性疾患の除外は必要であるが泌尿器科と連携し腹腔鏡で低侵襲に治療可能であった。文献的考察を加えて報告する。

  • 大豆生田 尚彦, 小泉 大, 高見 真梨子, 田原 真紀子, 三木 厚, 河合 繁夫
    2026 年46 巻3 号 p. 468-471
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は75歳男性。1週間前から持続する腹痛・嘔吐を主訴に来院し,腹部CT検査で小腸内異物と口側腸管拡張を認め,異物嵌頓による小腸腸閉塞と診断され緊急入院となった。イレウス管による減圧は奏効せず,入院後6日目に準緊急手術を施行した。回腸末端から110cmの部位に異物を認め,腸切開により摘出した。術後経過良好で術後第8病日で退院し,6ヵ月間再発を認めていない。摘出された異物は植物胃石と病理診断された。胃石は食物や異物が胃内で不溶性凝集塊となったものであり,本邦では植物胃石が最も多い。胃石形成の要因として胃切除後や糖尿病神経症などによる胃内排泄障害が知られているが,咀嚼不良も一因となり得る。本症例では下顎エナメル上皮腫に対する下顎骨半側切除後の咀嚼不良に加えて,繊維質を多く含む食物摂取が胃石形成の原因と考えられた。咀嚼不良の可能性のある患者の腸閉塞では胃石嵌頓も鑑別診断上位で検討すべきである。

  • 秋元 寿文, 青笹 季文, 石川 達郎, 樋口 大空, 高藤 康, 加藤 琢也, 野田 和雄, 小野 聡
    2026 年46 巻3 号 p. 472-477
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    胆囊十二指腸瘻は胆道系と消化管との間に瘻孔を形成する内胆汁瘻の1型であり,胆石の消化管内移行により胆石性腸閉塞やBouveret症候群をきたすことがある。治療の基本は通過障害の解除であるが,胆囊摘出および瘻孔閉鎖の適応については一定の見解が得られていない。今回われわれは,胆囊十二指腸瘻を有する2例において,腸管内胆石に対する治療後または保存的治療後の経過観察中に瘻孔の自然閉鎖を確認し得た。胆囊内遺残結石を認めず炎症が沈静化している症例では,瘻孔自然閉鎖を前提とした慎重な経過観察も治療選択肢の1つとなり得ると考えられた。

  • 柴田 真知, 井田 圭亮, 磯村 香介, 木村 紗衣, 小林 慎二郎, 小泉 哲, 清川 博史, 前畑 忠輝, 民上 真也
    2026 年46 巻3 号 p. 478-481
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は80歳台男性。慢性的な右季肋部痛にて近医を受診。腹部CT検査にて胆石を認めたため当科を紹介された。造影CT検査にて胃内に約4cm大の胆石を認め,胆囊壁の断裂と胃への連続像から胆囊胃瘻の形成が疑われた。明らかな消化管閉塞や高度炎症所見を認めず,結石が胃内に存在したため内視鏡的治療が可能と判断し,まず内視鏡的砕石・回収を行い,後に瘻孔に対する外科的治療の適応を検討する方針とした。上部消化管内視鏡検査で胃内胆石と前庭部瘻孔を確認し,スネアおよび砕石具を用いて破砕・回収した。術後経過は良好で軽快退院となった。胃内胆石はまれで多くは外科的治療が選択されるが,病態や結石性状を適切に評価することで内視鏡的治療は安全かつ有効な選択肢となり得る。結石が内視鏡的な操作が比較的容易な位置で閉塞を伴わない場合,内視鏡的に十分な破砕および可能な限りの経口での摘出が,有効な治療選択肢となり得ることが示唆された。

  • 大塚 敏広, 松本 亮祐, 尾方 信也, 坂東 儀昭
    2026 年46 巻3 号 p. 482-486
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は91歳の男性で,腹痛・発熱で受診した。右上腹部に限局した圧痛を認めた。腹膜刺激兆候はなし。腹部CTで,小腸間膜内に少量のガス像と脂肪織濃度上昇を認めた。その近傍に遊離ガス像を認めた。小腸穿孔の診断と治療をかねて腹腔鏡補助下に緊急手術を施行した。右上腹壁に癒着した小腸を剝離すると,小腸腸間膜から排膿を認めた。トライツ靭帯から30cm肛門側の空腸憩室の腸間膜への穿通から膿瘍を形成し,その膿瘍が穿孔し,腹壁に癒着したものと判断した。同部位の空腸部分切除を行い,空腸空腸吻合術を施行した。病理組織学的検査所見は,空腸仮性憩室の憩室炎による腸間膜への穿通,穿孔であった。経過良好で,術後9日目に退院した。超高齢者でも,鏡視下に手術を行うことで,低侵襲で良好な結果が得られた。

  • 外川 貴望, 佐藤 幸男, 山下 幾太郎, 村山 直之, 矢島 慶太郎, 松岡 義, 山元 良, 佐々木 淳一
    2026 年46 巻3 号 p. 487-491
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/23
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    全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:以下,SLE)は悪性リンパ腫の危険因子である。SLEに対してミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil:以下,MMF),ベリムマブで治療中の40歳台の女性が突然の腹痛をきたし当院救急外来を受診した。身体所見で筋性防御を認め,腹部骨盤部造影CT画像にて腹腔内遊離ガス像を認めた。手術所見ではトライツ靭帯から40cm肛門側の空腸に穿孔を認めた。病理組織学的所見よりMMFを被疑薬とするその他の異所性免疫不全症関連リンパ増殖性障害のEpstein−Barr virus陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した。化学療法を開始後5日目に,前回の手術部位の40cm肛門側に再度小腸穿孔をきたした。SLEでは悪性リンパ腫に伴う消化管穿孔ならびに一度の手術では腫瘍部を検索しきれない可能性を念頭に置く必要がある。

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