日本腹部救急医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 鈴木 一司, 佐藤 佳宏, 千葉 裕仁, 芳賀 淳一郎, 東 孝泰
    2021 年 41 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    【目的】単純性虫垂炎(simple appendicitis:以下,SA),複雑性虫垂炎(complicated appendicitis:以下,CA)に対する待機的虫垂切除術(interval appendectomy:以下,IA)の有用性を病理学的な炎症残存の有無に着目し検討した。【対象と方法】2013年4月から2020年3月にIAを完遂した急性虫垂炎例を対象とし後方視的に検討した。【結果】SA群は69例,CA群は26例であり,CA群で炎症残存が多かった。SA群では炎症の有無と待機日数や手術成績は関連しなかった。CA群では炎症残存例で入院日数が長く,術後ドレーン留置が多かった。壊疽性虫垂炎残存例ではIA前の画像検査で4例中3例に膿瘍が残存していた。また120日以上の待機例では術後ドレーン留置が少なく(0.0% vs. 50.0%,P=0.004),手術時間が短い傾向にあった(83分 vs. 113分,P=0.062)。【結論】CAに対するIAでは,120日以上待機し,かつ画像診断で膿瘍消失を確認することで手術成績が向上する可能性がある。

  • 東 孝泰, 佐藤 佳宏, 千葉 裕仁, 芳賀 淳一郎, 石井 芳樹
    2021 年 41 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    【背景】近年,外傷患者において脈圧の減少がショック発症の予測因子となることが報告された。同様の予測が非外傷性出血についても適応可能か検討した。【対象・方法】2008年1月から2020年9月までに当院救急室を受診した急性出血性胃潰瘍患者で,65歳以上の79例について90分以内に来院時収縮期血圧90mmHg未満に至った群(ショック群)とならなかった群(非ショック群)に分けて後方視的に解析を行った。【結果】単変量解析では脈圧と収縮期血圧で有意差を認めた。90分以内のショック発症に対しての脈圧のcut off値について検討すると,脈圧48mmHgで最適となった(P=0.005)。多変量解析では脈圧<48mmHgが独立したリスクとなった。【結論】高齢患者の急性出血性胃潰瘍において来院時脈圧はその後の90分以内のショック発症の予測因子となる可能性が示唆された。

症例報告
  • 瀬尾 雄樹, 田中 優衣, 青木 輝, 西 雄介, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 田中 求, 伊藤 康博, 戸倉 英之, 清水 和彦, 高橋 ...
    2021 年 41 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    Segmental absence of intestinal musculature(以下,SAIM)は,腸管の部分的な固有筋層の欠損であり,成人での報告はまれである。今回われわれは,浣腸後に直腸穿孔を生じ,緊急手術を施行したSAIMの1例を経験した。症例は89歳,女性。腹痛で近医を受診し,便秘症として浣腸を施行された。帰宅後に腹痛が悪化し当院へ救急搬送された。腹部所見では腹部全体に圧痛,反跳痛を認めた。腹部造影CT検査で直腸穿孔が疑われ,緊急手術を施行した。開腹所見では,腹腔内に多量の混濁腹水と直腸右壁の穿孔を認めた。穿孔部を含む直腸を切除し,ハルトマン手術,洗浄ドレナージ術を施行した。病理組織学的所見では直腸の穿孔部周囲に憩室を伴わない固有筋層の欠損を認め,外力に伴う筋層組織の断裂とは異なる所見であった。部分的な固有筋層欠損部に浣腸後の腸管内圧の上昇が重なり,穿孔を生じたと考えられた。

  • 宮崎 優里花, 若林 正和, 青木 花奈, 吉田 隼人, 堂本 佳典, 穂坂 美樹
    2021 年 41 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は70歳の女性。前日夕食後からの腹痛と嘔吐を主訴に近医を受診し,精査加療目的に当院を紹介受診した。腹部造影CTでは,小腸の広範な拡張と腹水を認めたが,血流障害は認めなかった。食餌性腸閉塞や癒着性腸閉塞を疑い,胃管を挿入して入院とした。入院後,腸閉塞の増悪を認め,イレウス管を留置した。腸閉塞症状は改善せず,CTで腹水の増加を認め,イレウス管造影検査で通過障害が改善しなかったため,第4病日に腹腔鏡下手術を施行した。回腸末端より50cm程度口側の回腸に口径差を認め,同部位の消化管内異物が閉塞機転であると判断した。同部位を臍部小切開創より体腔外に挙上し切開したところ,消化されていないブロッコリーを認め摘出した。回腸は縫合閉鎖し,手術を終了した。術後5日で食事を開始し,術後16日で軽快退院となった。腹腔鏡下手術は食餌性腸閉塞に対して有用な術式の1つになると考えられた。

  • 眞木 良祐, 柏﨑 正樹, 玉川 浩司, 北山 聡明
    2021 年 41 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性,肝門部領域胆管癌に対し経皮経肝門脈右枝塞栓術後に肝右葉・尾状葉,肝外胆管切除および胆管空腸吻合術を施行した。術後胆管空腸吻合部縫合不全を合併,術後44病日にドレーンより大量出血を生じ,緊急血管造影で右肝動脈切離断端に仮性瘤破裂所見を認めた。固有肝動脈塞栓術により止血し得た。以後,肝膿瘍形成を認めるも肝不全はきたさず,ドレナージと抗菌薬投与で軽快した。肝切除術後6週間経過してからの固有肝動脈塞栓術であったため,下横隔膜動脈や吻合部を介した空腸動脈からの肝外側副路形成により供血路が保たれたことが肝不全に至らず,肝膿瘍形成のみで耐術できた要因と考えられた。残肝の脱転を伴う肝切除後の仮性動脈瘤破裂に対して固有肝動脈塞栓術を行った際,血行再建術の要否を判断するうえで示唆に富む症例と考えられた。

  • 庫本 達, 米田 浩二, 鈴木 重徳, 宮本 好晴
    2021 年 41 巻 4 号 p. 241-244
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性。左側腹部痛を主訴に救急搬送された。バイタルサインは安定しており,左側腹部に圧痛を認めたが,反跳痛は認めなかった。腹部CT検査でS状結腸の拡張と便塊およびガス貯留を認め,便秘による腹痛と診断した。摘便で腹痛は軽減傾向となったが,経過観察目的に入院となった。第2病日に貧血が進行し,造影CT検査で左上腹部に液体貯留を認め腹腔内出血と診断したが,出血源は同定できなかった。第3病日にさらに貧血が進行したため,再度造影CT検査を施行したところ,脾臓背側に楔状の裂傷を認め,脾破裂と診断した。Transcatheter arterial embolization(以下,TAE)による止血術を行い,その後貧血の進行は認めなかった。外傷歴はなく,悪性腫瘍,血液疾患,ウイルス感染症は原因としては否定的であったため,最終的に自然脾破裂と診断した。その後も脾破裂の再燃なく経過している。今回われわれはまれな自然脾破裂に対し,TAEによる治療が有効であった1例を経験したので報告する。

  • 長谷川 毅, 中本 健太郎, 筑後 孝章
    2021 年 41 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    腹腔側・腸間膜側へ2ヵ所穿孔した特発性小腸多発穿孔の1例を経験したので報告する。症例は80歳,女性。下腹部痛・嘔吐を主訴に前医を受診され,腹部CTで腹腔内遊離ガスを認めたため,消化管穿孔疑いで当院へ紹介搬送となった。当院CTではイレウス像と腹腔および後腹膜腔に遊離ガス像を認めた。ガス像は後腹膜腔主体で腹部所見が乏しいことから,イレウス管を留置し抗生剤加療を開始した。約12時間後に再検査を施行したところ,CT・血液検査は著変なかったが,腹部所見が増悪傾向であったために緊急手術を行った。術中所見で,骨盤腔に一塊となった小腸があり,同部位に穿孔を認めたため,小腸部分切除術を施行した。切除標本で穿孔部は腹腔側と腸間膜側の2ヵ所に認めた。病理診断の結果は,穿孔部に原因となる腫瘍や異物・血管病変などは指摘できず,特発性小腸穿孔と診断された。術後経過は良好で術後15日目に退院した。

  • 阪田 敏聖, 植田 隆太, 今 裕史
    2021 年 41 巻 4 号 p. 251-254
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は,36歳の女性。便秘と腹痛を繰り返すため当院を受診した。月経周期に一致する腹部症状とCA-125上昇,腹部造影CT検査で回腸末端の腸管壁肥厚を認め,MRI検査で同部位のT1強調像の高信号,T2強調像の低信号,造影MRIでの均一な造影効果,脂肪抑制T1強調像での小囊胞部分の高信号などから腸管子宮内膜症と診断した。術前検査では虫垂腫大は指摘できなかった。術前に腸管減圧を行い,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。病理組織学的検査では回腸末端部の腸管子宮内膜症と低異型度虫垂粘液性腫瘍(low grade appendiceal mucinous neoplasm:以下,LAMN)の並存病変であった。虫垂を含む回盲部近傍の子宮内膜症ではLAMNの併発も念頭に置き,術中の腹腔内観察や愛護的な手術手技による早期外科治療を検討する必要がある。

  • 梅谷 有希, 磯辺 太郎, 藤田 文彦, 緑川 隆太, 田中 侑哉, 岡 洋右, 末吉 晋, 赤木 由人
    2021 年 41 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性。胃癌術後であり,左腎癌術後再発に対し化学療法を施行するも全身倦怠感,ADL低下のため入院加療となっていた。入院30日目に右側腹部痛が出現し,3日後に尿量減少,CRP上昇を認めた。単純CTで右腎前面の後腹膜に広範な液体貯留を認め,腸穿孔による後腹膜膿瘍と考え緊急手術となった。術中に穿孔部位は同定できなかったが,回腸人工肛門造設+腹膜炎根治術を施行した。術翌日よりウィンスロー孔に留置したドレーンから胆汁漏出を認め,内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査で,胆囊底部から造影剤の漏出を認めた。胆囊穿孔に伴う胆汁性の後腹膜膿瘍が推察され,根治目的に胆囊摘出術を施行した。今回われわれは診断に難渋した後腹膜膿瘍を合併する壊疽性胆囊炎の1例を経験した。

  • 吉田 諭, 西村 隆一, 平間 公昭, 水野 豊
    2021 年 41 巻 4 号 p. 261-264
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    77歳男性。発熱と左季肋部痛で当院紹介となり,腹部CTで結腸癌が穿通した脾腫瘤の診断で入院となった。CT上,脾腫瘤は膵尾部に近接するものの膵臓に明らかな腫瘤性病変は認めなかった。抗生物質による保存的治療とし,内視鏡検査などの精査する予定であったが,入院翌日に腹痛増悪とともに頻脈性心房細動および急性呼吸窮迫症候群を発症した。非侵襲的陽圧換気療法と薬物治療で入院2日目に呼吸状態は改善したが,腹痛と高熱が持続するため診断と治療を兼ねる目的で緊急手術の方針とした。脾腫瘍は膵尾部との強固な癒着と,さらに胃大弯側および結腸に浸潤しており,胃部分切除と結腸部分切除を伴う膵尾部切除脾摘出術を施行した。病理組織診断は膵尾部を主座とし,広範に脾臓への浸潤を認める低分化型管状腺癌であった。画像上,膵臓に腫瘤を認識できない脾腫瘤性病変の鑑別診断に膵癌の脾浸潤を念頭に置く必要があると考えられた。

  • 甲斐田 大資, 金 了資, 西木 久史, 三浦 聖子, 宮田 隆司, 宮下 知治, 上田 順彦, 高村 博之
    2021 年 41 巻 4 号 p. 265-268
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は26歳,男性。幼少期より食事時の早期腹満感を認め食事量が少なく,痩せ型であった。食後の軽微な間欠的上腹部痛を認めたため近医を受診した。CTで腸回転異常症に伴う中腸軸捻と診断され当院紹介受診となる。初診時より腸閉塞所見や腸管虚血は伴わず,当院受診時も無症状であったため症状発症から10日後に待機的治療を施行した。逆回転型の腸回転異常を認め,時計回り540°に中腸軸捻を生じていた。捻転を解除し,小腸結腸間膜間の癒着をSMA基部まで剝離,予防的虫垂切除を行い小腸は腹腔の右側・結腸は左側に収め固定は施行せず終了した。経過は良好で,術後7日目に退院とした。成人腸回転異常症のなかで,中腸軸捻をきたした症例は急性腹症を伴うことが多いが,自験例のように中腸軸捻を伴っていたにもかかわらず,待機的手術が選択された症例はまれであり,当疾患の分類や特徴に関して若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 田島 佑樹, 平田 玲, 足立 基代彦, 林 啓太, 由良 昌大, 金子 靖, 藤崎 洋人, 葉 季久雄, 高野 公徳, 中川 基人
    2021 年 41 巻 4 号 p. 269-272
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性。直腸癌に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行後,3年6ヵ月目に,腹痛,嘔吐,会陰部の膨隆を主訴に救急搬送された。身体所見上,会陰部に超手拳大の膨隆を認め,造影CT検査上,会陰部への小腸の脱出,および同腸管のclosed loopの形成を認め,続発性会陰ヘルニア嵌頓と診断した。腸管壁の造影効果は保たれており,膝肘位でエコーガイド下に徒手整復を行った。その半年後,9ヵ月後に再嵌頓のために受診し,再度同様の手順で整復を行った。この時点で手術を希望したため,待機的に腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した。ヘルニア門は3.0×3.5cmで,composite meshを用いて骨盤腔の欠損部を修復した。術後6ヵ月経過し,再発の徴候を認めていない。会陰ヘルニア嵌頓に対して徒手整復を施行し得たことで,待機的な腹腔鏡下手術の完遂が可能となった報告例はなく,文献的考察を加えて報告する。

  • 林 尚子, 本田 宗倫, 宮本 英明, 古橋 聡, 馬場 秀夫
    2021 年 41 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は86歳,男性。噴門狭窄を伴う3型進行胃癌で当院へ紹介されたが,高齢でADLが低下していたため,内視鏡下に食道胃接合部に食道ステントを留置し,転院とした。今回,胆囊炎が疑われ,再度当院へ紹介となった。約3ヵ月前に留置した食道ステントが断裂し,肛門側断裂片が十二指腸に逸脱し,胆管炎・胆囊炎を併発していた。内視鏡操作で十二指腸に存在するステント断裂片を胃まで誘導し,その後,小開腹でステント断裂片を摘出した。内視鏡的消化管ステント留置術は切除不能な悪性消化管狭窄に対する姑息的治療法の1つで,外科手術と比べて,低侵襲で,QOL改善効果も遜色ないが,まれに致命的な合併症をきたすことがあり注意を要する。また,食道ステント断裂は極めてまれな合併症で,本邦における報告例はなく,自験例が初の報告である。

  • 伊藤 武, 安藤 雅規, 山下 克也
    2021 年 41 巻 4 号 p. 277-280
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    閉鎖孔ヘルニアは痩せた高齢女性に好発する骨盤ヘルニアである。嵌頓例では腸閉塞を呈し,全身麻酔下に緊急開腹術が行われることが多かった。近年画像診断の進歩・普及により術前診断は容易となってきており,非観血的整復後に待機的に手術が行われることも多くなった。Direct Kugel法で手術を行った閉鎖孔ヘルニアの2例を経験したので報告する。症例は91歳と92歳の女性。腹痛・嘔吐の精査で閉鎖孔ヘルニア嵌頓による腸閉塞の診断であった。1例目は嵌頓解除後待機的に,2例目は緊急で手術を行った。2例とも鼠径アプローチによるDirect Kugel法で修復を行った。手術時間は短時間であり,術後の経過も良好であった。鼠径アプローチによるDirect Kugel法を用いた閉鎖孔ヘルニア修復術は緊急手術であっても低侵襲と考えられ,安全かつ確実にヘルニアの修復が可能であると考えられた。

  • 鹿川 大二郎, 長濱 正吉, 知花 朝史, 上江洌 一平, 知念 順樹, 友利 寛文, 宮里 浩, 又吉 隆
    2021 年 41 巻 4 号 p. 281-284
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は腹部手術歴のない47歳の女性で,徐々に増悪する心窩部痛を主訴に当科を受診した。腹部CTで肝表面と腹壁の間の拡張した小腸が両端閉塞型ループを形成し,その尾側に臍静脈索を認めた。肝鎌状間膜裂孔ヘルニアによる小腸絞扼性腸閉塞と診断し,緊急で腹腔鏡下修復術を施行した。術中所見では術前診断通りに肝鎌状間膜裂孔ヘルニアを認め,小腸が右側から左側に貫通し嵌頓していたが,腸管壊死は認めなかった。裂孔を開大し腸管を整復した後,肝鎌状間膜を修復し手術を終了した。術後経過は良好で,術後1日目より食事を再開し,術後3日目に退院した。肝鎌状間膜裂孔ヘルニアは非常にまれな内ヘルニアであり,術前診断に苦慮すると思われるが,CTにおいて拡張腸管の尾側で臍静脈索を確認することが診断の一助となり得ると考えられた。

  • 北川 翔, 石川 翔理
    2021 年 41 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後(SSPPD-Ⅱ-A-1)の64歳男性。14ヵ月前から軽度の膵酵素上昇を伴う心窩部痛のエピソードを繰り返し,CTで膵管内にロストステント(短切した4Frコブ付膵管チューブ)が迷入している状態であった。シングルバルーン内視鏡下に回収を行うも,膵尾部末端に同ステントが強固にはまり,各種デバイスを用いるも抜去が不可能であったが,ダブルルーメンカテーテルにガイドワイヤーを通したデバイスを用いることで内視鏡的回収が可能であったため報告する。

  • 室谷 知孝, 山田 真規, 東出 靖弘, 益田 充, 宮本 匠
    2021 年 41 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,男性。心窩部不快感および腹部膨満感を主訴に救急外来を受診した。精査で急性虫垂炎と診断し緊急手術の方針となった。術前より収縮期血圧は160mmHg台と高値であったが,降圧治療は行わずに全身麻酔下で腹腔鏡下虫垂切除を施行した。術中も血圧の高値が持続したが,抜管直後に急激に血圧が上昇し200mmHg以上となった。さらにSpO2が急激に79%まで低下したため再挿管した。また血性泡沫状痰やX線検査で両側肺野に肺水腫を認めたことなどから,Clinical Scenario 1(以下,CS1)急性心不全に伴う電撃性肺水腫と診断し集中治療を行った。今回われわれは,術後疼痛のコントロール不良などが誘因となり,交感神経系が賦活化され後負荷が亢進したことでCS1心不全となった急性虫垂炎のまれな1例を経験したため報告する。

  • 神戸 勝世, 藏本 俊輔, 安藤 彰俊, 秋月 光, 松本 亮, 室野井 智博, 下条 芳秀, 岡 和幸, 木谷 昭彦, 比良 英司, 渡部 ...
    2021 年 41 巻 4 号 p. 293-296
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は81歳女性。1週間続く腹痛を主訴に当院を受診した。身体所見では下腹部全体に圧痛を認めたが腹膜炎所見は認めなかった。CT検査では直腸Rsに壁肥厚,周囲脂肪織濃度上昇,腸間膜側への穿通を疑う腸管外ガス像を認めたが,遊離腹腔内へのfree airや腹水は認めなかった。異物誤飲の病歴は聴取されなかったが,直腸Raに高吸収性の紡錘状構造物を認め,異物による直腸穿通と診断した。全身状態は安定しており,炎症は限局していると判断し,絶飲食と抗菌薬による保存的加療を行った。入院翌日に糞便中に異物排出があり,ナツメの種子だと判明した。経過は良好で入院9日目に退院した。ナツメによる消化管穿孔はその特徴的な形態上,魚骨穿孔に類似し,全身状態,腹部症状,CT検査所見を総合的に判断することが治療方針の決定に有用であると考えられた。

  • 沖 達也, 山﨑 道夫, 山本 敦子, 金子 智亜紀, 井本 勝治, 邵 啓全, 上田 啓介, 辻川 知之
    2021 年 41 巻 4 号 p. 297-300
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は74歳の女性で,腹痛,背部痛のために救急受診となった。60日前に単発のhepatocellular carcinoma(HCC)に対してradiofrequency ablation(以下,RFA)の施行歴があった。造影CT(dynamic study)上,胆囊から総胆管に血腫があり胆道出血を疑ったが,明らかなextravasationはなく入院で経過観察の方針となった。第6病日に腰背部痛の増悪と吐血を認めたため造影CT(dynamic study)を撮像した所,B8から総胆管・胆囊内に血腫の増大を認め,胆道出血が疑われた。またA8末梢に仮性動脈瘤と思われる小結節状濃染域があり,それに伴う胆道穿破が疑われた。緊急IVRで右肝動脈前区域枝より造影剤のpoolingあり,ゼラチン粒で塞栓術を施行した。以降は出血なく経過している。RFA後に遅発性の胆道出血をきたした症例として,文献的考察を加えて報告する。

  • 出口 惣大, 塚本 忠司, 村田 哲洋, 高台 真太郎, 清水 貞利, 金沢 景繁, 西口 幸雄
    2021 年 41 巻 4 号 p. 301-303
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,男性。上腹部痛を主訴に近医を受診。腹部単純CT検査で大量腹水を認めたため,当院を紹介受診した。腹水穿刺し採取した腹水中のアミラーゼ値は,28,100U/Lと高値を示し,膵性腹水と診断した。内視鏡的逆行性膵管造影で膵尾側に存在する膵仮性囊胞からの造影剤の漏出を認め,膵仮性囊胞の腹腔内破裂と診断した。内視鏡下膵管チューブ留置が不可能であり,経胃的ドレナージ術も困難であったため,腹腔鏡下に腹腔および膵仮性囊胞のドレナージ術を施行した。術後腹部所見は軽快し,残存した膵尾部の仮性囊胞に対して,術後20日に超音波内視鏡下経胃膵囊胞ドレナージ術を施行した。膵性腹水を伴う膵仮性囊胞破裂に対する外科治療として,腹腔鏡下膵囊胞ドレナージ術は低侵襲で有効な一手段と考えられる。

  • 小山 能徹, 柴 浩明, 山澤 海人, 萩原 慎, 古川 良幸
    2021 年 41 巻 4 号 p. 305-308
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は40歳男性。頻回の嘔吐と臍周囲の腹痛で救急要請となり,当院に搬送された。腹部CTで,絞扼性腸閉塞と診断し,同日緊急手術を施行した。術中所見は淡血性の腹水を認め,回腸末端から約60cmの部位にMeckel憩室を認めた。さらに小腸間膜から憩室先端に連続する索状物により,その口側の回腸が絞扼されていた。索状物を切離,絞扼を解除したところ腸管の色調は回復,Meckel憩室を含む小腸部分切除術を施行した。索状物は切離断端より血流を認めたため,mesodiverticular bandを伴うMeckel憩室による絞扼性腸閉塞と診断した。術後経過は良好で術後13日目に軽快退院した。

  • 高橋 達也, 向原 史晃, 久保 孝文, 國末 浩範, 太田 徹哉
    2021 年 41 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性で数日前より下腹部痛を認めていた。疼痛が増悪し腹膜刺激症状が出現したため他院を受診,汎発性腹膜炎の診断で当院へ救急搬送された。前医のCTで腹腔内遊離ガスを認めた。子宮内にガス像を伴う液体貯留,直腸の多発憩室も認め子宮または下部消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術をした。開腹すると子宮が穿孔し膿瘍が流出,腹腔内全体に広がっていた。さらに直腸S状部と左付属器,子宮が硬く癒着していたため直腸癌の合併を疑い子宮および左付属器合併切除を伴う直腸高位前方切除,単孔式人工肛門造設術を施行した。術後病理組織診断結果は子宮筋層内膿瘍破裂およびS状結腸および直腸RS部の多発憩室および膿瘍形成であった。子宮筋層での膿瘍および破裂というまれな症例であり文献的な考察を加えて報告する。

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