日本腹部救急医学会雑誌
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特集:救急のチームワークとヒヤリハット
  • 田口 大, 牧瀬 博, 石田 浩之
    2018 年 38 巻 3 号 p. 483-488
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    【背景】当院で診療を行った外国人傷病者は最近4年間で約10倍に増加した。【目的】外国人の急性腹症診療における特徴と問題点を明らかにする。【方法】2012年4月から2016年3月までに当院において救急診療を行った外国人傷病者132名の診療上の特徴と問題点を検討した。【結果】国籍は中国が29%と最多だった。受診理由として外傷がもっとも多く,次いで腹部症状が27名だった。腹部症状での入院は10名だった。意思疎通困難以外に,治療費の問題や治療を自国で行うか,宗教上の配慮などの点で苦慮することが判明した。【考察】政府は外国人患者受入れ医療機関認証制度(以下,JMIP)を推進する方針を固めた。JMIP認証医療機関ではない当院において,とくに中国語対応は困難である。外国人傷病者の急性腹症を的確に捉えるためには,医療通訳の導入や外国人傷病者診療対応マニュアルの策定,拠点病院との連携強化が急務である。

  • 成田 麻衣子, 中尾 彰太, 松岡 哲也, 前中 隆秀, 荻田 和秀
    2018 年 38 巻 3 号 p. 489-493
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    当院は,救命救急センターと広域母子医療センターをもつ施設であるため,重篤な妊産婦患者を積極的に救命センターで受け入れ,搬入段階から救急科と産科で構成されたチームで診療を行っている。さらに院内における産科危機的出血などに対しても,同チームが早期から対応している。2013年4月~2016年9月で,救命センターで治療した妊産婦患者は52例,うち29例は院外からの入院であった。救命センターで止血術を行ったのは24例(うち,IVR 20例),緊急帝王切開は3例(うち,死戦期帝王切開2例)あった。この診療体制において,真のチームワークを構築することが重要であるが容易ではない。そのために,われわれは「防ぎ得る周産期の死亡」の撲滅をめざして,共通言語と共通認識を確立し,日頃からのoff-the-job trainingを行っている。

  • 塩見 尚礼, 中村 誠昌, 西嶋 道子, 東口 貴之, 長門 優, 谷口 正展, 丹後 泰久, 張 弘富, 中村 一郎, 齊藤 晃, 下松谷 ...
    2018 年 38 巻 3 号 p. 495-498
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    当院は救命救急センターを擁して滋賀県湖北医療圏で三次救急を担当する540床の中核病院である。当院の救命センターのスタッフは専任ではなく兼任スタッフを含めて運用している。このような混合チームにおいてヒヤリハットを減少させるにはテクニカルスキルのブラッシュアップのみならずノンテクニカルスキルの向上が必須である。

  • 森脇 義弘, 象谷 ひとみ, 奥田 淳三, 大谷 順, 笠 芳紀, 太田 龍一, 永瀬 正樹
    2018 年 38 巻 3 号 p. 499-503
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    当院では「専門・臓器別診療」に対する「総合」ではなく,「地域性」を重視した地域内完結,地域内包括的な「総合」として地域総合診療科を設置している。総合診療のみの専従ではなく,あえて第二診療科として兼任し,平日毎朝のカンファランスで,内科,外科入院例全例について共通の興味と志向下で情報共有してきた。1年間に内科系総合診療医が初期診療し入院とした307例のうち,外科医に主治医変更したのは10例で,医師どうしや病棟スタッフなどコメディカルとの情報共有,家族への説明を含めた情報伝達などでのすれ違い,誤伝達や誤解などはなかった。外科への主治医変更不要とされた297例中死亡例は35例で,外科医の支援が望ましかった症例はなかった。内科医と外科医が地域総合診療科という第二診療科内で同一診療科としてのカンファランスを毎日実施することで,一体感下での確実な情報共有が可能となり,継続的,包括的診療が安全に行えた。

  • 小濱 圭祐
    2018 年 38 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    航空分野と医療分野は職場環境としての共通点が多い。とくに,安全で効率的な業務の遂行は共通の目標である。航空分野の安全風土は先進的かつ普遍的であり,系統的な安全教育が確立されている。一方の医療分野においての安全は古典的かつ特殊なものとして,今なおその基準となる指標や標準化された指針たるものは存在せず,個人や組織の考えに依存している。航空分野では一般的に認識されているチームワークや確実な安全に対する意識などに代表されるノンテクニカルスキルを,医療従事者も診療技術の1つとして認識し,重篤な転帰に至る前にエラーをコントロールする術をもち合わせる必要がある。そのうえで,不幸にも発生した事故に対して,同様の事故を繰り返さない,類似する事故を防ぐための仕組みを作ることができれば安全意識はより確実なものとなる。事故原因の徹底した分析解明とその結果の効果的な共有は事故再発防止に大変有用なものである。

  • 佐藤 由美, 大島 拓, 柄澤 智史, 春山 美咲子, 依田 智未, 播磨 美佳, 市川 はるな, 鶴岡 裕太, 野本 尚子, 古川 勝規, ...
    2018 年 38 巻 3 号 p. 509-515
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    栄養療法プロトコールとは,経腸栄養や静脈栄養の目標や適応,評価方法などについて定めたものであり,各専門職がチーム医療により運用することで,安全で適切な栄養療法の施行が可能となることが示されている。当院ICUでは,医師,看護師,管理栄養士,理学療法士,臨床工学技士からなる栄養チームを結成し,栄養療法プロトコールの作成と運用を行っている。そして,栄養療法プロトコールの目標達成率を向上させるために,栄養シートの活用や栄養・リハビリ回診の実施,経腸栄養アルゴリズムの導入などに取り組んでいる。これらの取り組みによって栄養療法の目標達成率は向上しており,各職種の専門領域に沿った多角的な栄養アセスメントと各職種間における情報共有は,栄養療法の施行におけるヒヤリハットの回避にも貢献しているものと考えられる。

症例報告
  • 上岡 祐人, 佐伯 博行, 藤澤 順, 松川 博史
    2018 年 38 巻 3 号 p. 517-520
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は,53歳女性。約1ヵ月前から間歇的な下腹部痛と下痢便が持続していた。下腹部痛の増悪のため,当院の救急外来を受診した。血液検査では特記すべき所見を認めなかった。造影CTで回腸末端の腸重積症と診断し,緊急手術を施行した。開腹すると,弾性・軟の腫瘤を先進部とした回腸の腸重積を認め,先進部はバウヒン弁の口側20cmに位置した。腸重積の範囲は約10cmであった。用手整復し,小腸部分切除術を施行した。病変は90×30×35mmの隆起性病変であり, KITとDOG1は陰性で神経線維腫の病理組織学的診断であった。今回,比較的まれな腸重積をきたした小腸神経線維腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 八木 直樹, 荒川 和久, 富沢 直樹, 黒崎 亮, 岡田 拓久, 本多 良哉
    2018 年 38 巻 3 号 p. 521-525
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    成人腸回転異常症にはさまざまな術式が報告されている。今回,2例の成人腸回転異常症に対して固定術を施行した。症例1は43歳,男性。突然の腹痛で救急外来を受診し腸回転異常症に伴う中腸軸捻転と診断し手術を施行した。術中所見は,malrotation typeの腸回転異常症に伴う中腸軸捻転であり,捻転を解除して固定術を施行した。経過良好で術後10日目に退院した。症例2は73歳,男性。30年来の繰り返す腹痛があった。中腸軸捻転の診断となり手術を施行した。術中所見では,malrotation typeの腸回転異常症に伴う中腸軸捻転がみられ,手術は同様に固定術を施行した。経過良好で術後8日目に退院した。腸回転異常症に対する手術は術後の癒着性腸閉塞や内ヘルニアのリスクを考え,腸管固定は行わないほうがよいともされている。自験例は軸捻転再発が懸念され固定術を行い,良好な経過を得られたため若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 河毛 利顕, 坂部 龍太郎
    2018 年 38 巻 3 号 p. 527-530
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    単孔式腹腔鏡補助下空腸部分切除を施行した成人特発性腸重積症の1例を経験したので報告する。症例は46歳の女性で,腹痛を主訴に近医を受診した。腹部造影CT検査で空腸重積を指摘されたが,腸管虚血の所見は認めず,症状も軽快したため保存的加療となっていた。その後も腹痛を繰り返し,当科に紹介となった。貧血や食欲低下,電解質異常が継続しており,腹部造影CT検査で前回とほぼ同様と思われる空腸に腸重積を認めた。小腸腫瘍の可能性も考慮し,手術を施行した。単孔式腹腔鏡補助下に腸重積は容易に整復され,小腸全体を観察したが明らかな腫瘍性病変は認めなかった。空腸を部分切除し手術を終了した。病理組織学的検査では悪性所見は認めず,特発性腸重積症と診断した。成人腸重積症は比較的少なく,その中でも成人特発性腸重積症はまれである。単孔式腹腔鏡補助下に低侵襲に手術を完結することが可能であった。

  • 奥野 晃太, 若林 正和
    2018 年 38 巻 3 号 p. 531-536
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は17歳,男性。自動二輪で走行中に転倒受傷し,当院へ救急搬送された。腹部造影CTで左腸骨骨折,外傷性脾損傷(Ⅰb型)と診断した。外傷性脾損傷について保存的加療を行う方針とした。第3病日,突然の左下腹部痛と貧血の進行を認め,腹部造影CTで遅発性脾破裂と診断した。経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:以下,TAE)で止血し得ず脾摘術を施行した。術後経過は良好であり,術後第22病日に軽快退院となった。遅発性脾破裂は受傷後2週間以内に多いため,その間は厳重な経過観察を要し,また,近年ではTAEで止血しうる症例が多いが,TAEで制御できない場合には,緊急の外科的治療も念頭に置いて治療にあたるべきであると考えられた。

  • 草深 智樹, 服部 可奈, 大森 隆夫, 濱田 賢司, 金兒 博司, 田岡 大樹
    2018 年 38 巻 3 号 p. 537-541
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性,突然の下腹部痛を自覚し,救急搬送された。下腹部全体に圧痛を認めるも腹膜刺激症状はなし。腹部CTで小腸壁の肥厚と拡張,Douglas窩に少量の腹水を認めた。経過観察入院後腹痛が増強し,入院6時間後にCT検査を再度施行すると,腹水増加と腹腔内遊離ガスを認めた。消化管穿孔と診断し,来院6時間後に緊急手術を施行した。Treitz靭帯から約20cmの空腸に約6mmの明瞭な穿孔部を認め,穿孔部を含む小腸部分切除術を施行した。切除標本では,punched out状の穿孔部を認めるも,それ以外は異常所見を認めなかった。病理組織所見では,小腸壁は全層断裂していたが,肉芽組織や線維化などは認めず,特発性小腸穿孔と診断した。経過は良好で術後10日目に退院した。小腸穿孔は,発症初期には腹痛以外に異常を認めないこともあるため,慎重な経過観察と再検査が必要であると考えられた。

  • 石原 寛治, 三上 慎一, 梶山 雄司
    2018 年 38 巻 3 号 p. 543-547
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代の男性。朝から悪心と胃の膨満感があり,嘔吐もはじまり深夜当院を受診した。腹部単純CTで著明に拡張した胃を右腹部に,十二指腸球部と脾臓を左上腹部に認め,胃軸捻転(以下本症)の診断で入院となった。減圧により症状は改善したが,上部消化管造影施行時に解除されていた捻転が,長軸方向に再現された。翌日の腹部X線写真で胃は正常位に復しており,経口摂取を再開したが3日目に再燃した。上部消化管内視鏡検査で,異常は認めなかった。下部消化管造影で,拡張した左側横行結腸が胃の前頭側にあり,胃脾間膜と併せて胃結腸間膜の弛緩が示唆された。長軸性胃軸捻転症に横行結腸過長症を合併した症例と診断し,それぞれに対する処置が必要と思われた。横行結腸部分切除と胃固定術を行い,良好な結果を得たので報告する。

  • 良永 康雄, 北川 美智子
    2018 年 38 巻 3 号 p. 549-553
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,男性。7時間前からの腹痛を主訴に救急外来を受診した。来院時,左側腹部を最強点とする腹部全体の強い圧痛,反跳痛,筋性防御を認めた。腹部造影CTにおいて,腹腔内遊離ガス像と腹水を認め,左側腹部の小腸に不整な壁肥厚を認めた。小腸腫瘍に伴う穿孔と汎発性腹膜炎の疑いで,緊急開腹手術を施行した。術中所見として,小腸に壁肥厚と穿孔を認め,小腸部分切除術を行った。切除標本より小腸T細胞性悪性リンパ腫の診断を得た。術後合併症なく退院した。他院で化学療法と自己末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を行い,CT上で完全寛解を得た。しかしながら,術後4年2ヵ月目に頸部リンパ節へ再発をきたし,化学療法を再度施行されるも,術後4年6ヵ月目に中枢神経への浸潤と呼吸不全により死亡した。 

  • 箕輪 啓太, 高階 謙一郎, 下村 克己
    2018 年 38 巻 3 号 p. 555-558
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は76歳女性。交通事故で前医へ搬送され,右横隔膜損傷,肝損傷,右腎損傷,骨盤骨折,左大腿骨骨折,右脛腓骨骨折による出血性ショックと診断されて当院へ転院となった。第1病日に左大腿骨骨折と骨盤骨折に対して創外固定術を,第7病日に骨盤骨折に対して内固定術施行した。第8病日に発熱,第11病日に血圧低下の出現,骨折部に留置したドレーンから便性排液を認めた。術中所見から小腸穿孔による腹膜炎と診断し,腹腔内所見からvacuum packing closure(以下,VPC)によるopen abdominal management(以下,OAM)とした。第14病日にドレナージ不良でVPCからvacuum assisted closure(以下,VAC)に変更した。第17病日に腸管吻合したが,術後縫合不全で第22病日に人工肛門造設術を施行した。第53病日にVAC離脱し,リハビリ目的に第125病日に他院転院となった。OAMにおいてVPCでのドレナージ不良が生じた場合にはVACへの変更も念頭に置くべきである。

  • 伏見 卓郎, 稲葉 基高, 野崎 哲, 丸山 昌伸, 高畑 隆臣
    2018 年 38 巻 3 号 p. 559-561
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は88歳女性。右鼠径部腫瘤と発熱を主訴に近医を受診し,右鼠径ヘルニア嵌頓の疑いで当院紹介となった。来院時初見で右鼠径部には発赤・疼痛を伴う手拳大の膨隆を認めた。腹部に圧痛は認めなかった。造影CTで子宮内腔の膿瘍と右鼠径部膿瘍に連続する後腹膜の瘻孔を認め,子宮留膿腫が後腹膜に穿孔し二次性に鼠径部膿瘍を形成したものと診断した。鼠径部膿瘍は救急外来でエコー下ドレナージを施行した。子宮口は閉鎖しており留膿腫の経膣的ドレナージ困難であったため,CTガイド下に経皮的ドレナージを施行した。培養結果は両部位からStreptococcus constellatusが検出された。ドレナージ後は症状改善し,第17病日に軽快退院した。子宮留膿腫の後腹膜穿孔から二次性に鼠径部膿瘍を形成した本邦報告例はなく,まれな症例であるため,文献的考察を加えて報告する。

  • 吉井 久倫, 和泉 秀樹, 中川 義英, 猪口 貞樹
    2018 年 38 巻 3 号 p. 563-565
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    成人腸重積症は器質的病変を原因とし,悪性腫瘍によるものがもっとも多くを占める。今回,悪性腫瘍との鑑別に苦渋した盲腸粘膜下膿瘍による本症の1例を経験したので報告する。症例は18歳,女性。数日前からの心窩部痛,嘔吐,発熱を主訴に来院。CTでは,回盲部が上行結腸に陥入しPseudo-kidney signを呈していた。明らかな腫瘤や膿瘍は認めなかった。腸重積と診断し,緊急手術を施行した。術中所見では,回盲部・盲腸・虫垂が上行結腸に陥入し盲腸結腸型腸重積であった。肉眼的所見では盲腸に腫瘤性病変を認め,腸間膜リンパ節腫脹もあり盲腸癌の疑いで単孔式腹腔鏡補助下回盲部切除+D2を施行。病理組織学的検査所見で盲腸粘膜下膿瘍と診断。盲腸炎による成人腸重積の報告は本邦では3例であった。盲腸粘膜下膿瘍での腸重積は報告例が少ないが,発熱など感染の徴候がある成人腸重積は本疾患も念頭に置いて診断・治療にあたるべきである。

  • 永冨 脩二, 大迫 政彦, 大川 政士, 槐島 健太郎, 渡邉 照彦, 石崎 直樹
    2018 年 38 巻 3 号 p. 567-569
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性。既往に認知症と正常圧水頭症(78歳)に対し腰椎くも膜下腔腹腔シャント留置がある。腹痛のため近医を受診し腸閉塞と診断され当科を受診した。造影CT検査では閉塞起点は同定できず小腸の広範な拡張と中等量の腹水貯留を認めた。また腸管内腔にPTP様の異物陰影を認めた。消化管穿孔に至った場合にシャントカテーテルを介した中枢神経系への二次感染も危惧されたため緊急手術を行った。腹腔鏡下に閉塞起点と異物の確認はできず,開腹移行し腸管を直接観察したところTreitz靭帯より180cm肛門側の回腸にPTPを触知しその口側が拡張した小腸であった。穿孔はなく,異物を摘出し直接縫合閉鎖し手術を終了した。経過は良好で術後15日目に退院した。PTP誤飲は消化管穿孔例の報告も多く,とくに腹腔内に異物留置が行われている患者に対しては注意を要する。

  • 中西 亮, 高野 公徳, 山本 聖一郎, 筒井 麻衣, 中川 基人
    2018 年 38 巻 3 号 p. 571-574
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    患者は79歳,男性。結腸右半切除の開腹手術歴があり,心房細動に対しワルファリンカリウムを内服中であった。突然の右季肋部痛を主訴に受診し,腹部造影CTで胆囊の腫大と頸部の結石および胆囊周囲に造影効果を伴う液体貯留を認め,腹腔内出血を伴う出血性胆囊炎と診断した。急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2013に準じて緊急腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した。癒着した大網と胆囊の間に血腫を認めたが,胆囊に穿孔部位は認めなかった。胆囊頸部周囲の癒着は比較的容易に剝離が可能で腹腔鏡下に胆囊摘出術を完遂した。今回,上腹部開腹歴や抗凝固療法併用といった悪条件を伴う出血性胆囊炎に対し緊急腹腔鏡下胆囊摘出術を施行し得た1例を経験したため報告する。

  • 岩永 直紀, 須郷 広之, 宮野 省三, 渡野邉 郁雄, 町田 理夫, 北畠 俊顕, 李 慶文, 児島 邦明
    2018 年 38 巻 3 号 p. 575-578
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は84歳の男性。交通事故によるハンドル外傷と吐血のため救急搬送された。腹部CT検査では心窩部直下にfree airを認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。2回の開腹手術歴があり,来院時,抗血小板薬を内服中であった。手術は高度癒着のため時間を要した。幽門側胃切除,Billroth-Ⅱ法再建の状態であったが,胃空腸吻合部で輸入脚,輸出脚空腸の双方に破裂するような穿孔部を認めた。一期的再建を考慮するも残胃周囲の癒着は高度であり,長い手術時間と術中アシドーシスの進行を考慮し,一期的再建はせず救命を優先したDamage control surgery(以下,DCS)の方針とし,消化管を分断閉鎖したまま手術を終了した。術後,経管栄養と胆汁返還による栄養管理を行い,全身状態の改善を待ち第89病日に胃空腸吻合術(Roux-en-Y再建)による再建術を施行し軽快退院となった。DCSは主に重症肝外傷に対する治療概念として提唱されたが,自験例のようにさまざまな重度外傷症例に対し有用な治療戦略と考えられた。

  • 森園 亜里紗, 原 義明, 小林 宏寿
    2018 年 38 巻 3 号 p. 579-582
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    妊婦に対する腹腔鏡下虫垂切除術の報告は本邦で散見されるようになったが,その報告例は依然少ない。今回,妊娠26週の急性虫垂炎患者に対し腹腔鏡下虫垂切除術を施行した1例を経験した。術中診断は穿孔性虫垂炎であったが,体位やトロッカー挿入部位を工夫したことで良好な視野が得られ,虫垂切除と洗浄ドレナージ術を安全に遂行できた。切迫早産の徴候を認めたため産科による母胎管理を行ったが,妊娠40週に正常経腟分娩で無事出産し,母子ともに合併症は認めなかった。妊婦に発症した虫垂炎は重症化しやすく,穿孔して腹膜炎をきたすと流早産や死産の可能性が高くなることが知られている。妊婦の急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術は,低侵襲性,術中の良好な視野確保,術後の早期離床などメリットも大きく,検討可能な術式と考えられる。

  • 吉田 充彦, 柳澤 真司, 小林 壮一, 岡庭 輝, 須田 竜一郎
    2018 年 38 巻 3 号 p. 583-586
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,女性。自宅内で転倒し近医整形外科を受診した。右第4・5肋骨骨折と診断され,バストバンドによる安静指示となっていた。受傷後より徐々に日常生活動作の低下を認めていた。受傷後18日目になり呼吸困難を認めたため前医再診した。胸部単純X線検査で異常影を指摘され,同日当院救急外来紹介受診となった。当院での胸部単純X線検査で縦隔の左方偏位および右胸水,右胸腔内腸管ガス像を認め,胸腹部CT検査で小腸の右胸腔内脱出像を認めた。転倒による外傷性横隔膜損傷による腸管の右側胸腔内への脱出および胸水貯留と診断し,同日緊急手術を施行した。右横隔膜に約4cm程度の裂創部を認め,同部位から回腸が約120cmにわたって右胸腔内へと脱出していた。回腸を腹腔内へ用手的に還納し,横隔膜の縫合閉鎖術および右胸腔ドレーン留置術を施行した。術後経過は良好で第15病日に退院した。転倒により発症した横隔膜ヘルニアはまれであり報告する。

  • 上田 悟郎, 榊原 堅式, 三井 章, 高須 惟人, 渡部 かをり, 早川 俊輔, 桑原 義之
    2018 年 38 巻 3 号 p. 587-590
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は83歳男性。腹部手術の既往はなし。腹痛を主訴に近医を受診し,イレウスと診断され,当院の救急外来に紹介された。腹部CTでは右下腹部で,小腸の腸管径の急峻な変化がみられ,内ヘルニアによるイレウスを疑った。その他の原因によるイレウスも考慮しながら,緊急手術を施行した。手術所見では,傍上行結腸窩ヘルニア内に回腸が嵌頓していた。嵌頓腸管を愛護的に整復した後にヘルニア囊を切開開放した。腸管に明らかな壊死所見はなく,腸管切除は不要であった。傍上行結腸窩ヘルニアによるイレウスはまれな疾患であり,特徴的な画像所見の報告は少なく,救急時の術前診断に苦慮する。今回,自験例とこれまでの報告例をともに検討し,2つのCT所見,すなわち,①嵌入した小腸陰影が上行結腸の外側から背側にかけて描出される所見,②上行結腸が内側に変位する所見,が術前診断において重要であると考えられたので報告する。

  • 吉村 幸祐, 桒田 亜希, 内藤 浩之, 海氣 勇気
    2018 年 38 巻 3 号 p. 591-594
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は87歳女性。外来で膵頭部腫瘤の経過観察を行っていたが,増悪する上腹部症状ならびに画像検査で腫瘤の急速な増大を認めたため切迫破裂を危惧して手術を行った。病理学的最終診断は卵巣様間質ならびにエストロゲン,プロゲステロン受容体陽性の膵粘液性囊胞腺癌であった。術後経過は良好で術後第31病日に軽快退院した。抗癌剤導入は選択せず経過観察としているが,術後3年無再発生存中である。

  • 犬飼 公一, 髙嶋 伸宏, 野々山 敬介, 原田 真之資, 藤幡 士郎, 宮井 博隆, 山本 稔
    2018 年 38 巻 3 号 p. 595-597
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例は既往のない56歳男性。突然の腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。腹部造影CT検査上,臍下に小腸のclosed loopを認め,緊急で審査腹腔鏡を施行した。術中所見では回腸が50cmほど180度反時計回りに捻転していたため,腹腔鏡下に整復した。全小腸を検索したが捻転の原因となる癒着や腫瘤性病変を認めず,原発性小腸軸捻転症と診断した。 腸管の蠕動は良好であったため,腸管切除は行わず手術は終了した。術後6日目に経過良好で退院となった。小腸軸捻転症はまれな病態で術前診断が困難なことが多い。CT画像において小腸間膜のwhirl signが特徴的とされ,また原因としては過食や激しい運動などの関与が指摘されてはいるが,本症例ではどちらも認めておらず非典型的であった。小腸軸捻転を腹腔鏡で整復し得た症例は検索しうる限りまれであった。腹腔鏡の使用は診断や低侵襲の治療という意味で,非常に有効であると思われた。

  • 大石 海道, 吉田 一也, 藤井 敏之, 池田 昭彦
    2018 年 38 巻 3 号 p. 599-601
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    要旨:77歳,男性。腹痛で救急搬送された。腹部CTで回腸末端部に限局性の壁肥厚を認め,それより口側の拡張と肛門側の虚脱を認めた。イレウス管を挿入後,点滴加療を行い,腹部症状は軽快した。入院6日目にイレウス管造影を施行したところ,回腸末端部に限局性の内腔狭窄部位を認めた。造影剤の通過は良好であったため,イレウス管を抜去し,入院8日目から食事を開始した。しかし,腸閉塞の再発を認めたため,入院12日目に小腸切除術を施行した。回盲弁から約10cm口側の回腸狭窄部位を切除した。術後経過は良好で術後3日目より食事を開始し,術後9日目に退院した。切除標本では,単発,円形の深掘れ潰瘍と内腔狭窄を認めたが,病理組織学的には特異的な所見は認めなかった。既往歴,服薬歴,臨床像から原因は不明であり,病理所見からも特異的所見は認めず,また,その肉眼像などの特徴から,単純性潰瘍に分類された。

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