日本腹部救急医学会雑誌
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原著
  • 甲斐田 大資, 宮田 隆司, 金 了資, 西木 久史, 三浦 聖子, 高村 博之, 上田 順彦, 小坂 健夫
    2020 年 40 巻 3 号 p. 437-442
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    嵌頓性鼠径部ヘルニアにおける腸管壊死の有無は術式や経過にかかわる重要な所見である。2008年1月から2018年3月に当院で小腸が嵌頓し緊急手術を施行した39例を,腸切除群22例と非切除群17例に分類し,臨床的特徴を後方視的に比較検討した。受診時に鼠径部局所の圧痛や発赤を認めた症例は,切除群12例(54.5%),非切除群3例(17.6%)と切除群で有意に多かった。嵌頓小腸内容CT値は,切除群19.3±9.5 HU,非切除群11.4±5.7 HUと切除群で有意に高く,ROC曲線によるCut Off値は15.0 HUであった。鼠径部局所所見と嵌頓小腸内容CT値が15.0 HU以上の2因子とも合致した7症例はすべて切除群であった。手術成績はメッシュ使用例と手術時間,在院期間の項目で2群間に有意差を認めた。局所所見が強く,かつ,嵌頓小腸内容CT値が高い症例は小腸切除を要する可能性が高いと考える。

  • 河﨑 正裕
    2020 年 40 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    小児の消化管異物誤飲の予後は良好であるが,合併症をきたすことがあり適切な対処が必要となる。2012年4月から2019年3月までに異物誤飲を主訴に当院を受診した15歳未満の患者のうち,たばこ,液体,薬などを除く94例を対象として対処法を検証した。異物は金属,ボタン電池,プラスチック類が多くを占めた。X線検査で描出できたのは54例,処置を要したのは25例(食道9例,胃14例,小腸2例)であった。主に内視鏡で摘出したが,ボタン電池例はマグネットチューブを使用した。また3例で開腹手術を施行した。合併症は,リチウム電池による胃粘膜損傷,プラスチックシールによる食道仮性憩室と2個の磁石による小腸穿通の3例であった。誤飲する異物は時代とともに変化し,対処法を更新していく必要がある。とくに増加するプラスチック類はその危険性を十分に認識するべきである。

症例報告
  • 原 征史朗, 岸川 圭嗣
    2020 年 40 巻 3 号 p. 449-452
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は50歳女性。下腹部痛で救急搬送され,単純CT検査中に嘔吐し心肺停止となった。ただちに心肺蘇生を開始し,8分後に自己心拍再開した。腹部CT検査で下行結腸背側に腸管外ガス像と上部直腸に辺縁不整な壁肥厚を認め,直腸癌穿孔が疑われた。敗血症よりも窒息や神経血管反射が心肺停止の要因として大きいと考え,感染悪化の予防と循環動態の安定化を図った。入院20時間後より意識状態が回復し,60時間後に開腹すると,直腸癌口側で結腸間膜に穿通していた。原発巣は切除せず,ハルトマン手術を施行した。全身状態改善後のMRI検査で肝臓,両側卵巣に造影効果のある腫瘤像を認め,直腸癌からの転移と診断され初回手術後56日目に腹会陰式直腸切断術+肝切除+両側卵巣摘出を施行した。心肺停止の原因が敗血症性ショックのみではない消化管穿孔に対して,早急な手術を前提としつつ,集学的治療を並行または先行させることも有用と考えられた。

  • 上村 翔, 伊藤 康博, 田中 優衣, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 瀬尾 雄樹, 田中 求, 戸倉 英之, 高橋 孝行
    2020 年 40 巻 3 号 p. 453-456
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    普通自動車運転中,右折時に対向車の普通自動車との接触事故により酸素化低下を認め,受傷約1時間後に当院救急搬送された。来院時バイタルは,SpO2 97%(酸素10L)であったが意識清明で上腹部圧痛と前胸部,骨盤部にシートベルト痕を認めた。血液検査所見では,炎症反応上昇を認め,Hb 11.8g/dLと軽度の貧血を認めた。体幹部造影CT検査では,左横隔膜の穿孔所見を認め,胃と下行結腸の胸腔内への脱出および左肺の圧排を認めたが,その他明らかな骨折や臓器損傷は認めなかった。以上より,外傷性左横隔膜損傷と診断し同日緊急開腹術を施行した。左横隔膜に約10cmの裂創部を認め,同部位から胃と下行結腸が左胸腔内へと脱出していた。明らかな臓器損傷はなく,腹腔内へ用手的に還納し,非吸収糸による横隔膜の縫合閉鎖術および左胸腔ドレーン留置を施行した。術後経過は良好で第4病日に胸腔ドレーンを抜去,第15病日に退院した。外傷による単独の横隔膜損傷はまれであり若干の文献的考察を加え報告する。

  • 海老沼 翔太, 大渕 佳祐, 小野 仁
    2020 年 40 巻 3 号 p. 457-460
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は61歳女性,腹痛を主訴に当院受診,病歴と画像所見から癒着性腸閉塞の診断となり保存的治療開始となったが,経過中に増悪所見あり,外科紹介受診となり臨時手術施行となった。術中所見で癒着によるバンド形成がみられたが,小開腹下に小腸全体の触診を行ったところ,回腸末端近傍の食餌による閉塞が確認され,食餌性腸閉塞の診断となった。癒着性腸閉塞と術前診断され,術中所見で食餌性腸閉塞が認められた症例を経験し,腸閉塞症に対する腹腔鏡下手術施行に際して小開腹下の確認が有用と考えられた。

  • 秋田 倫幸, 青木 亮太, 岡田 一郎
    2020 年 40 巻 3 号 p. 461-464
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は35歳,女性,妊娠38週。心窩部痛を主訴に救急外来受診も一旦改善し帰宅。翌日近医産婦人科を受診し,当院産婦人科に救急搬送された。腸閉塞が疑われ腹部CT施行したが明らかな絞扼はなく保存的治療目的に入院となる。その後,陣痛が起こり,入院10時間後に経膣分娩となったものの,分娩後も腹部症状の改善を認めなかった。翌日腹部CT再検し絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を施行した。S状結腸間膜窩に小腸が嵌頓,絞扼されていた。絞扼された小腸の非可逆的壊死は認めなかったので小腸切除は行わなかった。ヘルニア門については縫合閉鎖した。術後経過は問題なく術後7日目で退院となった。S状結腸間膜窩ヘルニアは比較的まれな疾患で,妊娠,産褥期に発症した報告例は自験例を含め3例を認めるのみだった。今回われわれは妊娠中に発症したS状結腸間膜窩ヘルニアを経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

  • 髙見 拓矢, 堀 佑太郎, 内藤 雅人
    2020 年 40 巻 3 号 p. 465-467
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    腸閉塞の原因としてもっとも多いものは開腹術後の癒着であり,その原因の約60%とされる。しかし,開腹歴のある絞扼性腸閉塞でも,その原因が癒着でなく盲腸周囲ヘルニアによるものがある。今回この1例を経験した。症例は子宮全摘後の73歳女性。腹痛と嘔吐がありCTで右下腹部に小腸集簇像を認めた。術後癒着による絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を行った。開腹すると盲腸外側に裂孔があり,そこに小腸が嵌頓していた。嵌頓を整復したところ,この裂孔から右傍結腸溝へ続くヘルニア囊があり,外側型盲腸周囲ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断した。腸管壊死はなく,ヘルニア囊を切開,開放し手術を終了した。術後にCTを再検討すると,盲腸背側の小腸集簇像により,盲腸から上行結腸が内側,腹側へ変位した所見があった。この特徴的なCT所見があれば,絞扼性腸閉塞の原因を癒着と断定せず,盲腸周囲ヘルニアを考えて手術に臨むべきである。

  • 鳥居 直矢, 世古口 英, 井上 昌也, 加藤 健宏, 蟹江 恭和
    2020 年 40 巻 3 号 p. 469-472
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は37歳,女性。腹部膨隆,腹痛を主訴に受診。採血でHb 4.6g/dLと著明な貧血を認めた。CTでは胃の著明な拡張と胃内に不均一な含気性のある巨大腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡で胃内に巨大な毛髪塊を認め,内視鏡的除去は困難であったため開腹手術を行った。臍上部10cmの正中切開で開腹し,体中部の胃壁を切開して腹壁と縫合後,スマートリトラクター®(株式会社トップ)Mサイズを使用して毛髪胃石を一塊に摘出した。本邦での成人毛髪胃石報告例は12例とまれである。成人毛髪胃石に対する創縁保護器具を用いた手術報告は自験例以外に認めなかった。胃を鋳型とする巨大毛髪胃石手術では創縁保護器具を胃内に挿入することで皮膚切開と胃切開は最小限で済み,毛髪を分割・飛散することなく摘出が可能であり有用であると考えられた。

  • 前田 真吾, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 水野 宏論, 湯浅 典博, 藤野 雅彦
    2020 年 40 巻 3 号 p. 473-477
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の腸管皮膚瘻は比較的まれな病態であり,修復術後長期間経過後も発症することがある。症例は69歳女性で,腹痛を主訴に来院し,CTで右下腹部腹壁に結腸と連続する軟部陰影を認めた。19年前に腹壁瘢痕ヘルニアに対し,mesh–plugを用いた修復術が施行されていた。メッシュ周囲膿瘍と診断し膿瘍ドレナージを施行した。ドレナージチューブから造影すると結腸が造影されたため,腸管皮膚瘻と診断し手術を施行した。腹壁切除を最小限にする目的で腹腔鏡補助下にメッシュ除去,結腸部分切除,腹壁の単純縫合閉鎖を施行した。術後は感染兆候なく経過は良好で,術後20ヵ月の現在,腹壁ヘルニアの再発も認めていない。

  • 合地 美香子, 谷 誓良, 大谷 将秀, 庄中 達也, 長谷川 公治, 湯澤 明夏, 松野 直徒, 古川 博之, 角 泰雄
    2020 年 40 巻 3 号 p. 479-482
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    Segmental absence of intestinal musculature(以下,SAIM)は腸管の部分的な固有筋層の欠損で成人では非常にまれである。症例は60歳台女性。検診でのバリウムによる上部消化管造影検査の2日後,下痢を主訴に当院救急外来受診。CTでS状結腸内と腸間膜内にバリウム塊と周囲に腸管外ガスと脂肪織濃度の上昇を認めた。消化管穿孔の診断で緊急手術となりS状結腸壁の菲薄化と腸間膜内にバリウムを含む便塊の貯留を認めハルトマン手術を施行した。肉眼所見では腸間膜付着部側に直線的・帯状に固有筋層の欠損と穿孔を認めた。組織学的所見でも同様でSAIMとそれに伴う消化管穿孔の診断となった。バリウム排泄による腸管内圧の上昇によりSAIMによる腸管壁の脆弱部分に穿孔が発生したと考えられた。SAIMの病変に対する手術時には多発病変の検索や腸管内圧が上昇しないように留意するべきである。

  • 清水 貴夫, 谷合 信彦, 千原 直人, 野村 聡, 関谷 健太, 吉田 寛
    2020 年 40 巻 3 号 p. 483-486
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性。右下腹部痛を主訴に近医を受診し,急性腸炎の診断で抗生剤を処方されたが症状改善なく,2日後に当科紹介となった。来院時CT検査で糞石を伴う虫垂の腫大を認め,急性虫垂炎の診断で同日緊急手術の方針となった。術中所見で黒色変性を伴う腫大した虫垂を認め,虫垂は根部で360度捻転していた。虫垂捻転の診断で,捻転解除後に虫垂切除術を施行した。術後イレウスを認めたが,保存的加療で軽快し第8病日に退院となった。今回われわれは腹腔鏡下虫垂切除術を施行した虫垂捻転の1例を経験した。虫垂捻転は急性虫垂炎と同様の症状を呈する疾患ではあるが,早期から穿孔をきたしうる疾患であり手術加療を考慮すべきである。

  • 國立 晃成, 坂田 好史, 嶋田 浩介
    2020 年 40 巻 3 号 p. 487-490
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は87歳男性,既往に右の鼠径ヘルニアがありヘルニアバンドで保存的加療されていた。数日前から食欲不振があり,嘔吐もみられたため近医受診し腸閉塞の診断で当院紹介となった。受診時右鼠径部腫瘤あり,画像検査で鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞の診断で緊急手術を行った。手術ではヘルニア門に回盲部が嵌頓していたが,明らかな壊死は認めなかった。虫垂は腹腔側に位置していたが,虫垂根部にヘルニア門で絞扼された色調変化を認め,虫垂は腫大していたため急性虫垂炎と診断した。虫垂切除を行い,メッシュによるヘルニア修復術を行った。本症例では,ヘルニア門に虫垂根部が絞扼され内圧上昇のため虫垂炎を併発したと考えられた。ヘルニア囊内に虫垂が逸脱するAmyand’s herniaは散見されるが,本症例のようにヘルニア門で虫垂根部が絞扼され,虫垂炎を起こす症例はまれであるため報告する。

  • 石岡 秀基, 高橋 眞人, 中村 侑哉, 八重樫 瑞典, 伊藤 千絵, 皆川 幸洋, 遠野 千尋
    2020 年 40 巻 3 号 p. 491-494
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    魚骨による消化管穿孔・穿通に対する保存的治療の報告が増えているが,長期経過に関する報告はほとんどない。今回われわれは魚骨による消化管穿孔・穿通に対して保存的に対応し,長期的に経過をみた3例を経験した。症例1は83歳男性。上腹部痛で発症した魚骨による十二指腸穿通に対して保存的治療を行い,症状は改善し,2年間再燃していない。症例2は55歳男性。左側腹部痛で発症した魚骨による消化管穿孔,腹腔内膿瘍に対して保存的治療を行い,症状は改善した。3年後に腹腔内膿瘍が再燃して手術を行い,術後1年間再燃していない。症例3は48歳男性。偶然施行したCTで魚骨による十二指腸穿孔が疑われた。保存的に経過をみているが,1年間無症状である。魚骨による消化管穿孔・穿通では保存的治療が選択肢の1つになり得るが,魚骨が遺残した場合は年単位での膿瘍再燃リスクがあるため,十分なインフォームド・コンセントのもとで行われるべきである。

  • 松下 公治, 多賀谷 信美, 鈴木 淳平, 吉村 雪野, 鈴木 淳一
    2020 年 40 巻 3 号 p. 495-498
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は18歳,女性。来院前日から右下腹部痛が増悪し受診した。腹膜刺激症状があり,腹部CT検査で回盲部の腸重積と診断し,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると,回腸,盲腸,虫垂が上行結腸に重積しており,Hutchinson手技で整復した。術中所見では,明らかな腫瘍性病変はなく,移動盲腸による腸重積と診断した。原因先進部がなく,腸管虚血所見も認めなかったため,腸管切除は行わず盲腸固定術を行った。その後症状の再燃はなく,大腸内視鏡検査や腹部CT検査で異常所見は認めなかった。術後10ヵ月が経過し,再発はない。成人腸重積は腫瘍などの器質的疾患が原因であることが多く,腸管を切除するのが一般的である。今回われわれは成人腸重積に対して腹腔鏡下に整復し,その原因が移動盲腸と判明したことで,より低侵襲な盲腸固定術で治癒し得た1例を経験したので報告する。

  • 成田 正雄, 石川 成人, 草永 真志, 真弓 俊彦
    2020 年 40 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性。乳癌の肝門部リンパ節転移に伴う胆管狭窄に対して胆管ステントが留置されており,慢性炎症に伴い,総胆管と十二指腸が瘻孔形成している状態であった。胆管炎に対する入院加療中に突然心肺停止となった。蘇生後,腹部単純CT検査で上部消化管出血が疑われ,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,瘻孔部より活動性の出血を認めた。内視鏡的止血術中にショックバイタルとなったため,大動脈内バルーン遮断(resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta:以下,REBOA)を併用し,IVRを行い止血が可能となった。上部消化管出血に対しREBOAを併用下にIVRで救命できた症例を経験したので文献的考察も加えて報告する。

  • 佐藤 博, 荒巻 政憲, 蔀 由貴, 田邉 三思
    2020 年 40 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性。下部胆管癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除を行った。膵空腸吻合は膵管空腸粘膜吻合併用膵実質密着縫合(Blumgart変法)で行い7.5Fr膵管チューブをロストステントにして留置した。術後5日目,7日目,9日目に下血したため内視鏡を行った。ただし膵空腸吻合部への負担を考慮して同部の観察は行わなかった。明らかな出血源は確認できなかったがブラウン吻合部に血腫を認め同部からの出血を疑い術後7日目に内視鏡的クリップ処理,術後9日目に再開腹してブラウン吻合を離開止血確認後に再吻合した。術後11日目に下血,造影CTで膵空腸吻合部からブラウン吻合部まで大量の血腫を認め膵空腸吻合部の出血が疑われた。内視鏡で膵空腸吻合対側空腸粘膜からの動脈性出血が確認されクリップで止血した。出血部位はロストステント先端が接触する部分であり物理的刺激による損傷が原因と考えられた。その後は出血なく経過し初回手術後35日目に退院した。

  • 藪田 愛, 能美 昌子, 利光 鏡太郎, 井戸 弘毅
    2020 年 40 巻 3 号 p. 507-511
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性。突然の下血で救急搬送された。上部消化管内視鏡検査で出血源を認めず,単純CTで上行結腸内に血液貯留を認めるも,出血源は不明であった。入院後も下血が持続したため造影CTを施行したところ,冠状断面で計測して,バウヒン弁から口側約8cmの小腸に活動性出血を認めた。ショック状態であり緊急手術を施行した。開腹するとバウヒン弁より口側20cmの範囲に血液が貯留しており,その部分を含めて回盲部切除術を施行した。切除後より血圧はすみやかに上昇した。術後経過良好で16病日に退院となった。病理所見ではバウヒン弁より8cm口側の回腸に単発の憩室を認め,回腸憩室出血と診断した。小腸出血に対する緊急手術は出血点がわからず,切除範囲の決定に難渋することがある。本症例では,造影CTの多断面再構成画像の情報よりバウヒン弁から出血点までの距離を正確に計測し,確実に責任病変を切除したことで救命できた。

  • 野島 広之, 清水 宏明, 首藤 潔彦, 山崎 将人, 小杉 千弘, 村上 崇, 幸田 圭史
    2020 年 40 巻 3 号 p. 513-515
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性。運転中,対向車と衝突。腹部鈍的外傷,右足関節遠位部骨折あり,現場より当院に救急搬送された。腹部造影CTで小腸の腸間膜からの出血および周囲の液体貯留が疑われ,腹腔内出血,腸間膜損傷と診断し,同日緊急手術を施行した。Treitz靭帯から100cm肛門側空腸腸間膜に動脈性に出血している裂傷を認め,組織脆弱で腸間膜は修復不能であり,同部の空腸を含めて切除した。また,肛門側50cm,110cmの腸間膜内巨大血腫および腸間膜と腸管の間からoozingを認め,うっ血による血流障害が疑われたが,蛍光ICG法で腸管内の血管は造影され血流は保たれていると判断し,小腸切除は施行しなかった。他のまだら状の血流不良部分に漿膜筋層縫合をかけて補強した。術後は経過良好で,術後6日目に経口摂取開始,術後13日目に骨折治療のため転科,術後48日目に独歩退院。現在,外来通院中である。

  • 藤永 淳郎, 柴田 智隆, 鍋田 祐介, 松成 修, 猪股 雅史, 坂本 照夫
    2020 年 40 巻 3 号 p. 517-520
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性。主訴は腹痛,意識消失。仕事中に突然の腹痛を訴え,意識消失した。造影CT検査で中結腸動脈瘤破裂と診断され,当院に救急搬送された。当院搬入時はバイタルサインが安定しており,血管造影検査を施行した。中結腸動脈本幹近位部に動脈瘤を認め出血源と考えられた。中結腸動脈右枝は右結腸動脈と,中結腸動脈左枝は下行結腸の辺縁動脈とそれぞれ交通し,中結腸動脈中枢側で血流を遮断しても横行結腸の血流は維持されると考えられた。止血目的に中結腸動脈瘤のコイル塞栓術を行ったが,塞栓術後の末梢循環は良好であった。治療経過は良好で,腸管壊死の所見を認めず,自宅退院となった。バイタルサインが安定している場合には,動脈瘤破裂症例に対する血管造影検査は診断と治療が同時に可能であり,有用である。また中結腸動脈瘤の部位によっては塞栓術後の結腸切除を回避し得ると考えられた。

  • 利田 賢哉, 由茅 隆文, 柿添 圭成, 賀茂 圭介, 平山 佳愛, 武谷 憲二, 皆川 亮介, 甲斐 正徳, 梶山 潔
    2020 年 40 巻 3 号 p. 521-524
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性。以前より右鼠径部の膨隆を自覚していた。今回,還納困難となり近医を受診し,右鼠径ヘルニア嵌頓の疑いで当院へ紹介となった。来院時は右鼠径部に弾性軟,無痛性の腫瘤を認め,還納は困難であった。血液検査では明らかな異常所見は認めなかった。CT・エコー検査で右鼠径ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。手術所見では鼠径ヘルニアは認めず,大腿輪からヘルニア囊が嵌頓していた。腸管を検索する目的でヘルニア囊と思われる部分を切開すると,膀胱カテーテルを認めた。結果的には膀胱を切開したことになり,その時点で大腿輪をヘルニア門とした膀胱ヘルニアと診断した。膀胱を修復後,McVay法で後壁を補強して手術を終了した。術後7日目には膀胱造影を施行し,膀胱カテーテルを抜去した。術後10日目に自宅退院となった。鼠径部ヘルニア診療の際には膀胱ヘルニアを念頭に置いた画像診断,術中判断が重要と考えられた。

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