日本腹部救急医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 岩本 尚太朗, 古仲 良行, 安次富 裕哉, 元井 冬彦
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 6 号 p. 929-936
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy:以下,PD)術後の後出血(postpancreatectomy hemorrhage:以下,PPH)は重篤な合併症の1つである。PPHのリスク因子について検討した。【方法】2013年1月から2022年8月までに当院でPDを行った205例中,Fistula Risk Scoreがintermediate risk以上の138例を抽出し検討した。【結果】PPH発症は10例(7.2%)であった。多変量解析では年齢,術中出血量,International Study Group of Pancreatic Fistulaに有意差を認め,PPHのリスク因子であると考えられた。術中出血量のcut off値は689mLであった。【結論】膵瘻リスクの高い症例では,PPH予防のためにもより出血量低減に努める必要がある。

症例報告
  • 並木 完憲, 岩岡 瑛司, 山田 典和, 戸崎 達, 岩本 久幸, 鳥居 隼, 大澤 一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 937-940
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は脳性麻痺の51歳,男性。繰り返す嘔吐で近医受診。腹部単純X線検査でcoffee bean sign様の結腸の拡張を認め,S状結腸軸捻転症の疑いで当院外科紹介となった。腹部CT検査で,著明に拡張した結腸のclosed-loopを認め,下腹部には盲腸,S状結腸が確認された。横行結腸軸捻転症と診断し緊急開腹手術を施行した。術中所見では,横行結腸は結腸間膜を軸として反時計回りに540°捻転しており,捻転解除後に壊死腸管の切除再建を行った。横行結腸間膜間隙への内ヘルニア予防のため,大網で横行結腸間膜欠損部を閉鎖し手術を終了した。術後,小腸麻痺性イレウス,誤嚥性肺炎を認めたが抗生剤で保存的に改善し,術後14日目に退院となった。今回,横行結腸軸捻転症というまれな1例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する。

  • 安田 将, 佐藤 護, 相澤 卓, 佐藤 中, 藤田 正太, 山内 淳一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 941-944
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性。発熱,心窩部痛を主訴に当院受診した。心窩部に限局した圧痛を認め,造影CT検査で肝外側区域に50mm大の内部構造が比較的均一な低吸収腫瘤および肝周囲に液体貯留を認めた。肝細胞癌破裂と診断し,準緊急手術で肝外側区域切除術を施行した。腫瘍は肝外へ突出し,腫瘍の一部が破綻していたが,大網に被覆されており,腹腔内出血は認めなかった。病理組織所見では腫瘍被膜および肝被膜に途絶を認め,肝外に血腫を認めた。腫瘍は厚い線維性被膜を有し,大部分が凝固壊死組織で占められており,腫瘍辺縁にわずかに中~低分化相当の肝細胞癌を認めたため,広範自然壊死肝細胞癌および腫瘍破裂と診断した。腫瘍への血流が低下し,大部分が壊死組織であったことが,破裂時に大量出血やショック状態に至らなかった要因であると考察された。準緊急手術で切除した広範自然壊死肝細胞癌に腫瘍破裂を合併した1例を経験したため報告する。

  • 吉野 泰啓, 志賀 光二郎, 二瓶 憲
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 945-948
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,男性。糖尿病のコントロールが不良でα-グルコシダーゼ阻害薬(alpha-glucosidase inhibitor:以下,α-GI)であるボグリボースを半年前に追加された。10日前から腹部膨満が悪化し腹痛を伴うため当院へ紹介された。腹部膨満があり腹部全体に圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。血液生化学検査やガス分析でも異常を認めなかったが,CTで腸間膜および腸管の気腫と腹腔内遊離ガスが著明で腸管穿孔を否定できず審査腹腔鏡を行った。小腸壁の色調は良好で肉眼的に穿孔を認めなかったため腸管囊腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:以下,PCI)と診断,骨盤底にドレーンを留置し手術を終了した。術後経過は良好で第9病日に退院した。PCIを生じさせる薬剤としてはα-GIによるものがもっとも多く,本邦で32例の報告があったが予後は良好で死亡例はなかった。α-GIを内服している患者ではPCIが発症する可能性があることを念頭に置くべきであると考えられた。

  • 内藤 信裕, 北山 紀州, 福岡 達成, 佐々木 麻帆, 井関 康仁, 笠島 裕明, 渋谷 雅常, 前田 清
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 949-953
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,女性。多発性髄膜種に対して脳室腹腔シャント(以下,VPシャント)が造設されていたが,発熱・意識障害をきたし当院へ救急搬送となった。頭部CT検査で左側脳室の拡大を認めたため脳室ドレナージ術を施行した。発熱の原因精査およびチューブ先端位置の確認目的に腹部単純CT検査を施行したところVPシャントチューブの腹腔側が小腸内に約20cm迷入していた。腹部に圧痛はなく腹膜刺激症状は認めなかった。発熱の原因はVPシャントを介する逆行性感染による髄膜炎と考えられた。局所麻酔下に腹壁皮下でVPシャントチューブを離断後に脳室側は抜去とし,腹腔側のチューブは腹壁に固定し外瘻化の方針とした。2週間後の造影検査で瘻孔の形成を確認後にチューブを抜去した。VPシャントチューブの腸管内迷入に対して,外瘻化を施行した症例は検索した限り認めなかった。自験例では外瘻化することで全身麻酔下での手術を回避でき有効な治療法であったと考えられた。

  • 大田 洋平, 小崎 良平, 増田 太郎, 岡 智, 山岸 茂
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 955-958
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は82歳の女性。交通外傷により受傷した。来院後の腹部造影CTで上腹部に腹腔内出血を疑う高吸収域を認め,血管造影で膵頭部アーケードからのextravasationを認めコイル塞栓で可及的に止血,受傷機転から消化管損傷を否定できず試験開腹を施行,膵鉤部の挫滅を認めたが消化管損傷は認めず手術を終了した。第1病日に血圧維持困難で緊急手術を施行,膵挫滅部からの拍動性出血と十二指腸の色調不良を認め膵頭十二指腸切除術が必要と判断し,手術時間短縮のため再建は膵空腸吻合,胆管空腸吻合のみ行いopen abdominal managementとした。全身状態が安定し第3病日に胃空腸吻合,腸瘻造設を行い閉腹,術後ISGPF Grade Bの膵液瘻を認めたが第42病日に退院された。Damage control strategyを適応し,二期的に膵頭十二指腸切除術を行い救命した外傷性膵損傷の症例を経験した。

  • 奥村 隆志, 久保 進祐, 豊田 秀一, 石川 奈美
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 959-962
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は85歳,女性。上腹部痛と嘔吐のため救急搬送された。来院時,上腹部に圧痛を認めたがバイタルサインは安定していた。血液検査では腸管虚血を示唆する所見に乏しかった。腹部CT検査では上行結腸の浮腫性壁肥厚像,横行結腸の軽度拡張像,右傍結腸溝に腹水貯留を認めた。虚血性腸炎を疑い,入院で経過観察の方針とした。入院後,腹痛の増悪はなかったが,血液検査でCRP 59.9mg/dLと異常高値となり,第4病日には発熱と頻脈を認めたため,同日手術を行った。開腹所見では左側横行結腸~脾弯曲部の腸管壁が菲薄化しており,不可逆的な壊死性変化と考えられた。結腸左半切除,人工肛門造設術を施行した。術後は長期入院となったが,約6ヵ月後に療養型病院へ転院した。壊死型虚血性大腸炎は外科切除の適応であるが,手術の判断に苦慮する症例は多いと思われる。本症例の手術に至るまでの経過,術中所見に文献的な考察を加えて報告する。

  • 濵﨑 樹里亜, 和田 慎司, 岡本 純, 橋本 一樹, 森本 毅, 濱口 真吾, 三村 秀文
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 963-968
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    悪性胆道狭窄に対する胆管金属ステント(self-expandable metallic stent:以下,SEMS)留置後の仮性動脈瘤に経カテーテル的動脈塞栓術を施行した3例を経験した。【症例1】61歳,女性。胃癌術後,左右胆管合流部に浸潤する再発による胆管炎をきたし,SEMSを留置した。留置45日後にSEMS内の仮性動脈瘤に対し,右肝動脈を塞栓し再出血はなかった。【症例2】82歳,男性。胆囊癌術後,胆腸吻合部狭窄に対しSEMSを留置した。留置78日後にSEMS外側の仮性動脈瘤に対し,右肝動脈を塞栓したが,多臓器不全の進行を認め第34病日に永眠された。【症例3】78歳,女性。胆管癌に対しSEMSを留置後,化学療法中。留置42日後にSEMS内の仮性動脈瘤に対し,右肝動脈を塞栓し再出血はなかった。【結論】終末期患者でも肝仮性動脈瘤による失血死を免れるためにTAEが有効であった。

  • 黒川 友博, 八木 隆太, 川﨑 一生, 黒川 友晴, 黒崎 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 969-972
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,女性。6年前より混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:以下,MCTD)と診断され加療中,約半月前より下腿浮腫が出現し,手術同日当院受診。心不全が疑われ胸部X線を撮影されたところ,free airを認め手術目的に紹介となった。身体所見は腹部膨満と軽度の圧痛のみで,WBC 2,700/μL,CRP 0.04mg/dLと炎症所見もなかったが,ステロイド長期投与後,免疫抑制剤で加療中であり,free airと腹水を認めたため,手術方針となった。全腸管の観察のため開腹し,中等量漿液性の腹水を認めたが,明らかな穿孔部は認められなかった。術後は便秘と下痢の調整にやや難渋したが,その他は問題なく術後21日目に退院となった。今回われわれは,MCTD経過中,腹部膨満とfree airと腹水のある女性に緊急開腹術を行ったが,消化管穿孔を認めなかった1手術例を経験したので報告する。

  • 小野 武, 加藤 航司, 比嘉 聡, 川上 浩司
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 973-976
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,女性。腹痛を主訴に前医を受診し,S状結腸憩室炎穿孔に対して保存治療がなされた。一度改善を得たが,5ヵ月後に再度発熱と腹痛が出現し,造影CTで左卵巣腫大を認め当科紹介となった。卵巣膿瘍の再燃の診断で腹腔鏡下Hartmann手術および左付属器合併切除術を施行した。慢性炎症の影響で卵巣はS状結腸および腹壁と一体化していた。子宮付属器への穿通を伴ったS状結腸憩室炎はまれな疾患であり,腹腔鏡下手術の報告はまだ1例のみである。自験例は慢性炎症による癒着・硬化を認めたが腹腔鏡下に手術施行可能であった。

  • 古川 舜理, 平木 将紹, 木村 直也, 鮫島 隆一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 977-980
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳の女性。宿便性直腸穿孔,汎発性腹膜炎に対しHartmann手術を施行し,5ヵ月後に,S状結腸人工肛門閉鎖術を施行した。術後3日目に経口摂取を再開したところ,悪寒,戦慄および発熱が出現し,術後4日目に敗血症,術後6日目に播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:以下,DIC)を併発し,術後7日目に敗血症性ショックに移行した。画像検査で縫合不全や明らかな感染源は同定できず,bacterial translocation(以下,BT)に伴う敗血症性ショックおよびDICをきたしたと考えられた。経過中に呼吸状態の悪化のため,集中治療室での人工呼吸器による管理を要したが改善し,術後23日目に経口摂取を再開し,術後46日目に自宅への退院となった。人工肛門閉鎖術後は廃用性萎縮のある吻合部の肛門側腸管に食物や残渣が通過した際にBTをきたす可能性があり,その予防や対策が必要である。また,BTを発症した場合は本症例のように重篤化する可能性も十分に念頭に置く必要がある。

  • 福田 純也, 中川 将視, 平湯 恒久, 藤田 文彦, 高須 修, 赤木 由人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 981-983
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性。有鉤義歯を誤飲し,近医を受診した。内視鏡的摘出の方針となり前医を紹介された。上部消化管内視鏡検査で胃内に有鉤義歯を認め,鉗子で把持し引き上げたところ食道内で陥頓した。陥頓の解除中に,突然心肺停止となり,蘇生処置が施行された。自己心拍再開後のCTで両側気胸と食道周囲のfree airを認め食道穿孔が疑われた。当院へ救急搬送され,緊急手術を施行した。食道外に突き出た義歯を摘出し,食道切除術と頸部食道瘻・空腸瘻造設術を施行した。術後42日目に胸壁前胃管再建術を行い,術後81日目に退院した。有鉤義歯の摘出の際に食道穿孔や破裂をきたすことが知られている。本症例は食道穿孔に伴う縦隔気腫に内視鏡の送気が加わり,両側気胸,また,胸腔内圧の急激な上昇が心臓を圧迫したことによる循環呼吸不全が心停止の誘因となった可能性が推察された。有鉤義歯の内視鏡的摘出には,慎重な施行と準備が必要である。

  • 中本 健太郎, 小川 正文, 中尾 重富, 西山 毅, 三木 友一朗
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 985-988
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は89歳,男性。介護老人保健施設に入所中であった。3日前からの嘔吐,腹部膨満,排便困難を主訴に紹介受診となった。CT検査で下部直腸内に55mm大の石灰化を伴う糞石を認め,糞石性亜腸閉塞の診断で入院となった。大腸内視鏡下での摘出を試みたが,不可能であった。入院5日目に経肛門的に摘出を試みるため手術を行った。鉗子による破砕も不可能であり,筋弛緩をかけた状態でも摘出は困難であった。経肛門的にコカ・コーラを5分間注入することを4回(計1,000mL使用)繰り返したところ,糞石が軟化し,マギール鉗子で破砕が可能となり,糞石を摘出し得た。近年,胃石のみならず,腸石・糞石に対してもコーラ溶解療法が有効であったとの報告が散見される。今回,直腸糞石に対し,コーラ溶解療法を併用した経肛門的手術が有用であった症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 戸崎 達, 大澤 一郎, 岩本 久幸, 鳥居 隼, 並木 完憲, 山田 典和, 岩岡 瑛司, 笹本 彰紀
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 989-992
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,女性。前日に発症した強い腹痛で救急外来を受診した。腹部は膨満し,臍周囲に強い圧痛を認めた。血液検査では明らかな異常所見を認めなかった。腹部単純CTでwhirl signを伴う著明に拡張した結腸と腸間膜の浮腫像を認めたが,捻転部位は不明であった。腹部症状とCT所見より絞扼性腸閉塞の可能性が高いと考えられたが,腹痛が強く追加検査が困難であり,緊急で試験開腹術を行う方針とした。回盲部は回結腸動静脈を中心に360度捻転し,さらに捻転部で左側腹部に向かって折れ返り拡張していた。明らかな壊死は認めなかったが,拡張腸管に漿膜損傷を認めた。腸管の温存は困難であり,また再発の可能性も考慮して回盲部切除術を行った。術後第14病日に退院した。単純CTを術後に再評価したところ,盲腸軸捻転と診断できた。自験例を通じて,単純CTを再構成することが盲腸軸捻転の術前診断に重要である。

  • 丸山 広生, 崎田 浩徳, 門野 潤, 井上 真岐, 林 知実, 上今別府 大作, 二渡 久智
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 993-996
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,女性。妊娠38週3日に心窩部痛で前医に入院した。心窩部痛の原因が特定できず,緊急帝王切開が行われた。術後も心窩部痛と嘔吐が持続し,腸閉塞と診断され当院に転院した。造影CT検査で上腹部正中で小腸の狭窄像を認め,胃管を留置したが,改善せず,イレウス管を挿入した。イレウス管造影で上腹部に小腸のbeak signを認め,審査腹腔鏡を行った。横行結腸左側で小腸が横行結腸前面から胃背側を走行し,背側より小網の裂孔から嵌頓していた。小網裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下に嵌頓小腸を還納し,小網裂孔を縫合閉鎖した。術後に術中画像を再評価したところ,大網裂孔にも小児頭大の裂孔を認めたが,嵌頓のリスクは少ないと判断し,経過観察とした。妊娠中に発症した小網裂孔ヘルニアの報告はなく,腹腔鏡手術が修復に有用であった。

  • 陶山 遥介
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 997-1000
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,男性。これまで2回の胆管炎の既往がある。今回,急性胆管炎と急性膵炎を発症し,保存的加療により軽快した。ERCPでは総胆管に結石や狭窄を示唆する所見はなく,拡張した胆管と傍乳頭十二指腸憩室を認めた。既往にある胆管炎と今回の膵炎,胆管炎は傍乳頭憩室によるLemmel症候群と考え,ESTを施行した。その後3年以上無再発で経過している。Lemmel症候群の治療は外科治療が主であるが,低侵襲な内視鏡治療により再発を予防し得た報告は少なく,文献的考察も加えて報告する。

  • 中島 理絵, 茅野 新, 亀井 佑太郎, 大宜見 崇, 宮北 寛士, 岡田 和丈, 中郡 聡夫, 小柳 和夫, 山本 聖一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 1001-1004
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性。4日前より上腹部膨満感を自覚し,上腹部痛,血性下痢が出現してきたため,当院に救急搬送となった。臍周囲の自発痛と右下腹部を中心に筋性防御を伴う圧痛を認め,腹部造影CT検査では上腸間膜静脈から門脈にかけて広範な血栓および,一部小腸壁の肥厚と造影効果不良,腹水貯留を認めたため,上腸間膜静脈血栓症に伴う小腸壊死の診断で緊急手術を施行した。術中所見では回腸末端から20cmの回腸に約50cmにわたり限局した小腸壊死を認め,回腸部分切除を施行した。血栓除去は施行しなかった。血栓症の明らかな要因は認めず,特発性上腸間膜静脈血栓症に伴う小腸壊死と診断した。術翌日よりヘパリン2万単位/日の持続静脈内投与を開始した後,直接作用型経口抗凝固薬へ移行して術後12日目に軽快退院となった。術後半年後に施行した腹部造影CT検査では,血栓は消失しており,現在も直接作用型経口抗凝固薬を継続し再燃は認めていない。

  • 堀之内 友紀, 小澤 広輝, 櫻井 亮佑, 林 啓太, 金子 靖, 高野 公徳, 屋代 英樹, 葉 季久雄, 中川 基人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 1005-1008
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は胃全摘R-Y再建術の既往をもつ70歳台男性で,持続する心窩部痛を主訴に発症5時間後,当院に救急搬送された。造影CTで中結腸動脈以遠の上腸間膜動脈閉塞と小腸虚血所見を認め,上腸間膜動脈閉塞症と診断し,緊急で血管内治療と手術を併せたハイブリッド手術を施行する方針とした。発症8時間半後に血管造影,血栓除去,吸引術を施行し,右結腸動脈の開通を得た。発症10時間後にハイブリッド手術室に入室し,約320cmの虚血腸管を切除し,口側断端は小腸人工肛門を造設,肛門側断端は粘液瘻を造設した。術後,短腸症候群に陥ったが,術後8ヵ月目に人工肛門閉鎖術(空腸盲腸吻合)を行い,以後経口摂取での栄養管理へ移行し,経口摂取のみで生活している。現在,術後15ヵ月生存中である。胃全摘後の上腸間膜動脈閉塞症はまれであり,今回われわれは血管内治療と外科的開腹術のハイブリッド手術により救命に成功したため,文献的考察を加え報告する。

  • 中村 駿, 折田 博之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 1009-1012
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性。以前から右鼠径ヘルニアの診断を受け,常に腸管がヘルニア囊に脱出した状態であったが,痛みはなく治療を受けずにいた。ソフトボールの試合中に右鼠径部にボールが直撃し,直後より腹痛を認め近医を受診,CTでは腹腔内遊離ガスはなく経過観察目的で入院となった。3時間後に腹痛が増悪,CTで腹腔内遊離ガスが出現したため,消化管穿孔の診断で当院紹介となり,同日緊急手術となった。小腸穿孔に伴う腹膜炎の状態で,腹腔鏡補助下に縫合閉鎖,腹腔内を洗浄し手術を終了した。術後麻痺性イレウスを併発したが,術後19日目で退院となった。鼠径部のヘルニア囊に鈍的外傷が加わり小腸穿孔をきたした症例は極めてまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 峯田 修明, 遠藤 俊治, 兼定 航, 東田 正陽, 岡田 敏正, 吉松 和彦, 藤原 由規, 上野 富雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 6 号 p. 1013-1017
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,女性。腹痛を主訴に受診した。帝王切開の既往歴があった。腹部造影CT検査で骨盤腔に小腸のcaliber changeを1ヵ所認め,子宮と直腸を圧排していた。癒着性腸閉塞と診断され,当院消化器内科で保存的加療を行ったが改善しなかった。第5病日の腹部造影CT検査で骨盤腔に小腸のclosed loopを認め,子宮と直腸を圧排しており,その近傍にうっ血した腸間膜の収束像を認めた。子宮広間膜裂孔ヘルニア嵌頓と診断し,当科で緊急手術を行った。腹腔鏡で腹腔内を観察すると,左子宮広間膜裂孔に軽度発赤した小腸が嵌頓していた。嵌頓を解除し,子宮広間膜裂孔は縫合閉鎖した。嵌頓小腸の切除は行わなかった。術後経過良好で,術後6日目に自宅退院した。妊娠歴や帝王切開の既往がある女性で,CTで閉塞起点が骨盤内にあり,子宮や直腸を圧排していた場合は,子宮広間膜裂孔ヘルニアを鑑別診断にあげる必要がある。

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