日本救急看護学会雑誌
Online ISSN : 2189-6771
Print ISSN : 1348-0928
ISSN-L : 2189-6771
18 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 山口 優, 江川 幸二, 平尾 明美
    2016 年 18 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    Sense of Coherence(以下、SOC)とは、首尾一貫感覚と訳され、ストレス対処能力とも考えられている。これまでSOCがストレス対策に役に立つことや、SOCに負の影響を与える要因に対処することが必要であると報告されている。本研究では、救急看護師のSOCに影響を与える要因を明らかにすることを目的とし、質問紙調査を行った。 救急看護師331名から返答(回収率56.9%)があり、うち297名を分析対象(有効回答率51.0%)とした。内的資源では、【仕事のコントロール】、【救急看護能力】、【モチベーション】、【職務満足度】、【緊張処理の成功体験】に、有意な相関がみられ、外的資源では【職場からの支援】に有意な相関がみられた。またSOCを従属変数、SOCに影響を与えると予測された要因を独立変数とした重回帰分析から、R2=.308、F=20.7(p<.001)で【救急看護能力(β=.270)】、【職務満足度(β=.214)】、【救急看護で直面する緊張処理の成功体験(β=.154)】、【頼りになる家族の存在(β=.153)】、【全次型の救急医療体制(β=-.145)】、【職場からの支援(β=.140)】(p<.01)に影響要因が認められた。これらの結果から、【救急看護能力】と【職務満足度】については、他の要因よりも強く影響しており、これら2つの要因を高めることが救急看護師のSOCを高めるための対策に特に重要であると示唆された。
  • 役割や能力に関するストレッサー内容
    野島 敬祐
    2016 年 18 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、救急外来のトリアージナースの役割や能力に関するストレッサーの内容を明らかにすることである。トリアージを導入している一次、二次および全次・ER型の救急告示病院の救急外来に勤務しているトリアージナース15名に対し、1回限り30分程度の半構造化面接を実施した。面接では、トリアージを行う中で、どのようなことにストレスを感じるか具体的に話してもらい、役割と能力に関する記述を抽出し、分析を行った。その結果、トリアージナースの役割に関するストレッサーの内容として、【人命にかかわるトリアージのプレッシャー】【患者や家族との対応】、能力に関するストレッサーの内容として、【トリアージの困難さ】【トリアージに必要な能力の不足】の4つのカテゴリーが抽出された。トリアージナースは医師の診察よりも先に問診を行い、1人で患者や家族の対応を行わなければいけない状況や、限られた時間でトリアージレベルを判定する能力の不足を感じているといったトリアージナースの特殊性に関するストレッサーが存在していた。そのため、トリアージナースのストレッサーを軽減させていく具体的な方策の必要性が示唆された。
  • 重症化に関連する臨床的特徴
    前田 晃史, 八田 圭司, 相馬 香理, 新地 実花子
    2016 年 18 巻 2 号 p. 19-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    2013年7月にヨード造影剤によるアナフィラキシーで心停止になった症例を経験した。その後、ヨード造影剤による異常薬物反応(ADR)の重症化に関連する臨床的特徴の検証のために、即時型ADR 55例を対象として調査を行った。2010年1月1日から2013年7月31日までの3年7カ月間に発症した即時型症例を軽症群(n=49)とアナフィラキシー群(n=6)に分け、2群間でヨード造影剤によるADRの危険因子を比較した。その結果、アナフィラキシー群の【年齢】(p=.034)、【過去の造影剤ADR既往】(p=.003)、【過去の造影回数】(p=.0007)、【造影剤浸透圧350mgI/mL以上】(p=.002)、【危険因子の項目数】(p=.037)の5項目が有意に多かった。A施設は、CT室とMRI室に医師が常在しておらず、医療安全の観点から、これらの重症化に関連する因子のある症例へは造影剤投与前に医師へ報告する基準作成を検討する。しかし、これらの因子に関係なくアナフィラキシーが発症する症例や救急では意識障害により情報が収集できない症例があるため、発症時には迅速に対応できる体制づくりも必要である。 本研究とADRの危険因子を比較した先行研究との異なる点が即時型ADR重症化の特徴であるといえる。しかし、先行研究からアナフィラキシーを含めたADRの危険因子をすべて抽出できておらず、抽出した因子の妥当性の検証も不十分であった。また、症例数も十分でなかった。そのため、重症化に関連する他の因子が存在する可能性がある。今後も危険因子の検証を含めた追加調査が必要である。
  • 中谷 安寿, 竹本 純子, 瀬尾 恵子
    2016 年 18 巻 2 号 p. 26-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:救急領域で亡くなる患者のほとんどが突然死であり、外傷や重篤な状況によって身体的変貌が目立つ例が多く、家族の悲しみも計り知れない。患者と家族に統一した質の高いケアを提供するためには、救命看護師への教育が重要であるが、経験年数別に看護師の思いや教育内容について検討した報告はほとんどない。 目的:救命看護師のエンゼルケアに対する思いを経験年数別に検討すること、また、それぞれが抱える困惑感から必要な教育内容を検討することを目的とする。 方法:看護師を対象に質問紙調査を実施した。経験年数別にケアに対する思いを抽出し、それを基に必要な教育内容について検討を行った。 結果:34人全員から回答を得た。救命病棟経験年数2.9±2.0年、看護師経験年数7.2±4.7年であった。救命病棟経験1~2年目のうち看護師経験1~5年目をA group(10人)、6年目以上をB group(9人)、救命病棟経験3年目以上のうち看護師経験3~5年目をC group(7人)、6年目以上をD group(8人)とした。ケアに対して自信があると回答した人はおらず、外傷患者の対応に困っている人が多かった。A groupには技術よりも経験を補うケアの流れの説明会を、B~D groupには技術や家族対応の勉強会を、さらにD groupにはケア向上のための意見交換の場を提供することが望ましいと考えられた。 結論:救命看護師のエンゼルケアに対する思いが経験年数別に明らかになり、それぞれに必要な教育内容を検討した。
  • CCUにおける心臓リハビリテーション開始時自己効力感による比較
    柴山 健三, 山田 智恵, 長谷部 ゆかり, 小寺 直美
    2016 年 18 巻 2 号 p. 34-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、後ろ向き研究として急性心筋梗塞後12か月経過した患者をCCUにおける心臓リハビリテーション開始時の自己効力感(SE)に基づき2群に区分し、退院後12か月時の運動習慣実施を比較することを目的とした。SE評定値により低値群(SE評定値1および2:n=20)と高値群(SE評定値4および5:n=21)に分類した。高値群の退院後12か月時のSEスコア(55.6±7.5)は、低値群(41.1±9.0)に比べ有意に高値であった。高値群の退院後12か月時の運動習慣者(42.9%)は、低値群(15.0%)に比べ有意に多数であった。また、両群のSEスコアは、開始時と12か月後間に著明な変動が認められなかった。本研究対象患者では、心臓リハビリテーション開始時のSEスコアの高い患者は、退院後も継続して高いSEスコアを維持し、運動を習慣的に実施している患者数が多いことが示唆された。
  • 村中 沙織, 城丸 瑞恵, 澄川 真珠子
    2016 年 18 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:カテコラミン製剤のシリンジ交換実施に必要な問題点を抽出するため、救命救急センターに勤務する看護師のカテコラミン製剤のシリンジ交換方法に関する指導状況の実態を明らかにする。 方法:北海道内の救命救急センターの看護師442名を対象とし、独自に作成した質問紙による実態調査を行った。「指導状況」は、カテコラミン製剤の「シリンジ交換方法の指導を受けた経験と満足度、指導を行った経験と自信度、およびその指導内容」とした。データ分析は、記述統計の後χ2検定と残差分析を実施し、自由記載は類似性で分類した。 結果:204名の回答(回収率46.2%)を分析対象とし、以下の点が示された。 1.指導を受けた経験のある者は183名(89.7%)であり、そのうち指導に満足している者は54.6%であった。 2 .指導を行った経験のある者は129名(63.2%)であり、そのうちマニュアルがある者は35.7%、指導に自信がある者は27.9%であった。自信度は学歴別で「修業年数4年以上」が有意に高かった。 3 .受けた指導内容に変更の必要があると回答した者は183名中の37.7%、行った指導内容に変更の必要があると回答した者は129名中の40.2%であった。その主な理由は「マニュアルの整備がされていない」ことや「指導が統一されていない」ことであった。 考察:マニュアルの使用頻度が低いこと、受けた指導内容に対する満足度や行った指導内容への自信度が低いこと、マニュアルや根拠に基づく統一した方法の必要性を感じていることなどが明らかとなった。
feedback
Top