日本救急看護学会雑誌
Online ISSN : 2189-6771
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20 巻, 2 号
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  • PCPS・IABP 管理中における排便管理方法の一考察
    小野 愛梨, 田口 裕紀子, 五百蔵 三奈
    2018 年 20 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    研究目的:A病院高度救命救急センターでは経皮的心肺補助装置・大動脈バルーンパンピングの管理が必要となった循環器系疾患蘇生後患者に対し排便管理システムを使用している。しかし、排便管理システムを使用した患者の約7割が数日間排便せず経過していることや排便管理システム使用に伴う皮膚トラブルの発生リスクの上昇、コストの増加が問題視されている。そこで、効率的で安全かつ経済的に排便管理システムを使用するため、循環器系疾患蘇生後患者と大量水様便の関連について明らかにすることを目的に本研究を行った。 研究方法:2012 年4月~2015年3月までに搬入となった循環器系疾患蘇生後患者のうち、経皮的心肺補助装置・大動脈バルーンパンピングの両方またはいずれかの管理を行った患者58例を対象に属性・排便状況・循環停止時間等を調査し、統計学的処理を行った。 結果・考察:循環停止時間(p=.010)が大量水様便と有意差が認められた。また、循環停止時間40分以上の患者は40分未満の患者と比べると有意に大量水様便を排泄し、一方で循環停止時間20分未満の患者は大量水様便を排泄しないという結果が得られた。以上のことより、経皮的心肺補助装置・大動脈バルーンパンピングの管理が必要となった循環器系疾患蘇生後患者は循環停止時間40分以上で排便管理システムを使用することが望ましく、循環停止時間20分未満では不要である可能性が示唆された。
  • 宮崎 博之, 坂本 祐子
    2018 年 20 巻 2 号 p. 7-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:フライトナースの個人特性や職場特性から専門職的自律性の実態を明らかにすること。 方法:38道府県46機のドクターヘリ基地病院50 施設の現役フライトナースを対象に、無記名自記式質問紙調査法を用いて行った。専門職的自律性は、看護専門職の自律性測定尺度を用いた。 結果:研究協力の承諾が得られた45施設のフライトナースを対象に、質問紙調査票を351通配布した。このうち回収は181 通(回収率51.6%)であった。フライトナースの年齢は37.8(±5.7)歳、看護師臨床経験年数は15.8(±5.5)年、救急看護領域での所属部署経験年数は8.3(±4.2)年、フライト経験年数は3.9(±3.2)年、フライト経験件数は100件以下が35.1%、101~300件が37.3%、301件以上が27.6%であった。フライトナースの専門職的自律性は、看護師臨床経験年数や所属部署経験年数、フライト経験年数、フライト経験件数を重ねるごとに得点が高かった。また、フライトナースとしての適性や職務満足感、職務継続意思をもち自己研鑽に励むフライトナースは、専門職的自律性が高いことが明らかとなった。 結論:本研究のフライトナースの専門職的自律性が比較的高いのは、専門職的自律性の特徴である正確な状況認知と判断、実践の一連の意思決定プロセスにおいて、臨床経験のなかで培った臨床能力を十分に発揮し、瞬時に意思決定しなければならない看護実践の積み重ねが要因であると考える。つまり、フライトナースとしての専門的な臨床実践と経験の蓄積がフライトナースの専門職的自律性を高める要因であると示唆された。
  • 河合 正成, 高原 美樹子
    2018 年 20 巻 2 号 p. 16-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、救命救急の場で働く看護師が、生命の危機的状態直後から回復過程にある患者に対して、どのような考えに基づいてどのような看護ケアを行っているのかを明らかにすることである。  研究対象者は、日本国内の三次救急医療施設(5 施設)の救命救急の場に現在勤務している看護師27名で、2年以上の救命救急実務経験を有する者である。調査は研究対象者に半構成的面接を行った。面接で得られた内容は、Colaizziの分析手法を用い、質的に分析を行った。  その結果、生命の危機的状態直後から回復過程にある患者に対し、看護師の考えに基づいた4つの看護ケアが明らかになった。第1点は、生命の危機や意識不明の状態にある患者を前に、看護師は救命に対して強いこだわりをもち【最優先は救命】へのケアを行っていた。第2点は、患者が失われた記憶により混乱をきたしている状況においては、患者の意識の回復を信じ、意思を伝えられるようにしたいと願い【患者の過去と現在をつなぐ】ケアを、第3点に、患者と同様に家族も大切にしたいと【患者と家族をつなぐ】ケアを行っていた。最後に、意識の有無にかかわらず、早い段階から患者の意思の出現や、やがて患者自らが生きる希望と意欲を蘇らせることを目指し、治療優先を念頭に置きながらも【生活重視の環境へ切り替え】たケアが行われていた。  本研究の結果より明らかになった看護ケアは、いずれも救命救急の場における看護の重要な特徴を示していた。
  • 茎田 惇也, 小林 久子
    2018 年 20 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、三次救急医療機関におけるエンゼルケアとグリーフケアに関わる看護師の精神的負担とその対処法を調査し、看護師がエンゼルケアやグリーフケアを行いやすいサポート体制の課題を明らかにすることを目的とした。 対象者は近畿圏7施設で勤務する管理職を除く看護師20名で、郵送によるアンケート調査を実施した。  調査内容は背景、設定した場面でのエンゼルケアとグリーフケア実施時のつらさの程度、つらかった体験、精神的負担の対処法、看護師へのサポートの要望であった。つらかった体験、対処法および看護師へのサポートの要望は自由記載を求めた。分析方法は、設定場面でのエンゼルケアとグリーフケア実施時のつらさの程度を2 群で比較し、家族と共に行うエンゼルケアの場面と対象者の背景をクロス集計し、自由記載は質的帰納的分析を行った。結果、エンゼルケアをつらいと感じる場面は家族と共に行う死後のケア、お見送りであり、グリーフケアでは死亡宣告、家族と共に死後のケアを行う、お見送りをつらいと感じていた。  看護師のみでケアを行う場面は、つらいと感じる看護師が半減した。家族と共に行うエンゼルケアは、女性、20歳代、看護経験10年未満、同居者がいない背景をもつ看護師がよりつらく感じていた。つらかった体験は、子どもや若い人の死や遺族に対するケアの心残りが多く、精神的負担の対処法は、前向きに考え次のケアにつなげる、スタッフとの会話によるストレス軽減、時間経過のなかで気持ちが安定するなどであった。看護師へのサポートの要望は、エンゼルメイク道具の充実、遺族サポートの充実、ケアの技術指導と支援、グリーフケアでの多職種連携であった。  エンゼルケアを含めたグリーフケアの看護支援には、現場のスタッフが直面している問題の把握、マンパワー、救急医療の場の看取りの教育、スタッフ間のコミュニケーション促進、看護の困難さの共有など、多岐にわたるサポート体制づくりが課題と考える。
  • 徳山 博美, 岩切 由紀, 林 みよ子, 江口 秀子, 清村 紀子, 山勢 善江
    2018 年 20 巻 2 号 p. 33-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    今年で設立20年の日本救急看護学会は、今後の活動の方向性を検討するため日本救急看護活動に対するニーズを把握することを目的に調査を実施した。  回答者は104名で、「社員」55.8%、「会員」34.6%、臨床経験は「20年以上25年未満」が31.7%、救急領域経験は「15年以上20年未満」が20.2%ともっとも多く、臨床経験年数および救急領域経験年数が比較的多かった。  開催中セミナーで興味あるテーマは「看護倫理」、今後開催を希望するテーマは「意思決定支援」がもっとも多かった。興味関心は、生命維持に直結した看護実践よりも、難渋した「看護倫理」や「意思決定支援」等であったと考える。  看護研究セミナーは、データの分析方法でニーズが多かった。研究助成申請は「機会があれば申請してみたい」や「申請したいが自力では申請は難しい」、申請の困難さの理由は「申請手続きがわからない」や「研究計画書が作成できない」が多く、効果的な広報活動と継続的な研究支援の必要性が示唆された。回答者が認識している研究活動の困難性は、回答者は研究プロセス全般に対する困難さを感じており、より丁寧に研究活動を支援していく必要がある。2018年度から研究助成申請は、初心者・上級者コースで行っており、会員のニーズに合致していた。  また、社員会員学習会で取り上げてほしいテーマは、「看護教育」「チーム医療」の順で多く、看護だけでなく救急医療チームの能力向上に関連するテーマが注目されていた。
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