日本救急看護学会雑誌
Online ISSN : 2189-6771
Print ISSN : 1348-0928
ISSN-L : 2189-6771
24 巻
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調査報告
  • 大川 滋美, 佐藤 直美
    原稿種別: 調査報告
    2022 年 24 巻 p. 1-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:救命救急センター勤務年数5年未満の看護師におけるSense of Coherence(首尾一貫感覚)、職業上のストレッサーと精神健康度の関連を明らかにする。

    方法:看護師経験年数10年未満かつ、救命救急センター勤務年数5年未満の看護師296名に質問紙を配布した。Sense of Coherence尺度29項目(以下、SOC-29)、臨床看護職者の仕事ストレッサー測定尺度(以下、NJSS)、GHQ精神健康調査票28項目(以下、GHQ-28)を用い、GHQ-28を従属変数、GHQ高群・低群間の比較において有意差のあった変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。

    結果:193名から回答を得た。看護師経験年数4.6±2.9年、救命救急センター勤務年数2.1±1.3年、精神的不調者が131名であり、精神健康度には、「把握可能感」と「看護職者としての役割に関するストレッサー」が影響していた。

    考察:職業経験の浅い看護師は、適切なフィードバックを受けるなどの「把握可能感」の形成につながる一貫性の体験が少ないと考えられた。また、「看護職者としての役割に関するストレッサー」には、キャリア発達段階によって求められる役割や救急領域の看護師に求められる役割への葛藤が考えられた。

    結論:精神健康度を改善するためには、「把握可能感」と「看護職者としての役割に関するストレッサー」の実態を明らかにし、介入方法について検討する必要がある。

  • 越道 香織, 岡田 淳子, 植田 喜久子
    原稿種別: 調査報告
    2022 年 24 巻 p. 33-41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    心停止の発生場所は一般病棟が多く、急変の第一発見者は看護師である。そのため一般病棟の看護師の急変予測が可能になれば、多くの患者の生命を救うことになる。本研究は、一般病棟に勤務する看護師の急変予測の実態を明らかにし、急変予測の経験と関連する個人特性の検討を目的とした。一般病棟に勤務する看護師237名に質問紙調査を実施し、分析は記述統計とχ2検定、フィッシャーの直接確率検定を用いた。一般病棟の看護師は、意識レベルや血圧等を変化に気づく情報として入手していたが、呼吸数や検査データを入手する割合は少なかった。情報の入手方法は、モニターの数値や本人の訴えなど包括的に使用していた。しかし、観察を情報の入手方法として使用する割合は6割に満たなかった。生命危機につながるかの判断は、目の前で起きている患者の変化とこれまでの患者の様子を比較して正常か異常かを考えるなどを実施していた。急変予測の経験は、二次救命処置研修受講、急変対応の経験、急変に気づいた経験と関連があった。一般病棟の看護師が急変予測をより可能にするためには、呼吸数入手の重要性を認識し、急変に伴う検査データを解釈できるようになり、急変の前兆を見逃さない観察方法の習得が求められる。また、自身が経験した症例を振り返ることも重要である。そして、さまざまな研修を受講できる環境を整備し、急変予測の実施につながる支援を組織的に行う必要がある。

実践報告
  • 〜ラダーⅠ・ⅡとラダーⅢ・Ⅳとの比較〜
    高取 美香, 高取 充祥, 渡辺 かづみ
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 p. 12-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:ER一体型の救命救急センターにおけるラダー別のパートナーシップ・ナーシング・システム®(Partnership Nursing System® 以下、PNS®)の導入の効果と課題を明らかにすることを目的とした。

    方法:Z病院の救命救急センターに勤務する看護師37人(ラダーⅠ・Ⅱ12人、ラダーⅢ・Ⅳ25人)に対して、平均超過勤務時間、看護師の意識の変化(PNS® 測定尺度)、職業経験の質の変化(職業経験評価尺度)の指標を用いて調査した。

    結果:平均超過勤務時間は、ラダーⅠ・Ⅱ、ラダーⅢ・Ⅳともに有意に減少した。看護師の意識の変化では、ラダーⅢ・Ⅳにおいて[協働と調和]が3カ月後、1年後に有意に減少した。職業経験の質の変化は、ラダーⅢ・Ⅳでは[仕事を続けるなかで、自分に合った日常生活を築く経験]が1年後に有意に減少した。

    考察:限られた時間内で密に連携できたことにより、平均超過勤務時間が減少したと考える。PNS®導入による効果が十分に認められなかったのは、救命救急センターでは継続したパートナーで勤務することが困難なため信頼関係の確立やパートナーシップマインドの浸透が難しいことが考えられ、今後の課題である。

  • 本田 智治, 橋爪 可織, 松浦 江美, 永田 明, 大山 祐介
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 p. 20-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:救命救急センターの救急外来における実習の学びの語りから、看護学生の体験を明らかにする。

    方法:成人看護学実習を履修し救急外来実習を選択したA大学3年次生の看護学生6名に半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は、実習中の体験や実習指導者および教員のかかわり、実習前後の救急看護のイメージなどで構成し、質的記述的研究法を用いて分析した。

    結果:看護学生の救急外来での実習にかかわる体験を示すコードから12個のサブカテゴリーを抽出し、《メディアで形成された希薄な救急医療のイメージが実習によって具体的になる》《救急医療における医療者・患者・家族の姿から、医療現場の現実を学ぶ》《救急外来でも病棟と変わらない自分が学んだ看護が存在することを確認する》《救急看護師の姿を通じて自分の将来における選択肢が増える》の4個のカテゴリーが見出された。看護学生は、救急外来での実習によって現実的な救急医療を学び、患者や家族の感情の代理的経験をすることによって共感が生じていた。そして、救急外来における看護を確認し、将来の選択肢の拡大という変化が生じていた。

    結論:本研究では、救急外来の実習によって救急看護のイメージが具体的なものとなり、患者・家族、実習指導者である看護師の姿を通じて、救急医療の現実を学び、自分自身が学んだ看護を確認するとともに将来の選択肢が増えるという看護学生の体験が明らかになった。

資料
  • 栗原 知己, 矢内 健太
    原稿種別: 資料
    2022 年 24 巻 p. 29-32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

     前橋赤十字病院(以下、当院)は体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation;ECMO)装着患者を搬送する専用車両(ECMO Car)を所有する国内でも数少ない施設であり、当院のECMO Transportチームは、救急外来の看護師(ER看護師)と集中治療室の看護師(ICU看護師)という専門性の異なる看護師2名が搬送に同行するのが特徴である。今回、本チームでのECMO Transportに関する経験を報告する。

     患者は40歳代女性。他院ICUにおいて管理中のインフルエンザ肺炎による重症呼吸不全の状態に対し、ECMO 装着の相談および転院搬送の依頼を受けた。搬送依頼を受けた後、14時4分に第一報がチームに共有され、15時21分に当院を出発した。紹介元病院においてECMOの装着を終えた後、18時46分に帰院した。

     当院のER看護師は病院間搬送の経験が多く、重症患者の搬送にも長けている。また、ICU看護師は日頃からECMOを装着した患者に携わっているため、その管理や緊急時対応に長けている。このようなお互いの強みを活かしながらECMO Transportチームとして活動することが、安全に滞りなくECMO Transportを行うことへの一助になるのではないかと考えている。

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