選挙研究
Online ISSN : 1884-0353
Print ISSN : 0912-3512
ISSN-L : 0912-3512
18 巻
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • リード スティーブン•R•
    2003 年 18 巻 p. 5-11,254
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本の並立制のような小選挙区制と比例代表制を組み合わせた選挙制度においては,小選挙区に候補者を立てると比例代表制の票も上積みが期待できるという仮説を検証しようとするものである。そして,1996年と2000年の総選挙データを用い,この仮説には十分根拠があることを明らかにする。更に,そこから二つの新たな仮説を導き出す。第一は,ある小選挙区への新規参入による利得は,そこからの撤退による損失と同じ大きさということはなく,二つの値は非対称的だということである。特に,新党にとっては利得の方が大きく,既成政党の場合には逆となる。第二は,新党の場合,候補者を2度続けて擁立すると,2回目にもその選挙区での比例代表票の上積みを期待できるというものである。本稿では,こうしたことが起きる理由についても考察する。
  • 西川 美砂
    2003 年 18 巻 p. 12-25,254
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1990年代に入り,日本の衆議院および旧ソ連諸国で小選挙区比例代表並立制が使用され始めた。それにあわせ,政治学の分野でも並立制に関する研究が多く進められ,日本の衆議院における並立制にも大きな注目が払われてきた。日本では衆議院の他に,参議院においても二つの選挙制度を並存させた選挙が行われている。しかし,両院の制度は並立制という点で類似しているにもかかわらず,参議院をケースとした研究はまだ比較的少ないように思われる。これまでの衆院選に注目した並立制の研究では,政党の得票率が小選挙区部分と比例区部分でいかに連動しているかなどの研究が発表されている。しかしながら,参院選での非拘束名簿式のもとでは二つの選挙制度が連動するのかどうかは明らかにされていない。そこで,本稿では2001年参院選の結果を用いて,どのように二つの選挙制度間で連動が起きるのかを明らかにする。
  • ガバナンス社会の確立を目指して
    中邨 章
    2003 年 18 巻 p. 26-35,254
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は,ガバメントからガバナンスへの移行を,日本の自治体を素材に検討していくことを目的にしている。ここではとりわけ,ガバナンスの時代に不可欠と思われる政治調整メカニズムの設計に焦点を合わせ,問題点の整理を行っている。論点は二つある。一つは,住民投票に注目し,それをこれからの政治を調整する制度と考えてみることである。小論はアメリカの住民投票にふれ,この制度の特色や欠陥などを検討している。二つ目に,本稿ではガバナンス政治の中核を担う自治体議会を改革という視点から考察している。分権やガバナンスの時代は,自己決定や自己責任の時代でもある。地方議会の果たすべき役割はきわめて大きい。ただ,わが国の地方議会には多くの課題が残されている。ここではアメリカの地方議会を参考にしながら,政治調整の実務に徹した議事運営の可能性を考えていく。
  • 佐藤 俊一
    2003 年 18 巻 p. 36-46,255
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    戦後,わが国では,当初,各種の選挙にはそれぞれ個別の法律が適用された。ところが,1945年,GHQ•民政局が日本政府に選挙報道の自由化を指導した。この指導は各選挙法の改正を促したが,政府はそれを国会に委ねた。当の国会は,1950年に中央•地方のすべての公職選挙に適用される公職選挙法を制定した。その結果,同法は地方選挙制度をますます画一的なものにしたのである。
    ところで地方自治制度-従って地方選挙制度も-画一から多様な制度へ改変することを求める意見がある。私もそうした意見を支持するが,いかにしたら地方選挙制度を多様化できるであろうか。本稿は,その立法的方途を提言するものだ。提言の第1は,公職選挙法から地方選挙制に関する多くの条項を分離すること,第2は,法律的基準であるとともに各自治体の憲章への授権法としての新たな自治体選挙法を形成することである。
  • 2001年イタリア上下両院選挙
    池谷 知明
    2003 年 18 巻 p. 47-57,255
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本論文は2001年イタリア上下両院選挙について,選挙制度と政党システムの変容に焦点を当てて検討する。1993年に導入された現行選挙制度は,上下両院とも小選挙区と比例代表の混合制度であるが,2極化とそれによる政権交代をめざした。多くの研究者によれば,2001年選挙ではこの目的は達成されたと言える。もし選挙競合の単位を選挙連合と考えるならば,この見解は正しい。1996年選挙の勝者である中道•左翼連合が破れ,中道•右翼連合のリーダーであるシルビオ•ベルルスコーニが1994年に続き第2次内閣を組織したからである。また2大選挙連合が小選挙区のほとんどすべての議席を占めたからである。しかし,選挙競合の単位を政党とみなすならば,政党システムは2極化にはほど遠く,なお破片化が確認される。破片化はとくに小選挙区で顕著である。というのも,比例区で議席獲得が困難な小政党が選挙連合内の戦略,交渉によって,小選挙区での議席獲得が可能になっているからである。1996年選挙で選挙連合の2極化と政党の破片化が示されたが,2001年選挙はこの傾向を確認する選挙であった。
  • Second Landslideの要因
    富崎 隆
    2003 年 18 巻 p. 58-77,255
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は2001年イギリス総選挙の投票行動を,British Election Study 2001年調査の生データ資料を使用して分折した。その際,投票行動の一般モデルから予測できる要因をできる限り幅広く取り上げた。多変量解析の結果,以下の点が明らかになった。(1)社会的属性特に職業階級は以前程の規定力を有しない。(2)政党帰属意識の規定力はモデル上有意である。(3)首相•党首評価,最重要争点への対応評価は保守•労働•自民党への投票に,経済危機対応能力評価は2大政党への投票に,階級•強い政党帰属意識とは独立に連関関係を有し,経済業績投票,保守党の政策ポジション失敗•労働党の中道化戦略の成功の影響も概ね確認できる。戦後最低となった投票参加を規定する多変量解析では,年齢•選挙関心•投票義務感•投票経験頻度•政党帰属意識強度•党首評価度が影響を与えるモデルが選択され,労働党勝利の予想が選挙関心と投票率を低めた可能性が指摘できる。
  • 只野 雅人
    2003 年 18 巻 p. 78-89,256
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小泉政権の成立以来,首相公選制が注目を集めてきた。直接公選を通じた強いリーダーシップを求める声の背景には,政党不信がある。フランスにおける首相公選論や「半大統領制」の経験が示すように,行政府の長の公選制では,長と議会多数派の関係を規定する政党システムがとりわけ重要な意味を持っている。それゆえ,首相公選を論じるに当たっては,制度設計のみならず政党システムにも十分留意する必要がある。日本におけるその導入をめぐっては,政党不信を考えると,ポピュリズムの懸念もある。アメリカのような分権的政党を前提にした大統領型の公選制については,利益誘導の昂進も問題となる。二大政党制を通じた事実上の公選も考えられるが,二大政党制が日本に適合するかは疑問である。直接公選によるリーダーシップの確立よりも,多様な民意の反映を通じた政党システムの再生こそが重要ではないか。
  • 村瀬 信一
    2003 年 18 巻 p. 90-100,256
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    田中義一内閣下の第56議会(1928年12月∼1929年3月)において,与党•政友会と新党倶楽部が共同提案した選挙法改正案は,選挙区を小選挙区制に戻すことを骨子としていた。しかし,政友会•新党倶楽部ともに,小選挙区制採用を焦眉の急と考えていたわけではなかった。政友会にとっては,将来の議会対策上,新党倶楽部を吸収する必要から,また新党倶楽部とそれを率いる床次竹二郎にとっては,より有利な政友会復帰への道筋をつける思惑から,成立するか否かは度外視して提出されたものであった。
  • 与党内の候補者調整を中心に
    清水 唯一朗
    2003 年 18 巻 p. 101-112,256
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は,明治31(1898)年に実施された,わが国初の政党内閣による選挙である第6回衆議院議員総選挙を分析する。これに先立ち,自由,進歩の二大政党を中心とした民党は大合同を果たし,実に8割近い議席を有する憲政党が誕生した。選挙は,この憲政党を与党とするわが国初の政党内閣である第一次大隈内閣によって実施された。
    本選挙で注目されるのは与党憲政党における候補者調整である。本選挙は前回選挙からわずか5ヶ月しか経ておらず,いかに中央において合同が達成されたとはいえ,地方においては当然,候補者調整が難航した。本稿はこの問題を中心に,ミクロな視点から地方における候補者選定の事例を検討した上で,マクロな視点から全国的な傾向を分析し総体を把握するものである。
  • 国会議員の活動と有権者の業績評価
    今井 亮佑
    2003 年 18 巻 p. 113-124,257
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,議員の任期中の活動を示すデータと,サーヴェイデータに見られる有権者の現職議員に対する評価とをリンクさせて分析を行うことで,議員としての任期中の活動実績を有権者が評価しているか否かを明らかにすることにある。具体的には,感情温度計による現職評価,利益誘導に関する業績イメージ(「ポークバレル•イメージ」)に,自民党現職のポークバレル関連部会所属数の影響が見られるかどうかを分析する。
    分析の結果は以下のとおりである。現職議員をよく知っている有権者の間では,議員のポークバレル関連部会所属数が多いほど有権者が議員に対し「ポークバレル•イメージ」を抱く確率が高く,また感情温度計による評価が高いという傾向を確認できる。これに対し議員のことを少し知っている程度の有権者の間では,ポークバレル関連部会所属数とイメージ•評価との間に明らかな関係は見られない。
  • 木村 高宏
    2003 年 18 巻 p. 125-136,257
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿では不満な有権者の棄権を,ハーシュマン(Hirschman, Albert O.)の提示した「退出」であると考える。この理論枠組みを敷衍して,不満な者の投票参加がいくつかの要因によって影響を受けるという仮説を検証する。
    本稿の分析を通じて,不満であっても何らかの政治課題を重要だと考えれば投票し,あるいは,社会をよくするために何かができると考えれば投票する,という有権者の存在を示すことができた。このことは,有権者自身の態度形成を問題にしており,政策距離を中心に考える期待効用差からの研究に対して,有権者の政治を理解する能力が十分に成熟していない場合にも採用可能であるという利点があるだろう。また,分析において,政治的疎外感を示す質問と,「社会をよくする」というような有力感に関する質問とが,質的に異なることを示すことができた。
  • 肥前 洋一
    2003 年 18 巻 p. 137-147,257
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    2001年7月の第19回参議院議員選挙から,比例区選出議員の選出方法として,拘束名簿式に代わって非拘束名簿式が導入された。本論文は,ゲーム理論を用いて,これら2つの選挙方法のうち,どちらが民意をよりよく反映した選挙結果を実現するか分析する。本論文の戦略的投票モデルから得られた結果は,非拘束名簿式のもとでは政策空間の中央に位置する政策を実現する候補者の組み合わせが常に当選するが,拘束名簿式のもとでは一部の有権者に偏った政策を実現する候補者の組み合わせも当選しうるというものである。その意味で,非拘束名簿式のほうが民意をよりよく反映した選挙結果を実現するといえる。
  • 2001年参院選を対象として
    佐藤 哲也
    2003 年 18 巻 p. 148-163,257
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    情報流通コストの大幅な低下をもたらすインターネット環境では,選挙において有権者の利用可能な情報は増大する一方で,認知限界以下に情報を縮約する代理人が必要になる。そこで本論では有権者の争点投票を支援する手法を提案し,2001年参院選において運用した。提案にあたり,既存の選挙研究の蓄積をふまえ,単一の命題からなる対立争点といった当該手法における争点の持つべき特性および抽出された争点の評価基準を明らかにした。そして運用の結果得られたデータを元に,抽出された争点の評価を行い,一部を除き概ね妥当と判断される。さらに有権者と候補者の争点態度比較に用いる計算方法および効果的な争点群について検討した結果,望ましいと考えられる最短距離法にも欠点がある,また6∼9争点からなるイデオロギー的争点を多く含む争点群での比較が最も効率的であるという結論を得た。
  • 中村 悦大
    2003 年 18 巻 p. 164-173,258
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    政治学においては,競合する仮説が,異なる説明変数を指定しており,計量モデルの観点からは,非入れ子型の仮説検定によって検討されるべき場合が多く存在する。経済投票モデルにおける「ソシオトロピック」仮説と「ポケットブック」仮説の対立は,その典型的な一例といえよう。この場合,通常の仮説検定の考え方に従って相対する仮説を評価することは,極めて難しい。一方,ベイズ統計学の考え方を利用すれば,この非入れ子型仮説の検定を,ベイズファクターを用いて容易に評価することができる。本稿では,Quinn, Martin and Whitford (1999)で利用された多項ロジットモデルとベイズファクターの導出のアルゴリズムを用いて,上述の二つの仮説を検討する。また,より大きな視点から,そもそも経済投票モデル自体がどれほどの説得力を持つのかを,他の代替的なモデルとの比較検討によって明らかにする。
  • 自由民主党(1960-2000)
    浅野 正彦
    2003 年 18 巻 p. 174-189,258
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,選挙制度の変更が政党エリートの行動に与える影響を,日本の自由民主党における公認発行を事例として,実証分析することにある。本稿は,中選挙区制から小選挙区制へ移行し選挙区定数が1になることが,公認発行において,総裁派閥と幹事長派閥に所属する候補者への優遇傾向を加速させる,と主張する。政党公認の決定プロセスを自民党執行部と自民党県連間のゲームとみなし,中選挙区制下では,政党執行部が強く支持しない非現職候補者が公認され,小選挙区制下では,執行部が強く支持する非現職候補者が公認される傾向があることを示した。さらに二つの選挙制度下における衆院選データ(1960-2000)を使って比較分析を試みた結果,中選挙区制下と比べると小選挙区制下において,総裁派閥と幹事長派閥がバックアップした非現職候補者が公認される確率が増していることが確認された。
  • インターネットユーザー調査に基づく実証分析
    岡本 弘基
    2003 年 18 巻 p. 190-202,258
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,現時点での政党ウェブサイトの広告効果をサーベイデータに基づいて検証し,その結果からインターネットと政治の将来について考察することである。その結果,1 閲覧者数という,いわば「量」の問題があるものの2 当該政党に対するイメージ向上という「質」的な面から考えると,政党ウェブサイトは悪くないパフォーマンスを得た,ということが明らかになった。またインターネットを用いた政治的な行為については,インターネット投票などの物理的コストを解消する方向において積極的なユーザーが多く,インターネット上での政治討論等の新たな心理的•認知的負担を要するものについては,消極的な姿勢が多数を占めた。
  • ソフトマネー禁止が与えるインパクト
    前嶋 和弘
    2003 年 18 巻 p. 203-213,259
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本論文は,連邦議会で2002年春,可決された選挙資金改革法案の決定要因を計量的に解明し,政治資金制度はどのような力学で決定されているか,分析する。同法は,現行の1974年連邦選挙運動法を改正し,党勢拡大を名目とする政党向け献金などを含めた現行の政治資金規制を受けない「ソフトマネー」を規制する一方で,個人献金の上限をこれまでの2倍に拡大する点などがうたわれている。分析では,「得票マージン差が少なく激戦区であるほど,法案に反対する」とした仮説などが実証された。しかし,「在職年数が長ければ長いほど,反対票を投じる確率が高い」とする仮説については,民主党の議員の場合には,検証されたが,共和党の議員の場合,在職年数につれて,法案に賛成する確率が高くなるなど,仮説で捉え切れなかった議員の論理などもいくつか,明らかになった。
  • 山本 竜大
    2003 年 18 巻 p. 214-228,259
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本の国会議員本人やその事務所によるホームページ(HP)の開設要因の探求を目的とする。2000年末までに開設が確認された状況をもとに,社会的属性,選挙競争,公約の視点から全議員,衆議院小選挙区,最大党の自民党とHP開設率が最も高かった民主党を対象に分析した。社会的属性と選挙競争によるモデルでは,全体的に年齢と都市度,特定大学出身者,自民党の少数派閥所属者がHPを個人で開設する要因になっている。衆議院小選挙区では,都市度,自民党の特定派閥,民主党議員であった。公約モデルでは,IT関連,政治,農林漁業,憲法•司法制度が作用した。これらを総合した結果,HP開設に都市度とIT公約が影響した。自民党は政治キャリア,得票率差,ある私立大学出身者が作用した。民主党は公約で説明されず,年齢がマイナスに,政治キャリアがプラスになる特異性を示した。
  • 西平 重喜, 大谷 博愛
    2003 年 18 巻 p. 229-232
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 18 巻 p. 234-241
    発行日: 2003/02/28
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top