巨大で複雑なシステムである原子力発電所に係わる原子力技術は,高い信頼性を必要とする,放射線環境に対応する必要がある,などの要求に対応して,その技術を発展させてきた。そのような特徴を持つ原子力技術の他分野への応用がなされてきている。応用例は多々あるが,本稿では防災に役立つ制振・免震技術,危険な作業を人に代わり行うロボット技術,きれいな水を供給する水処理技術,肉眼では見えない物の内部を見る放射線利用技術,実験では観察しづらい現象を可視化できる数値シミュレーション技術,などの例を紹介する。
なお,著者らは,本稿で紹介しえなかった技術も含めて,他産業で使われ,汎用化され,再び原子力分野に適用される,いわゆる“技術の還流”を経た原子力技術が,より経済的で,信頼性が高く,かつ安心できる原子力発電所の完成に貢献できるものと確信し,期待している。
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