日本原子力研究所の大型トカマク装置JT-60では, 主に重水素燃料を用いて, プラズマの温度, 密度を高め, またエネルギーの閉じ込めを良くするためには, プラズマ電流分布やプラズマ圧力分布を適切に制御することが重要なことを明らかにしてきた。この結果, 1996年には, 重水素-トリチウム燃料に置き換えたときのプラズマ加熱パワーと核融合反応出力の比率である等価エネルギー増倍率で1.05を得て臨界プラズマ条件を達成するとともに, 1998年には等価エネルギー増倍率1.25という世界最高性能のプラズマを実現した。さらに, 世界に先駆けて核融合炉に要求されるプラズマの各種目標性能を同時に達成する研究を進め, 国際熱核融合実験炉 (ITER) に対し重要な貢献を果たすとともに, 世界のトカマク型定常核融合炉の研究開発を牽引・先導してきた。あわせて, これらの研究を支えるプラズマの加熱・電流駆動装置等の開発・改良を行い, 炉工学への貢献も行ってきた。本稿では, これらJT-60の研究全体を概観しつつ, 最近の成果と今後の展望を報告する。
電力生産以外の原子力技術の利用として, 放射線・アイソトープ技術は, 農業, 医療, 水資源など生活に密着したところで役立つので, 途上国の多くの国がその活用を拡げようとしている。日本政府も, アジア地域の途上国に重点を置いて支援, 協力をしているが, いまだ資金的にも充分とはいえず, 進行中のプロジェクトの成果を確実にし, 新しい活動を開始するために, 我が国の一層の国際貢献が期待されている。本稿では, 持続的発展, 途上国支援の観点から放射線・アイソトープの利用を再考してみる。
臨界安全設計の分野には, Double Contingency Principleという独特の考え方がある。筆者は以前, 本誌「談話室」において, この用語の和訳について意見を述べた。その時期と前後して, Double Contingency Principleの解説を含んだ「特定加工施設のための安全審査指針」が作られ, 国際シンポジウムNUCEF2001でDouble Contingency Principleについて米国人の発表があった。本稿では, これらにも触れつつ, Double Contingency Principleを理解するための議論の出発点としての材料を提供する。