科学技術に対するリスク認知には専門家と一般市民とで大きな違いがあり, この差は科学技術の広報活動や社会的受容の阻害要因の一つと見なされて, 埋めるべきものと考えられてきた。本稿では, 専門家と一般市民のリスク認知に関する質問紙調査などの社会心理学的研究の現状とその成果について紹介する。専門家と一般市民の間の差異は単にリスク認知の程度のみにとどまらず, その背景となる科学技術に関する知識や価値観, 評価基準や, 身の回りの情報源やその情報内容にこそ本質的な差異があり, そのためリスク認知の差を埋めるのは非常に困難である。また, リスク認知の差を埋めるよりも, 専門家と一般市民の多様な相違点を前提とした情報提供やコミュニケーションを行うことにこそ努力すべきであること, およびその際に専門家が留意すべき点を示す。
高速炉の自己作動型の反応度制御装置LEM, LIMおよびLRM (後述, 第4~6図参照) の開発状況を示す。これらは液体の6Liを使い, 自然の原理のみを利用して作動する。さらにこれらの装置を適用した高速炉概念として, 完全自動運転の可能な世界初の月面用超安全高速炉RAPID-L1~6), およびこの特徴を受け継いだ地上用高速炉RAPID6)の概要を示す。これらの原子炉は制御棒を備えず, 上述の装置により無人運転が可能である。またマニュアル運転により出力を変えることもできるが, ヒューマンエラーを完全に排除でき, いかなる故意または過失に対しても安全な特性を持つ。
日本の原子力発電が国民からの信頼を得て安全に運営されるようにするために, 米国原子力発電所におけるリスクインフォームド規制や原子炉監視プロセスなどの規制活動とそれらに対する発電事業者の取組みを調べ, 原子力発電が信頼を得る仕組みについて考察する。