地球の物理的容量に基づく資源, エネルギー, 環境, 土地等の制約は人類文明の発展拡大への大きな壁として立ちはだかっている。温暖化問題は, いわばその象徴ともいえるものだが, 本稿ではこの問題の経緯を簡単にまとめるとともに, その解決の方向として資源循環化とエネルギー脱炭素化があることを指摘している。前者については社会経済的改革が必要だが, 後者についてはそれ以上に技術革新が必要で, 本稿では, どの程度の速度でそれが必要かをエネルギー資源・温暖化制約を取り上げて具体的に示すとともに, 対応して開発すべき技術について検討している。そこでは, 自然エネルギー, 原子力を取り上げるとともに, 長期将来との間をつなぐbridging technologyとしてのCO2の地中貯留の役割, および将来エネルギーシステムの2次エネルギー候補としての水素技術の問題点を論ずる。
日本学術会議法の改正 (本年10月1日施行) により, 新しい方法で選出された会員による第20期が始まる。この機会に, 原子力に関わる学術会議の活動の歴史をふり返り, 学術会議法改正の要点を示すとともに, 新しい学術会議には, 広範な学術の視点から原子力について総合的に議論し, 具体的な提言がなされるよう希望したい。
原子力研修における社会人の教育は, これまで原子力エネルギー技術, 放射線技術および防災の各分野を対象に, 多数の研修修了者を輩出してきた。これらのニーズは時代とともに変化しており, 国内では新たな大学連携や教育の補完的役割が求められ, 保有する原子力施設を活用して, 実践的な技術者を養成することが一層期待されている。また, 新設された原子力・放射線技術士への講習も原子力を再び活気づけるのに有益と考えられる。一方, 国際研修では, アジアの国々に原子力利用を安定に根付かせる上で日本は重要な役割を果たしており, 各国の専門技術者教育の自立を支援することが, 今後も続けられる。
サブ・グループ法は, 重核種の中性子反応のエネルギー依存性を精度よく表現するために考案された手法であり, 原子炉炉心計算に広く使われている。本稿においては, サブ・グループ法の概要を説明するとともに, 筆者自身の試行錯誤の体験から得られた知見について紹介する。また, サブ・グループ法で未解決の問題を中心に, 研究の将来展望について述べる。