放射性廃棄物処分は, 人間環境の保全と地球環境の保全の両面に配慮したものでなければならない。そのためには, 処分の科学が安全の科学と環境の科学とを十分に取り込み, 処分場の当初計画・設計の段階で操業終了後の将来像を描いて, 建設・操業段階から景観の確保に配慮すると共に, 操業終了後の土地利用, 経済圏・文化圏の変化に必要な施設や機能を建設する必要がある。また, 廃棄体の埋設に伴ってバイオミネラリゼーションの変化が生まれ, 鉱物多様性ひいては自然多様性の変化を引き起こし地球システムの変化につながる可能性があると予想され, 処分が及ぼす地球システムへの影響予測, 影響評価, 対策等の研究に手をつけておくべきである。さらに, 処分場の立地に向けては安心の醸成が必要であり, そのためには安心の科学を適用し, 科学・市民社会・政策行政のそれぞれが連携しパートナーシップを形成することがよいと考えられている。
国内の加圧水型原子力発電所が運転を始めてから約35年が経過し, その間, 主要機器である蒸気発生器に多くの損傷を経験した。今までの経験を振り返って, (1) 初期の蒸気発生器伝熱管の損傷原因究明からそれらを基にした腐食抑制対策, (2) 従来の火力ボイラからの思想が逆転している蒸気発生器に対して腐食防止の観点から工夫すべき要件, および (3) 設計面, 水質管理技術の改善および伝熱管材料の技術改良による, より信頼性の高い蒸気発生器に至る過程について述べた。また, 伝熱管の健全性確保のための補修技術, 損傷が継続する蒸気発生器を改良された最新のものへの取替えについて解説し, 現在の良好な運転実績を長期にわたって維持するための方策についても考えの一端を述べた。