スーパーコンピュータは,科学技術計算を高速に行う計算機であり,今後の科学技術の発展のためにはなくてはならない計算科学のための基盤ツールである。理化学研究所は,平成18年度から次世代スーパーコンピュータの開発プロジェクトにおいて,LINPACK性能10ペタフロップスを超える世界最速レベルの汎用型スーパーコンピュータ(愛称:京速コンピュータ「京」)の開発を進めている。本稿では,すでに製作が開始された京速コンピュータ「京」の概要について紹介する。
超弦理論は,物質と力を記述している素粒子がすべて小さな「ひも」から構成されているとする仮説であり,重力と量子力学を統一する究極理論の候補である。本稿では3回にわたり,素粒子論,宇宙論,そして原子核物理学への超弦理論の応用を,平易な言葉で紹介する。第2回の今回は,素粒子をひもの振動で記述している超弦理論が,驚くべき新宇宙描像「ブレーンワールド(膜宇宙論)」を提供することを述べる。宇宙論と素粒子論の親密な関係が明らかになる。
米国航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)でも活用されている技術成熟度(TRL)基準を用いて,放射性廃棄物処理・処分の負担軽減などを目的とする分離変換技術の成熟度を評価した。技術成熟度の厳密評価ではなく,そこから浮かび上がってくる課題を客観的に把握することを目指した。そこで見えてきたものは,直面する技術開発上の高い壁であった。TRLについて概説するとともに,今後,分離変換技術の開発を効率的・効果的に進める方策を提案した。
原子炉の中では,中性子がウランやプルトニウムなどの原子核と相互作用をすることによりエネルギーを生み出している。したがって,原子力施設の設計等には中性子と原子核がどのような反応をどのくらいの頻度で起こすかを記述する核データが必要となる。本稿では,核データの評価について紹介するとともに,本年5月に公開した最新の評価済み核データライブラリーJENDL-4.0の作成手法,精度検証および利用について解説する。
日本製鋼所は1907年,天然の良港を持つ北海道室蘭市で,主に砲身と防弾鋼板を国産化する民間最大の兵器会社として創業を開始した。終戦後,これら製造技術が原子力機器用材料等の製造へ受け継がれた。1970年以降,一貫して原子力発電機器の構造健全性向上を目的に大型・一体化鍛鋼品の製造技術開発を継続してきた。現在,室蘭製作所では原子力ルネッサンスを迎え,世界最大の600トン鋼塊から第三世代炉と呼ばれる各種原子炉圧力容器部材の製造が盛んに行われている。
僅かではあるが再処理施設や原子炉から放出される放射性核種の中で,炭素14が最も線量寄与が大きいことは,意外と知られていない事実である。環境中に放出された炭素14が我々に与える影響を合理的に評価するためには,環境中物質の中で最もダイナミックな炭素の循環に紛れ込んだ炭素14の動態把握が必要である。これまでのFP核種の環境移行研究とは異なる炭素14固有の特徴を踏まえて,研究の現状を述べる。
東京大学大学院GCOEプログラムの国際保障学研究会では,「核兵器のない世界」の実現をめざすためには,すべての核実験を禁止するという包括的核実験禁止条約(CTBT)の理念をアジア地域に定着させることこそ,地域安全保障環境の安定化につながる一方策であると考え,アジア地域の核軍縮・核不拡散を念頭に置いた「核実験禁止アジア地域ネットワーク」の構築を議論し,提案をまとめた。
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