福島第一原子力発電所1号機の設置許可が出て,海抜35mの断崖が10mまで削られ,GEに引き渡されて発電所の建設工事が開始された1967年の頃,地球科学では,プレートテクトニクスの仮説が登場して発展し始めた時であった。 今,仮説ではなく,実測しながら見ているプレート運動のことを,できるだけ普通の言葉で解説したい。固体地球の運動の中で,2011年東北地方太平洋沖地震の発生を位置づけ,この巨大地震の発生の仕組みと,日本列島の今後の地震活動を,5回の連載で解説したい。
福島原子力発電所の損壊により大気中に放出された放射性核種は,地表面の広域汚染をもたらしている。地表面土壌に沈着した放射性核種の一部は河川に移行する。河川での放射性核種の移行は長期的である一方,降雨時の短期変化も重要であり,さまざまな時間スケールを伴っている。また,放射性核種ごとの挙動の相違も大きい。本稿では,チェルノブイリ事故・大気圏内核実験影響の関連研究を参照し,河川における放射性核種の移行の特徴をまとめた。
水,野菜,魚等の食品中の放射能濃度については,厚生労働省から暫定規制値が示されており,規制値以下であることの確認のためには,放射線測定に基づく放射能濃度評価が必要である。食品中の放射能濃度は,基本的にGe半導体検出器によって測定されるものの,1次スクリーニングの段階においては,空間線量率を測定できるNaI(Tl)シンチレーションサーベイメータを適用する方法もある。この測定方法を実際に現場へ導入する際に留意すべき点は何だろうか?本解説では事例を交えながら検討する。
日本原子力研究開発機構に産業医として関わってきた立場から,職場を取り巻く環境と,その変化から職員に生じているストレスについて考察し,厳しい環境の下で精神的な健康と高いモチベーションを保つために必要な考え方や原子力機構が行っている取組みについて紹介する。また東日本大震災が原子力機構とそこで働く職員に与えた影響についても考察する。
3.11東日本大震災に伴って発生した福島原発事故による原子力損害は,その規模,深刻さ,期間等において,かつてのジェー・シー・オー(JCO)臨界事故とは比較にならないものとなっている。そのため,50年前に制定された原子力損害賠償法制(原賠制度)の想定を質,量共に超えた様相を呈しており,現在,賠償支援機構法や仮払い法等の現行制度を補完する法案が審議されている。平時にはほとんど話題に上らなかった原賠制度がクローズアップされている今,この制度に関する創設,仕組み,JCO事故,課題等を紹介する。
平成23年6月中旬,日本原子力産業協会は協力協定を有するロシア国立研究センター「クルチャトフ研究所」のエフゲニー・パーブロビッチ・ベリホフ総裁(=写真)が来日したのを機に,東京都内で「チェルノブイリ事故から25年―福島第一原子力発電所事故への教訓」と題する講演会を開いた。4号機の事故の収束に大きな力を発揮した同研究所の実績を紹介するとともに,「チェルノブイリ原発事故は原子力産業の発展のみならず多方面に影響を及ぼした。が,事故に備え,対策を講じることは事故前にもできたはずである」と述べ,国際原子力事象尺度(INES)でレベル7を記録した同事故を述懐した。
福井県は15基の原子力発電所や高速増殖原型炉「もんじゅ」など様々な原子力施設があるエネルギー利用の中心的な地域の一つである。また,福井県のエネルギー研究開発拠点化計画や福井大学の国際原子力工学研究所など様々な機関による原子力研究・教育・開発の取組みが行われている。本解説では,福井県,日本原子力研究開発機構,関西電力および福井大学のそれぞれの取組みとそれらが連携した拠点化の動きを紹介する。
耐食性と耐リラクセーション性に優れるNi基合金は,航空機など他工業での使用実績から,原子炉機器・配管部材として軽水炉の開発当初から用いられてきた。特に,塩化物環境下での耐応力腐食割れ性から海水リークがあっても応力腐食割れの心配のない蒸気発生器伝熱管材料として,また,中温領域での耐リラクセーション性からボルト材やスプリング材などに多用されている。Ni基合金は目的・用途に合わせ多くの合金が開発されているが,本稿では,主なNi基合金,原子炉用材料としての各種Ni基合金の特性,その改良・開発研究動向等について紹介する。
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