2013年の7月末に,「低線量放射線を超えて」というテーマで書物を著して1),早,3ヶ月が経った。本を差し上げた福島の方からの「講演がより良くわかった」との声とともに,「元気づけられた」との声はうれしい限りである。また,京大の先輩の名誉教授の方々には,よく書いたね,よく勉強したねと,ほめられた。いつもは厳しい放射線生物学や分子生物学専門の名誉教授からのお言葉に力を得た思いである。また今回,思いがけず原子力を専門とする方や材料学を専門とする方々から,新しい視点で共感したとの声とともによく書かれましたねと,メイルやらお手紙をいただいた。私たちの分野では当たり前のことを書いたので,この反応は予想外であった。本稿では,この本に込めた想いと,この間異分野の研究者との議論を通して私自身が,学び考えたことを紹介する。
米国およびカナダにおいては,福島第一原発事故以降も原子力を温室効果ガスのほとんど出ないクリーンエネルギーと位置付け,エネルギー・ポートフォリオの重要な要素として引き続き利用してゆく方針である。一方,数年前には予測されていなかったシェールガス革命と呼ばれる状況は原子力発電所の新規建設の環境を一変させている。このような環境下での両国での原子力開発や発電等の動向について解説する。
世界そして我が国で,持続的なエネルギーシステムの構築に向け,再生可能エネルギーへの期待が高い。再生可能エネルギー導入の大きな割合を占める太陽光発電や風力発電など,出力の変動する再生可能エネルギー電源の導入を含め,将来の電力システムの課題と対策について,技術面,制度面に分けて紹介する(3回シリーズ)。 第1回(Part 1)では,変動する再生可能エネルギーの大量導入による電力システムの変動(variability)の増加とそれに対応する柔軟性(flexibility)の低下は,電力システムの需給調整の課題の解決をこれまで以上に難しくする状況とそれに対する対策の可能性を解説する。
東京電力福島第一原発の事故により,福島県を中心とする地域の土壌は高濃度に汚染され,住民が内部被ばくと外部被ばくのリスクに曝された。特に,チェルノブイリ事故の経験に照らすと,平均的な内部被ばくは数mSvに達すると,当初予測された。しかし,実際に大規模なホールボディーカウンター測定を行ったところ,住民の平均的な体内放射性セシウム量は,冷戦時代よりも少ないことが明らかになってきた。福島における内部被ばく・外部被ばくの実測データを紹介し,今後を考える。
経済産業省資源エネルギー庁では,平成24年度から発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業を開始した。本事業の中で,原子力施設プラントのモデリング・シミュレーション技術の開発や高度化に向けて,わが国の原子力施設の安全を支える重要な技術基盤として,我が国独自のモデリング・シミュレーション技術を開発し,その成果を反映した解析コードやソフトウェア開発,それを継続的に活用していくための維持・活用体制について検討を行った。 本稿では,「モデリング・シミュレーションの高度化」解説シリーズの第1回として,上記検討結果の一部を紹介する。
処分事業の実施段階における可逆性・回収可能性(R&R)が各国で取り上げられ,議論が行われるなど関心が高まっている。第3回と第4回に分けて,R&Rプロジェクトの一環として開催された国際会議より,事業,政策,規制の関係者以外の人文・社会科学分野の学者・専門家からの見方(第3回)やNGO組織などからの発表概要(第4回)を紹介する。
チェルノブイリNPP4号炉では約200tの核燃料の溶解によって発生したコリウムaとコンクリートの反応によって炉下区画bの鉄筋コンクリート床版が1,600℃に達する高温によって侵食された。しかし,これらが崩壊することなく,コアキャッチャーのような役割を果たし,溶岩状燃料含有物質を受け止め,更なる事故の拡大を未然に防ぐことができた。本稿では,コリウム・コンクリート反応の経緯とコンクリート構造物の損傷の状況をロシアで出版された報告をもとに解説した。
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