日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
56 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
時論
解説
  • 原子・分子レベル構造解析から新しく何がみえるか?
    矢板 毅, 池田 隆司, 松村 大樹
    2014 年 56 巻 6 号 p. 366-371
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     粘土鉱物へのセシウム吸脱着機構は,1950年から1960年代にかけて多くの研究成果の報告があり,セシウムが土壌表面近くに存在するメカニズムなど,様々な説明がなされてきたが,原子,分子レベルでのセシウム存在状態に関して直接観察等を通じた報告は意外に少ない。そこで本研究において,構造・化学結合特性などに焦点を当て,放射光や理論計算などを通じて詳細に検討したところ,セシウムと粘土鉱物との間には,アルカリ金属としては特異な相互作用が存在することを新しく指摘した。この結果については,2稿にわたり解説することとし,本稿では,特に放射光および経験的なパラメータ等を含まない第一原理に基づく分子動力学計算による結果について紹介する。

  • 第一原理計算による原子・分子レベルの吸着挙動解析
    奥村 雅彦, 中村 博樹, 町田 昌彦
    2014 年 56 巻 6 号 p. 372-377
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     福島原発事故により放出された放射性セシウムを除去するため,大規模除染が行われたが,膨大な量の除去土壌が発生し,その効率的且つ経済的な処理法の研究開発が求められている。一方,表層土壌に吸着したセシウムは風雨により一部移動することが知られ,再汚染や海洋への流出が懸念されており,環境中でのセシウム挙動は重要な研究課題である。しかし,セシウムの土壌への吸脱着に関する科学的知見の不足により,上記の研究開発の進展はいまだ不透明である。本稿では,前稿のセシウムの土壌吸脱着に関する実験・観測結果を受け,第一原理計算手法と呼ばれる高精度の計算科学手法により得られた新知見を紹介し,除去土壌の減容化法及び貯蔵法,そして,環境中セシウムの動態予測に対して,今後の研究開発の方向性を示す。

新刊紹介
解説
  • フルMOXの技術的バックグラウンドは何か?
    小林 哲朗
    2014 年 56 巻 6 号 p. 378-383
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     現在建設中の大間原子力発電所(電気出力1,383MW,青森県大間町)は,MOX燃料を全炉心で利用できる“フルMOX-ABWR”であり,軽水炉のフルMOXは世界で実績がないとの理由から「商業炉で危険な実験をするようなもの」との誤解もある。そこで本稿では,MOX燃料炉心の特徴を紹介しつつ,フルMOX-ABWRの技術的バックグラウンドを解説する。

  • 福井県の原子力はどうなるか
    竹田 敏一, 宇埜 正美
    2014 年 56 巻 6 号 p. 384-387
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     原子力に対する信頼感,安心を回復するには,福井県内の原子力関連組織として何を,どうやって実施すれば良いかについて考える。プラント安全性,原子力防災について県内の大学,研究所,電力がどのように連携するのが望ましいかについて述べる。今後の原子力の安全性を維持・向上する上で教育(人材育成)をどう進めるべきかについて述べる,また原子力をやる気のある学生が原子力関連の組織で活動するには原子力の夢が必要である。どのような夢があるかを,研究面から述べる。

報告
  • コミュニケーション強化に向けて「相談員」システム化に期待する
    崎田 裕子
    2014 年 56 巻 6 号 p. 388-391
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     事故後約3年が経過し,自然放射線より高い放射線と向きあって暮らす,という日本で初めての状況に福島の方々は直面しており,リスクコミュニケーションの重要性が高まっている。しかし,事故後の放射線量の違い,除染の進捗による低減状況の違いなども影響し,避難継続地域,帰還準備地域,日常生活を取り戻そうとする地域など,地域の状況は多様化し,リスクとの向き合い方は,一人ひとりがどう決断するかにかかっている。また,個人の決断は勿論ながら,地域性に応じた対応や,除染だけではなく復興やこれからの暮らしや地域づくりなど,地域社会の将来像とも密接につながってきている。

     科学的知見と社会的知見を総合化して地域による柔軟性を確保しながら,放射線を低減し 環境回復を実現しつつ放射線と暮らす方々を,社会がどう支えてゆくのか。住民自身の視点と,それを支える社会システムづくりの視点の両面から,今とこれからの福島を展望する。

解説
  • 一般の方に誤解を与える放射線量の数値等について
    石田 健二, 丸末 安美
    2014 年 56 巻 6 号 p. 392-396
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     日本原子力産業協会では約3年前の2011年1月,毎週発行の原子力産業新聞の紙上に,理科好きの女子高校生「ゆりちゃん」が世の中に広く利用されている放射線について質問し,ものしり博士の「タクさん」が分かりやすく回答する「原子力ワンポイント」の連載を始めた。その途中,福島第一原子力発電所事故が起こったため,2011年4月7日からは「日本の放射線・放射能基準」について,男子高校生の「ゲンくん」が質問し,ものしり博士の「カワさん」が回答する「番外編」を組み込んだ。そして事故から約2年半が過ぎた2013年9月5日,もう一度,初心にかえり,「広く利用されている放射線」についての解説を再開した。本稿では,執筆済みの中から,放射線量の数値等が独り歩きをして一般の方に誤解を与えているケースに対し,分かりやすく解説したコラムを「4編」選んで紹介する。

解説シリーズ
  • 第7回(最終回)福島事故後の世界の原子力発電開発動向
    小林 雅治
    2014 年 56 巻 6 号 p. 397-402
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     福島第一原子力発電所事故から3年が経過した。現在,日本の原子力発電所は48基全基が停止中だが,年内には数基が運転再開しているものと期待される。しかしながら,世論調査では,原子力発電所の再稼動や原子力発電利用についてネガティブな意見が多い。

     一方,世界に目を転じると,ドイツのように原子力の段階的廃止を明確に標榜した国は少数で,多くの国が将来のエネルギー安全保障やCO2対策などから,原子力開発を推進あるいは拡大する方向にある。特に,これから原子力発電所を新規に導入しようとする国が増えているのが実態である。福島事故後を中心に世界・各国の原子力開発動向を俯瞰的に眺めてみる。さらに将来炉の開発状況や日本の役割についても簡単に触れる。

  • 第3回 レジリエンス評価における技術社会的問題
    古田 一雄
    2014 年 56 巻 6 号 p. 403-406
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     本稿では,レジリエンスを技術社会的文脈において評価する際の問題について論じる。第1点は,社会インフラシステム,サービスシステム,生活システムの間に存在する相互依存性の問題であり,第2点は価値観の異なるさまざまなステークホルダー間の利害調整の問題である。これらの問題を,具体的なレジリエンス評価の事例を用いて示す。レジリエンス工学の社会実装においては,これらの問題の解決が必要である。

  • 第4回(最終回)ウラン濃縮における技術開発と事業の動向
    本多 直人
    2014 年 56 巻 6 号 p. 407-413
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/10/31
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     世界の濃縮ウラン市場の獲得あるいは自国の市場確保に向け,各国が技術開発とプラント規模拡大を競っている。本稿ではガス拡散法に始まり,その後の遠心法を主体とした軽水炉用低濃縮ウランの生産に係るウラン濃縮の歴史と技術の傾向性および近年の濃縮事業の状況を概観する。また,日本国内における自主技術開発の特質を遠心法を中心に振り返り,開発の経緯,実用化までの道程および濃縮事情の概要を紹介する。更に温故知新をキーワードとして, 今後の技術開発のあり方と濃縮事業の方向性を探る。

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