我が国の核燃料サイクルの中核をなす再処理工場の安定的な操業は,核燃料サイクル技術を確立し長期的に安定した原子力エネルギー利用という観点から,重要な課題の一つと考えられる。再処理工場の中でも高レベル放射性廃液のガラス固化処理は国内技術により支えられており,高レベル放射性廃液の処理試験を通じてガラス固化技術の確立に取組んでいる。本稿では,再処理工場におけるガラス固化試験の完遂と新型ガラス溶融炉の開発状況について解説する。
東京電力 (株) 福島第一原子力発電所事故より3年が経過し,放射性物質に汚染された環境を修復するための技術開発の加速化が求められている。原子力機構は,事故以来,福島復興に向けて環境汚染への対処のため様々な活動を行ってきた。ここでは,解説シリーズの第1弾として,原子力機構における活動の概要及び放射線分布を測定するための遠隔放射線モニタリング手法の現状と課題について解説する。
東京電力 (株) 福島第一発電所事故によって放射性物質で汚染された地域における除染等作業の従事者を対象にした被ばく線量登録管理制度が発足し,公益財団法人 放射線影響協会放射線従事者中央登録センターが主体となって制度の運用を行い,除染等事業者からの定期的な被ばく線量の登録及び被ばく線量記録の引渡しが行われている。本稿では,除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度の概要と登録などの実績及びこれまでに登録されたデータに基づく作業者の被ばく線量の状況について報告する。
福島第一原子力発電所事故を踏まえて日本は,政府として原子力損害賠償に関する国際的な制度構築の重要性を認識しCSC (CONVENTION ON SUPPLEMENTARY COMPENSATION FOR NUCLEAR DAMAGE) を締結した。CSCには補完基金制度や裁判管轄権,準拠法等に関する規定がある。その概要と,わが国が加盟する意義についてまとめて紹介する。また,加盟に伴う国内制度を整備する法律,国内の賠償制度を条約上の制度と適合させるための原賠二法の改正についても紹介する。
原子力発電が困難になっている現在,ベースロード電源として石炭火力の稼働率が増加するとともに,新規の石炭火力建設計画も増えている状況にある。しかしながら石炭火力発電にはCO2排出量が多いという弱点があり,これを克服するために高効率な石炭火力発電技術が求められている。石炭ガス化複合発電 (IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle) がこの選択肢となり得るか,技術の現状を解説する。
わが国同様,諸外国においても高レベル放射性廃棄物などの地層処分に向けた取組が行われている。ドイツでは,ゴアレーベンにおいて処分場を建設することとし,1970年代から探査が行われてきた。しかし,2013年に新たにサイト選定を行うための法律が制定され,現在はその実施に向けた準備が行われている。また,スイスでは,低中レベル放射性廃棄物処分場建設計画の失敗を受け,必要な法制度などを整備したのち,2008年からサイト選定が行われている。これら両国のサイト選定に共通することは,主に地質学的な基準に基づきサイトの絞り込みを行っていく方式を採用していることである。わが国においても,高レベル放射性廃棄物処分事業に関して,法令に基づく処分地選定調査に入る前段階に科学的有望地を提示し,重点的な理解活動を進めることを検討しており,これら両国の事例は,今後のわが国の取組に参考になるものと考えられる。
本稿は,除染に関する現状や課題などを把握することを目的として,平成24年から平成26年までの3年間にわたって実施した福島県内の市町村を対象とするアンケート調査の結果の一部を報告するものである。結論として,福島原発事故が発生してから4年以上が経過した現在,“除染なくして復興なし”というドグマのもとに構造化されている福島復興政策は,既にその合理性や妥当性を失っており,その延長線上に,福島の復興の姿を描くことはできない状況に至っていることを指摘している。
米国原子力学会主催の2015IHLRWM会議が米国サウスカロライナ州チャールストンにおいて開催された。高レベル放射性廃棄物の管理の全般を対象に,とくに地層処分事業の進展や合意形成の取り組みなどに焦点を当てた口頭発表やパネル討論が活発に行われ,各国の最近の動向を把握するとともに,今後のわが国の地層処分事業に活用できる有益な情報を得た。また,NUMOが構築を進めているセーフティケースについて報告を行った。
平成26年度文部科学省復興対策特別事業「国際原子力教育ネットワークによる戦略的原子力人材育成モデル事業」の一環として,3名の学生が平成26年9月15日から12月12日までの約3ヶ月間,国際原子力機関 (IAEA) でインターンシップを行った。各々,業務を通して国民性の違いや自身の存在意義の創出等に苦労した。今回の経験を通して認識した,自国に誇りを持つ重要性や相手の価値観や考え方を尊重し受容する必要性等を具体例を交えて紹介する。
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