日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
58 巻, 2 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
時論
座談会
特集
解説
  • 「グランド・バーゲン」の再確認と「南北」の対立
    秋山 信将
    2016 年 58 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     2015年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議は,中東非大量破壊兵器地帯をめぐるアメリカと中東の対立から最終文書の採択に失敗したこと,核の非人道性をめぐる議論の盛り上がりの中で核軍縮に関する議論が盛り上がったことがハイライトであると評価される。他方,福島原発事故後初めてのNPT再検討会議であったが,平和利用については大きな注意が払われたわけではないが,それでも,核軍縮,核不拡散,平和利用というNPTの三本柱の間の「グランド・バーゲン」という構造の重要性が改めて認識され,また,非発電分野における平和利用が,途上国など必ずしも原子力の大規模利用をしていない国々のNPTへの関与を維持するという点で意義があることが示された。今後,開発分野との関係,途上国と先進国の間の平等性という点でも原子力平和利用の重要性は高まるであろう。

  • もうただ乗りは許されない
    小野 章昌
    2016 年 58 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     太陽光や風力などの変動電源は電力系統システム全体に与える影響が大きいため,発電端における発電コストだけを見ていてはコストの全貌をつかむことができない。IEA(国際エネルギー機関)とOECD・NEA(OECD原子力エネルギー局)が共同で作成した最新レポート「発電コスト予測2015」1)の第11章からその内容を紹介し,システムコストを考える重要性を解説したい。

  • ―地層処分の安全性を担保する地質環境の安定性とは―
    増田 純男
    2016 年 58 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     地層処分の安全性に疑問を呈する理由として,日本列島における地質環境の長期安定性の保証の困難性を指摘する見解が示されることが多い。残念なことに,このような見解における地質環境の安定性に関する論点は,殆どの場合,地層処分による廃棄物の隔離と閉じ込めの性能に対する影響という地層処分の安全性に関する本質的な論点から外れている。

     本稿は地層処分の性能に影響する地層や地質環境の安定性とはどういうことかということを論じ地層処分選択の正当性を考える一助としたい。

  • (その1)地球科学からみた地殻流体と地層処分技術への応用
    梅田 浩司, 浅森 浩一
    2016 年 58 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     一見,地球科学は原子力工学を代表とする実学からやや遠い印象もあるが,ウラン資源探査,原子力施設の耐震安全性,放射性物質の環境モニタリングなどといった原子力エネルギーの利用にも少なからず貢献してきた。しかしながら,2011年東北地方太平洋沖地震(M 9.0)は,数百年から千年を超える時間間隔で発生する巨大地震・津波といったこれまでの原子力安全では想定していなかった自然現象のリスクを再認識させた。特に,原子力施設の耐震安全性と放射性廃棄物の処分の2つの問題については,メディアなどを通じて国民的関心を呼んでおり,その解決に向けた早急な取り組みが求められている。地質学,地球物理学,地球化学などの地球科学の分野における最先端の理論と技術を活用して進めている地層処分および耐震安全の2つの研究開発の現状を2回にわたって紹介する。

報告
  • 災害対策における緊急時モニタリングの役割
    山澤 弘実, 木村 秀樹, 小山 吉弘, 岩崎 俊樹
    2016 年 58 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     本報告は,2015年秋の大会において行われた保健物理・環境科学部会企画セッションの取りまとめである。原子力災害対策指針が求めるモニタリングの内容と課題を掘り下げた講演に加えて,福島原発事故時に地元県が甚大な自然災害下という制約下で行ったモニタリングの状況・教訓と現在の見直し状況に関する講演が行われた。また,大気拡散を専門とする日本気象学会から予測計算の有用性と制約に関する講演が,同学会が事故後に行った提言の説明とともに行われた。モニタリングと大気拡散予測の何れにも一長一短があり,両者の相補的な活用がより実効性の高い防災スキームに繋がるということが,セッション全体として議論の方向性であった。

  • 佐藤 清
    2016 年 58 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     原子力リスク研究センター(NRRC)が,2015年9月2日に東京の大手町サンケイプラザホールで発足後初めて「原子力リスク研究センターシンポジウム2015」を開催した。NRRCは原子力発電の自主的な安全性向上に必要な研究開発の拠点とすべく,2014年10月に電力中央研究所内に設置した組織である。今回はこの1年間の活動報告ならびにリスク情報を活用した意思決定に関する基調講演を行うと共に,原子力事業者,規制機関,立地自治体,大学,マスメディア等から多様な有識者を招いて,原子力のリスクを専門家と社会がどのように認識し,低減していくことができるかについて,パネルディスカッションを行った。テーマは,(1)NRRCにどのような役割を期待するか,(2)リスク情報を活用した原子力のリスク管理を実現するために何が必要か,の2つを設定し,自由闊達な討論の中から様々な意見,提言が出された。当初の予定を大幅に上回る約440名が参加した熱気溢れるシンポジウムの概要を紹介する。

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